蛇と焚書のカルテット: 第五頁 - 障壁と鉄槌
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深夜11時。横浜市、野毛坂。
緩やかな斜面を登ったその先に位置する巨大なモダン建築。一切の灯りを失ったガラスの向こう側を見つめる、灰色のウィンドブレーカーのフードを完全に被りきった男が一人。数瞬前まで正面玄関の鍵穴に押し当てていた魔法瓶を背嚢のスロットに戻し、不意に呟く。

「通報システムは俺が無効化する。あとはラムダ、お前次第だ。」
『一時間以内にすべてを終わらせるつもりだよ。私が分裂可能な時間は?』
「ジャスト2時間。再同化不能となった分は1リットルにつき6時間かけて再生する。」
『OK。それにしてもやっぱり変な感覚だね、体を分裂させるのって。人型が一番馴染むな。』
「しばらくは背嚢から出れないぞ。」
『大丈夫。行こう、レンジ。』

横浜市中央図書館の玄関ドアをこじ開けたレンジは、背嚢の中の相棒、ラムダが取り出した懐中電灯をノールックでキャッチし、館内の郷土資料コーナーへと向かった。

「──ナギ。」

「ナギ。聞こえてるか?」
「……ん、あぁ、すまん。何かあったか?」
「いや、大丈夫ならそれでいいんだが。さっきからまったく動いてなかったからな。」

横浜市某所。中央図書館から車で約10分の地点。

カーテンをすべて閉め切った大型キャンピングカーの内部にて、6311排撃班“ヤシオリ”の面々は長い作戦待機を続けていた。新班長ナギはゆっくりとその場から立ち上がり、無表情でこちらを心配している新副班長、キョウの肩に、「大丈夫だ」と呟きながら手を添えた。

人員輸送用偽装走行車両“アンモナイト”。見た目こそただのキャンピングカーではあるものの、その外装は一般的なライフル弾を防ぎ、さらには車両内部からの作戦指揮、本格的な電子戦も可能である。本来は班長に選抜された数名のバックアップスタッフが運転や整備、その他諸々の作業を担当するのが基本的だが、ヤシオリは極東支部内でも珍しく実働部隊員のみで運用を継続していた。

ナギのすぐ横のテーブルの上には、いつの間にか大量の栄養ゼリーとレーションの袋が積み重ねられていた。袋の山の向こう側では、何故か血眼のマガタと真顔のルルがペットボトル入りの水を全力で飲み干している。

「……キョウ、現状を説明してくれ。」
「9822評価班“トライアド”が横浜市中央図書館各所に潜伏中。ターゲットを確認したら俺たちの到着まで見張ってくれるらしい。作戦エリアの半径500メートル地点の四箇所と800メートル地点の二箇所に、“閃”所属エージェント合計12名がバックアップ待機。内3名は特異排撃資産だ。“ハウンドドッグ”は緊急時のバックアップ要員として──」
「いや、それはブリーフィングで聞いてる。そうじゃなくて……その……何だ。あいつら二人のことだ。大食い対決でもやってるのか?」

いつの間にかキョトンとした表情でこちらを眺めていたマガタたちは、数秒後に黙々と新しい栄養ゼリーを開封し始める。

「腹が減っては何とやら、ってことらしい。少なくともルルはそうなんだろうが、マガタは完全にメンタルの安定化のためにやってるな。」
「……競争しているようにしか見えない。」
「そうか?」

何となく『ルルが煽ってマガタが噛みついた』という経緯が見えなくもない絵面だ。特にマガタはずっとルルのことを意識しているように思えた。本当に顔に出やすい奴だなと内心苦笑いしながら、自らも山盛りになっている未開封のゼリーに手を着ける。

「……二人とも、食いすぎで作戦に支障を来さないようにな。」
「あたぼうよ。流石に戦闘中にゲロ吐くほど鈍っちゃいないぜ。」
「ボクが言うのも何ですけどちょっと食いすぎなんとちゃいます?」
「こうでもしねえと喪中の人間は動けねえんだよ。」
「……」
「……すまん。言葉を間違えた。」
「いやいや、謝る必要はないですって。」

