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庭に植えられたSCP-XXXX-JP。
アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Neutralized(暫定)
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPはサイト-81██前の庭園に植えることが許可されています。管理については通常のケシ科植物の育成プロセスに則って行なってください。
説明: SCP-XXXX-JPはレンガ製の植木鉢に植えられている赤いポピー(Papaver rhoeas)です。SCP-XXXX-JPは次のような異常性を持っています。
・SCP-XXXX-JP-1とのテレパシーでの意思疎通が可能。この異常性はSCP-XXXX-JPとSCP-XXXX-JP-1間の距離が遠い程効力が弱まる。1
・自身の半径10Km以内にある植物の生育に適した領域に非異常性の花を咲かせることが可能。
・水の供給が不要。
・光合成以外の不明な手段で栄養を摂取している。
[追記2027/02/██]新たな異常性が判明しました。詳細は事案XXXX-JP-aを参照してください。
[追記2027/03/██]現在、SCP-XXXX-JPの異常性は全て消失したとされています。
SCP-XXXX-JPはSCP-XXXX-JP-1(後述)の居住域近辺に生息している草花が不自然に増えているという噂が近隣住民の中で広まった事により財団の耳に入り回収に至りました。
SCP-XXXX-JP-1は██県███に住む収容当時28歳の日本人男性(本名"芹澤 祐太せりざわ ゆうた")です。SCP-XXXX-JP-1はSCP-XXXX-JPによる意思疎通の唯一の対象であり、SCP-XXXX-JP-1に従来の記憶処理やカバーストーリー流布等の記憶操作を行なってもSCP-XXXX-JP及びSCP-XXXX-JP-2に関する記憶に限り消失・改竄出来ないことが分かっています。この異常性がSCP-XXXX-JPに依るものなのかSCP-XXXX-JP-1本人の持つ異常性なのかは不明です。
SCP-XXXX-JP-2はSCP-XXXX-JP-1の配偶者(本名"芹澤 心菜せりざわ ここな")です。SCP-XXXX-JP-2は2023年3月16日に交通事故により死亡しています。SCP-XXXX-JP-2の遺体は事故後██県警の管轄している遺体安置室にて一定期間保管されていましたがその間に消失しています。以下はSCP-XXXX-JP-2の死因となった事件の要約です。
██県███町女子大生死体遺棄事件
2023年3月17日以降行方が途絶えていた芹澤心菜氏の遺体が堀井氏の自宅から約███km離れた██山にて発見された。死亡推定日は2023年3月16日であり、警察は死体遺棄事件として調査を進め事件発覚から10日後に過失運転致死傷罪及び死体遺棄の疑いで████容疑者を逮捕した。調べに対して容疑者は容疑を否認している。
SCP-XXXX-JP-2の死体消失によるパニックを防ぐ為以上の事件は日本全土に及ぶ大規模なカバーストーリー流布により隠蔽されています。これによりSCP-XXXX-JP-1と財団職員を除く全人類はSCP-XXXX-JP-2の死亡について認知していない状態になり、████容疑者は釈放されました。
文書XXXX-JP: 2026/██/██、██県のSCP-XXXX-JP-1の自宅を捜索したところ、2022年版と2023年版の████社のカレンダー手帳が1冊ずつ見つかりました。以下はその手帳に書かれていた内容の特徴を要約したものです。
・2022/10/12の欄に「初デート！」と書かれており、この日以前の欄には何も書かれていない。
・2022/10/17の欄から2023/03/13の欄にかけて「デート」という言葉が計54回書かれている。
・2023/02/20の欄に「結婚記念日」と書かれている。
・2023/03/15の欄に「初体験♡」と書かれており、この日以降の欄には何も書かれていない。
