[改稿]Mr.スパイの財団生活調査報告書

 薄汚れた喫煙室のガラス越しに、安い薬で着色された炭酸ソーダをぶちまけたような空が広がっていた。
 間延びした青色に、もこもこと膨らんだ鮮やかに白い雲。肌に触れた熱に夏の訪れを感じながら、羽織ったジャケットの袖をまくる。いつもより上に広がった視界の中で、吐き出した紫煙が薄く揺れていた。

 下の全てを見下ろせるほど高いところにいられたなら、下の世界のせせこましい何もかも───やれヴェールの外側だ内側だって話とか、この組織とこの組織の対立がどうだとか、これは正常でこれは異常だという曖昧な区分とか、そういうのも全部くだらないと笑い飛ばせるんだろうか。
 いっそ太陽のすぐ下あたりにあぐらをかいて、日の下で起こる全てを嘲笑ってみたいだなんて思う。太陽みたいな強くて大きく絶対の存在は、自分の下にあるのが光だとか影だとか細かいこと考えないし。
 
 上ばかりを見上げるのもそろそろ首が痛くなってきたので、俺は視線を斜め下方45度あたりに下げる。
 世界は間も変わらず能天気に回っていて、日に照らされた夏の昼下がりはヴェールの中にも外にも平等に巡ってきて、人々は薄氷の上の平和を享受していて、俺は上を眺めるより下を見ている方がお似合いのようだった。

 煙草を灰皿に押し付けて、なかなか中身の減らない箱をポケットに入れる。空は青く、世界は平和。安穏とした常識。わざわざ遠くて古い喫煙所まで足を運んで、肺を汚すだけの煙草を減らして、汚いガラスの内側から美しい太陽を見ている自分が少しだけバカらしくなって、俺は軽い舌打ちと共に木製の扉を押した。

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