こちらが見ていない間に何かあったのか。若干ぎこちないとは言えど、二人の仲はそれなりに深まってるようにも思えた。昼間に何かあったのだろうか。

「──ああ、戦闘用呪符の作成過程を見学させてもらってな。なかなか面白かったよ。」
「それと簡単な式神の操作とかも体験してもらったんですわ。ブルーじゃないのが惜しまれるくらい飲み込みが早くて。」
「ふふん。」
「まぁ、あんま役には立ちませんけどね、紙の鳥なんて。遊びみたいなもんですわ。」
「操作可能範囲が術者から半径3尺のみって時点で戦闘転用もクソも無いからなぁ。」
「欧米の魔法使いなんかはああいう簡単な式神や低級の悪魔、幽体なんかをチャフや防御壁代わりにしてますよ。物理干渉型の妖術戦における戦法の一つなんで、その手の敵とステゴロで勝負するときは思い出してくださいな。」
「おお、なんかかっけーな。俺が言うのもなんだけどアニメのキャラみてえだ。」
「……言うてもこういった使役関係の術を極限まで磨き上げたようなタイプ・ブルーでもなけりゃそんな小洒落たマネ出来へんし、マガタも言ってしまえばただの人間。そのステージには永遠に上がれんっちゅー話やな。敵が使うにしてもボクらにはホワイト・スーツや高火力の個人携帯火器があるし屁でもないというか、見る機会はあんま無いと思いますよ。」

天井を見上げて「むー……」と零すマガタを尻目に、ルルはゼリーの一袋を瞬時に飲み尽くした。少しだけ微笑みながら立ち上がる。

「……はい、ボクの勝ち。カルビ丼奢ってもらいます。」
「……あ゙っ!」
「勝ちは勝ちやな。さっき早食い勝負に乗ってくれたのもキッチリ憶えてますんで。キョウさんも見てましたよね?」
「勝負の件は初耳だが、負けたのなら仕方ないな。」
「キョウお前! ……ナギ! 班員間でのこういう勝負ってアリなのか!? なぁ! どう思うよ!?」

あたふたと救いの手を求めてくるマガタを尻目に自らもゼリーを飲み干し、若干ニヤケながら、ナギは無言で親指を立てた。敗者は絶望の表情のままがっくりと倒れ込み、沈黙する。ルルは小躍りしながらゴミを回収している。さっきからほとんどしゃべっていないキョウも、この空気をちゃんと楽しんでいるのは見て取れた。車内には一時の平和が訪れていた。
[ここまで改稿済み]

本当ならここにリーダーがいた。

解っている。少なくともキョウとマガタは常にそれを考えている筈だ。口や行動、表情には出さないだけで、新入りであるルル以外の全員が胸の穴を埋めるために笑っている。

それでも、自分のことを未だ“リーダー”と呼ばず、あえて“ナギ”と呼称してくれる彼らの背中は、ただひたすらに寂しかった。隣人の死が日常の一部になったのはもう随分と前の話だが、少なくとも恩師と大親友の二人を立て続けに失ったのはこれが初めてだった。空いた穴の数や大きさを他人と比べるのは甚だ無粋で愚かな行為ではあるが、少なくとも一番“大丈夫”であるべき自分の心は本当に危うい状況にある。これだけは確かだ。今すぐ崩れ去る程度には心が壊れかけている。

[加筆]

すべてのゴミを備え付けの袋の中に詰め終えたルルが、おもむろにブラック・スーツの点検を開始した瞬間、運転席の通信機から初めて耳にする声が放たれた。

『──9822-1より作戦参加中の全人員へ。評価対象1名を目視で確認。館内へ単独侵入しています。これより我が班は対象の監視任務へ移行します。“ヤシオリ”と“ハウンドドッグ”は排撃任務への移行を。……道は確保します。野郎のケツを蹴り飛ばしてください。』

一瞬の沈黙の後、班員の眼の色は激変する。GOCエージェントの眼差し。言い方を変えれば人殺しの目。命の重さを知り、それでも尚奪い奪われを繰り返す、破壊者の目に。

「キョウ、運転を頼んだ。マガタは例の弾頭を装填。ルルは……問題ないな。例の“必殺技”のタイミングはお前の判断で決めろ。」

「了解。」

「最終点検完了。いつでもいけるぜ。」

「同じく。そんじゃまぁ、一丁暴れますか。」

エンジンは指導用モーターの声をかき消すように唸りを上げ、ヘッドライトは煌々と点灯する。

まずは一つの決着をつけてやる。

握り締めた拳の中で、圧迫された爪の先が音を立てずに潰れた。

──15時間前

「──駄目だな。横浜ごと完全包囲された。市内からの脱出は確実に不可能だ。VERITASは無効化できるが肉眼監視は欺けん。どうする?」

「逃亡先は放浪者の図書館に決定かな。アクセスできる可能性が少なすぎるから妖怪保護区と恋昏崎は諦める。その前に蛇の手の穏健派とコンタクトを取りたいところだけど……まぁ難しいよね。自力でポータルを見つけていこう。」