インタビュー記録XXXX-JP-1: 以下は2026/██/██、当時のSCP-XXXX-JP担当職員がSCP-XXXX-JP-1に対して対象の収容後に行った初のインタビュー記録です。
対象: SCP-XXXX-JP-1
インタビュアー: 滝本研究員
<インタビュー開始 10:35>
滝本研究員: こんにちは。今回貴方の担当になった者です。少しでも貴方の願望に沿えるような収容室に移動しましたが、気分は落ち着きましたか？
SCP-XXXX-JP-1: 落ち着いてると思うか？頼むから彼女に会わせてくれ。
滝本研究員: すいません、それは出来ないんです。こちらの事情というものもあるので。
SCP-XXXX-JP-1: (ため息をつく)
SCP-XXXX-JP-1: 心菜はずっと嘆いている。心菜が死んで、あの花に出会って、それからあの花を盗まれる2まで、一緒だったんだから。
滝本研究員: 願望を叶えられなくてすいません。出来る限りの事はしたいと思いますが。
SCP-XXXX-JP-1: (少しの沈黙の後)まぁあんたも努力はしてくれたんだろうけど。んで、何を聞きに来たの？
滝本研究員: はい。まずはあの花の存在を認識したきっかけを教えてください。
SCP-XXXX-JP-1: そうだな…。というのもある日突然聞こえてきたっていうだけの話なんだけど。そりゃあ最初声が聞こえてきた時はびっくりしたよ。死んだ心菜の声が聞こえてきたんだからな。僕はそれを聞いた時とにかく嬉しかった。それが異常だと分かっていても、ただただ嬉しかった。そして声のする方に向かっていくと、僕の花壇の花が増えてて、その中でも一番惹かれた花があの花だった。
滝本研究員: 分かりました。
SCP-XXXX-JP-1: ほんとに、最初は夢かと思った。もう聞こえないはずの声が聞こえたんだから。聞いた時は色々疑う前に泣いちゃったよ。
滝本研究員: では2つ目の質問に行きます。
SCP-XXXX-JP-1: あ、ああ。
滝本研究員: 貴方はどうやってここまで辿りついたのですか？
SCP-XXXX-JP-1: (少しの沈黙の後)彼女から助けを求められたから。心菜が掠れるような声で会いたいって言ってきた。そしたらこの場所を教えてくれた。その時何故か突然僕の頭の中にここまでの行き方が入ってきて…なんというか…ああ！説明しにくいけど！とりあえず僕は頭に入ってきた通りに移動し続けたらここに来た。そしたら何回も謎の注射3を打たれた後にこんな場所に入れられた。
滝本研究員: 大凡は分かりました。
SCP-XXXX-JP-1: (少しの沈黙の後)ちょっとここでこっちから質問してもいいか？あんたらなら知っているかもしれない。
滝本研究員: どうぞ。
SCP-XXXX-JP-1: (少しの沈黙の後)皆が、心菜が死んだ事件を覚えていないかったんだ。お義母かあさんでさえだ。僕がどれだけ心菜のことを聞いても何故か皆口を揃えて「行方不明だ」と答える。僕だけが覚えているんだ。彼女が死んだ事件も、████4のクソ野郎のことも、彼女の遺体を見たことも。実際にあったことのはずなのに。なんか心当たりは無いか？あんたらなら何か知っているかもしれない。
(5秒の間)
滝本研究員: すいません、私では分かりません。
SCP-XXXX-JP-1: そうか。なら仕方ないか…。
滝本研究員: お力添え出来なくてすいません。
SCP-XXXX-JP-1: いや、知らないなら仕方ない。ありがとう。
滝本研究員: 他に何かありますか？
SCP-XXXX-JP-1: いや、特にないかな。
滝本研究員: 分かりました。では最後の質問です。貴方はSCP-XXXX-JPの異常性についてどの程度把握してますか？
SCP-XXXX-JP-1: そういえば、声が聞こえ始めてから心菜の花壇の花が妙に増えていたな。誰かが献花してくれたのかなと思っていたけど今思い返すとそれにしては多すぎた気がするかも。
滝本研究員: 分かりました。インタビューを終了します。
<インタビュー終了>
