猫舞姉弟の夏祭り

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見てもらいたいところ
  • この内容で最後まで読めるか?
  • 過去の描写は必要か?
  • 表現等は大丈夫か?

財団夏祭りハブ:http://scp-jp.wikidot.com/foundation-summer-festival
猫舞研究員の人事ファイル:http://scp-jp.wikidot.com/author:voila#toc1
エージェント・上波の人事ファイル:http://scp-jp.wikidot.com/author:ueh-s

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— 夏祭りが今年もやって来る。




「夏祭り、もうそんな時期か。姉さんは参加するの?」

配られたチラシを見ながら姉さん — 猫舞 楓研究員に問いかける。

「ん、勿論参加するに決まってるでしょ!去年も一昨年も仕事押しつけられて行けなかったんだから。休暇も取れたんだし楽しまなきゃ!あ、ミスった。」
「やる気があってなにより。はっちゃけすぎて怪我しないでね、服を洗濯するのは僕なんだから。このサイトにも洗濯部門あればいいのに。」

姉さんは相変わらずテレビ画面にへばりついている。今日は誰とボイスチャットしているのだろう。上波さん辺りかな。泣かせないでくれよ、後々面倒なことになるから……。
でも愚痴をこぼしながらも結局楽しんでいる、太鼓を叩くだけのゲームの何が面白いかは僕には理解できない。でも姉さんがそれでよければ僕は一向に構わない。たった一人の肉親なのだから。

でももう夜なのだからコントローラーでプレイしてくれ……。




7月1日、いよいよ夏祭り開催だ。
普段厳かな雰囲気を醸し出しているサイトは良い意味でどんちゃん騒ぎ。例年前原博士が酒の勢いで暴れることは今日までに沢山の方から聞かされてきた。巻き込まれないように祈ろう……。もし巻き込まれてしまった時は、姉さんだけは全力で守る。

それにしても色々な屋台がある。射的、焼きトウモロコシ、綿菓子、金魚すくい、フィッシュアンドチップス、お見合い予約所……、お見合い予約所!?珍妙な屋台もあるもんだな……。早く回りたくてうずうずしているが、姉さんが来ない。遅いな、約束の時刻を優に三十分は過ぎてる。何かあったのか、着替えに手間取っているだけか。そういえばコスプレについて何も聞いてなかったっけ。姉さんはイベントがあると何らかのキャラクターのコスプレをいつもする。男性職員から好評とのことで。

そう思っていた矢先、姉さんがこっちに向かって手を振りながら走ってきた。浴衣を着ているみたいだが、サンダルを履いているので危なっかしい。

「お待たせ!ごめんねー何着ていくか迷っちゃって。」
「浴衣なんだ、珍しいね。姉さんのことだからアニメキャラのコスプレしてくるのかと思ったよ。」
「ふふふ……実はこれ、『阿良々木月火』のコスプレなのさ!ハハハ残念だったな!」

高笑いをする姉さんは置いておいて、後ろに僕と背丈が同じ位の方が恥ずかしそうに立っていた。この方は上波さん……だったかな。話は姉さんからよく聞くけど実際にお目にかかったのは三度目くらいだ。以前彼の人事ファイルを読んで色々大変な方だなぁと思ったことがあったような。姉さんと仲良くしてるのかな?

「上波さん、なんで姉さんと一緒に?」
「えぇ、ダメなんですか……?」
「いや……ダメってわけじゃないんだけど、ちょっと気になったから……。」

早く説明しろ!と姉さんにアイコンタクトを送ってみる。察してくれたかは正直わからないけど理由を話してくれた。

「……というわけさ、わかったかね傑くん?」

姉さんの説明が下手過ぎるので要約すると、上波さんは少し歳が上の女性を好むらしく姉さんを「お姉ちゃん」のように見ていて、偶然会ったから一緒に行動していると。僕としてはなんとも複雑だな……。同い年だし。

