著者娘外伝 ~teruteru_5娘とv vetman娘 編②~
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なんか書けそうなんで書きます


「私の部屋着ですがシャワー使い終わったらこれ着てください。その隙に自室から弁当持ってくるので」
「え、流石にそこまでお世話になるわけには……」
「行きだけでこんだけ事故りまくるような人をこのまま帰らせる身にもなってください」

問答無用で原付を飛ばし、若干遠くの学生寮エリアを目指す。V娘の獲得した著者部屋は巨大な冷凍庫、冷蔵庫を兼ねており、現在は彼女の他にも彼女と一時的な契約を結んだ著者娘や編集陣が保管庫として共同使用している。主な保管品は長期戦用に買いためた弁当とエナジードリンクである。知る者は限られるが、死亡描写の参考資料として散々使った自分の生首や、ほぼ五体フルセットの遺体、爆殺体、銃殺体、撲殺体、隻眼の視界を知るために抉り出した目玉、資料用の銃火器類も内密に格納されている。今ここに立つV娘はオリジナルの記憶を継承する全くの別人物である。やはりこの事実を知る者は少ない

「あ!!!飯の好み聞くの忘れた」

自分の亡骸を押しのけながら適当に弁当を漁る。うだうだ悩むだけ時間の無駄だ。サラダチキン入りのいかにも健康に良さそうなのに当たった。2パックを手早く背嚢に詰め込み、いもしない脅威を警戒しながら部屋を後にする。誰とも出くわさずに原付まで辿り着いた。

「いもしない脅威ねぇ」

著者であるが故の宿命である。他の一部の著者娘がそうであるように、物語の主人公なら文庫本1冊かけて辿り着くような自己本来の内面を無意識に客観視して、そのメカニズムを徹底的に解明する癖があった。脅威の正体は既に自分で理解している。

誰にも合わせる顔がないのだ。今の自分には。スランプ中に他の著者娘と出会いたくなかったからずっと挙動不審だった。そもそも何も書けない著者娘に存在価値は無いと言って等しい。そのくせ自分以外のほぼ全員に愛される自著だけが、今でもこの学園都市で輝き続けている。過去の栄光に見下されながら生きることに辟易しつつも、過去の自分や過去を知る著者娘には見栄を張り続けたい。その一心で足掻き続けた結果がこの様である。

どうするべきかは明確に理解している。記事を書いてもう一度返り咲くしかない。それができないから苦痛にのたうち回っていることも十分理解しているつもりだ。

「……連絡先控えときゃよかったな」

また原付を飛ばす。今度は自宅に向けて。よく知りもしない来訪者のための弁当を引っ提げて。他の著者娘との遭遇を恐れて。


本日2度目の帰宅。V娘にとってはかなりオーバーサイズのジャージだったが、テル娘にはちょうどいいサイズだったらしい。白いラインの走った黒い芋ジャーを羽織り、突然の来訪者は水道水入りのコップを片手に床に座していた。体調は万全らしい。

「……今椅子とか持ってくるんで」
「あ、お帰りなさい」
「ただいま。あとで担当編集のも含めて連絡先教えていただけると助かります」
「あ、えと──」

二階へ移動。来客用に一応揃えておいた寝袋と枕、そしてちゃぶ台を拾い上げ、一階へ戻るなりすべてを展開した。寝袋のモコモコにテル娘の着席を促す。

「まともな椅子は今度買ってくるので今回はそれで勘弁してください」
「あ、」


vetman



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執筆者: v vetman
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最終更新: 03 Aug 2022 13:17
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