雨島のTale
そろそろ梅雨に入る頃合いだというのを、櫛の通りにくい髪の毛で気付かされた。
ひとつため息をついて、手の中の道具を小さな櫛からヘアブラシに持ち替える。
肩に落ちた白髪を指先で弄ぶ。いつもはさらりと流れる髪は、うねりを持って指に絡みついた。
小さく舌打ちをしてから、膨れた髪をざくざくとブラシで梳く。
言うことを聞かない長髪を両手で後ろに流し、目にかかる前髪をピンで留めた。
いつもより少しだけ背を伸ばす。普段より少しだけ素敵な自分を思い描く。
今日は大切な日なのだ。
最後の仕上げとばかり、真っ白な手袋をきっちり嵌めて、雨霧あまぎり霧香きりかは部屋を出た。
- portal:6217955 ( 25 Mar 2020 05:21 )

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