「さあて、そろそろ屋台見に行こっか。」

姉さんの声が上波さんについて思考を巡らせていた僕を現実に引き戻した。折角の夏祭りなんだ、羽目外して騒いじゃおう。
ふと振り向くと、姉さんと上波さんがいない。辺りを見回してみる。すると会場の端の方で何かのアトラクションに入ろうとしていた。

「ねえここ入ろうよ!『モノの一生』、なんだか面白そうじゃない?そこの受付の人、ここってどんなことしてるの?」
「こちらでは『モノにも命がある』ということをコンセプトに、身の回りのモノの誕生から廃棄までの過程をシアター形式で紹介していまーす。なんでも御先管理官が提案したようで。」
「廃棄……?かわいそうだよ……あうぅ……。」

上波さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。不味い、早く止めないと。屋台見に行くんじゃなかったのかい。

「でもいっか、頑張れ。」

面倒を見るのは大変だと思いつつ、内心姉さんを疑う。僕は姉さんにとって何なのだろうか。
今日ばかりは別行動でも、いいよね。


姉さんのことを考えていたせいか、地面の亀裂に気を取られたせいか、注意散漫になってしまい巨大な体躯の人にぶつかってしまった。
「あっ、すみません。」
「いや、こっちもよそ見してたからお互い様……。あれ君もしかして、部隊長の。」
ぶつかった大男の顔を見る。そして気が付いてしまった。

この人は……。

「ひっ、人違いです!失礼します!」

逃げ出した僕に、大男は呆気にとられ首を傾げていた。





三年前、僕と姉さんは男腕一つで姉弟を育ててきた父を亡くした。事故だった。あの日1人の研究員のミスで、今思えば中規模な収容違反が発生した。生物系Euclidオブジェクトが収容を破ったのだ。サイトは一時閉鎖され、姉弟は部屋に篭って震えていた。

けたたましい警報が鳴り響き、まだ財団の教育プログラムを受けていた僕でも状況が理解できた。いい歳して姉さんの胸の中で泣いていた。怖かった。姉さんは僕を優しく包み込み、そっと頭を撫でていた。

ドアの向こうから足音が聞こえてくる、少しすると銃声に変わった。機動部隊が来てくれた……!そう安心していると、機動部隊員であるはずの父が扉を思い切り開け部屋に飛び込んできた。呆気に取られていた僕と姉さんに叫んだ。

『伏せろ!』

その声の直後、大きな体躯の右肩、腹部、左脚から血が噴き出した。興奮したオブジェクトが父を攻撃したのだ。断末魔が部屋に響く。すると何故かオブジェクトの動きが鈍くなっていく。

『全員、撃て!俺に構うな!』

父の命令に他の機動部隊員は容赦無く弾を撃った。銃弾は父の身体も傷付ける。

『楓、俊。お前らは絶対に死なせない。母さんの所に逝くにはまだ早い。』

姉さんも僕も泣いた。泣きじゃくった。いやだ、死なないでお父さん。お父さんが死んじゃったら僕は、僕はどうすれば?

『心配するな、家族愛があればなんだってできるんだ。お……お前なら、大じょ……うぶ。』

『忘れるな、よ。』

それが父の最期の言葉だった。
例のオブジェクトは無事再収容され、サイトには平穏が戻った。それ以来、僕は姉さんを養うため日々家事を学んでいる。

忘れてはいけない、しかし忘れたい記憶が、脳内で鮮明にフラッシュバックする。





会場内に地響きが鳴り響き、僕は現実に引き戻された。にわかには信じがたいことが、目の前で起こっていた。
やぐらが、動いている。何が起こったのか分からなかった。超常現象だろうか、こんなタイミングで発生するなんて。要注意団体の襲撃も考えられる。
流石世界を正常に保っている組織の職員と言うべきか、誰もが落ち着いて避難、対応している。僕も早く逃げよう。