中華街の外れにあるコンビニの裏路地。市内の調査を一通り終えたレンジとラムダは、束の間の休息時間を無駄にしないよう、息を潜めて逃亡の計画を練り始めていた。

「気になっていたんだが、そんな都合よくポータルに出会えるものなのか?少なくとも俺は自分で見つけたことなんか無いぞ。」
「あー、それに関して何だけど、ヅェネラルがちょっと前からこの辺の地域で自分用の『通路』を手に入れようと動き回っていたんだよね。横浜市内にポータルが存在している可能性はかなり高いっぽい。アイツのことだし当てずっぽうでこの場所を調査していたとは思えないな。」
「知らなかったな。……で、どうすればいい? 何から始める?」
「……デカい弟かアンタは。」
「俺は何が正しいのか何も解らない。何を選ぶべきなのか、どこへ行くべきなのかは、いつもお前が一番知っている。そうだろ?」

溜め息混じりに「まぁ、うーん……」と漏らすラムダに、レンジはコンビニで仕入れた納豆巻きを差し出した。「結構です」のジェスチャーで受け取るのを拒否したラムダは、ほとんど人のいない平日の大通りを眺め、「今は生きている、今は安全だ」という現実に飲まれるように溜め息を吐き出す。遅刻でもしてしまったのか、自分のすぐ目の前を通り過ぎるように、高校生と思わしき男がヨタヨタと走っていた。

「……スマホがあると楽なんだけどな。」

何となくそう呟いた瞬間、レンジは唐突に路地から飛び出し、不幸にも彼の視界に捕らえられてしまった男子高校生を素手で殴打した。驚愕するラムダの目の前で、レンジは混乱中の高校生の胸ぐらを掴み、片手で持ち上げながら問いかけた。

「ちょっ! ちょい待って! 痛い痛い痛い痛いッ! 何すか! 何なんすか! ドコ中っすかアンタ! よくわからんけどこんな事されたらオレの学校と親とその他いろんな人が黙ってると──」

「俺の質問のみに答えろ。余計なことを叫んだら殺す。質問に答えなくても殺す。要求を拒否しても殺す。返事は?」

「ハイ。」

「“スマホ”は持ってるか?」

「コチラニゴザイマス。」

「起動させたら俺に渡せ。もちろん拒否したら殺す。」

「リョウカイシマシタ。」

「ちなみにこれを他者に通報した場合も殺す。返事は?」

「ハイ。ハイ。ハイ。」

なんと手際の良い尋問だろうか。拷問とさして変わらない気もするが。とりあえずレンジは弱々しくスマートフォンを握りしめている哀れな男子高校生をそっと地面に降ろすや否や、首筋を手刀で殴打し、これを気絶させた。素早く路地の中にかつぎ込み、立ち尽くしているラムダに戦利品を投げ渡す。

「頼んだ。」

「行動力ありすぎでしょ……」

操作に慣れない他人の端末で、大ざっぱな検索を開始した。入力内容は『横浜 伝承』。

──“放浪者の図書館”。すべての宇宙に窓を持ち、すべての書物を内包する、広大なディメンション。数多の禁忌でその秩序と静寂を保つ、蛇の手の主たるアジト。

異端者やはぐれ者ばかりで構成されていたために、百歩蛇の手は随分と前から出入りを制限されていたが、ヅェネラルはそんな待遇など意にも介さず青大将の手が保有する足立区内のポケットディメンションへとたどり着き、これを拠点としていた。

それでも、数々の有益な情報とほぼ完璧に近い安全エリアを有する図書館へのアクセス方法は、いくらヅェネラルであろうとも最優先で確保したい代物だったらしい。毎晩私有書庫の中で本棚に挟まれながら新天地を追い求めんと思索に更けているヅェネラルの横顔が、妙な焦燥に刈られていたことをラムダは覚えている。

「うげっ、横浜港で人身売買って……そんな都市伝説いらないっての……」

「……さっきから何を調べているんだ?」

「横浜市内の伝承や都市伝説。図書館へのポータルは『神隠し』『怪談』『妖精』エトセトラ……とにかく何かしらの、人が消える、異世界へ行ってしまうタイプの伝承が根付いている地域によく開いているんだよ。アクセス方法や外見はいろいろある。」

「知らなかったな。」

「……仮にも蛇の手メンバーだった人の返答じゃないよそれ。」

「で、横浜にそれらしい伝承はあるのか?」

「……」

答えは「NO」だった。元々江戸時代末期の開港を機に大きく発展した土地であるが故に、出てくる伝承は他の地域に比べれば少なく、見つけた情報も近年こじつけられたモノばかりで、図書館の気配は一つもない。何よりポータルの存在を裏付けるソースがヅェネラルの行動のみとなると本当にやりづらいのだ。

結局それらしい情報は何一つヒットしなかった。

「……うーん。水害関係の伝承も違う気がしてきた。ダメ元で歌でも調べてみるかな。」

『横浜 歌』
『横浜 民謡』
『歌謡 横浜』
『神奈川県 歌』

やはりそれらしい情報はヒットしない。挙げ句の果てには川崎市の非公式ソングが出てくる始末だ。思わず「何が“好きです川崎愛の街”だよ……」などと愚痴りながら途方に暮れてしまう。

それでも諦めるわけにはいかない。残された時間は限られているのだ。すぐに手がかりを見つけないと、横浜を囲んでいる焚書者が雪崩込んできてしまう。実際いつ襲来してきてもおかしくない状況だ。

(──駄目だ、何か見つかるまではスクロールしまくるしか……あっ!)