監視記録XXXX-JP: 以下の記録はSCP-XXXX-JP収容室の付近に花壇が設置された2026/██/██から事案XXXX-JP-aが発生した2027/02/██までに花壇に出現した花を出現回数の多い順に5つ並べたものです。
変化後の姿: ストック(Matthiola incana)
出現回数: 64回
概要: 出現したストックの殆どが黄色のストックであったが、ごく稀に赤色のストックが出現した。それ以外の色のストックの出現は見られなかった。
変化後の姿: キンセンカ(Calendula officialnalis)
出現回数: 51回
概要: キンセンカが出現した際、SCP-XXXX-JP-1の精神状態が不安定な事が多かった。
変化後の姿: ラベンダー(Lavandula)
出現回数: 43回
概要: ラベンダーが出現した際の状況は様々だった。主にSCP-XXXX-JP-1が自身の過去に関する事柄や妄想、[削除済]について話している時に変化していた。
変化後の姿: スカビオサ(Scabiosa atropurpurea)
出現回数: 32回
概要: スカビオサが出現した際、SCP-XXXX-JP-1の精神状態が特に不安定な事が多かった。
変化後の姿: アルストロメリア(Alstroemeria)
出現回数: 24回
概要: アルストロメリアが出現した際、SCP-XXXX-JP-1の精神状態が比較的安定していた事が多かった。また花壇には白色のアルストロメリアにのみが出現した。
監視開始から1ヶ月後、花壇に出現する花のパターンとSCP-XXXX-JP-1の感情に因果性があると推測した滝本研究員が研究を進めたところ「SCP-XXXX-JPはSCP-XXXX-JP-1の感情に対応した花言葉を持つ花を出現させる」という仮説が出てきました。以下は参考資料としてインタビュー記録XXXX-JP-1及び監視記録XXXX-JPに記載している花の花言葉を記載したものです。
ストック: ストック全般の花言葉は「永遠の美」「愛情の絆」「求愛」。黄色のストックの花言葉は「寂しい恋」。赤色のストックの花言葉は「私を信じて」。
ハナニラ: 花言葉は「悲しい別れ」。
コスモス: コスモス全般の花言葉は「乙女の真心」「調和」「謙虚」。赤いコスモスの花言葉は「愛情」「調和」。
キンセンカ: 花言葉は「別れの悲しみ」「悲嘆」「絶望」「寂しさ」。
ラベンダー: 花言葉は「沈黙」「私に答えてください」「期待」「不信感」「疑惑」。
スカビオサ: 花言葉は「不幸な愛」「私は全てを失った」。
アルストロメリア: アルストロメリア全般の花言葉は「持続」「未来への憧れ」「エキゾチック」。白色のアルストロメリアの花言葉は「凛々しさ」。
インタビュー記録XXXX-JP-2: 2026/██/██、SCP-XXXX-JP-2の母親へのインタビューが実施されました。以下は警察官に扮した滝本研究員とSCP-XXXX-JP-2の母親とのインタビュー記録です。
対象: SCP-XXXX-JP-2の母親
インタビュアー: 滝本研究員
<インタビュー開始 14:45>
滝本研究員: では娘さんについて話を聞かせてもらいます。他の警官と同じことを聞くかもしれませんが回答お願いします。
SCP-XXXX-JP-2の母親: はい。よろしくお願いします。
滝本研究員: 娘さんはどのような人物だったのですか？
母親: 娘は、花屋を目指していました。花を育てるところから売るところまでしたいと言っていました。そしてその為に必死になって植物の勉強をしていました。
滝本研究員: 花屋を目指すようになったきっかけとかは？
母親: 分からないです。ある日突然言ってきたので。小学1年生の頃でした。
滝本研究員: そんな歳から夢を持てるなんて羨ましいですね。
母親: (少しの沈黙の後)ええ。私は少し反対したんですけどね。
滝本研究員: どうしてですか？
母親: 先程言ったように、心菜は自分で育てた花を売ってビジネスを成り立たせたいと言っていました。他から仕入れたものを売るだけならまだしも、育てる事から始めるのって難しいと思うんですよ。