すると、櫓の下から何か — 不安なほど紅く光る二つの点がこちらを覗いていた。この点に見覚えがある。何処だ、僕はこの点を何処で見たんだ。

「思い出した、この目は…….。父さんを殺したオブジェクトと同じ目だ。」

例のオブジェクトは三年前のインシデント後に再収容されたが、去年の今頃に別サイトに移送されたはず。こいつがそれと関係しているのかどうかはわからない。これは幻覚なのか?いや違う、状況からしてこれが現実なのは明白だ。

オブジェクトは立ち上がり、その爬虫類のような鱗が月夜に照らされた。つい美しいと思ってしまう。

そうだ、姉さんは。こいつを見たら父さんのことを思い出してしまう。三日三晩泣き、その後一年間カウンセリングを受けていたのだ。心配だ、もしトラウマが再発したら。

早く行かなきゃ。




立ち上がるとすぐ、私は蠢くものを見た。
何なの下の黒い塊は。櫓の付喪神……?
もしかしてあの目、血のような紅い眼は…….パパを殺した化け物と同じだ。そうに違いない。どうしてここにいるの。なんで。
返して、返してよ。かえしてかえしてかえしてかえして。

私は屋台の残骸から鋭利なナイフを持ち出し、化け物に向かって走った。職員らしからぬ行為かもしれない。でも私は、奴が許せなかった。

奴まであと10メートル、何かに横に押し倒された。傑だった。私を止めに来たのね。

「止めて姉さん、僕らでは無理だ!早く逃げよう!」
「邪魔しないで傑!復讐しないと…….パパを殺したこいつに復讐しないといけないの!」

駄目だよ、復讐して何になるのさ。父さんは帰ってこないんだ。やめて。正論が私の心を抉る。肉体的にも精神的にも疲労が現れているようだ。

元々無い体力も尽きかけた頃、機動部隊がこっちに向かって来た。
「お前ら何をやっている!早く避難しろ!」

嫌、離して。アイツを殺らないと。私にはその義務がある。

私は引き摺られながら広場から離されようとする。四肢を使い必死に抵抗した。その時だった。

奴が機動部隊の攻撃に抵抗し、その衝撃で傑の後頭部に板が直撃する。ゆっくりと膝から崩れ落ちていた。

ドロっとした赤黒い液体が流れる。




「……る、……ぐる、目を開けてよ傑!」

自分の名前を呼ばれたような気がして、僕は目を覚ました。どうやら気を失っていたようだ。ここはどこなんだ。白いカーテンに白いベッド、棚には薬瓶。朧気な頭でもすぐに救護室だとわかった。

「そうだ、僕は……気絶していたんだ。そうだ、姉さん!姉さんはどこにい」
「傑!!!」
「んぐぅ!?」

怪我人に思い切り抱きつくだって???ちょっと大胆過ぎるよ、後ろに上波さんいるし……。

「よかった……無事でよかった……。ごめんね、お姉ちゃんのせいで怪我をしたの、謝っても謝りきれない……。傑がいないと私、何も出来ないから……。さっきは我を忘れてたの、時間が経って冷静になれたわ。」
「何も悪くないよ、姉さんが無事なら僕はそれでいいんだ。」

僕の胸で泣いている姉さんの頭をよしよしと撫で、優しいハグをする。こんな姉さんを見るのは初めてかもしれない。
「うぐぅ……感動します……。楓さんは、ひ弱な身体で傑さんをここまで運ぼうと、してたんです、あぁっ……。これが『家族愛』なんですね、うっ、うぁぅう……。」

『家族愛』、そうか。姉さんはたった一人の肉親、家族なんだよね。

別行動してるとき、もしかしたら寂しかったのかも。勝手に思い違いをして疑ってごめん。落ち着いたら姉さん達と一緒に屋台を回ろう。

大好きだよ。


tale-jp エージェント・上波 財団夏祭り 財団職員id_b



ページ情報

執筆者: Voila
文字数: 5331
リビジョン数: 39
批評コメント: 4

最終更新: 23 Dec 2020 13:54
最終コメント: 28 Nov 2020 05:32 by Voila

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