このページの批評は終了しました。
生命の「死」は美しい。物体の「死」もまた美しい。
ちょうど今から十年前、一人娘を幼くして亡くした。難病で完治する見込みは殆ど無かった。完治は出来ないが、手術をすれば重体化は防げると医者は言う。手術には四千万が必要だった。平凡な一サラリーマンにはとても用意できる額ではなかった。娘を助けるためなら四千万の借金なぞ厭わない。手術は2ヶ月後、それが終わればまた娘と遊べる。
仕事中に担当医から連絡があった、娘の容態が急激に悪化したと。部長に頼み込み、早退することができた。会社から病院まで15kmは離れている。駅でタクシーを拾い、急いで駆けつけた。
そこには妻と担当医、そして眠っている娘がいた。娘の真横で跪き、色が薄くなってしまった小さな手を握った。
心電図モニターが直線を映した。
「ご臨終です。」
娘は私の手の中でゆっくりと息を引き取った。その時、今までで最も美しい光景だと感じた。
その瞬間を遺したい、そう思った。
私は会社を辞め、テレビ局を設立しようとした。他のどこでもやっていない「美しい死」を未来永劫遺すため。金を借り、古い知人を尋ね、やっとのことで設立資金と社員が用意できた。大学で受けた講義がここで役に立つとは当時は想像もつかなかっただろう。
しかし「死」など簡単に撮れるはずがない。どうしようかと思った矢先、ある光景がフラッシュバックした。中学生の頃の夏、山に行ったこと。そしてそこで"覗くと色々な場所が見れるビー玉"を見つけたこと。私は特急、鈍行を乗り継いで実家に戻り、蔵から当時使っていた机を探した。引き出しにはあの頃を同じ輝きを放つビー玉が1つぽつんと置いてあった。
オカルト的なことに詳しい知人にそのビー玉を持って行くと、ひどく驚いて「これを解析させてくれないか、似たような物が作れるかもしれない」と言われた。私は「死」を撮るのに必要だと感じたのでそれを快諾した。
一ヶ月後、例の知人に呼び出され彼の持つ倉庫に赴いた。そこにはテレビカメラ、その他番組撮影に使う機材が一式、大量に用意されていた。「これでお前の夢が叶う。さあ、異常を使いこなすんだ。」異常な物品、アノマリーを手にした私は暫くぼうっとしていた。この世の法則に従っていない物が生み出されている。しかし罪悪感は無かった。何故なら—
異常もこの世に誕生したもの。その生涯を全うさせるべきなのだから。
—ECO出版社 白騒放送創設者が語る 成功の為の15の秘訣 著:白又 莊輔 より引用
こんなご都合主義の内容で本当に大丈夫なんですか?
大丈夫だ、こんなハウツー本を買う奴なんて目の前の情報を鵜呑みにする能なしに決まってる。あとは契約しちまえばこっちのもんよ。
良い「画」、撮らせていただきますよ。
- portal:6085604 ( 08 Feb 2020 06:42 )

コメント投稿フォームへ
批評コメントTopへ