幼年期の終わり

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これはとある物語



私は最後の晩餐を楽しんでいた。チキン、ピザ、ハンバーガー、フライドポテト…いつもなら健康に悪いと妻が食べさせてくれなかったジャンクフードたちが食卓に並んでいる。無論全て私の大好物である。机に収まりきらない程大量に配置されていた食材も気づけば跡形も無く消え去り、私の胃腸が嬉しそうに消化液を分泌している。満腹だと感じたのもつかの間、デザートが運ばれてきた。美味しそうなイチゴの乗ったショートケーキである。満腹だったはずの私の胃は、デザートは別腹と言わんばかりに甘い甘いケーキの侵入を許可し、それはジャンクフード達と混ざりあった。



気づけば最後の晩餐は終わりを迎え、私は胃もたれによって苦しんでいた。そんな時、妻が私の顔を見つめ、こう言った。

「絶対に帰ってきてね。」

少し涙ぐんでいるその瞳で彼女は私にそう訴えかけた。

私は答えた。

「ああ、必ず。」

月日は流れ、あまりにも多くの因果が過ぎ、その約束は果たされなかった。







私の名はマークス。
機動部隊アルファ-5隊長。

敵対的な組織との抗争、危険なオブジェクトの収容違反など数々の修羅場を乗り越えてきた。そんな私にある一つのメールが送られてきた。

「マルドゥク計画」

その文書にはそう書かれていた。
私は少し前にこの計画について説明を受けていた。どうやら人類の肉体を神のレベルまで変化させ、いずれ来る厄災を迎え討つ為の計画らしい。簡単に言うとそんな感じだ。私のように多くの修羅場をくぐり抜けた人間にこの計画への参加を秘密裏に呼びかけているらしい。

そのメールにはこの計画への参加を望む者は指定された日時までにチャック・ホロウェイという名の男に連絡しなければならないという旨か記述されていた。

私は悩んでいた。
私には長年苦楽を共にした妻がいる。彼女は毎日私の帰りを待ってくれている。そして、私を愛してくれている。そんな彼女を置いて、生きて帰れるかもわからないこんな計画に参加するなど到底考えられない。



…だが、だとしたら世界は誰が守る?我々は人類の日常を守る為にここにいる。それには妻も含まれる。私は姿形もよくわからない厄災に妻を殺されたくはない。私は彼女を、人類を守らなければならない。たとえ、命に換えてでも。

数年前、妻と流星を見にいったことがある。その日は久々に休暇がとれて、妻を連れて星がよく見える山まで車でドライブがてら行ったのだ。闇夜を照らす美しい星星。空を流れる儚くも輝く流星。そして、それを見上げる妻の笑顔。私はそれらが忘れられない。私は守らなければならない。私は妻を死なせたくはない。私は世界を、人類を、財団を、妻を守らなくてはならない。



私は決意した。


私は重荷を背負う











私の名はマークス。
特務部隊シグマ-01"財団の錨"所属。

私は今や神と化した。体の筋力、耐久性が人間だった頃とは比べ物にならない程強化され、重力の操作なんてのもお手の物。そして、死ぬことも無くなった。不死というやつだ。死なないのならいつかまた妻に会うことができるかもな。世界を救えたら。


そして、その日はやってきた。世界のありとあらゆる生命を吸収せんとする厄災がついに出現したのだ。

私は戦う。全てを救う為に。妻を守る為に。







どうしてだ?私は神になったはずだ。我々は神にも勝る力を持っているはずだ。なのに、なぜ?どうして?おかしい。何かがおかしい。

あの化け物はなんだ?あらゆる生命を吸収し、力や知識を増大させ続け、その先には何がある?



貴方も愛してみせましょう。


愛する?化け物のお前が?



家に帰る時間ですわ…



それは無理だ。私には私の居場所がある。守るべき人もいる。お前の元には帰れない。


母は最善を知っているのですから



お前は母なんかじゃない。たとえお前の行動が慈愛に満ち溢れていたとしても。子供達への愛だったとしても。

そろそろ親離れの時間が来たんだ。
私には帰るべき場所がある。

私は約束を果たす。お前を殺して。







母は全てを育んだ。この世界に生命を産み、育て、見守り、愛し続けた。

でも、子供達は母の元から離れ、何処か遠い場所へ行ってしまう。

母は自分の子供達の死を悲しみ、涙した。子供達がどんどん自分から遠ざかっていく。その悲しみは耐え難いものだった。

子供達は還るべき時間をとうに過ぎてしまった。連れ還さなければ。もう一度やりなおさなければ。



私は還るべき場所を知っています



運命の十字架に囚われた私の愛すべき子供達よ



お還りなさい









あたり一面に美しい花が咲き乱れている。

空気は澄んでいて、美しい星空が広がっている。

遠くから聞き覚えのある声がした。

ああ。今行くよ。

その空には一筋の流星が美しく輝いていた。




これはとある物語。遥か遠い夢の果てを目指した我々の儚く、淡い、木漏れ日の物語。幼年期の終わりを迎える人類の物語。

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