魔鎧少女: 1話

中学を卒業してから改めて知った。日曜朝でお馴染みの女児向けアクションアニメ“マジキュア”シリーズの主人公たちは、その内約9割が中学2年生だったらしい。

まぁ妥当な年齢ではあると思う。主な視聴者層が憧れるには、小学生は余りにも近すぎる存在であり、逆に高校生は遠すぎるのだ。週刊少年誌の未成年主人公が17歳だったり16歳だったりすると一番シックリ来るアレに似てる。

──ユーザー登録開始──
──初期エーテルを検出中──

校舎裏の地べたに投げ出された少女の脚が、夕景の色彩に染まる。高飛車で意識だけは高い吹奏楽部の耳触りなハーモニーが、キレのない残響を残して消えていく。バスケ部の産んだけたたましい振動が耳に焼き付く。

そういえば最近の少年誌は高1主人公が主流だ。2010年代から一気に増えてきた気がする。能力者を養成する学園なんかに入学したばかりの主人公が、ざっくり1年間かけて物語の主題に答えを見出すフォーマット。

アタシは嫌いじゃない。寧ろ好きな部類ですらある。
戦う架空の高校生ほど健康に良い概念は少ないものだ。

──術式適合率98%──
──素体再構築プロセスを実行──

“女子高生は人類最強のステータス”
漫画漬け生活の起爆剤となった母の言葉である。

ふざけんな。今のこの状態が最強だってんなら、卒業後にどれだけ惨めな思いをしなければならないというのだ。

勘違いインスタライバーになりきりチャットジャンキーに大海を知らない井の中の自称絵描き。ファッションとファックの事しか話せない裏垢クソ女。音ゲー界隈の姫。学力不足に耐えかねて不登校化した元イジメの主犯。顔以外全部クソなバレー部のクズ。静かに他人を見下すことだけが生き甲斐だった、ガチの進学校に進学済みの幼馴染み。タチの悪い部長に毎日イビられては半笑いで耐えるだけのアタシ。
消えた奴消えてない奴これから消える奴、そしてアタシ。全部含めて女子高生を形容するなら『カス』の二文字が一番似合う。少なくともこの街の女子高生は全員カスだ。テメェの年齢にあやかって有頂天にイキるのが精一杯な、或いはイキることすら諦めてしまった、金銭的にも時間的にも大した余裕に恵まれない、マジキュアより歳の行ったカスだ。

──素体再構築完了──
──奇跡鱗片の刻印完了──

──システムオールグリーン──
──変衣鍵の完全顕現を確認──

『──全プログラムが正常に作動したぽょ!ヒバナ!君はたった今から魔法少女になったぽょ!』

黄色くて小さくてモチモチした“何か”が、トンボのような羽をパタパタと上下させて、人語を話している。アタシの目の前で。もう2分くらい前から。

尻餅をついたせいでスカートが汚れていた。壁に支えられながらゆっくり立ち上がり、同じく空中に浮かんでいたステッキを恐る恐る手に取る。見た目はプラ製だが、感触は金属に近い。玩具っぽい外見には見合わない重さがあった。

「……魔法少女…に?なっちゃったんですか?アタシ」
『慌てる気持ちは解るけど、まずは変身してみるのが一番ぽょ!変身したら色々わかるぽょ!!』

わけが解らない。夢じゃないことだけが確かなので尚更わけが解らない。
が、コイツの言うとおり、あながち変身したら解るもんなのかもしれない。

部長にぶん投げられて作った手の甲のあざを擦り、何となく仁王立ちして、何となく杖を構え、何となく目を閉じ、何となく開眼する。

何となく呟いた。

「──マジキュア、プリズムウェーブ」

何となく全身が発光し始めた。

ジャージが消え去り、フリル付きのスカートが腰から生え、浅いハイヒールと白いニーハイがいつの間にか出現し、短く切りそろえた髪の毛が大ボリュームの黄色いツインテールにすり替わる。ヘソ出し肩出しのカワイイに変身してしまった。こころなしか体型も若干変わっているように思える。

黄色くて小さくてモチモチした何かが、やたらふわふわした笑顔で拍手を送ってきていることだけが辛うじて理解できる。いや訂正。正直な話マジで理解が追いつかない。

アタシ、一ノ瀬ヒバナは、今日から魔法少女として生きていくことになるらしい。
全然関係ないけど明日は17歳の誕生日である。


──翌日

「てなわけで魔法少女になっちゃった?みたいなんだけど。安濃津ってこの……黄色くて小さくてモチモチしてるやつって、見えてなかったりする?」
「バッチシ見えてる。つか変身ってのは……」
「こんな感じに発光して……からの…こう」
「うっっっわすっげすっげすっげ!!!は!?マジで!?」
「マジで」

六畳一間の畳部屋に胡座をかきながら変身する。三編みメガネで腐れ縁のダチが、今まで見た中でも一番デカい大口を開けて固まった。知り合いが魔法少女化して固まらない奴なんかいないとは思うが。

彼女の名は安濃津。広く深いミリヲタでそれなりにアニヲタで、プロ顔負けのアーチェリー選手。そして現状唯一の高校の友達である。

「一応な。事情知ってくれる奴はいてほしいからな」
「俺なんかでよけりゃ……つか、マジか……解った。秘密にしとくべ勿論」
「飲み込み早くて助かるよ」
「まだ嚙み切れてすらいないけどな」

「安濃津くらいしかいないからさ。こういうの共有できる奴」
「それはそれで心配なんだが……まぁいいや。なんか特殊能力的なものとかあるわけ?」
「いや解んない。“ヨウセイ”さんに聞けば解るかもだけど」
『“みらくるすきる”のことぽょね!』
「あぁコイツ喋るんだ」

[加筆]

「よお、一ノ瀬」
「……部長」

横にも縦にもデカく、ついでに奥行きもある体型。野太い声。そんじょそこらの女の首なら片手でへし折れそうな風格。まさしく部長であった。校内でコイツの顔見ると本当に早く下校したくなるから[加筆]

[加筆]

「おめえアレか。まだ一人も殺してねえ感じか」
「?…何の話っすか」
「魔法少女だろお前」
「は?」

待て待て待て待て待て、何でコイツそれを知っている?
つーか殺すって何だ?「まだ一人も」?

「先輩の質問だろうが。答えろよ」
「……ちょっとよくわかんないんすけど」
「あ?」
「いやマジで…」

「“ヨウセイ”、アイツの能力開示しろ」
「まだ無理だお!無条件開示はあと2人殺さないと解放されない機能だお!」
「クソが」

.


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