SCP-XXXX-JP「釜茹」

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2/2906-JP LEVEL 2/2906-JP
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Item #: SCP-2906-JP
Neutralized

特別収容プロトコル

SCP-2906-JP-1はAnomalousアイテム判定を受けたためサイト-8171の低危険度物品収容ロッカーに保管してください。

説明

SCP-2906-JPは要注意団体「無尽月導衆」にかつて所属していたと思われる人物「二翼斎 檜風によくさいひのかぜ」を自称するレベルⅢ霊的実体です。

SCP-2906-JPは摂氏39°C以上の水で満たされた浴槽に自身の胸元まで浸かると異常性を発現します。SCP-2906-JPの異常性に曝露した水は瞬時に油に変わり温度が沸点相当まで上昇します。その約数分後に浴槽から不明な方法で非実態の幻覚が出現し、SCP-2906-JPを非難する言動をします1。SCP-2906-JPが浴槽の温度に耐えきれなくなったと判断した時、または幻覚によってSCP-2906-JPが大きく動揺した場合、SCP-2906-JPの前面に非常に大きな衝撃波が発生しSCP-2906-JPの体は大きく吹き飛び、油から水に戻ります。以下、SCP-2906-JPの異常性によって発生する一連の過程を「入浴イベント」と呼称します。入浴イベントによって発生する衝撃波を無力化する試み、およびSCP-2906-JPが入浴イベントを完遂する試みは2013/11/23まで達成できていませんでした。

発見経緯

SCP-2906-JPは2013/11/03に東京都渋谷区内の銭湯「しの湯」の「お湯が突如沸騰して12名のお客様が全身火傷を負った」という通報に加え、その中に雅灯博士も含まれていたことを受けてオブジェクトの調査が開始され、後に発見されました。火傷自体には異常性はなく、通常の医療機関を装った財団内部の医療チームの治療により翌日には完治されました。


インタビュー記録



日付: 2013/11/05
質問者: 雅灯博士
対象: SCP-2906-JP


インタビュー開始

SCP-2906-JP: 昨日は誠に申し訳ない。よもや拙者の不注意により折角の風呂を台無しにしたどころか貴方達に傷を負わせてしまうとは…

雅灯博士: いえいえ、もう終わったことですし私を含め火傷は治りました。どうか不安にならずインタビューを受けて頂きたいのです。

SCP-2906-JP: そのいんたびゅうというのは拙者への拷問か。組織の内情は知らぬ。知っていたとて喋らぬ。

雅灯博士: 私達はあなたの組織を攻撃しようとは思っていません。なぜあなたがそのような体質になったのかを教えてほしいのです。喋りたくないことは喋らなくて構いません。

SCP-2906-JP: 拙者がなぜ幽霊になったかなんて、そんなの拙者が1番知りたい。魂を一時的に肉体から出す術はあるにはあるが使った記憶もなし、何より時間経過で元に戻るはずだ。

雅灯博士: なるほど。では質問を少々変えてみましょう。あなたが幽霊なら、あなたは生前に何か未練のようなものがありませんでしたか?

SCP-2906-JP: …成程。貴方のその問いかけで合点がいった。

雅灯博士: では、心当たりが。

SCP-2906-JP: ああ、拙者は釜茹での刑によってその命を落とした。拙者はその悪名を轟かせた2故に協議する間もなく処刑となり、挙句処刑人が「その釜の中で10分耐えれば貴様とその仲間は見逃してやる」と言い処刑場には多くの野次馬がやってきた。結果は5分も経たぬうちに釜の外に情けない顔で脱出し、素っ裸で里中を逃げ回る途中で死に、御覧の通りだがな。故にその死に方、そして軟弱な拙者の心と体に未練があるのやもしれぬ、いや、そうに違いない。