滝本研究員: 言いたいことは分かります。ですが
母親: それに、花屋ってなんか…。いえ、何でも無いです。続けてください。
滝本研究員: (少しの沈黙の後)私は、親として子供の夢を応援してあげるべきだったと思っています。
母親: なんですか。警察官の身分でお説教ですか？
滝本研究員: あ…。いえ、そういうつもりでは無かったのですが。すいません。
母親: 私も強く言いすぎましたかね。すいません。
滝本研究員: では娘さんの姿を最後に見たのはいつですか？
母親: 2013年の3月17日です。丁度うちに帰ってきていて、午後から彼氏とのデートだと言って家を出たっきりです。
滝本研究員: (少しの沈黙の後)そうですか。では次の質問です。
(以降不要な為省略)<インタビュー終了>
インタビュー記録XXXX-JP-3: 以下は事案XXXX-JP-aが発生する7日前である2027/██/██に当時の担当職員がSCP-XXXX-JP-1に対して行った最後のインタビュー記録です。
対象: SCP-XXXX-JP-1
インタビュアー: 滝本研究員
<インタビュー開始 13:30>
滝本研究員: 気分は良いですか？
SCP-XXXX-JP-1: ああ、まあ悪くない。
滝本研究員: 収容当時に比べてかなり精神状態が安定してますね。
SCP-XXXX-JP-1: まあな。話はできるし。んで、何の用だ？
滝本研究員: 貴方が以前言っていた「SCP-XXXX-JPとの同室収容」について話に来ました。
SCP-XXXX-JP-1: もしかしてやっと心菜に会えるのか！？
滝本研究員: 遅くなってしまいすいません。日頃の貴方の行動などを視野に入れて協議をしたところ、同室収容の許可が出ました。
SCP-XXXX-JP-1: よっしゃあ！おい、聞いたか！？また一緒にいられるんだって！(SCP-XXXX-JPの収容室がある側の壁に向かって話しかける)
滝本研究員: 1週間後にこの収容室にオブジェクトを移動させます。
SCP-XXXX-JP-1: 1週間後か！分かった！心菜が来てくれるんだな？
滝本研究員: はい。そういうことでよろしくお願いします。
SCP-XXXX-JP-1: よし、ちょっと部屋片付けとくか！
(SCP-XXXX-JP-1が身辺整理に取り掛かる)
滝本研究員: 少しナンセンスな質問にはなりますが、どうして貴方はSCP-XXXX-JP…いや、彼女との同室を望んでいたのですか？
(SCP-XXXX-JP-1の動きが止まる。)
SCP-XXXX-JP-1: (少しの沈黙の後)心菜が花屋さんだから。
滝本研究員: なるほど？
SCP-XXXX-JP-1: 心菜は花を通じて人々に笑顔を与えようとした。でもこんなところにいちゃそんな事出来る訳がない。だからせめて僕だけでも彼女の花を見てあげて、横で笑ってあげないといけないんだ。にしても、ほんとになんで死んじまったんだよ…。
滝本研究員: お悔やみ申し上ます。
SCP-XXXX-JP-1: 全く、なんで心菜が事故死しなきゃいけなかったんだ…。クソっ！僕があの時…！
滝本研究員: デートの行き道だったんですよね。事故が起きたのは。
SCP-XXXX-JP-1: (無言)
滝本研究員: (少しの沈黙の後)その件については触れない方がよさそうですね。
SCP-XXXX-JP-1: そうしてくれ。
滝本研究員: 了解しました。言いたいことは言えたので失礼します。
<インタビュー終了>
付与予定タグ: scp jp neutralized 外部エントロピー 語り 記憶影響 芸術 瞬間移動 植物 自我 自律 精神感応 テレパシー
SCP-3000-JPコンテスト参加作品「凛恋の花」のリメイク作品です。(元記事はマイナス2桁評価で低評価削除されました。)
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任意A任意B任意C- portal:6020557 (20 Jan 2020 05:31)
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