灰生計画、昭和二十年
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計画名 灰生計画

立案年 昭和二十年

主導者 菅田中将

目的

 憎き鬼畜米英による本土爆撃は激しさを増す一方であり、誠に遺憾ながら皇国の敗戦は最早逃れられない運命であろう。松本総司令部からの伝達も先月から届いておらず、
我々大島司令部独断での

 皇国を豊かに、そして強くするべき立場である我々が、皇国に害を為すことなどあってはならない。元より決死に在る我々が外敵に囚われた際に自決を試みるのは当然だ。しかし、それが刀剣・銃・霊具・呪具などの非瞬発的な器物による試みならば、敵に防がれてしまうのもまた当然である。故に、体内に術を仕込み、死すべき時に死ぬことができるようにすることを目標とする。
 ただし、死を受け入れるのみでは皇国の資産を怠惰に浪費することに他ならない。己も又、皇国が持つ武装の一つであるという自覚を持ち、窮地に立たされたならば一矢報おうと最期まで国に尽くす心掛けを忘れてはならないだろう。

資産

 第三次白澤計画により朝鮮には降神巫と呼ばれる巫女の形態を取った妖術師が存在することが判明している。その一人である松澤一等兵1が自らに降ろす霊は志鬼と言う怨霊であり、甚だしい一念を抱く者が魂を発火させ炎の鬼神2と化したものだ。松澤一等兵が昭和六年に計画された白拍子計画で残した志鬼の情報は大きく本計画に貢献することだろう。白拍子計画により松澤一等兵は以前と同質の炎の術を使用できないため、特殊自治大隊に派遣要請は行わない。
 代替として志鬼に纏わる術を使用する局員及び降神巫の局員の派遣要請を慶州基地・平壌基地・咸興基地に対して行う。

 その他に必要な資産は以下の通り。

  • 将門の飛首に代表される日本に伝わる怨霊に纏わる文献資料
  • 白拍子計画や妲己計画など当局が今まで行ってきた人間を変生させる計画の情報
  • ホ式怨霊筒五〇丁
  • 有志被験者三〇名
  • 十分な専門知識を持った刻印術の使い手及び医学者、生物学者
  • 本計画に割り当てられる防火設備の整った研究室と研究費用

結果

 成功。主要な局員から優先して配備され、昭和二三年までに全局員に施術が完了する見込みである。死して尚護国の魂燃え尽きること無く、我らが怨敵を焦がし尽くすだろう。

富士総司令部、鼎将軍の机にて書す。


大淀将軍による手記、昭和二六年二月

 燎原計画が正しく成功していたのかどうか、それは定かでない。敗戦により燎原計画の成果物が全局員に行き渡ることはなかったが、施術を済ませていて戦死した局員のうち、燎原の術を発動したと思われる実例は数えるほどしかないためだ。

 父はかつて、施術の際に護国の心を忘れないようにと何度も念を押されたと仰っていた。老化で呆けてしまった父が持つ殖紋術式を技術班に解析して貰っている。

 先祖たちの計画が、実際は失敗していたことを祈る。そうでなければ、偉大なる先祖たちは祖国を守護する志を持っていなかったと烙印を押されてしまいかねない  私はそれを恐れている。

大淀将軍による手記、昭和二六年三月

 技術班の報告を待つのみでは居られない。燎原の術が起動したと思われる事例を洗い直すことにした。今のところ判っているのは、彼らがいずれも軍籍を持たなかったという点のみだ。しかし軍籍が無くとも術が起動しなかったと思われる例も当然確認されているため、この共通項が核心に関わるものかは不明だ。

 異常事例調査詳報カ-三〇八七によれば、終戦後間もない八月に香港で発生した不審火事件は燎原の術によるものの可能性が高いという。零号専隊により鎮火されたという記録がただの火事ではなかったことを示しているが、もしこれが本当ならば、燎原の術は非常に高い副次的破壊力を保持している。巧く使えば一人の損害で街を一つ焼き払うことも不可能ではないだろう。人的資源を無駄にしないためにも、この術式を是非とも現代においても採用したい。ただ、後燎原計画を実施するには不発弾の原因の究明が第一となるのは間違いない。

大淀将軍による手記、昭和二七年一〇月

 燎原の術は理論上完成しており不備は存在しないと技術班は報告した。術の効果はおおまかに二つに分けられる。一つが感情を集中化させる精神系のもの、そしてもう一つが人霊を怨霊化するものだ。人霊が怨霊と化すのは比較的ありふれた現象で、同様の結果を引き起こすような呪術も存在する。人霊ではなく動物霊という違いはあるが、狗神はこの代表例とも言えるだろう。彼らは死んだことに気づかないまま、呪いの力で敵を滅ぼす。ある意味で、彼らは生きたまま鬼に成るとも言えるかもしれない。

 靖国神社には戦死者の人霊を招集し鎮める大規模な霊術が敷かれていると私は父にかつて聞かされた。戦死した局員の中には靖国神社に合祀される誉を受けた者も多い。しかし、それが正しい処置なのかどうか、私は判別することができない。燎原の術は間違いなく発動していた。だが靖国は英霊が安寧に無いことを許さず、結果として彼らは突然魂が抜けそのまま死に至るという訳だ。燎原の術を考案した先祖が靖国神社を想定しないとは到底考えられない。最新の戦時情勢調査により靖国神社は旧陰陽寮の手を離れ晴明院が管理を引き継いだ際に、五行結社による干渉を受けた可能性が浮上している。私は燎原の術が機能しなかった理由がここにあると結論付けた。

 しかし、靖国神社を調査することは非常に難しいと予想される。終戦から現在に至るまで、靖国神社に財団は常に目を光らせているためだ。後燎原計画は一時凍結とせざるを得ないだろう。

水無月将軍による手記、平成二七年一月

 インサージェンシーに潜入・協力していた木梨将軍が燎原計画及び後燎原計画の資料を彼らに引き渡したことは我々にとって悪夢のような事態を引き起こした。大晦日に起こったそれは一般には靖国神社への放火事件として報じられたが、我々にはそれが財団のカバーストーリーだと察せられる。逆臣木梨とインサージェンシーが燎原の術を悪用し財団への攻撃に用いた、あるいは用いようとしたことが即座に裏付けられた。奴らは我々が何故財団や五行結社から身を隠し蜂起に備えているか知らないらしい。私に調査局将軍の後継としての立場が無かったら、怒りのあまり口汚く罵っているところだ。

 我々は迅速に行動を起こした。協力要請に対して負号部隊は条件付きで応じ、判官会代表は直接的協力を拒否したものの間接的支援を表明してくれた。負号が素直に協力するとは思えないが、連中が腹に一物を抱えることは承知の上だ。しかし、事ここに至っても判官会は動かないとは。負号と手を取り合うのが余程嫌らしいが、失望していないと言ったら嘘になる。それでも、我々には少しでも動員できる戦力が必要だ。

 我々はこれより、我々が把握する限りのカオス・インサージェンシーが持つ国内拠点への報復攻撃を開始する。財団及び五行結社に地理情報を密告したため、我々も諸共に攻撃を受けるかもしれない。現在の我々は彼らに比べ星火の如き矮小さだ。しかし、それでも我々は立ち止まらない。気勢は燎原が如くあり、下手人を燻り殺すまで燃え尽きることなし。我々は祖霊がために戦っている。奴らは我々の逆鱗に触れたのだ。


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