雅灯博士: 自身のトラウマ克服のために幽霊として現世に蘇ったのだと、そう主張したいのですね。

SCP-2906-JP: なぜそこで虎と馬が出てくるのかは分からんが貴方の云う通りなのだろう。拙者が意識を取り戻したらあの湯治場にいた。幽霊になった拙者は熱い湯や油を見ると震えが止まらなくなったのだ。湯につかったのもそんな拙者自身に喝を入れるためだったのだが、拙者に憑いて回る釜茹での怨念が水を油に変えてしまい…結果無辜の町人や貴方を巻き込んでしまった。

雅灯博士: その言い方からするとやはり意図して油を沸騰させたわけではないと。

SCP-2906-JP: ああ、信じてくれるか。

雅灯博士: ええ、嘘ではないようですから。

SCP-2906-JP: 良かった。それでこれから拙者はどうなるのか。

雅灯博士: とりあえずはここの施設に留まってもらいます。あなたは幽霊ですから、不用意に外に出て事情を知らない人を驚かせることはこちらとしても避けたい。

SCP-2906-JP: それならば貴方、いや先生殿、不肖この二翼斎檜風から1つお願いがござる。聞いてくれるでござるか。

雅灯博士: せ、先生ですか…いや待ってください。今あなたの名前を

SCP-2906-JP: 拙者は二翼斎檜風と申す忍でござる。して先生殿。拙者の釜茹でを耐えきるという悲願、応援してはくれぬか。

雅灯博士: なるほど、しかしそれは私1人の判断では…(SCP-2906-JPに聞こえないように小声で)いや、どの道異常性解明のための実験は行うはずだしそれで満足してもらうか…分かりました。前向きに検討しましょう。

SCP-2906-JP: 本当でござるか。何から何までかたじけのうござる。

インタビュー終了






実験記録



実験ログ2906-1

日付: 2013/11/09
実験監督者: 雅灯博士
対象: SCP-2906-JP
実験内容: 収容室にてSCP-2906-JPを発見当時と同様の温度である摂氏39°Cの湯が入ったバスタブに入れSCP-2906-JPの詳細な異常性を解明する。


実験開始

雅灯博士: それでは実験を開始します。SCP-2906-JP、バスタブに入ってください。

SCP-2906-JP: 相分かった。少々待っててほしいでござる。

雅灯博士: なぜ服を脱ぐのです。幽霊ならば脱がなくてもよいのでは。

SCP-2906-JP: いやそれが拙者のこの身体、どうも水と油の類は透かすことができないようなのでござる。

雅灯博士: なるほど。それは新しい発見ですね。願わくば今言ってほしくなかったですがね。

SCP-2906-JP: も、申し訳ない。

(SCP-2906-JPが浴槽に入る)

SCP-2906-JP: ううん、ぬうううん…少し、熱くないでござるか?

雅灯博士: 一応4日前と同じ温度にしたつもりなんですが。

SCP-2906-JP: なんと、あの夜と同じ。それは難攻不落でござるな。

(SCP-2906-JPが入った浴槽の湯が油になって沸騰する)

SCP-2906-JP: 来たな我が怨念と悔恨が生み出し地獄の釜よ。うぐぐぐぐぐ…

(SCP-2906-JPが無言になる)

雅灯博士: 大丈夫ですかSCP-2906-JP。先ほどからなにも言───

SCP-2906-JP: や、やっぱり拙者には無理でござる!

(湯が油になって3分後、SCP-2906-JPが突如吹っ飛び収容室の壁にめり込む)

SCP-2906-JP: うわああああっっっ!!

雅灯博士: な、なんだ今のは…?SCP-2906-JP!?大丈夫ですか!?

