酩酊の記憶(仮)

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むかしむかし、国が安定する前。不安定なその時に支えた者達がいた。その者達は度々「鬼」と呼ばれていたが恐れられる事は無く、寧ろ信頼され人と鬼達は暫く何事も無く暮していた。ある時は技術者として。ある時は、自治の発案者として。彼らが居なければ此処まで国が発展、安定することはあり得なかっただろう。

それから多くの時間が経ち、室町時代。多くの時間と言っても少なくとも彼らにとっては些細な時間である。しかし、人間と彼らの寿命の違いは大きく、長く生きる彼らと、それよりも短く生きる人間では意見が対立する様になっていった。彼らは対立する事を拒んだ。しかし、人間にとって未知とは恐ろしい。その未知に人は何をするか?簡単だ。迫害、差別、中傷などだ。流石に国を支えてきた彼らを追い出すのはおかしいと考えるかもしれない。だが、必ず彼らを快くないと思う人物がいる。そいつらが言ったのだ。
 
「鬼達の技術は全て奪い取ったもので奴らが持っている財産も他人から略奪した物だ」と。
 
それを聞いた群衆達は勿論、彼らを追い出す為様々な事を行った。その結果、心身共に疲れ、酒に逃げる者まで現れた。酒に逃げた者達の中には手がつけられないほど暴れ回る者もいた。その知らせが届いたのか、鬼退治と言い、彼らを倒そうとする者が現れた。生き残った彼らは安心して眠りにつける場所を探し回り、気づいた。
 
「ここには安心して酒を飲み、ゆっくりと時間を過ごすことができる場所は無い」と。
 
そう諦めていると
 
「自分達でその様な場所を作れば良い。我々は技術と知恵を絞り出せばできるじゃないか。」
 
その一言で街造りが始まったのである。初めは場所を。次に街の入り口を隠蔽する方法。最後に自分達が住むところを確保した。そうして多くの鬼達は長い冬眠に入った。


酩酊街の呑み屋に大柄な男1人とオレンジ色の服を着た男が1人。オレンジ色の服を着た男は酔い潰れ寝ている。もう1人の男は私を見つけ、手招きする。私は仕事が終わった事もあり、彼らがいる席の近くに座る。注文を終え、大柄な男に尋ねる。

「彼は?」

「入口から来たかそれか迷い込んだか。多分、迷い込んだのだろう。最近は多いからな。」

「そうだな。」

最初は大体これ位だ。殆ど会話をしない。だが、酒という物は不思議な物で、飲んでいくうちに少しずつだが話しやすくなっていく。ここの空気にはアルコールが含まれている。ただのアルコールではなく、酒じゃないと駄目なんだ。

暫く呑んでいるともう1人の男がゆっくりと目覚める。頭を抑えながらブツブツと呟き、ゆらりと店の奥にあるトイレに向かっていった。彼には強すぎただろうか。そんな事を考えていると、

「お前はいつからここに?」

「覚えてないほど昔だ。」

「そうか」と言ったきり、彼は黙ってしまった。


長い冬眠の後、私は酩酊街の中をふらついていた。外はどの位の時間が経過したのだろう。10年?100年?それとも1000年かも知れない。眠る前よりもモノが増えた気がする。忘れられてしまったのかどうかはわからない。他には人が至る所にいた。だが、何かが違う。あの頃の様な活気のある姿ではなく、戦いの後の心身共に疲弊している様な雰囲気だ。

彼らの近くまで行くと分かった。彼らの状態は最悪だった。身体が欠けてしまっている者、他人に恐怖を抱く者。彼らによると外では大規模な戦いが起きているらしい。

「どうやって此処まで。」

「俺は…覚えてない。だが、彼らをどうにかしてくれないか?」

どうにかする。彼らは何をどうにかしたいのか分からない。その為、他の鬼達と相談し、結論を出した。忘却。彼らの中には、大切な人を失った者もいる。それを忘れさせ、一時的に楽にした方が良いという事になった。彼らにそれを持ちかけ、全員納得した。今でもこの判断は間違って無いと思っている。


男達と別れ、家に戻る。仕事が終わったとはいえ、心配な事がある。酩酊街から外へ行った子達はどうしているだろう。そうだ。外に手紙を出そう。

お元気ですか?私は元気です。
あの子は元気にしてるでしょうか?
ちょっとドジだけど、頑張り屋でいい子なので可愛がってあげて下さい。

酩酊街より愛を込めて


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