[記録開始/20██/█/██]
[D-75500がSCP-XXX-JPに侵入し、SCP-XXX-JPが封鎖される]
█博士: D-75500、聞こえてますか?聞こえていたら返事をし、装備の点検を行ってください。
D-75500: あーあー、ちゃんと聞こえてるぞ博士。装備の点検は終わった。これから出発する。
[省略]
D-75500: なあ、博士。
█博士: どうしましたD-75500。
D-75500: あー、いやな、なんか怖いんだよ。ここが。
█博士: それは、どういった風に?
D-75500: [3秒間の沈黙]さっきから声が聞こえる。囁くような声もあるし、悲鳴もある。後ろからずっと足音が聞こえるのも怖い。なあ、博士。ここはなんなんだ?入ったばかりで悪いけど、オレはもう引き返したい。
█博士: その場所について私から説明はできません。引き返す件については、もう少し進めば許可が降りる可能性があります。今はとりあえず進んでください。
D-75500: わかった。博士。あんたを信じるよ。
[省略]
█博士: 何か発見はありますか?D-75500。
D-75500: [5秒間の沈黙]昔を思い出していた。父と一緒に探検をしたんだ。探検といっても、山にいった訳じゃない。町中を少し回った程度だったが、オレはそれが楽しかった。なあ、博士。何でオレは父さんを殺しちまったのかな?
█博士: それに関して私から答えられることはありません。それに、関係のない話は控えてほしいです。
D-75500: 父さんの声が聞こえる。でも、若い。オレが小学生の頃の声だ。いつも野球の練習に付き合ってくれた。頭から振り払おうとしても、この道が、この空が、この声が、あの時と重なる。博士。これは異常性ってヤツなのか?
█博士: わかりません。それを解明するため、あなたはそこにいるのです。
[省略]
D-75500: なあ、博士。凄く寒いんだ。引き返しちゃダメか?
█博士: それに関してですは、先ほど議論した結果許可されました。それと、D-75500。今は真夏ですよ。
D-75500: そうだったな。
[省略]
D-75500: なあ博士。聞いてもいいか?オレはさっきから引き返してるはずなのに、道が全然違う。狭さも、置いてある物も。ここはいったい何なんだよ博士?この路地はいったい何なんだ?
█博士: もう一度言いますが、わからないのです。それを調べるためあなたは選ばれたのですよ。
D-75500: そうか。そうなのか。
█博士: ええ。何か発見があったら報告してください。
D-75500: 暗くなってきた。今は夕刻だ。
[省略]
D-75500: 博士。とても疲れたんだ。少し休んでもいいか?ほら、そこに家がある。どうせ誰も居ないんだ。休んでも良いだろ?
█博士: [5秒間の沈黙]わかりました。許可しましょう。
D-75500: ありがとな。
[省略]
█博士: どうですか?D-75500。休憩は終わりましたか。
D-75500: ああ博士。凄く休めた。まるで実家にいるようだ。良い家だよ。ここは。
█博士: それは良かったですね。では、そろそろ探索を再開してください。
D-75500: なあ、博士。ずっとここにいちゃダメか?
█博士: [5秒間の沈黙]D-75500。まずは水を飲んで落ち着いてください。その行動にメリットはありますか?
D-75500: [3秒間の沈黙]そうだ。そうだよな。ごめん博士。オレがバカだった。
█博士: いや、いいんですよ。分かれば。
D-75500: ところで博士。オレは今どこにいるんだ。そのGPSとかいうのでわかるんだろ?
█博士: そうですね[5秒間の沈黙]██県です。
D-75500: オレがここに入ったのは?
█博士: ███県ですね。
[省略]
D-75500: なあ博士。さっきから昔の事をよく思い出す。家の裏にちょうどこんな感じの路地があったんだよ。そこを走り抜けるのが好きだった。母さんは服が汚れるって怒ったけどな。そう、母さん。なあ博士。母さんはどこにいったんだ。
█博士: あなたの母親は██年前に事故で死んでますよ。
D-75500: そうか。いや、そうじゃない。オレが殺したんだ。金が欲しかった。なあ博士。どう思う。動機として十分か?我ながら良いアイデアだ。
█博士: [沈黙]
[省略]
D-75500: なあ博士。オレはいつここから出れる。もう█時間はたってるだろ?
