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アイテム番号: SCP-2126-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-2126-JPは情報の著しい不足から確保・収容が困難であり、現在は詳細な性質の特定と収容手順の作成、確保作戦の立案を目的とした情報収集が行われています。
説明: SCP-2126-JPは反ミーム的性質を有する生物(以下、対象)の突発的な無力化事象です。SCP-2126-JPの影響を受けた対象は全身に渡る打撲および裂傷を負い、腹部を切開され内臓が消失した状態で発見されます。全てのSCP-2126-JP事例において対象が前述の状態へ変化する過程の記録は発見されていません。当該事象は複数の財団施設において発生が確認されており、当初はそれぞれが独立した無関係の超常現象として記録されていましたが、個々の事象に前後して共通する現象が確認された事から同一の異常存在であると認定されました。
SCP-███-JPは反ミーム的性質を有する捕食性四足動物です。SCP-███-JPを認識する事は困難であり、被害者は死亡後に初めて自身を襲撃した存在の正体を知ることになります。捕食された身体部位が反ミーム性を帯びる性質から被害者の遺体は現在まで発見されておらず、発見され、研究目的の解剖を経て火葬されました。
以下はSCP-2126-JPの前後に確認されている現象の一覧です。
- 対象は顕著な不安を示す仕草を行う。これはSCP-2126-JPの発生まで段階的に深刻化する
- 対象の収容室周辺で"何かを引き摺っているような"と形容される幻聴が報告される
- 対象の収容室付近の監視カメラに不定期的な故障が発生し、映像が10秒~1時間に渡って閲覧不可となる
- 対象の収容サイトに保管されている記憶補強薬の在庫記録と実際の個数に矛盾が発生する
- 対象の収容サイトにおいてハルトマン霊体撮影機を使用した際、不具合が発生する。不具合の頻度は対象との距離に比例して上昇する
- 顔面の半分、首の一部、右上肢、腹部の大半、左下肢に著しい損傷を負ったヒト型実体の幻覚に関する報告1
SCP-███-JPは物理的な肉体のみならず、生物を構成する形而上学的な部分、すなわち魂も捕食します。SCP-███-JPによって魂を捕食された生物は死後に霊的実体として現世に留まったとしても他者から認識される事は有りません。これは記憶補強薬の投与によって他者へ反ミームへの抵抗力を付与した場合も同様です。SCP-███-JPの内臓を全て摂食することがこの状態を解消する唯一の手段であると推測、予想、考察、妄想されています。妄想でも元に戻る方法があると考えなきゃ正気でなんていられない。この方法は現在も実行中です。
以下は摂食記録の抜粋です。基本的に全ての臓器を摂食していますが、その中でも記録すべきと感じた場合や、精神的な負担軽減が必要だと感じた時に書き残しています。
部位: 牛タン
調理方法: 生
感想: 幽霊になってから初の食事。死んでからずっと感じ続けていた喪失感と空腹に抗えず、気が付いた時には生のモツ肉を貪っていた。幽霊が味覚を備え、嘔吐すると初めて知った。夕方から食事を始めたのに完食する頃には朝日が昇っていた。喉の奥から漂う刺激臭が完全に消えるまでの時間はとても長く感じた。
反省: 何かを口にする時は調理する。
追記: 食事を終えた時、私の中の何かが変わったように感じた。もしかすると、あの怪物を食べて魂を取り戻せば誰かに気付いてもらえるかもしれない。少なくとも何もせずに手をこまねいているよりはずっと良い。
部位: レバー肝臓
調理方法: 黒焦げ
感想: 忙しそうな元同僚たちの邪魔にならないよう、サイトの消灯を待ってから食堂の調理場を借りた。加熱し過ぎた肉は元の形が分からないくらいに炭化して、2つの意味で苦い思いをすることになった。生前より調理が下手になっているかもしれない。
反省: 調理中に考え事をするべきでは無かった。
部位: 牛の胃(番号は不明)
調理方法: 網焼き
感想: 食堂から借りたレシピを使って何回か調理を行い、遂に生前の味を再現する事に成功した。コリコリとした食感に、舌の上であっという間にとろける脂を甘辛タレで味わうと疲れがどこかに飛んでいった。
反省: 料理を始めてから調味料を使うことに思い至るまでひと月も掛かってしまった。
部位: 砂肝
調理方法: 唐揚げ
感想: 後輩の子が前に作ってくれた砂肝の唐揚げを真似てみた。コリコリした食感と、甘辛い味。地元九州の味とのこと。彼女を最後に見たのは私の葬式だ。食事中、彼女の泣き顔を思い出した。
反省: 今後、友人に関係する料理は避ける。
追記: あの怪物は本当に四つ足だったのか。自信がなくなってきている。
部位: ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラ(牛の第一~第四胃)
調理方法: 網焼き
感想: 同じ胃を使っているのに味がそれぞれ違った。個人的にお気に入りなのはセンマイで、皮を取った白い肉のひだを何枚か纏めて軽く炙り、酢味噌で頂く。ザラザラとする独特の舌触りに、酢味噌の甘じょっぱい味付けが良く合う。元に戻れた時は目隠し状態で第何胃か当てる隠し芸を披露しても面白いかもしれない。今の私はモツの目利きに限れば職員たちの誰にも負けない自信がある。
追記: 霊的業務部門のデータベースを調べたら、私の現状と関係のありそうな記述を見つけることが出来た。そのまま引用する"心霊学を専攻としない超常関係者間でも、霊的実体が他の霊的実体を吸収あるいは融合する事で性質に変化が生じるという事は普遍的な知識です。しかし、今から述べる情報は違います。霊的実体が生物の肉体を捕食する事でも、その性質に変化が起きる場合があります。これは霊核を有していない霊的実体や、霊核を何らかの要因によって損傷した不安定な霊的実体に顕著な現象です。"私の予想は間違いじゃなかった!
