VOCALIST: Part1

「──死ねやァッ!」

 ──唾液を乗せた威勢の良い怒号と不可視処理が施された金属バットを受け流し、勢いに身を任せ腹部に右肘を刺す。頭上で吐かれる前に左フックで顎を捕らえ、向かって右側の方向へ首をねじ曲げた。案の定黄色いゲロが飛び散る。ハゲはヨタつきながら距離をとり、腰部からオートマチック拳銃を取り出しオレの腹部へ狙いを定めた。ノールックで先ほどの金属バットを後方に蹴り飛ばし周囲の安全を確保。恐らくあの銃もアーティファクトである。油断はできない。俺もまたサクラニューナンブを構え、奴の大腿部に照準を定める。

「武器を捨てて投降しろ。」

「かかって来いやァッ!ドテっ腹に風穴空けてやらァッ!」

「……あんま喋りたくねェからこれを最終警告とする。武器を捨てて投降しなさい。当警告の無視が確認された場合、即時の発砲による制圧──」

「ガタガタうっせェんだよテメェこの野郎ォッ!殺すッ!ぶっ殺すッ!ぶっ殺したるわァッ!」

 頭が悪いのか、はたまた緊迫した状況が悪いのか、いずれにせよこのハゲはあくまで俺との戦いを続ける気らしい。仕方なく自分の水筒で喉を潤し通信機に手をかける。

「デルタ4からアルファ1、即時攻撃能力を有する対象の即時無力化のため特異能力を使用する。感染した近隣住民の確保を要請する。」

『アルファ1了解。好きなだけ叫べ。』

 通信を切断し、両耳を塞ぎながら大きく息を吸い込む。拳銃を握りガタガタ震えていたハゲは、精一杯の雄叫びを上げながら両腕を伸ばした。恐らくあと一秒もしないうちに発砲するだろう。させるものか。腹の底から喉に馴染んだフレーズをぶちかます。

「検挙ォーーーーーーーーーーーッッッ!!!」

 再度目を見開いた時点で、ハゲは白眼を剥きながらぶっ倒れていた。鎮圧ミームを纏ったシャウトを諸に食らったせいで頭がクラクラする。必死に立ち上がり対象へ接近。試しに腹を蹴り上げ、完璧に無力化できているかを確認する。反応はない。

「デルタ4よりアルファ1、対象の完全制圧を完了。限定的な不可視化能力を有する金属バット型アーティファクトと不明な拳銃の使用を確認。有村であるかと。」

『アルファ1了解。対象を即時拘束し待機せよ。回収人員としてデルタ7を送る。』

 路地の中から空を見上げ通信を終了した。


 警視庁公安部特事課 行動班 特異能力捜査員の

「了解。デルタ5からの情報次第でかなり戦況が左右され──」

『デルタ5より各位。攻撃目標地点の内部構造並びに敵勢力の人員配置を確認。端末へ思考入力データを配布する。“F”からのタレコミが正しければ、人の形をしたサークやらケモノやらのホームパーティーになっているかと。』

『アルファ1了解。フタフタサンマルよりデルタ4を主軸としたコード3を実行。追って手順を各端末に配布する。チャンネルは2に固定せよ。通信終了。』

 通信設定を更新し、雪の中で次の命令を待つ。白い吐息を纏った槇村が闇の中から現れ、先程のハゲを引きずっていった。

 時刻は22時29分。デルタ班の7名が倉庫の入り口、俺の後ろに立ち、10秒後の突入に備える。ギリギリのど飴を舐めきった。今日も無事に仕事を終えよう。『突入』の声がヘッドセットに響き、目の前のドアが後ろから伸びてきたエントリーツールで吹き飛ばされる。薄暗い通路とその先に位置する明るい一画を視界に入れた瞬間から、俺の、特異能力捜査員のお仕事が始まる。

「全員その場から動くなァーーーーーーッッッ!!!」

 聴覚型の強力なパニック性ミームを纏った俺のシャウトが木霊し、直後に何かがぶっ倒れる音とこの世のモノとは思えない叫び声が連続して響き渡る。直ちに他の班員がミーム制圧シールドを携え突入。10秒もしないうちに殴打音と発砲音が鳴り響いた。俺もまた彼らに追随し、クソを漏らしながら必死に立ち上がるクソどもを片っ端から警棒で殴り倒す。

ERROR

The v vetman's portal does not exist.


エラー: v vetmanのportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:6103090 ( 10 Feb 2020 09:44 )
layoutsupporter.png
Unless otherwise stated, the content of this page is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License