█博士: わかりません。
D-75500: わからないってなんだよ。クソッ。ああ。いや、わからないのは仕方ないか。
█博士: [5秒間の沈黙]D-75500、何か発見はありますか?
D-75500: えーとな。ああ、そうだ。知ってる路地を見つけた。オレが昔中学校に行くときに使ってた道だ。いやー、懐かしいな。
█博士: なるほど。他には何かありますか?
D-75500: ん?ああ。他に?えーと何も無い。絶対何も無い。絶対だ。
█博士: [3秒間の沈黙]何か、隠してませんか?
D-75500: いや、何も隠してない。[編集済み]なんて隠してない。
█博士: [編集済み]?
D-75500: [編集済み]。
[省略]
D-75500: 博士。猫を探しているんだ。
█博士: 猫?
D-75500: ああ。昔飼っていたタマっていう名前の猫。平凡な名前だろ?捨てられていて、あまりに可哀想だから、拾ったんだ。母さんは起こったけど、父さんは飼うのに賛成してくれた。父さんはあれでも動物好きだからな。
█博士: なぜ、その猫がいるとわかるのですか?
D-75500: 声が聞こえるんだ。タマのニャーって声。でも、見つからない。声と毛と、胴体は見つけたのに。
█博士: 胴体とは?
D-75500: ああ?胴体は胴体だよ。後は頭を見つければいい。
[省略]
D-75500: おい、博士。凄いものを見つけたぞ。オレの家だ。実家がそのまま建ってる。
█博士: 実家?あなたの実家がそこに存在するということですか?
D-75500: ああ。実家だけじゃない。裏にあった細い路地に、そこから行ける空き地まで全部だ。いやあ、嬉しいな。このクソみたいな道に入る理由も少しはあったってことか。[3秒間の沈黙]なあ、博士。いいだろ。オレの家なんだ。中に入っても。いいだろ?
█博士: [5秒間の沈黙]それに関してすぐに許可を出すことはできません。とりあえず、そこを離れてください。
D-75500: [3秒間の沈黙]なあ、博士。オレはここまで頑張ってきた。クソみたいな実験にも参加したし、素直にあんたらの言うことを聞いてきたんだ。頼む。これぐらいは許してくれよ。ここは、オレの家なんだ。
█博士: [5秒間の沈黙]侵入は許可できません。そこを離れなさいD-75500。
D-75500: [不明瞭な発言]
█博士: D-75500?
D-75500: そーいう事ならこっちにも考えがある。博士。悪く思わないでくれよ。ここは、オレの家なんだ。
█博士: いったい、何をするつもりですかD-75500!今すぐに止めなさい!
D-75500: すまん。博士。
[突如としてD-75500のカメラ・マイク・イヤホンが切られる。サイトで通信の回復を試みるが、失敗]
[48分間が経過した後、突如としてカメラ・イヤホン・マイクが繋がる]
D-75500: ああ。博士。オレはなんて事を。あ、ああ。
█博士: その声はD-75500ですか?とりあえず状況を説明しなさい。話はその後です。
D-75500: 博士。オレは、オレは家に入ったんだ。それで、それで[5秒間の沈黙]そこには皆がいた。皆が、母さん。父さん。タマもいた。それに[編集済み]も。お気に入りのバットもあった。でも、それだけじゃなかった。そこには、ああ。
█博士: 何があったんですD-75500。説明しなさい。
D-75500: ああ。それで、皆が、皆がいた。でもそいつは違った。そいつは、そいつは、ああ。そいつは一見、人だった。人、ああ。人だった。でも違った。違ったんだよ。いや、ああ。もしかしたら違うのはオレ、オレなのかもな。路地とはそういうものなんだ。路地とはいつもそういうものだ。
█博士: 路地?人?どういうことですか?
D-75500: ああ。何でオレは気づけなかったんだ。ああ。クソ。クソ。もっと早く気づければ。ああ。オレはここが怖かった。当たり前だ。当たり前なんだ。ああ。博士。オレを、オレを。ハハ。
█博士: 何ですか?
D-75500: [不明瞭な発言]
[記録終了/20██/█/██]
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