SCP-2906-JP: な、何で…拙者、壁も透けることができるはずじゃ…

雅灯博士: 霊的実体の収容室の壁は特殊加工を施しているので…収容違反が起きないように…

SCP-2906-JP: 成程…願わくば…今言ってほしくなかったで…ござ…る…

(SCP-2906-JPの意識が喪失する3。)

実験終了


実験からの分析、考察

SCP-2906-JPが自身の限界を感じた時、入浴イベントは強制終了するようです。一先ずはオブジェクトの会話で出てきた30分という時間を目標にします。また、今回の実験でSCP-2906-JPが水と油を透かすことが出来ないため入浴の際には全裸になることが分かりました。今回は実験中の申請のため間に合いませんでしたが、以降実験には私、雅灯を例外として男性職員のみ参加してください。次回の実験は収容室の壁の舗装と衝撃吸収材の導入が終了するまで延期されます。



実験ログ2906-2

日付: 2013/11/15
実験監督者: 雅灯博士
対象: SCP-2906-JP
実験内容: 入浴イベントに際してSCP-2906-JPに耐熱性のスーツを着用することを指示する。また、衝撃に備えて浴槽の周囲に壁を作る。


実験開始

雅灯博士: それでは入浴イベントを開始します、よろしいですかSCP-2906-JP。

SCP-2906-JP: うむ、先生殿より賜ったこの衣を携え今、参る。

(SCP-2906-JPが浴槽の周囲を囲む壁の上から跳躍して浴槽に入る。)

SCP-2906-JP: なるほど確かに、湯の暑さを感じぬどころか中に備え付けられた絡繰のお陰で着ぶくれの暑さも感じず寧ろ涼しい…これであれば10分はすぐでござる。

(SCP-2906-JPが入った浴槽の湯が油になって沸騰する)

SCP-2906-JP: 先生殿、こちらは油の暑さも感じぬし、衣も焦げ付く様子はまるでないでござる。

雅灯博士: それは素晴らしい。ではしばらく浴槽に浸かっていていてください。

SCP-2906-JP: クックック、これは勝ったな、風呂でゆっくりしてるでござ───

(突如不明な力でSCP-2906-JPの耐熱性スーツと中に着ていた衣服が纏めて弾けるように破ける。)

SCP-2906-JP: えっ?

雅灯博士: 何か異常事態ですか、SCP-2906-JP?

SCP-2906-JP: 着ていたものが一瞬にして全て身ぐるみはがされたでござる!

雅灯博士: これまでの実験では観測されたことのない異常性が発生したということでしょうか。SCP-2906-JP、すぐに浴槽から出てください。

SCP-2906-JP: 承知でござる…ッ!?何故だ…体が油から…抜けられん!!

子供の声: 父上…ねえ、父上…?

SCP-2906-JP: そ、その声は

子供の声: なぜなのですか、なぜ私たちを置いて、行ってしまわれたのですか。

SCP-2906-JP: それは…

子供の声: 暗いよぅ…ここは暗うございます父上…私も父上と、この暗い夜を超えたい…

雅灯博士: 自力で脱出できないのならこちらで強制的に回収します…SCP-2906-JP?何か反応を───

女の声: あなた…あなたは薄情です。家を支える大黒柱として、無尽月の一員として恥ずべきことだと思わなかったのですか?

SCP-2906-JP: ああ、やめろ、やめてくれ…

雅灯博士: SCP-2906-JP!?そこに何かいるのですか!?…回収作業を中止してください!SCP-2906-JPの新たな異常性の発現により浴槽内部に何らかの不確定要素が現れた可能性があります!

老人の声: 儂のせがれ!哀れなせがれ!死してなお二翼斎の名に泥を塗るか!親不孝者が!

SCP-2906-JP: 違う…違うんだ…拙者はただ外の世界が見たかっただけで…

何重にも重なった男女の声: その考えを持つこと自体が…お前が気狂いであることの何よりの証拠だ…

SCP-2906-JP: うう…うあああ…

何重にも重なった男女の声: 忍は影より生まれ、影にて死ぬ定め…陽だまりの中で生きること…そのような戯言は無知で哀れな百姓や町人の夢想だ…お前は我々だけではない、無尽月導衆のはらから全てを裏切ったのだ…

SCP-2906-JP: そうなのか…拙者が…全部…悪かったのか…

何重にも重なった男女の声: 死してなお償え…我らのこの怨嗟…!

(SCP-2906-JPが突如吹っ飛び、その反動で周囲を囲む壁を突き破る)

SCP-2906-JP: ぐわああああっっっ!!