偶然目に留まったその歌の名は、
『赤い靴』だった。

『赤い靴』

『七つの子』や『シャボン玉』で有名な作曲家、野口雨情の作品。「赤い靴履いた女の子 異人さんに連れられて行っちゃった」という悲しげな歌詞から始まる短い歌。何回か聞いたことがあったが、そう言えばこの歌の舞台は横浜港だったという。以前在籍していた潜入先、GOC管轄の私立高校で、音楽科の教師がそんな予備知識を教えてくれた気がする。

「『異人さんに連れられて』……なるほどな。外の世界を知らない奴にとってみれば、異国は異界みたいなもんだったかもしれない。」

「結局この女の子戻ってこないんだよね。連れて行かれたっきりそのまま。……質こそ全然違うけど、ヨーロッパとかに点在してる各ポータルの外観やシステムは、こういうオチの話がモチーフになってたりするらしいよ。」

「面白いな。他の手がかりは?」

「無い。それっぽい情報は現状これのみ。……情けない話だけど私の勘だけがピックアップの理由だよ。」

「了解した。次はどうするんだ?」

「おすすめ画像で表示されてたこれ。女の子の銅像。市内にあるらしいからこれを探ってみよう。」

──その後6時間にわたる銅像周辺の調査に成果はなく、結局市内の図書館で資料を捜索するに至った。

「──“術式拡張用呪符”か。まさか赤外線センサーや防犯カメラも無効化するとはな。ヅェネラルの懐から掻払っといて正解だったか。」

『……効果時間とか把握してるの?』

「確か半日だったかな。」

『へぇ、凄い。いつ盗んだのさ。』

「お前がヅェネラルと揉めてた隙に掠めとった。気づいてたんじゃないのかな。」

[加筆]

瞬間、背後に佇んでいた観葉植物が、メキメキと音を立てながら、明らかに攻撃的な、人の上半身のような形に変異した。ラムダは背嚢の隙間から日本の触腕を生やし、レンジは腰部の自作ホルスターからネイルハンマーを抜く。観葉植物の葉は鋭利なブレードと化している。

「移動は不能らしいな。焚書者なのか?」

『百歩蛇かな。村田さんかヤオメイ、或いはアレンだ。』

「……」

『……一人くらいは解ってよ。』

「どうする?」

『こいつを殺しても術者は死なない。戦闘不能にしてから改めて資料を集める。……左囲いと階段の乱用で詰めるから、とどめは頼んだよ。』

「了解した。」

レンジがネイルハンマーを構えたその瞬間、ラムダにとっては聞き慣れた声が脳裏に響いた。

──待ってくれ、戦闘の意志はない!

『……アレン!?』

間の抜けた反応に、観葉植物は少しだけ笑った。

──二人とも即座に殺害せよとは命じられてるけど、僕にその意志はない。ハンマーを降ろしてくれ。

「……それはラムダが決めることだ。」

『降ろして。アレン本人が相手ならともかく、木偶人形の攻撃くらいは私がすべて止める。』

「……」

「ロード2より“トライアド”、観測エリアに現着。評価対象1名のみを捕捉。恐らく“レンジ”であると思われる。これより監視フェーズへ移行。ドクさん……失礼、ロード1は引き続き緊急脱出経路の確保を。」

『ロード1了解。今一瞬怪しいところあったけど……あんま堅くなることは無いですからね。ロード3ならすぐ近くで待機してるわけだし。』

『ロード3、作戦配置完了してます。戦闘は全力で回避することを念頭に、気楽に、落ち着いて行きましょうね~。』

「ロード2了解。」

『……よし、一回深呼吸しようか。』

──図書館の各所からレンジを監視する、半透明の、幽霊のような影が3つ。

9822評価班“トライアド”は、天地部門の叡智の結晶たるグレー・スーツを纏い、10分後に到着する6311排撃班“ヤシオリ”を待ちわびながら、先行偵察任務を遂行していた。

“百歩蛇の手”アジト特定任務も一段落し、ようやくこのきな臭い事案から手を引けると安心しきった矢先にこれである。人員不足が極東部門の常とは言えど、一週間も置かずにこんな最前線に再投入されるのは些かハードすぎる。彼らの疲弊は言うまでもなく大きかった。

