テレキル合金を応用した奇跡論阻害効果を持つ新素材のための認可計画

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テレキル合金を応用した奇跡論阻害効果を持つ新素材のための認可計画

問題

1998年に発生した神格実体出現事件に端を発する財団によるヴェール政策の終了と、それに伴う異常技術の社会への流失は世界に大きな発展を齎しました。しかし、新技術の普及が齎すのは往々にして利益のみではなく、ここ20年間の犯罪率──特に異常技術を利用した犯罪いわゆるパラクリミナルと呼ばれるもの──は増加傾向にあります。異常技術を利用した犯罪の内最も大きな割合を占めるのはパラテクノロジーの使用された物品によるもので、これについては財団や連合、UIUなどの治安維持機構によって取り締まられており、我々の領分ではありません。

ではパラテクノロジーを使用された物品に次ぐ割合を占める犯罪が何かと言えば、奇跡論を利用した犯罪です。以前は現実改変による犯罪が奇跡論による犯罪を上回っていましたが、ブルドッグの首輪とカント計数機の一般への普及により、現実改変を用いた犯罪は減少傾向にあります。この減少分を補うかのように、奇跡論を利用した犯罪はその割合を大きく増加させ、パラテクノロジーの使用された物品に迫る勢いです。この原因として考えられるのは、奇跡論は現実改変能力と違い先天的な才能の介入する要素が少なく、教育によって誰でも行使することが可能であるという点です。

先進国政府の重要施設や空港、公共施設などに普及しているスクラントン現実錨1(以下SRA)は、現実改変による犯罪を防ぐことが可能です。しかし、奇跡論による犯罪に対しては効果が全くない/薄いことは周知の事実であり、夏鳥思想と呼ばれる犯罪者集団の過激派による、奇跡論を利用した自爆テロの被害は甚大なものです。

私たちはSRAでは防ぐことのできない、奇跡論を利用した犯罪に対する抑止力を必要としています。

解決策

私たちはテレキル合金に奇跡論的図形を施すことによって、奇跡論の行使を阻害する効果のある新素材を提案します。この素材はテレキル合金の持つ精神影響の阻害効果を、奇跡論的図形によってコントロールすることを狙ったものです。この製品をテレキネティック合金と仮称します。

テレキネティック合金は主に2つの要素で構成されます。1.テレキル合金 2.テレキル合金の精神影響阻害効果をコントロールする奇跡論的図形 この2つです。

テレキル合金は過去に我が社で開発された、精神影響に対して一定の阻害効果を持つ金属物質です。この金属物質は超能力を持った異常存在の運搬や、実験体としてそれらを利用する組織に対して販売され、利益を上げはしたものの、異常性保持者に対する人権運動の活発化によって主な購入先だった組織からの注文が停止し、その後は保管庫で資料と共に保管されていました。原材料は我々の手元にあります。また、生産も旧来の冶金技術で十分可能であり、供給に問題はありません。

奇跡論的図形はテレキル合金の持つ精神影響の阻害効果を、特定の対象に向けて指向させるために必要です。奇跡論の行使には、精神力が密接に関係しています。2そのため、奇跡論術者にテレキル合金の持つ精神影響阻害効果を収束、指向することで奇跡論の発動を阻止することが可能です。

奇跡論的図形については、プロメテウスコンツェルンの奇跡論部門に開発を依頼します。奇跡論的図形を描くのに必要な奇跡論的職人は、特定の図形に特化した教育を行うことで短期間に習熟させた奇跡論的職人の肉体を利用した有機的自動押印機を設計し、それによって代替します。

製造の為の工学設備はプロメテウスコンツェルンの保有する従来の合金製造施設の冶金設備の流用が可能です。また、素材から必要になることが予測される秘匿性保持の観点から、有機的自動押印機の製造も同工場内で行います。

事業例

本製品の顧客として夏鳥思想のテロ行為の標的となりうる全ての先進国及び治安維持機構が予想されます。また、今後バルセロナや東京が再建される際にもその主要な建築資材としてテレキネティック合金を購入させることが可能です。上記都市で起きた事態を考慮すれば、これらの予測は妥当であると考えます。また、プロメテウスコンツェルンの重要施設にもテレキネティック合金を使用することで、年1,000万アメリカドル(企業事故や奇跡論的攻撃による破壊活動によって発生した被害の修復への)以上を節約できます。

価格について、テレキル合金自体はパラテクノロジーと非異常技術の折衷であり他のパラテクノロジー製品の製造費用と比較して非常に安価です。そのため、値段を高価にすることなく高い利益を出すことが出来ます。これはマーケティングに於いて同業他社の製品に比べて非常に有利であると考えます。

奇跡論的図形の描画については、後進国へ通常よりも低価格で販売することを条件に貧困層から抽出した人員を加工することで、有機的自動押印機の生産に必要な奇跡論的職人を確保することが出来ます。この低価格での販売は先述したテレキル合金の安価な調達費用から大きな損失にはなりません。

抽出した人員の輸送についてはGpエクスプレス・ロジティクス株式会社との長期ロジティクス契約によって、秘匿性、確実性を維持した供給が可能です。これらによって発生する費用については、輸送中の襲撃事件に対する対抗策として、テレキネティック合金を提示し、同社の輸送機の製造材料としてそれを購入させることで20パーセント程度の回収が見込めます。

他の超常企業も類似の製品の開発に着手していることが産業工作員から報告されていますが、テレキル合金の製法についてプロメテウスラボ時代に特許を取得済みであり、他社が開発を進めるには莫大な使用料を支払う必要があります。また、奇跡論的図形については奇跡論部門の紋章局局長の見込みによれば、1年程度での開発が可能であるとしています。

資金の使用

テレキネティック合金は主要な構成要素の製造において、かつて使用していた設備の流用が可能なため、工作機械の設計・開発にかかる費用が少額(約70万ドル)で済みます。費用の大部分を占めるのは、必要な原料を調達するための契約費用です。これらの総額は220万ドルほどになると考えられます。

  • テレキル合金の製造設備再稼働に必要な整備費用60万ドル。
  • 有機的自動押印機の設計・開発に10万ドル。
  • Gpエクスプレス・ロジティクス株式会社との長期ロジティクス契約に50万ドル。
  • ニッソ医機への生物培養依頼に100万ドル。

既知の問題

有機的自動押印機の原材料が発覚した場合、プロメテウスコンツェルンの社会的イメージダウンに繋がります。この問題に対する対策として、有機的自動押印機自体に強力な反ミーム特性を付与することが推奨されます。

反ミーム特性を付与する方法については、有機的自動押印機の素材の一部としてニッソ医機が培養に成功したオーストラリア出身の生物を使用することで容易に可能となります。また、組み立て工程の最初に対抗ミーム接種を紛れ込ませることで、工場勤務職員が当該生物を認識できなくなる危険性を回避できます。

もう一つの問題として、テレキル合金に長時間接触する可能性のある職員は定期的に交替させる必要があります。これは、テレキル合金の有する精神薄弱化特性による職員の職務遂行能力の低下を回避するためです。

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