雅灯博士: 実験は直ちに中止!ハルトマン霊体撮影機を持っている職員はSCP-2906-JPの現状観察!メトカーフを持っている職員は壁の穴から浴槽の警戒!該当しない職員は手隙の機動部隊を招集してください!

実験終了


実験からの分析、考察

SCP-2906-JPが何らかの熱に対する警戒、途中で入浴イベントを辞退することは不可能であるようです。恐らくSCP-2906-JPが『呪い』と呼称する異常性は狡賢い手段で入浴イベントを完遂させたくないのでしょう。また前述の手段をとった場合、浴槽の中からSCP-2906-JPの家族と思われる幻覚がペナルティだと言わんばかりに出現します。彼らの発言を鑑みるに、SCP-2906-JPには後ろめたい過去があるようです。SCP-2906-JPについての文献が発見できない点とSCP-2906-JPが心的に酷く衰弱している点と合わせて、SCP-2906-JPを対象としたカウンセリングの実施を申請します。



カウンセリングログ2906-JP

日付: 2013/11/16
カウンセラー: 雅灯博士
対象: SCP-2906-JP
補足説明: 本来ならばオブジェクトのカウンセリングは専属のカウンセラーによって行われるが、SCP-2906-JPが雅灯博士に最も心を開いている点を加味し、特例として雅灯博士によるカウンセリングを許可した。


記録開始

雅灯博士: 昨日は散々でしたね、ですが落ち込むことはありません。まだ2回めの実験ですし、我々もあなたを変わらずサポートします。

SCP-2906-JP: 先生殿は優しいでござるな…拙者を見かねてこのような場を設け、そのような甘言を嘯いておられるのでござろう。

雅灯博士: ええ、抱え込んでいるものがあればこの際吐き出しておくのがよいかと思いまして。

SCP-2906-JP: そのようによそよそしく振舞わなくとも、拙者の過去について、より詳しく話すでござる。…というか、「散々でしたね」なんてあからさまに優しすぎて察するでござるよ。

雅灯博士: それは失礼しました…よろしくお願いします。

SCP-2906-JP: そこまで込み入った話ではないでござる。一人前の忍として任務に駆り出される前に我々は様々なものを訓練で捨てる。感傷、痛み、欲望、友人、家族。だが拙者は未熟ゆえに心の奥底に封じ込めただけで捨てきれなかった。闇に生き月に導かれるのではなくお天道様の下家族と歩んで生きたかった。ささやかな息子の願いを父として叶えたかった。組織を抜けた結果家族どころか拙者自身が生きた痕跡すら無尽月導衆は消し、拙者は下手人として恥をさらしたまま釜茹でになったのでござる。

SCP-2906-JP: あの怨念…あの風呂釜は拙者に成仏するな、永遠にこの世に縛られよという拙者の家族の代弁者なのでござろう。心に迷いのある拙者では、どれほど時間をかけても…(数十秒沈黙)

雅灯博士: …十分に込み入った話だと思います。家族が絡んでいる話となると。

SCP-2906-JP: そうでござろうか…全ては拙者の気の迷い…

雅灯博士: 自分の子供を思っての行動は決して気の迷いではありません。

(雅灯博士がカウンセリング室に備え付けられているコーヒーメーカーを起動する。)

雅灯博士: 私にも子どもがいました。今はもう…小学校4年生になったのかな。配偶者だった人間に引き取られて、連絡も取れませんが。それでも2人が正常な世界で笑っていられると考えるだけで、私の選択は間違っていないと胸を張って言えます。

雅灯博士: 組織よりも家族を優先して結果を出せなかったこともありましたし、家族そのものを裏切ることもありました。我ながら一貫性のない人生だと思いますが、それでも「子供のため」という軸だけはぶれたくない。その一心で暗闇の中を走り続けて来ました。