ロード2自身、それなりに親しかった知り合いのエージェントが今朝いきなり殉職したせいで、モチベーションも墜落スレスレの低空飛行を続けている。狙撃任務中に命を落としたらしい。

ついでに事件現場から回収された呪符一枚からのポータル特定作業の大部分をたった一人で担当したのも重なって、とにかく疲労が溜まっていた。正直今すぐ兵員宿舎に帰って眠りたかった。眠気は一向に来ないというのに。

(まぁ、ダチの仇のためだ。やるしかないわな。)

館内への単身突入を引き受けたロード2、“ヴィート”は、少しばかり気合いを入れ直しながら、己の使命を全うすべくVERITASを起動した。まずは敵のエーテル値を炙り出し、これを記録してやる。滞りは無い。ここまでは順調だ。

全ては『確実な情報を仲間に託す』ために。

無意識のうちに不適な笑みがこぼれた。

(よし落ち着け。楽な仕事だ。手元を狂わすな──)

先刻レンジがこじ開けた玄関付近にて、班員のための逃走経路を確保したロード1、“ドク”は、液晶画面が組み込まれていない特殊なノートPCを開きながら、別方法での評価任務を開始した。これらの機器は、彼が装着している専用のバイザーを介することで、初めて画面の内容を確認できる仕組みとなっている。おかげで邪魔な光は一つも発生しない。

観葉植物の前で何やらブツブツと独り言を呟いている評価対象の付近には、昼間のうちに手ずから設置しておいた盗聴器が複数個潜んでいる。時間の許す範囲で探れる限りの情報を入手するために、各装置が拾ってくれる音を耳元のデバイスを介して観察し始めた。徐々に音量を上げていく。

(…………おっとこれは……?)

──何故か何も聞こえない。機材の不調なのか、即座にすべての装備を確認してみるが、システムはいたって正常である。盗聴器が破壊されたわけでもないらしい。別の盗聴器に切り替えながら聴音作業を継続するも、何故か彼らの付近に設置したものだけは一切の音を拾わなかった。何かがおかしい。何かが間違っていた。

(──この作業にもずいぶん慣れちゃったなぁ。普通に楽しいんだよなこれ。)

ふとそんな事を思い出しながら、一つ上のフロアにて待機していたロード3、“ミクラ”は、電波を用いて障害物越しに人の位置を割り出す特殊な機材を床に設置した。ロード2のVERITASとコイツの二段構えで、ヤシオリが暴れまわるのに申し分ない、最高のパーティー会場を作る。それが彼の任務だった。

任務中に戦闘が勃発した際に脱出が非常に困難となる二階からの監視作業は、一見地味ではあるものの、熟練者が眉を顰めるほど危険である。更に今回の任務は評価班の途中退場を前提としていない。恐らくはこの階にも被害が及ぶ。彼はそれを承知の上で、この作業を引き受けていた。

『他の二人よりも圧倒的に長く最前線を生きてきたから』、たったこれだけの理由ではあるが、十分すぎる志望理由であることも事実だった。

(さて、今日も良きリーダーのために、良き新人のために、私自身のために。真面目に、真摯に、リラックスを忘れずに、責務を果たせ。評価班の信念を貫き通せ。)

そして異変は始まる。

「“時計を確認する。”」

図書館からの撤退準備を始めていたレンジは、静かに、唐突に呟いた。背嚢に戻ろうとしていたラムダは機械的に聞き返す。

『“秒数までは言わなくてもいいからね。”』

「“6時30分1秒。余裕はあるが急ぐに越したことはないな。”」

『……解ってる。これは必要な殺しだ。今更綺麗事吐いて逃げようなんて思っていない。腹は決めてあるよ。』

「お前は誰も殺さなくていい。防御に徹しろ。」

『ありがと……違うな。背中は任せろ、相棒。』

「行くぞ。」

背嚢の中から塗装用の青いスプレー缶を取り出したレンジは、これを左手に持ち替えながら全速力で背後の本棚群へと走り出す。

「──ロード1よりトライアド。ロード2をロスト、頭部への打撃による即死と見られる。評価任務を第三種に切り替え、撤退フェーズへ移行する。ロード3、そちらの撤退手順に支障はありますか?」

『階段から逃げるとヤバそうなので窓から飛び降りることにします。』

「え、危なくないですか?」

『降りました。』

「速い……正面玄関前に待機してるので、合流したら一緒に逃げましょう。機材は放棄します。……怪しまれないように車両を持ってこなかったのが裏目に出たかなこれは。」

右の鎖骨、左の鎖骨、最後に脳天。

青いスプレーを全身に浴び、その位置を一瞬で特定されてしまったロード2は、たった三回の、ただのネイルハンマーによる打撃で死亡した。為す術もなく殺された。彼のヘッドカメラが捕らえた連続攻撃は、あまりにも突然で、そして完璧な奇襲だった。現在は床に飛び散った脳味噌と、痙攣する左手だけが、ほんのりと写されている。

