求めていた不死

このページの批評は終了しました。

rating: 0+x
blank.png

我々人類はいずれ来たるべき死に恐怖してきた。親しい者の死を悲しみ、涙を流した。しかし、これからは違う。
遂に永遠の生を手に入れることができたのだ。死神に打ち勝ったのだ。

私の所属している社会福祉法人四盤会は、不死の実現のため異常物品を作り続けていた。しかし中途半端な不死性しか得られず、多大な犠牲も伴った。時には内部抗争が勃発し、結社の存続が危うくなっていた。

残暑厳しい9月の中頃、私はいつものように新たな物品開発に勤しんでいた。奇跡論術による不死性の獲得の失敗により信用度が降下、資金繰りも厳しい状況下でメンバーは皆焦っていた。そのため研究班の人員は日々上からの重圧に耐えながら働いていた。私も睡眠障害になり、寝るのにも苦労する状態だった。そんな中試作品が完成、人間に対する治験が始まった。いつも心が痛む。死者の蘇生に憧れる時さえあった。

—結果として不死化に成功した、嫌になるほどあっさりと。異常に理論は通用しないが、こうも思った程になるとは。暫く立ちすくんでいたが、上に報告することを思い出し我に返った。重役達は大喜びで生産ラインの確立を急いだ。夢が叶った、これで悲しむ人々が減ると。私も歓喜の涙を流した。その日は皆で飲み屋をハシゴした。

記録のため今こうして書き綴っているが、見返してみると文章を書くのが苦手だなと痛感する。喜びを表現しているつもりなんだが伝わるのだろうか。

2020/09/18


追記
どうやら全世界の生物が不死と化したらしい。我々の実験の賜物では無かったが、これこそ求めていた世界だ。なんと美しいことだろう、道行く人々が活気に溢れているようだ。明日明後日に同僚と、いや結社全体で盛大なパーティーを開こう。重役達に提案しておくか。



我々が望んでた世界はこんなんじゃない。

悲しむ人、死を恐れる人を救いたいとその一心で活動してきた。だがそこには地獄しか無かった。

末期患者や重症を負った人は苦しんだまま生き、装置に繋がれ続けている。
死なずとも身体は老いる、朽ちていく身体を支えるため、機械に置換されて生きている。
街は地獄と化した。路地裏には蝿が集るホームレス、自殺が出来なくなった死んだ顔をした社畜、そしてそれを笑い者にする健康な若者。

死神が死んだ後、四盤会は解散、各々就職をしていった。私も研究職に就こうと就活したが、異常とは縁もゆかりも無い企業は思っていたよりも厳しかった。プロメテウスがあれば即座にそこに入ってたんだがな。狭いアパートで暮らしていたから家賃を払わなければいけなかった。バイトを幾つも掛け持ちし、合間の時間を縫って就活にも励んだ。
その生活を続けて1年が過ぎた頃、ようやく私を採用してくれる会社が見つかった。バイトを辞め、一生懸命働いた。上司に何を言われようが生きていく為に働いた。相変わらず生活はカツカツだったが、自分の時間がある事が幸せだった。ただその時間も残業でどんどん短くなっていき、ついには無くなってしまった。会社は不死身の我々社員を、不死性獲得以前は死ぬだろうという程に働かせた。四盤会に居た頃の実験用モルモットの扱いのようだ。死にたい、気付いたら毎日そう思うようになっていた。だが死ねない、死ぬことは許されないのだ。死神の消失により輪廻の輪は止まってしまったから。精神を病みながらもこいつを書いている。これを昔の私に送れる手段があればよかったのにな。

終末世界を求めていた我々は、実に愚かだったんだな。ちくしょう、持病の喘息が辛い。手も震えてきた。死神よ、何故お前は死んじまったんだ。


不死なんかクソ喰らえだ。

2023/07/24


死の終焉 jp tale



ページ情報

執筆者: Voila
文字数: 2563
リビジョン数: 22
批評コメント: 2

最終更新: 14 Mar 2021 00:40
最終コメント: 10 Mar 2021 15:15 by winston1984

    • _


    コメント投稿フォームへ

    Add a New Comment

    批評コメントTopへ

ERROR

The Voila's portal does not exist.


エラー: Voilaのportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:6085604 ( 08 Feb 2020 06:42 )
layoutsupporter.png
Unless otherwise stated, the content of this page is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License