雅灯博士: 逆に言えば、自分の中に一本軸が通っていれば誰に何と言われようと、グネグネに曲がっていても自分の道を突き進んでいいのではないでしょうか。気楽に行きましょう。闇の中でも光の中でも、常に何かを考えながら走るのはきっと疲れてしまうから。

SCP-2906-JP: たまには頭の中を空っぽにして…走ることも肝要…

(雅灯博士がコーヒーを飲む)

SCP-2906-JP: その茶、拙者にも少しいただけないだろうか。

雅灯博士: これですか?確かにあなたの体は水は透過しませんが…いや、だからこそあなたの体質に影響を及ぼすかもしれない。今はあげることはできません。

SCP-2906-JP: 今は…ということは。

雅灯博士: 次の実験の候補にしておきます。もしも入浴イベントが完遂できたらの話ですが。

SCP-2906-JP: なるほど、そんなことを言われたら奪───

(SCP-2906-JPが不意に雅灯博士のカップを奪おうとする。SCP-2906-JPの手はカップをすり抜け、中に注がれたコーヒーにのみ触れ、手を火傷する)

SCP-2906-JP: …えっと…

雅灯博士:

SCP-2906-JP: …つ、次の実験、絶対に成功させねばならないでござるな!先生殿!なっ!

雅灯博士: …今のは流石に考えなさすぎでは…

記録終了


カウンセリング結果

SCP-2906-JPのメンタル面での回復が見られました。実験の再会を提言します。



実験ログ2906-3

日付: 2013/11/23
実験監督者: 雅灯博士
対象: SCP-2906-JP
実験内容: 入浴イベントの完遂(SCP-2906-JPの10分以上の入浴)。また、実験2で発生した不明な現象を調査するため、浴槽周囲の壁は撤去している。


実験開始

雅灯博士: では、これより実験を始めます。今回は壁を撤去していますが万が一のことを考えて収容室の壁は衝撃吸収材を使用しているので安心してください。準備はよろしいですね?

SCP-2906-JP: …うむ。

(SCP-2906-JPが浴槽に入ると同時に浴槽の湯が油になって沸騰する)

SCP-2906-JP: 先生殿、肩までつかったでござる。

雅灯博士: 了解しました。入浴イベントはこれまでの傾向から見て私たちからの干渉は出来ないとみてよいでしょう。結局のところ実験の成否はあなたがどれだけ我慢できるかにかかっています。

SCP-2906-JP: 相分かった。どの道この湯船からは出ることが出来ぬから、何かおかしなものが出てきたとしても拙者は離れぬ。先生殿たちだけお逃げ下され。

(SCP-2906-JPが浴槽に入り、入浴イベントから3分47秒が経過。この間、浴槽内に変化はなく、SCP-2906-JPも無言だった。)

子供の声: 暗いよ…父上、どこにおられるのですか…?

SCP-2906-JP: …来たか。

(SCP-2906-JPの周囲に人型の幻覚が発生する)

子供の声: なぜですか…なぜ父上だけが…

(SCP-2906-JPが両手で耳をふさぐ)

子供の声: えっ…何をしているのですか…父上?

SCP-2906-JP: 聞きたくないでござる、おぬしの恨み節など、聞きたくないでござる!

女の声: 何故ですか!?愛する子供がここにいるのですよ!?そこまで薄情になったのですか!?

老人の声: やはりお前は二翼斎にふさわしくない!哀れじゃ!

何重にも重なった男女の声: お前はそこまで落ちぶれたか!!永遠に苦しめ!!聞け!!負けを認めろ!!