ロード1は、念の為自分の拳銃の再点検を行い、合流の時を待った。残り30秒程度だ。まずはヤシオリにこの状況を知らせなければならない。最悪な状況を。確実に。しかし、通信端末を操作する指からは一向に震えが消えてくれない。

(……ああ、駄目だ。今は忘れよう。いつだって慌てた奴から死んでいくんだ。僕は死なない。死んでたまるか。)

ロード2の、既に完全停止したバイタルサインを非表示に設定し、暗闇に背を向けて更に待機する。今は1秒が無駄に長い。あれだけ何かを考えていたのに残り20数秒もある。

ふと時計を確認したその瞬間だった。

『──ごめんドクさん。私は駄目かも。』

ヘッドセット越しに聞こえてきた声と同時に、ロード3のカメラからの映像は途絶する。直後に通信も切れてしまった。バイタルサインだけはまだ残っている。発信源は、館内。敵の手の内がボンヤリと脳裏に浮かび、同時に思考よりも速く体を動かす。とるべき行動は一つのみだった。

「……ああ、最悪だ。最悪だよ畜生。」

ロード1は暗闇の中へと走り出す。

窓ガラスを突き破って伸びてきた腕に強引に引きずり込まれ、通信機ごと片耳を潰された。反射的に構えた拳銃は、次の瞬間、標的の背嚢から出現した黒い触腕に奪われ、分解されていた。目の前に立っている男は、先程殺された後輩のバイザーを装着していた。VERITASが組み込まれた、四つ目のバイザーを。

(手練れだ。これじゃヴィートも殺されるわけだな。)

右の側頭部から血を流すロード3は、既に青く染められ、もはや使い物にならなくなったグレー・スーツを脱ぎ捨てながら、バールのような潜入用工作器具、エントリーツールを構えた。

レンジは血に染まったネイルハンマーをガンスピンのような動作で一回転させ、血をとばしたのち再度握り直す。

「……見逃してくれないかな。できれば今すぐ帰りたいんだけど。」

「断る。」

「“ラムダ”さん、だっけ。どこにいるのかな?今日は一人でここに?」

「知らない。」

「仲良くなれそうもないな」と心の内で呆れながら、ロード3は駆け出す。

個人的な怨念は時に人を強くするらしい。避けられはしたものの、自らの横凪の初撃は排撃班顔負けの速度で放たれた。回避中であるが故にレンジの体制は崩れている。瞬間的に湧き出たドス黒い殺意が、転じて頭の中を酷くクリアにしていた。

今逃げても何も好転しない。排撃班の到着までは、自らの命を賭してでも監視任務を全うするべきだ。ならば──

「うん、ごめん。やっぱりここで死んでもらう。」

歯を食いしばり、頭部めがけて縦に一閃。轟音と共に放たれた渾身の二撃目は、レンジとは別の“何か”に妨げられた。例の黒い触腕だ。一度距離を取ろうと飛び退くと、触腕もまた背嚢に引っ込んでしまう。さっきまで握っていたエントリーツールを、ズルズルと飲み込みながら。

本棚の影を縫うように逃走しながら、ロード3は思考した。

(──何だアレ。VERITASに引っかからない、というか、レンジそのものがVERITASに感知されていないのか。恐らくはアーティファクト、或いは彼の術式による能力。オプションとして『発信源の特定』も追加されてると見て間違いないかな。……そう言えば例のヤシオリの班長が殺されたときも、現場からは実行犯のエーテル値が一切検知されなかったという。いずれにせよ強敵だ。その上あんな防御手段を持ってるとなれば、私に勝ち目は無いな。)

レンジが完全にこちらを見失ったと判断した瞬間、ロード3は巨大な本棚の間に転がり込んだ。直後にタクティカルナイフを抜き取りながら、最大出力でVERITASを起動する。千切れかけた耳から絶えず流れる血液が鬱陶しい。

これは賭けだ。本当にVERITASの逆探知を行えるのなら、レンジはすぐにこちらへ飛んでくるだろう。的確な反撃を行うためにも、あえて逃げ道の少ない場所に移動した。当然敵の攻撃方向も限定される筈だ。いつでも動ける。戦える。

「……やれるだけやっとこう。」

独り言のように呟いた瞬間、視界が揺らいだ。直後の激痛。手足の感覚が霞み、いつの間にか傾いた世界にぼんやりと違和感を抱きながら、倒れた。とても寒い。漠然とした不安が全身を襲っていた。真っ暗なはずなのに、目の前が赤く染まっていく。

