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一体いつから俺の人生は、こうも退屈になってしまったのだろう。

俺の住む村はいわゆる田舎というやつで、人は少なく、目立った娯楽施設のようなものはなかった。それでも、村には生まれた頃から面倒を見てくれた両親や幼い頃から一緒に遊んでいた友達など、昔から仲のよい人はたくさんいた。俺はそんな村で平凡とはいえそれなりの生活を送っていた。

俺はそんな毎日に満足していた……、はずだった。

今、俺は自分の人生をどこか退屈なものだと感じている。具体的に何がそうさせているのかは分からないが、そう感じるのだ。

これを自覚したのは高校卒業後に村で働くようになってからしばらく経って、仕事に慣れてきたころからだった。でも、この退屈、というかある種の寂しさとも呼べるこの感情は多分、中学か高校の頃には既に芽生え始めていたのだと思う。


ある日、いつも通り仕事を終えて家に帰ろうとすると、通り道にある古くさびれた小屋から

ーーがちゃがちゃ、ガラガラ

とプラスチックなどが乱雑にかき回されているような音が鳴っていることに気づいた。

この小屋に人が住んでいるなんて話は聞いたことない。人がいないはずなのにどうして音がするんだろう。と俺はそれを少し不思議に思った。だが、仕事終わりで疲れていたので考え込む気力も無かった俺は、(これは幻聴だ。今日は疲れているからさっさと帰ろう。)と自分に言い聞かせてそのまま立ち去ろうとした。

しかし、

ーーガララ、ガチャガチャ

音はまた鳴った。これは幻聴ではない。明らかに小屋の中に何かがいて、音を立てている。

ーーがちゃ、ガラララ

音は俺の頭の中で響く。頭の奥深くにある懐かしいなにか、時を経てすっかり失われてしまった何かに触れるように。

俺は小屋に近づく。こんなにも疲れているのに、ちょっと気になることがあるってだけでわざわざ誰のものかも分からないような小屋を開けに行くなんて、今の俺からしたらあり得ないことではないか。しかし、音とともに俺の心の中でかき乱され、あふれそうになっている何かは、そんな疑問をすぐに覆い隠してしまった。

ーーガララララ、ガララ、がちゃ

俺は小屋までまっすぐ歩き、正面にたどり着く。まるで何かに導かれたかのように。今ではもう、先程までの疲れや気だるさはない。代わりに今、俺の中を満たしているのは全く別の感情だ。

……この感じは、小学生の頃に友達とやった肝試しの時やノストラダムスの大予言を読んだ時とかに抱いていたものと同じではないか。

そうか、俺は小屋の中にある何かに、ゾクゾク、わくわくしているんだ。

ーーがちゃ、がちゃ、がちゃちゃちゃ

幾何かの恐怖心と、溢れかえりそうな好奇心で高揚している心を落ち着かせつつ、震えた手で小屋の扉を開く。そこには恐竜の形をしたおもちゃの塊があった。恐竜の形をしたそれはがちゃがちゃ、ガラガラと音を立ててゆっくり動いている。

どうして動くんだ?ロボットなのか?、と一瞬思った。しかし、恐竜を形作っているおもちゃが動きとともに流動し、別の心引かれるおもちゃをちらつかせていることは、この恐竜がロボットではないことを物語っていた。

何だこれは……!?目の前にあるのは明らかに俺がいる世界のものではない。こんなものは小説や漫画とか空想の世界のものじゃなかったのか。恐竜の出すがちゃがちゃという乱雑な音とともに頭が激しく、ぐちゃぐちゃとかき乱されているように感じる。心の奥底にしまい込まれた何かを取り出さんとするばかりに。

ーーがちゃ、ガラ、ガラガラ

恐竜は音を立ててこっちにゆっくりと向かってくる。抱いていたゾクゾク、わくわくは恐竜ががちゃがちゃと音を立てるたびに増幅している。もう、限界に近い。じっとしていられない。

ーーがちゃがちゃ、ガラン

俺はそんな恐竜に近づき、目を見開いてじっくりと見る。心の中で激しく揺れ動き、今にも外にぶちまけてしまいそうななにかを満たさんとするばかりに。遠い昔に失ってしまった何かを目の前の恐竜に必死に求めんとするばかりに。

恐竜の鼻の先には武器を持ったロボットの模型が、歯には戦隊もののフィギュアがあった。ロボットアニメに戦隊もの、子供のころは毎週のように見ていたのをふと思い出し懐かしい気持ちになった。他にも昔懐かしいおもちゃ、あこがれだったおもちゃなど色々なおもちゃが恐竜にはあった。しかしなぜだろう、この恐竜についているおもちゃはどれも、俺が今まで遊んできたおもちゃよりもはるかに壮大で、特別なもののようにに思えた。

ーーがちゃっ、がちゃ、がららっ

恐竜はおもちゃを眺めている俺を尻目にその場で体を揺らしている。ガラガラという音は俺の心を激しくゆさぶり続ける。もっとよく見たい。触ってみたい。他のおもちゃがみたい。遊んでみたい。ああ、あああ。

欲望に正直になって、恐竜にむけて飛び込んでしまおうかかとうずうずしていると、がちゃがちゃという音とともに、

不思議な姿の人形が恐竜の表面に出てきたのが見えた。

それを見た瞬間、俺の中でなにかがぷつっと切れた。同時に今まで我慢していた欲望が堰を切ったようにあふれ出す。もう欲望を抑えきれない。誰も俺を止められない。俺は恐竜に潜り、その不思議な人型を手に取る。そしてかき分ける。他にはどんなものがあるんだろう。どんな面白いものが、わくわくを満たしてくれるものがあるんだろう。

テディベアフラフープあひるの人形オレンジ色のスライム

もっと、もっとだ。もっとわくわくするものを。まだまだあるはずだ。

ーーがらがら、ガチャガチャ、ガチャガチャチャ

光る木のボールトカゲのフィギュア猫の人ぬいぐるみ赤い綺麗な首飾り、[[[http://ja.scp-wiki.net/scp-131|一つ目の動物の模型]]…

がちゃがちゃ、がちゃがちゃ、かきわけてもかきわけてもどんどん、どんどんでてくる。

もっとたくさん、たのしいものをみたい


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