拝啓、スシブレーダー様
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    この一連の文章は作品の外部に当たり、投稿には含まれません。

    このお話は着想段階から何度も方向転換をしており、登場人物の関係の描写に悩んでいます。

    物語の補助として、作者の意図を簡単にご説明できればと思います。ご参考にして下されば幸いです。

    また前提知識としては、scp-1134-JPをお読みいただければ十分かと存じます。

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      スシブレードの世界観を踏襲し、人と寿司の心の交流を描きたいと考えました。
      特に意識したのは、スシブレードは負けたら食べられないといけないので、あり方が刹那的であるという点。
      更に、一生の時間が極端に短いことから、特に競技に専心しているスシブレードの視点からみた時間スケールに着目しようと考えました。その為、作中でも2週間程度の出来事になっています。
      ここで問題となるのは、架空の存在である意識あるスシの存在が、物語の中でどう捉えられているか、となります。

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      天森 瑠衣子は寿司を想い、彼が自分に好意を寄せていたと気付いた瞬間に、彼を永遠に失うことになります。
      ここで問題として提起されるのは、スシの恋に対して、天森 瑠衣子の心境はどのようなものであるか、です。
      現状では、どうして恋などしたのか、という怒りを想定しています。
      反対に、スシの方としては、力いっぱい生きて力いっぱい恋して、満足に死んでいった状態と考えています。
      このギャップから、天森 瑠衣子の今後の行動として、スシが競技に出されることの否定を導ければと思っています。意思のある存在を濫りに競技に出し、消費するような存在とすることへの反逆が始まります。



平目源次郎が相棒であるエンガワイルダーの異変に気付いたのは、二人がプロスシブレード選手権・B級トーナメント優勝を飾った翌日のことであった。

スシブレーダー『平目源次郎』とその相棒『エンガワイルダー』と言えば、この界隈では多少知られた存在だ。下部組織から這い上がって来た叩き上げ。生まれは信濃、さっぱりした寿司捌きと苛烈な攻めが持ち味。齢40にして意気充実、15で東京に出て以来、直向きにスシブレード道に邁進する姿は多くのファンを魅了してきた。次にA級ランクに手を掛けるのはこの二人であると彼らは口々に噂したし、二人も期待に応えるようにB級トーナメントを制し入れ替え戦へ駒を進めた。だがこの重要な時に、ワイルダーの様子はおかしくなってしまったのだ。

相棒に似て寡黙で不器用な寿司である。朝稽古の間、回転のキレは今一つ、平素身に宿す美しい白さはどこか霞んでいた。実のところ、原因に心当たりはある。源次郎は切り出し方に悩んでいたのだが、結局は単刀直入に尋ねることにした。

「よお、相棒。お前さん、さては瑠衣子ちゃんのことを考えてやがるな」

普段より更に長い沈黙の後、ワイルダーは観念したかのように肯定した。瑠衣子は源次郎行きつけの小料理屋『空け福』の一人娘である。シーズン中は酒を断つ源次郎であったが、昨夜はスタジアム帰りに店へ顔を出し、そこで久々に瑠衣子を見かけた。大学院生でもある彼女は忙しい生活の間を縫って店の手伝いにも励んでいるらしく、板場での振る舞いは源次郎の目にもなかなか立派なものと映り、そして彼女の美しい包丁捌きにワイルダーは恋をしてしまったのだった。

「寿司と人の間が上手くいった話は聞いたこともねえぞ。しかも相手は堅気の人間だ。俺らの稼業もとんと知らねえ素人相手に、どうするってんだ」

ワイルダーは黙り込んでいる。プロ制度が出来て八年。人気は出てきたとはいえ、スシブレードが世間一般に受け入れられているとは言い難い。源次郎はため息をつき、相棒を懐にしまうと『明け福』を目指し歩き始めた。源次郎はスシブレード一筋の職人である。これまで色恋の経験もなく、ましてや他人の恋路の機微など分かろうはずがない。だが、相棒を思えば、何かをせずにはいられない男であった。



「おお、源ちゃん。昼間っから珍しいね。忘れ物でもしたかね」
「いや、ちょっと頼みたいことがあってよ。瑠衣子ちゃんは今居ねえか」
「あいつなら大学へ行ってるが……おい、源ちゃん。何か妙な話じゃないだろうね」

訝しむ主人に、源次郎は掻い摘んで事情を話した。人のいい主人である。警戒心は解けたようだったが、眉をしかめている。

「正直源ちゃんとワイルダーじゃなきゃ、叩き返してるところだが……。大体、親に言うことかね」
「面目ねえ」
「で、どうするんだい。瑠衣子には寿司の声なんぞ聞こえないだろうけども」
「文通を考えている。俺が代筆をするから、渡してもらっちゃあくれねえか」
「いいだろう、だけどな、条件が一つ。差出人は明かすな。その上でやり取りをするかは、あいつ自身に決めさせる。嫌なら帰ってくんな」

源次郎は息をのんだ。だが、ワイルダーはそれでも構わないと言った。果たして、世にも奇妙な文通は開始されたのだった。



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