(何重にも重なった男女の声がSCP-2906-JPを何度も罵倒するが5分後に息切れし始める)

何重にも重なった男女の声: はあ…はあ…聞けよ…それか諦めろ…

SCP-2906-JP: 口の動きから察するにもう限界でござるか、拙者に直接干渉できないあたり、この世に顕現するのがやっとなほど弱いか、はたまた拙者の負の感情を喰らって強くなるのか…どちらでもよいでござる。貴様はもう息切れしている。限界なのだろう。

何重にも重なった男女の声: さ、最初から、これが、狙いで…

(複数視認できた人型の幻覚が溶け始め、ひとつの塊になり始める)

SCP-2906-JP: 貴様の云うことはまさしく正論だ。拙者は家族を守る身でありながら、自身の欲望のため家族を危険に晒してしまった。それ故に貴様の云うことを真に受けてしまえば拙者は過去の自分だけでなく、拙者の罪を気づかせてしまった家族を呪うだろう。それだけは駄目だ。

SCP-2906-JP: 拙者は人の世を生きる理由にではなく、人の世を呪う理由に、家族を語りたくない。

何重にも重なった男女の声: い、言ってることがメチャクチャだ!!それではお前は、現実から目を背け、自身の罪から目を背け生きていくというのか!!

SCP-2906-JP: ふとした瞬間に目につくほど大きな罪ならば、自然と目に入ってくるだろう。わざわざ四六時中睨めっこしている暇はない!というか今自分が話していることも何も考えずに、頭にポンと浮かんだ言葉を発しているだけでござる。

何重にも重なった男女の声: そ、そんな…

SCP-2906-JP 貴様は何を言っても拙者の尽くを否定するのだろう?そういう手合いは適当に相手をするか、そもそも無視するかに限る。一々反応して過敏になればきりがない。それが家族を騙る悪霊なれば、なおさら慈悲などかけてやらぬ。ほれ、さっさと成仏せい!

何重にも重なった男女の声: 畜生、畜生がああ!!頭空っぽの能無しがあああ!!!

(幻覚が霧散する)

雅灯博士: 声が…止んだ。あっ、そして───

SCP-2906-JP: ああ、そしてもう10分経っている。どうやらお別れでござる。

(SCP-2906-JPの体が宙に浮き、ハルトマン霊体撮影機を通して視認してもその体が光に包まれ薄くなっていく。)

雅灯博士: …結局、コーヒーはごちそうできませんでしたね。

SCP-2906-JP: そればかりが心残りでござるな。でももう拙者は本物の家族のもとへ成仏するでござる。先生殿も、他のみんなも、大変世話になったでござるな。

SCP-2906-JP: …これにて、御免!左様なら!!

(SCP-2906-JPが完全に消失する。)

雅灯博士: …ええ、さようなら。息子さんと仲良くしてくださいね。

実験終了

実験-3を受けてSCP-2906-JPは完全に無力化。意図的にオブジェクトを無力化させたとして雅灯博士に処罰を求める申請がなされましたが、却下されました。


補遺

2013/11/27、SCP-2906-JPの収容室を撤去している最中、浴槽の排水溝から計150個のSCP-2906-JP-1が発生、その後に現在の収容プロトコルが確立されました。SCP-2906-JP-1を実験など公的な理由で使用する場合は、雅灯博士に申請してください。





Anomalousアイテム番号: AO-2906-JP(SCP-2906-JP-1)
説明: パッケージされたヒノキの香りの固形入浴剤。パッケージには「忍者も骨抜き!?檜風入浴剤『陽光の湯』!」という文と成分表示が書かれている。入浴剤を湯の張った浴槽に入れると入浴剤が溶けきるまでにSCP-2906-JPの声で「今日も一日、お疲れ様でござる!」「疲れたなら、たまには頭の中を空っぽにして走り抜けることも肝要でござるよ!」「湯治、それ即ち心の洗濯でござる!」という出所不明の音声が聞こえてくる。音声パターンは観測されているだけでも27種類存在する。
回収日: 2013/11/27
回収場所: サイト-8171の元SCP-2906-JP収容室。
現状: サイト-8171の低危険度物品収容ロッカーにて収容。
追記: お風呂入ってる時に話しかけられると凄い気が散るんですけど。この入浴剤、リラックスさせたいのかさせたくないのかどっちなんでしょうか。 -雅灯博士








scp-jp neutralized 無尽月導衆



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執筆者: EianSakashiba
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最終更新: 15 Apr 2022 00:49
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