やられた。

どこから攻撃されたんだろう。

本棚の上からやられたのかな。

多分そうなんだろうな。本当に巧いな。何もかもが研鑽されている。即席の作戦の粗を的確に突いてきた。完璧に負けた。

本当に強い人だった。

それでも私は負けていない。恐らく確実に再起不能となるが、この数瞬で得た情報はあまりにも大きい。確かに私はこの作戦に貢献できたんだ。傷の一つもつけることはできなかったが、十分戦えたのも事実だ。

さっきの変則的で完璧な一撃すら、私にとっては一つの勲章みたいなものだ。敵の一挙一動が自分の生きる意味を為してくれる。後悔はしてるが満足もしていた。今はただ

駄目だ、頭が回らない。

ああ、何となく

何となく解る。

これが

“死”か。

「──死んだ。ナイフとジャケットは回収する。」

『……強かったね、この人。』

ネイルハンマーにこべり付いた血を雑に拭き取りながら、レンジは顔を押さえるようにバイザーを弄った。この男を追っている途中で何故か電源が落ちてしまったらしい。今やただのゴーグルと大差ないモノと化してしまっていた。

レンジはこのガラクタを、もはや必要ない代物だと判断し、背後に投げ捨てながら正面玄関へと歩み出した。懐中電灯も収納する。ネイルハンマーは最後まで握ったままだ。

(ああ、クソ……死んだのか……マジで死んだのか……あの人が──)

ロード1は見ていた。本棚を飛び越え、体を逆さまにしながらロード3のこめかみを打ち抜いたレンジを。脳漿を撒き散らしながら仲間が死ぬ瞬間を。

同時に彼は、ここまで班員の身に起きた全てを知っていた。班員の思考を手に取るように理解していた。何が起きているのかを一番最初に悟ったから、瞬時にロード2のバイザーを強制停止させることもできた。おかげで自分の存在は知られていないらしい。

敵の能力は、ほぼ完璧な防御機能とVERITASの無効化、逆探知だ。ロード3はこの能力の実証と確認のために自らの命を賭し、敗れた。同時に最期まで評価班エージェントとしての職務を貫いた。

今度は自分の番だ。この犠牲を無駄にしてはいけない。彼らの死が意味を為す未来のために、戦わねばならない。

バイタルサインの表示を全停止。もはや癖になりつつあるメンタルコントロールのための深呼吸を終え、通信機に手を添えた。

「9822-1より6311-1。映像ファイルを三つほど転送します。視聴可能な時間は無いだろうけど、後々参考にして貰えると助かります。」

『6311-1より9822-1。そちらの状況を飲み込めていない。詳細を──』

「幸運を。それぞれの務めを果たし、必ず生還してください。僕は今から一矢報いてきます。」

『ちょっと待て、何が』

──通信を切り、バイザーを捨てながら立ち上がる。班長仕様の、ほかの班員のモノよりひときわ大きい不可視の外套マントをたなびかせ、音を殺して走り出した。

「……許さねえ。」

不意に漏らしたその声に、自らの殺意に、ロード1は少しだけ笑った。

「“5時25分1秒。”」

『……取りこぼしかな。』

「2、3発は確実に銃撃されるだろうな。援護は頼んだ。」

『了解。』

VERITASの起動を察知したレンジは、忍ぶ素振りすら見せずに発信源へと進んだ。テーブルの影に少なくとも一人いる。椅子ごと押し潰してから殴り殺す。

ネイルハンマーを構えながら机を蹴り飛ばし、発信源を大ざっぱに攻撃した。悲鳴は聞こえない。そもそも手応えがない。何か妙だ。先程突然停止したバイザーと言い、明らかに何かの罠を踏んでいる気がする。誰かが、別の場所から俺のことを見ている。

刹那、レンジの体は足下から崩れ落ちた。

「──こんな簡単な罠に引っかかってくれるとは、実にありがたい。……足止めのついでだ、仇の一つくらいは討たせてもらおうか。ハンマー男。」

つかず離れず、悠々とレンジの周りを旋回するロード1は、黒い触腕の防御体制が整わないうちに、4発の弾丸をレンジ本体に叩き込むことに成功した。敵は明らかに弱っている。

遠隔操作で起動させたVERITASにまんまと食らいついた愚か者を、ここで殺す。殺さないにしても排撃班が到着するまでには確実に弱体化させてやる。

「……どこだ──」

頭部からダラダラと流血しているレンジは、いつの間にか例の青いスプレーを取り出していた。塗料の射程圏外であるとは言えど、“不可視”というこちらのアドバンテージを崩す脅威であることに変わりはない。「やらせねえよ」と呟きながら、缶を握っている左手の甲ごとスプレーを撃ち抜いた。勢い良く撒き散らされた塗料がレンジの顔を、床の一面を、まだらに、青く染めあげる。

『──レンジ! 止血をしないと……』

「防御に集中しろラムダ! 方向は違うが同じ距離から狙撃されている!」

『出血が酷い! このままだと死んじゃうよ!』

──“ラムダ”? レンジは例の相方と話しているのか? だとすればあの黒い何かは、アーティファクトの類などではなく、もう一人の評価対象だとでも言うのか?

