カッコウ様

私が小さい頃の話。

私が小さかった頃は両親とも仕事が忙しくて、田舎の祖父母の家に預けられていた。
祖父母は私にあまあまで、いくらでも甘やかしてくれた。
おばあちゃんはおっとりしていて怒ったところは一度も見た事が無かった。
おじいちゃんは厳しそうに見えるけど優しくよく遊びに連れて行ってくれた。
そしておばあちゃんはお手製の御守りを作って、いつも私に持たせていた。

毎年誕生日に祖父母に連れられて、お堂のようなとこへ行ったのを覚えている。
山の中にあって他に人が居たのは見た事が無い。それに、私の誕生日は9月なのでまだ蝉や鳥などが多くて山の中は結構騒がしいんだけど、妙にそこだけ静かだったのを覚えている。
そこは本当に鳥居とお堂があるだけで周りは少し荒れていた。
私はそこがなんだか苦手だったし、いつ来ても他に誰も居ないのが不気味で嫌いだった。

祖父母はいつもお堂の前まで来ると手を合わせ、そしたらすぐに帰る。
おばあちゃんに何をしてるのか聞いたときは、

「○○ちゃんの成長をカッコウ様に見せているのよ」

と言っていた。
私はそれを聞いても、そんな名前の神様も居るんだなくらいにしか思っていなかった。

9歳の時も誕生日にそこへ行った。
いつものようにお堂の前に行くと、中に何か居た。
お堂の中は結構広くて畳が敷いてある。窓や光を取り入れるところは前面の開けたところしかなく中はとても暗い。
襦袢のような白い服を着たなにかが奥に立っていた。
首が90度以上右に曲がっていて、更にとても低い位置にある。大体肩ぐらいのところから頭が右に向かって生えている。
顔はお札のようなものが張り付いていて暗さも相まって全く見えない。

私は本当にびっくりして鳥肌が止まらなかった。
すぐに逃げようとしたんだけど、祖父母が左右で手を握っていて逃げることが出来ない。
祖父母に目の前の化け物の事をパニックになりながら伝えたんだけど、

「見えるようになったんだね」
「良かった良かった」

と、物凄い笑顔で笑っていた。

私は祖父母がおかしくなってしまったと思った。
化け物はその場から動かず、奇妙に頭を揺らしていた。フクロウや鳥のように不規則かつ急に頭を回転させていて気味が悪い。
私は本当に耐えられなくなり両側の祖父母の手を引きはがそうとしたけど、痛いくらい強い力で握られていてどうしても引きはがすことが出来ない。

不意にザッという音がした。
それはあの化け物がこちらに近づいてくる音で、畳の上で足を引きずっているようだった。
ザッ……ザッ……っと音を立て、徐々に化け物は近づいてくる。
その間も必死に暴れて祖父母を引きはがそうとしているが、全然2人とも放してくれない。
それどころか、とても嬉しそうにこっちを見ている。
それが不気味で、徐々に化け物が近づいてくる恐怖で、私はそこで気を失った。

目を覚ました時はもうおじいちゃんの車の中だった。
2人供とても嬉しそうで、私はそれが本当に怖かった。

家に着くと、普段は都会で仕事をしているお母さんが居た。
合うのは久しぶりで、私はついさっきまで震えていたこともありお母さんに飛びついた。
その後はお母さんと2人で誕生日なのでデパートへ行き、プレゼントを買ってもらった。

レストランでご飯を食べている時に、学校の事や友達の事をお母さんに話した。
その流れでお堂での化け物の事もお母さんに話すと、お母さんは途端に青ざめてそのまま都会のお母さんの家に連れて行かれた。
私は祖父母も大好きだったが、それ以上に大好きなお母さんと暮らせると大喜びだった。

それ以来、私は一度も祖父母の家にも、祖父母にも会っていない。


それから十数年経って、つい先日母から祖父母が亡くなっていたことを聞かされた。
それを聞いたとき、お堂の事や祖父母の事を思い出し母に色々聞いた。

母曰く、何十年も住んでいたがそんなお堂は聞いたことが無く、カッコウ様というのも聞いたことが無いらしい。
それでも私の話を聞いて、ここに居させてはいけないと思ったそうだ。
それからは祖父母と色々あったらしい。
祖父母は私に合わせるように要求してきたが、母は頑なに祖父母へ私を合わせなかったそうだ。
何よりも母が怖いと言っていたのは、おばあちゃんが私に持たせていた御守りの中身がへその緒だったことらしい。
それを聞いて私も今更ながらゾッとした。
また、祖父母は私の事を「孫」ではなく「娘」と呼んでいたのが印象に残ったと言っていた。

しかし、今までそんなことは忘れていたし特に怪奇現象や、カッコウ様を見る事も無かったからもう大丈夫だと思う。
でも、もしあのまま祖父母の所で暮らしていたら私はどうなっていたのだろうか。
今では私も結婚し、もうすぐ娘も生まれる。
大きくなったお腹に手をやり、娘の幸せを願った。

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