オリエンテーリングオブザライフアンドドアーズ

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01

02

03

 エージェントを集めて行われたオリエンテーションがあらかた終わると、各班に分けられた中から1人ずつ名前が呼ばれた。僕もその内の1人だった。呼ばれた者以外は宿舎へと返され、名前を呼ばれた僕たちに望まれたことは、班の代表として記録を残すことだった。その分の給料は増えるのか、僕は聞きたかった。
 上官が2m近い、顔に傷がある大男じゃなければ、多分そうしただろう。彼が話しているあいだ、僕は無駄口を叩かないよう努めながら、目の前の盛り上がった胸板に集中していた。

 
 一通りの説明が終わってしまうと、部屋の外へと連れ出され果てしなく長い廊下を歩いた。各自に与えられた記録室を回るために、我々は幾度となく代わり映えのしない病院のような廊下の角を曲がり、階段を上り、途中で1人ずつ、どこからか現れた他の職員に連れられて消えていった。
 最後まで上官のランデブーに付き合わされたのは僕1人だけだった。

「ここがお前に作業してもらう部屋になる」

 もはや時間の感覚も無くなった頃に上官は突然立ち止まり振り返って言った。
 そのために僕はつんのめって彼に激突しないように思い切り踏ん張らなければならなかった。

 
 上官はズボンのポケットから乱雑にまとめられた鍵束を取り出すと、太く節くれだった指で1本の変色した真鍮の鍵を探し出し、ドアの穴に突っ込んでぐるりと音が聞こえそうな勢いで回した。ドアは不吉な悲鳴を上げながら向こう側へと開いた。

「入れ」

 上官は扉を押さえたまま言った。

 胸板とドアの枠とに挟まれることを考えると不愉快だったが、上官は頑としてそこを動かないつもりらしかった。数秒間、無言で見つめ合ったあと僕は諦めて真っ暗な部屋へと潜り込んだ。
 廊下から差し込んだ四角い光の中に上官と僕との影が重なっていた。

「入り口の横に電気のスイッチがある。押せ」

 手探りでスイッチを押すと、天井から下がった白熱電球が部屋の中をぼんやりと照らした。暗闇から明るい部屋に目が慣れるのを待って部屋を見渡してみる。くたびれた机と雑多に積み上げられた古書の山、それから臭いがしそうなほど脂ぎった羽ペンが山に寄りかかりなんとか直立していた。僕はため息をついた。

「すみませんが、ここへ新しい機材とデスクライトを運ばせて貰えませんか。こんなに暗くちゃ記録が取れません。それからパソコンが1台必要です。僕はタイプライターを使ったことがないので」

 上官は無言のまま表情を変えずに、しばらくこちらを見ていた。それから咳払いをして言った。

「お前に言っとかんとならんことがある。俺は気が長い方じゃないから1度しか言わん、よく聞け。お前にはここでの仕事のやり方について口を出す権利は無い。さっさと慣れろ。そいつが使えんなら手で書け。紙とペンならいくらでもある。お前はここに用意された環境で、お前のすべき仕事をしろ。分かったな?」

 一息で言ってしまうと上官は大きく息を吸って、吐いた。僕は彼の顔の傷をじっと眺めた。
 その傷にはそれなりの説得力があるように思われた。

「さもないとお前を少々痛めつけんとならんかもしれん」
「そこから先に入れないのにですか?」

 彼はドアを押さえていない方の手で顔の傷をぽりぽりと掻いた。傷は刃物で出来たにしては幅広く、ところどころに何かが肉に引っかかって出来たような引きつれがあった。
 それについて、僕はあまり想像したくなかった。

 上官は胸のポケットの留め具を外すと、中から折りたたみ式のサバイバルナイフを取り出し、刃を一度出して、仕舞った。

「代案としてはこういうのがある」
「なるほど、分かりました」

 僕は頷いた。

「何故お前が選ばれたのか、俺にもなんとなく分かったよ。だが口の利き方には気を付けろ、新人。ここは俺みたいに"優しい"奴ばかりじゃないからな。そもそも答えてやりたくとも俺はそれを許されちゃおらん。俺だって命令で仕方なくこうしてるのさ」
「誰のです?」
「博士だよ。そのうち会えるさ」

 上官をこれ以上苛立たせるのは本意ではなかったので、僕はそのまま黙っていた。返事をする代わりに一度頷くと彼は満足したようだった。

「それでいい。餞別にこいつをやろう。多分すぐ死ぬことはないがそれなりの準備は早めにしといた方がいい。幸運を祈る」

 僕の手に放り投げられた生暖かい1本の鍵とサバイバルナイフを残して、ドアはバタンと無慈悲に閉じられた。

 それを机に置くか置かないかのうちに、部屋には不釣合いなほど大きな電話のベルが鳴り響いた。電話は上官からだった。

「大事なことを伝えるのを忘れるところだった。お前、そのドアの外観を覚えてるか?」

 僕は振り返ってドアを見た。そして外から見たドアのことを、全く思い出せないことに気付いた。

 嫌な汗が背中を伝った。

「思い出せないだろうから教えてやろう。いいか?メモはしてもいい。だが"他人に絶対に教えるな"。1025、『給湯室』だ」
「あなたに何か伝えなければならない時はどうしたらいいですか?」
「祈れ」

 電話は切れた。

 時代遅れも甚だしい、ダイヤル式の電話の受話器を置いてしまうと僕は椅子に腰掛けて頭を整理した。部屋に窓は無く、無数の埃が電球に照らされては光の届かない隅っこの方へ消えて行った。
 ねじ巻き時計のコチコチと時を刻む音だけがずっと聞こえていた。

 僕はふと小さな声で1025室、と呟いてみた。この建物にそんな数の部屋があるのだろうか?立ち上がって恐る恐るドアを手前に開いてみた。

 顔を出して辺りを見渡すと、そこは1階のロビーから10歩しか離れていない廊下の入り口だった。 
 受付嬢がこちらに気付いて小さく会釈した。

 僕はそれを返す気力もなく黙って部屋に引っ込んだ。


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