ある意味異常な終焉

このページの批評は終了しました。


rating: 0+x

"我々はいつ間違えてしまったのだろうか?"

あの忌々しき戦争が始まったのは、2045年の事だった。あの日、財団極東支部にいた私は、テレビで流れるその映像に心底驚いたことをよく覚えている。
 
前々から████国と██国が冷戦状態にあったのは知っていた。だが、この平和な時代において驚異となるのは異常実体のみだとたかをくくっていたのだ。私も、おそらくO5さえも…
 
 
 
冷戦が崩壊した大きな要因は██国で起きた一つの事件だった。
██国内でカルト宗教団体による大きなテロがおきたのだ、犯人は全員逮捕されたが、██国内でも…多くの死者が出た。さらに良くなかったことに、テロを起こした宗教団体のメンバーに████国の政府関係者がおり、テロも含めて全て████国の作戦だったのではないか?という噂が広まったのだ。
 
██国政府は一連の件に対して激怒、████国が██国の戦力を削ぐため、今回のテロを起こしたとし、██国は████国への正式な攻撃開始及び、宣戦布告をした。
 
思えば…あれが悪夢の始まりだったんだな。
 
次に起きたのは…そう、我が母国の政府が██国に戦争の協力を求められ、それを了承したというニュースだった。
最初こそ…私も戦争などとうの昔のことであり、我々には全く関係のないことだと思っていた。だが、教育機関を軍が取り締まるようになり、自衛隊が紛れもない…軍隊、人を守るのではなく、人を殺すための物になった頃には、段々と人々もこの残酷な現実を受け入れてきたようだった。

だが、そこまで来ても、我々財団には到底関係のない話だと思っていた。
だってそうだろう?我々の役目は敵国を潰すことでも、母国を守ることでもない、異常実体や危険な団体から人々を日常を守ることだ、その信念に揺らぎは…無いと。
 
 
 
ある日、政府が奇妙な発表をした。現存する全ての組織は戦争に参加せねばならず、それに反発した場合は…誰であろうと、どんな物であろうと、軍により完全に抹殺されると。
 
だが、それでも現状を重くとらえることは出来なかった。いや、しなかった。財団は戦争には参加しないしする気もない、異常実体を収容出来るのは我々だけなのだ、危険指定されている団体はともかく、我々財団は大丈夫だろうと。
 
運悪く…最初に目をつけられたのは、様々な宗教団体だった。国のために戦わず、役に立とうともせず、目に見えない、存在するかも怪しい異教の神を信仰するなど、馬鹿のやることだと政府は言いたいらしい、抵抗した団体は全て軍により抹殺されてしまった。

戦争において強力な武器となる宗教を、最初に潰すのは違和感を覚えたが、あんな事件があった後では…宗教は政府にとって敵でしかないだろう。
 
…消された宗教団体中にはかつて、我々と敵対した者たちもたくさんいたが、政府は異常実体の存在を把握しており、その対抗策もしっかりと練られていたらしい。
 
まさか…政府が異常字体を把握してるとは…と私も驚いたが、考えてみれば確かに納得できることだ、戦いにおいて異常な力を使えば確かに強力だ、だが、もし敵にまわせば…戦車や戦闘機よりも大きな驚異となるのは明白だろう。僅かな驚異も潰し必ず勝利したいこの現状において、政府が異常実体を把握していても不思議ではない。

次に標的となったのは…異常実体を多く扱う会社だった。政府は異常実体の存在を重く見ており、それと関わる団体ごと異常実体を潰す気らしい。財団と協力していた者も、敵対していた者も、等しく強大な軍事力の前に潰された。
  
 
 
友人に聞いた話だと、危険指定されている団体の█████が政府に手を貸しているという噂があるらしい。█████の奴等は対異常実体用の武器や兵器を多くもっていると聞いたことがあるから、政府はそれらを使って異常実体を制しているのかも知れない。
 
しかし…今回の件もそうだが、異常実体を扱っていても、結局人間は銃には勝てないということなのだろうか?軍の"矛"が我々財団に向けられる日も近いかもしれない。そうなったとき私がとるべき行動は…