(──今更驚く必要はないか。元々コイツらは人間じゃないもんな。)

ロード1は戸惑う触腕の住処、大型背嚢の紐をレンジの腰ごと正確に狙撃し、これを分離させた。既に床一面が血に染まっている。スプレーの臭いと血の臭い、赤と青が混ざり合い、それらすべてが言葉では形容しがたい空間を描いていた。

ついでにやれることはやっておこう。ロード1は素早く拳銃を収納し、間を置かずにテーザーガンを抜き取った。発射口の先に転がっているのは、恐らく“ラムダ”であろう不定形の異形。

(──気になっていたんだ、あの光沢。あれは金属光沢に似ている、というかモロに金属の輝きだった。効くかどうかは解らないが、少なくとも人体よりは通電効率も高いだろ。)

細長いワイヤーが二本、レンジに這い寄る黒いスライムめがけて、素早く射出される。端子が直撃した瞬間、スライムは硬直した。完璧に動きが止まっている。

「レン……ジ……動…………け……」

効いた。ラムダを封じるための有効手段は割り出せた。テーザーガンのトリガーをロックしたまま拳銃に持ち替え、完全に無防備となったレンジを更に銃撃する。が、2発目にして弾が切れてしまった。舌打ちしながら拳銃を投げ捨て、ナイフを抜き、素早く距離を詰める。

あくまで義務的な、しかし殺意に駆り立てられた、獣のような一撃が放たれようとしていたその瞬間、背嚢から一本の、巨大な水筒が転がり落ちた。蓋が高速で解放され、内部から黒く細長いスライムが飛来する。

顔面を直撃した、ピッキング用に保管されていたラムダの肉片は、ロード1の脳髄を確実に揺らしていた。

視界の片隅で血塗れの男が立ち上がり、ネイルハンマーを振りかざしている。

少しだけ欠け始めた月が美しかった。

開きかけの正面玄関のドアを更に開き、透過モードを解除した状態の、灰色のマントを纏ったロード1は、ゆっくりと図書館の暗闇から姿を現した。何となく見上げた先に待ちかまえていた月が、自分の、ボロボロの手のひらを照らしていた。

本当なら自分のすぐ横にいた者たちのことを、少しだけ思い出す。

外斜視がやたら似合う魔法使いだった。

死ぬ気配が微塵もない先輩だった。

大切な仲間だった。

腹部からボトボトと零れ落ちる血液が、自分の人生を、今まで失ってきたすべてを、手にすることができたすべてを肯定してくれている、そんな気がした。

潮時なら仕方ない。それにしても、最後に見る景色が中途半端に欠けた月というのは、ほんの少しだけ寂しかった。

「……綺麗だ。……見えてますか? この月。…………あぁ、そうだ。カメラ置いて来ちゃったんだっけ──」

悲しくなるくらい優しい、穏やかな月光に包まれながら、背中に二本のナイフを突き立てられた戦士は、ゆっくりとその場に崩れ落ちた。

数秒後、別の影が二つ、図書館の中からするりと姿を現す。

ラムダの肉片による応急手当を済ませたレンジは、変装ミームフィールド展開済みのラムダの手に牽かれながら、野毛坂の暗い道を少しずつ降りていた。パーカーは穴だらけになってしまったため、現在は代替品としてロード3がグレー・スーツの下に羽織っていた黒いジャケットを着ている。ギリギリ私服に見えなくもない上にやたらと丈夫な作りなので、当分はこれをメインで着ていくつもりだという。

「──それにしても、何でこっちの位置が割れたんだろう。」

「シエスタ側の通報だな。俺たちが評価班を全滅させることが折り込み済みなのであれば、かなりの策士だ。」

「本気で殺しにかかってきてるね。モタモタしていられないな。一回中華街に戻るべきなんだけど──」

「評価班が出動しているってことはそれなりの数の排撃班も潜伏してるって事だな。」

「だね。逃走ルートは割り出しといたから、戦闘は極力避ける形で進もう。」

[加筆]

「レンジ! 既に焚書者が潜んで──」

瞬間、レンジの背中に一つの巨大な金属塊が飛来する。

──現地の高校の制服とパーカーを象ったブラック・スーツを雑に着崩しているマガタは、うっすらと煙を吐き出すバイオリンケースを携えながら街灯の直下に仁王立ちした。着弾時に変形したのか、レンジの背中に直撃したグレネード弾は十時型に展開されている。当のレンジは衝撃のあまりその場に伸びきっている。

「──“レンジ”だな。」

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