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やってしまった。その一言に尽きるよ。

今思えば とか言うあの女が近づいて来た時点で怪しむべきだったんだ。
アイツに…あのクソ女に俺は騙された。あれが欲しい。あれは必要とせがむアイツにまんまと乗せられて…気づけばオレは大切な貯金に手を出していた。
アイツは……オレが求めたときは何もしねえで逃げるくせに、会ったとたんに「ずっと会いたかったよ」なんて…都合がよすぎるよな。
ブランドの服も、バッグも、しがない作業員のオレにはけっして安くなかった。なのにアイツはオレにキスのひとつもしてくれなかったんだ。
それなのに……「あなたが初めて」だとか「愛してる」だとか下らない芝居に騙されて、乗せられて、オレはついに会社の金に手を出したんだ。
オレはあの女みたいに嘘が上手くなかったからな。使い込みはすぐにばれた。
警察に連れていかれそうだったが、オレはなんとか土下座とクビで許してもらった。あの時止めておけば今頃少しはまともな人生を遅れるかも知れなかったのにな。
会社をクビになったと伝えた時…確かあのクソ女は「大丈夫」とか「あなたは悪くない」とかそんなことを言っていた気がする。
オレはつい…良いところを見せたくて最後の貯金を切り崩しちまったんだ。それで…今ならあの頃の自分をぶん殴れるが、うん十万する指輪だか、ネックレスだかをアイツに買っちまったんだ。

金の切れ目は縁の切れ目とはよく言ったもんだ。
それからあのクソ女は家に来なくなった。


オレがその日暮らしの生活を強いられていた頃、町であの女に会った。
でも…前みたいにオレがアイツに貢ぐためじゃない。それは本当に偶然だった。
アイツは…あのクソ女は笑っていた。オレが買ってやった宝石を身に付け、オレよりずっとイケメンな男の横で笑っていたんだ。
正直、すぐにでも殴りかかりたかったが、オレは我慢した。何かの事情が会ったのかも知れない。オレの一方的な勘違いかも知れない。そう思ったんだ。
すると、アイツと目があった。ふつう…知ってるヤツ。それもブランドや宝石を買ってもらった相手だ。「久しぶり」とか「また会ったね」とかそんな言葉がかかるかと思っていた。
でも、違った。あのクソ女はこちらを少し見て吹き出した後、隣の男と何事もなかったように歩き出したんだ。

我慢の…限界だった。

あの時のことはよく覚えていない。
確か、「金返せ!」とか「お前のせいでオレは」とか、そんな月並みな言葉を並べながら、オレはひたすらにあの女を殴った。
幸い周りに人が少なかったから、オレも逃げる時間はあった。隣の男はオレが殴り出した後、真っ先に逃げ出していたと思う。
傷で歪んだ女の顔が、痛ましくも、やけに美しく見えたことを覚えている。


それからオレは、どこかがイカれちまった。
町で可愛い、美しい女を見ると、ついそいつの"死に様"を想像しちまう。
きっとあの娘の顔が恐怖に歪んだら、白い肌が醜く切り裂かれたら、美しいんだろうなぁ……そんなことを、毎日考えていた。
ある時、ムカつく女に会った。向こうから歩いてきてぶつかったのに、オレの目の前で舌打ちしやがった。
その女は物陰に引っ張っていって、棒か何かでグチャグチャにしてやった。
たまたま近くにあったゴミ箱に念入りに詰めたから、しばらくは見つからないだろう。最もあんなクソ女が死んでも誰も悲しまないが。

それから……オレの唯一の趣味は加速した。
ある時は若いOLを、ある時はもっと若いJKをこの手で歪ませた。
オレに舌打ちしたヤツ。オレに軽蔑の目を向けたヤツ。オレをクスクスと笑ったヤツ。
全員"美しく"仕上げてやったよ。

オレを嘲笑った女を殺してる時だけ、哀れで不幸なオレの"生"と人生最高の"興奮"を感じられたんだ。


そんな充実したオレの生活も終わりを告げた。
町の壁や電柱にはオレの顔写真が張り出され、テレビでは「女性を主に狙った連続殺人犯」のことを放送している。
ナイフを使い自分の顔の形を変える作戦は我ながら良かったが、オレの強運も長続きしなかった。

ある日、たくさんの足音と、うるさい犬の鳴き声でオレは目を覚ました。
その頃には逃亡生活も板について来たからな、すぐにサツだとわかったよ。
それで…オレは近くにあった、高い高い廃ビルに逃げ込んだ。
ひたすらに暗い階段を登って、ビルの屋上にたどり着いた。下を見下ろすと冷たい秋風が頬を撫でたよ。それがオレの現実を教えてくれた。
 
 
 


 
 
 
……と、言うわけだ。若い兄ちゃん。わかったか?オレがここに至る経緯。
そんなことが色々あって…今オレはビルの屋上。しかもフェンスの向こうにいるっつーわけだよ。
それに……あんた警察じゃないだろ?…図星か!正義感もほどほどにしろよ。兄ちゃん。いつか死ぬぜ。

警察はオレが部屋に逃げ込んだと思っているから、下を探してるな……つまり今この屋上にはあんたとオレしかいない。
下に行って知らせなくていいのか?凶悪犯がここにいるって。
何?下にいく間に逃げるかもしれない?あんたを見てると性善説を思い出すな……
自首しろ?それは無理だ。なぜならオレはここから飛び降りるんだからな。
早まるな?そんなセリフをリアルで聞くとは思っていなかったよ。でも、決意は変わらねぇ。どうせ捕まっても死刑だしな。
罪を償うべきだ?なら余計ここから飛び降りるよ。世間のヤツラはオレに死んでほしいと思ってるだろうしな。
もっとも一番悪いのはオレを騙したあのクソ女だけど。

さて、兄ちゃん。
やっと警察も気づいたみたいだ。
潮時……だな。

兄ちゃんはオレと言う凶悪犯の最後と人生を、みんなにしっかり広めてくれよ。
ほら、足音が近づいてきた……
本当に飛び降りるのか?早まるな?……何度いったらわかるんだか。
オレは本物の屑なんだよ。
今からでも最悪の逃走劇が後味悪く終わり不快な気持ちになる、世の中の女性を想像しただけで興奮する。

そうその顔だよ。兄ちゃん。
たぶんオレは死んでも屑だけど、こればっかりは仕方ねぇよな。
これがオレの人生なんだから。

……じゃあな若い兄ちゃん。オレが今から"百点満点の飛び降り"を見せてやるよ。
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 


イテテ……ん?ここが天国かい?いや、地獄か。
なんだあんたは。鬼にしちゃあずいぶんと小綺麗な服装だな。
何?ここに座れ?どうしてだ。オレは死んだんだろ?何?これを見ろ?
……なんだこの採点プレート。それにメモ用紙か?1点、10点って何かの採点か?

あ?……何?本当に採点をするのか?何のだ?
は?…え……マジかよ。地獄っつーのはずいぶんと趣味が悪いんだな。まあオレが言えたことじゃないが。
ちなみにオレはどうだったよ?……なるほどな。まあそんなものか…

で、どいつだよ。採点するのは。
ん……ああ、アイツね。わかった。わかった。ややあいいんだろう。
採点プレートの色は…青か。よし。

おっ…!飛んだな。まあまあだが……"滝本 龍人"12歳…"男"ねぇ。
じゃあ評価は……


2点 ─飛び方は良いが、男児だからな…

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