フリーランスと君について

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令和2年7月24日
恋昏崎中央裁判所


管理委託書


  • 登録被疑者番号: 201122
  • 姓名     : 雑賀出目 / サイガ イズメ
  • 生年月日   : H100612

恋昏崎刑法17条2項に基づく乙種資源化刑執行の為、上記を準労働者として本島住民に仮登録し、下記の認定済み民営斡旋業者へ身柄管理と刑務執行を委託するものとする。

  • 委託業者名  : サカキ斡旋
  • 代表者名   : 榊トラ


問合先: 0120-H101-4332

     〒430-101-2
     恋昏崎恋昏町凪見台1丁目1番2号


改めて言っとくけど、「生き残って欲しい」というのが今の私の本音だから。五体満足でこの島を出たいなら一緒に頑張ろう。私もできる限りサポートする。


……よし。落ち着いてきたみたいだし本題入ろうか。
君が置かれている立場についてもう一度しっかり理解してもらうために、改めて現状と今後の動き方を解説していこう。まず初めに今の君の立場について。


君は現時刻を以て超常フリーランスとなった。今主流の定義は「どの指定団体にも属さず超常ビジネスに従事する個人の総称」だったかな。

警察官やってたんなら一応耳に挟んだことはあるでしょ。フリーランス。といっても実際に接触したことは未だに無かったわけか。


まあ一括りに“フリーランス”と囲っても、具体的に例を挙げ始めれば

  • 財団や連合に与して呪術や専門知識を提供するフリーの祈祷師
  • 「その手の機関に所属していない」というステータスそのものを買われて送り込まれる個人探偵
  • 無自覚有自覚を含むアーティファクト専門の運び屋
  • 殺し屋
  • 超常物品の収集と通報と提出で小遣い稼いでる日和見野郎
  • 用心棒
  • パラテロリスト訓練キャンプの経営者
  • 施設建設や整備専門で呼ばれる人たち
  • ポケット宇宙の探索や開拓を専門とする技術者
  • ヴェール維持のためのカバーストーリー流布を担う映像制作チーム

とか、本当に色んなのがいてキリがない。活動の目的や理由も同じくバラッバラで、バイト感覚でやってる奴もいれば修行の一環でやってるような奴もいる。正常性維持機関に親身な奴もいればオモックソ敵視して活動してる奴もいる。私らの場合は後者ね。


申し遅れたけどフリーランスのサカキです、業務の紹介や仲介を担当する斡旋業者として活動中。今後の君の安全を保障する人です。よろしくね。



で、残念ながら、だ。一回話戻そう。

先の公判でも下された通り、君は財団と共謀し恋昏崎の住人を射殺した罪で強制的に労働者登録されちゃったわけだ。ただのフリーランスじゃなくてストライプ、つまり囚人身分個人業者の区分で。

こっちでは資源化刑といって、要するに君は「いずれどこかで死んでもらう前提で死刑囚を有効活用するシステム」に組み込まれている。一緒に捕まった突入班9名も今んとこは同じ状態ね。


ごめんもう少し解りやすくまとめよう。「死ぬまで恋昏崎の鉄砲玉として再利用され続ける事実上の死刑」が決定してる。今の君。


……取り乱す気力も起きないか。これ終わったら一回温かいモノ食べに行こう。ここの食堂のうどん全部手打ちだから美味しいよ。


うん。一言一句ゆっくり噛み砕いてくれて構わない。けどいずれは全てを受け入れて生き残ってもらうしかなくなるから。頑張ろう。

その上で一回聞くけど、君はこれから生き残るつもりある?というか何をしてでも生きていたい?




よし、今の時点でそう思えるなら大丈夫。最初に言った通り「君が生き残るために」私は立ち回るつもり。何せこれから生き残る手段がいくつかわけだからね。


実はあるんだよ生き残る手段。事実上の死刑と言っても首括るよりは抗いやすい死刑だもん。実際日本の絞首型の刑だって一回生き返ったら放免されるでしょ?


資源化刑も同じ。刑務ノルマを達成すれば無罪放免が基本的なシステム。まあそのノルマをこなす過程で皆死ぬんだけど。君の場合は一定難易度以上の業務を計4回達成すれば晴れて無罪放免。刑務は果たされてヴェールの内側へ還れるようになる。形式上はね。


あ、待て、油断しない方が良い。4回目の達成後に死ぬことも想定してるシステムだからコレ。

君はその手のお仕事を始める前に新人フリーランス向けの対超常講習や戦闘訓練、あとスキルチェック、場合によっては後天的な超常性の付与を受けて強くならなくちゃならない。つまり最初から凄い借金を抱えた状態でノルマ攻略が始まるってこと。場合によっては武器の購入とか業務失敗時の賠償金支払いとか。


で、この借金を返済するにも最短最小で計15回の出撃ノルマが加算される。

これで何となく解ってくれたかな。資源化刑が、この島での強制的なフリーランス化が実質的な死刑として機能している理由。君はこれから19回以上は超常社会の最前線に殴り込んで業務を達成し、本物の自由を手に入れた上で財団や連合への保護を求めなければならない。そのために生きなければならない。

ちなみに業務ごとの時間間隔が空きすぎたりすると返済ノルマが更に加算されたりするから引き籠りも許されないよ。


不安だよね。というか恋昏崎の住人と戦って、財団と肩を並べて解ったでしょ。この世界の不条理や理不尽を。
君が今から戦ったり守ったりするのはあんな生半可な連中じゃない。元の世界の肩書なんかここでは一切通用しない。例え君が警察官で、元機動隊付きの銃器対策部隊隊員だったとしてもだ。



……今置かれてる状況と、これからやらなきゃならないこと、理解してくれたかなフリーランス君。

私は協会員である代わりに恋昏崎側の人間じゃない。正直言えば裁判所の連中も嫌いだし、君みたいなのがボロボロ無駄死にしていくのを只眺めるだけってのも好ましく思ってるわけじゃない。なんたって私も元ストライプで元財団エージェントだからね。

あ、びっくりした?その辺の話は追々しようかな。


というわけで、だ。五体満足でこのクソみたいな島を出たいなら、このクソみたいな地獄から抜け出したいなら、一緒に戦おう。出来る限りのサポートと依頼の絞り込みを約束する。


本当ならすぐにでも訓練キャンプに送らなきゃいけないんだけど、既にウチに寄せられている3級案件なら現状の君でもこなせるかもしれない。殺しは基本NG。拳銃を携帯した人間1人を1発も撃たせずに拉致してこの島にブチ込むだけの簡単なお仕事。経験アリの同業者が同伴するやつ。ちゃんと出来そう?2級業務だし成功したらノルマ1個達成だよ。


OKその意気だ。表に車停めてあるから、一回ご飯食べたら港の方まで行こう。諸々の手続きはこっちでこなしとく。





じゃ、サカキです。改めてよろしく。




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執筆者: v vetman
文字数: 3832
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最終更新: 09 Jul 2023 15:21
最終コメント: 04 Jul 2023 10:38 by tazen

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