私の毎日の日課であったニュースは、段々と…嫌なものになっていった。どこで何人殺したとかどこで何人死んだとか、連日そういうもので埋め尽くされている。
さらに軍は禁じられていた"負の遺産"をも持ち出し、戦争に投入したらしい。そこまでして争う理由が…私には全く分からなかった。
 
 

ちょうどそんな時だ。████国に拠点をおいていたGOC本部が壊滅したと聞いたのは。
 
 

我々の最大の敵であり、危険指定されている団体の中ではトップクラスの力を持っていたGOCが、政府に負けるとは思えなかった。が、…巨大なキノコ雲と、建物の大半が吹き飛んだGOC本部を見れば嫌でも信じるしかなかった。
 
この時点でもう我々財団ぐらいしか、異常実体に関わる団体はいなくなってしまったようだった。財団はO5-1とO5-14の命により、この事態を特例のKクラス世界終焉シナリオに指定するらしい。財団もやっと軍と政府を敵と見なしたのかと、とても複雑な気持ちになったのをよく覚えている。
 
それに…この頃財団も、段々と軍の襲撃を受けるようになっていた。財団のフル装備も軍の力には苦戦を強いられるらしいから、遅かれ早かれこうなっていたのだろう。
さらに…最近武力で戦争を終わらせようとしている、過激派な連中が財団にできたらしい。まったく本当に…嫌なご時世だ。

 
 
はやく戦争が終わり、皆で笑い会える"日常"が戻ってきて欲しい。
 
 

にわかには信じられない、いや信じたくない事が起きた。サイト-19とサイト-8100が破壊されたのだ、政府は財団を大きな脅威と見なし、収容中の異常実体ごと完全に潰す気らしい…
 
サイト-19とサイト-8100は財団サイトでも屈指の堅牢さを誇っていたので、どれだけの兵器を軍が使ったかは素人の私でも想像に容易い。我々が必死に守ってきた、人々とは、日常とは、いったいなんなのだろう?恩を仇で返すとはまったくこの事だ。
 
いくらなんでも…酷い話だと思わないか?
あんまりだ…
 
 

…それからは、なし崩し的に物事は進んでいった。財団のサイトは次々と潰され、もはや████国と██国の戦争ではなく、そこに財団を加えた"三つ巴"となっていた。私が財団に入り、守りたかった世界はこんな物じゃなかったはずなのに。我々は、世界は、いったいどこで間違えてしまったのだろうか?

 
 
後悔ばかりが募っていく私の日常に、おそらく人生で最も最悪なニュースが入ってきた。
軍が極秘に開発していたバイオ兵器が、敵軍の襲撃による保管施設の破壊で、世界中にばらまかれたという。空気中に大量に散布された"それ"は、ほぼ全ての生物に非常に有害であり、例えどんな生物でも、吸い込めば12時間以内に死に至るというだ。
 
…万が一の時のため対抗薬は開発されていたが、数日前に研究所が爆破されていたらしい。犯人は…武力で戦争を終わらせようとしていた、我々財団の過激派連中だ。
 
私はもう…笑うしかなかった。

…大戦争から始まった一つの"過ちの種"は、日に日に世界を蝕んでいった。財団からもそれ以外からも死者は止まるところを知らないし、医療機関やインフラもほぼ麻痺していた。
 
 
我々人間は多くの生命が繋いできた道を、自らの手で終えようとしている。世間はもはや皆、諦めに近い感情を抱いているようだった。

 
…何度だって言おう。
 
"我々はいつ間違えてしまったのだろうか?"

皆わかりきっている。2045年、あの戦争が始まってからだ。あれが全ての過ちの始まりだった。

私もちょうど…半日前にバイオ兵器の感染を言い渡された。
 
私ももうすぐ、友も、妻も、子供も、全くいないこのつまらない人生をもうすぐ終えるのだろう…
 
しかし…本当に皮肉な物だな。まさか我々の、我々の守ってきた物の終焉が…危険な異常実体でも超常的な天災や異常現象でもなく、"我々自身の手で"下されるとは。


    • _


    コメント投稿フォームへ

    Add a New Comment

    批評コメントTopへ

ERROR

The NazonoR's portal does not exist.


エラー: NazonoRのportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:6286008 ( 07 Apr 2020 06:11 )
layoutsupporter.png
Unless otherwise stated, the content of this page is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License