部位: テッチャン(牛の大腸)、テッポウ(牛の直腸)、シロ(豚の大腸)──全てホルモン
調理方法: 網焼き
感想: 日本生類創研が作りそうな、反ミーム牛と反ミーム豚のキメラ生物。両方の臓器がある事でどんなメリットが生まれるのか分からない。テッチャンは歯ごたえがあり、脂身は少な目。シマチョウは脂がテッチャンよりさらに少なく、さっぱりとした味わい。シロはプリプリとした食感で、甘みとジューシーな口当たりが心地よい。生きていれば肌がつやつやになっていたかもしれない。
反省: お酒を飲み過ぎて余計な思考を発展させてしまった。
追記: 思い出した。あの怪物は俊敏で、長い爪を持ち、牙を生やしていた。
部位: 豚の大腸
調理方法: 加熱
感想: 気が付いた時には生焼けの大腸を貪るように食べていた。調理なんてろくすっぽしていない筈なのに、とても美味しく感じた。両手で押さえつけた臓物を顎で噛み千切る感覚がたまらない。
反省: SCP-███-JP候補から外れた生物を狩らない。
追記: 意識していないと四足歩行していたり、壁で爪を研いでしまう。早急に原因を特定しなければならない。本当は分かっているくせに。
部位: 犬のどこか
調理方法: 生
感想: お砂糖もお塩も、お酢もお醤油も、お味噌も全部なんの味もしなかった。全然美味しくならなかった。それなのに、よくわからない血の滴る臓物を貪っているだけで、今まで食べたどんな料理よりも美味しかった。こんなことおかしいと自分でも分かってる。それでもみんなに気付いて貰うには続けるしかない。そう、仕方のない事なんだ。
反省: 感想を打ち込んでいる間もよだれが止まらずモニターを汚してしまった。
追記: 誰かに頭を撫でられる感触を思い出した。犬の記憶の追体験かもしれない。
部位: 狼の脳
調理方法: 生
感想: 脳漿は缶詰蜜柑の汁と同じ要領で啜ることが出来た。脳自体はお砂糖をたっぷりと掛けたゼリーみたいで、少しづつ味わいながら咀嚼して喉奥に流し込んでのどごしまで楽しませてもらった。
追記: 野山を群れの仲間たちと一緒に駆け回っていた事を思い出した。わたしのくちのなかで事切れた獲物の激しく乱れる息遣いを思い出した。群れを襲った嫌な臭いの2本足たちについて思い出した。わたしを襲う何かを思い出した。なにかにあたまをすすられる。
部位: イノシシの眼きゅう
調理方法: 生
感想: 眼きゅうは生のらん黄のように見えて、実さいはゆで卵のようにあるてい度のだんりょくをそなえている。口のなかで転がして食かんを楽しんでから、牙をつき立てると潰れてトロリとしたあまからい液たいが溢れだした。おいしい。
追記: あおじろい怪ぶつにおそわれた。そいつはす早くうごき、ながい爪をはやし、いろんな生ぶつのしっぽをもっていた。突しんして牙をつきたててもてごたえがなかった。かいぶつをみあげた、にんげんとけもののまざったみたいなかおをしていた。かいぶつのつめがわたしのあたまにちかづく、あたまのそばでぶちぶちおとがなっている
部位: しんぞう
調理方法: なま
感想: もっと
補遺1: 幻覚とされているヒト型実体の撮影に成功したとして職員から映像記録が提出されました。QNTMマシンによる検査が行われた結果、記録は反ミーム的な性質の影響を受けていると判明しました。記憶補強薬を用いた検証は被験者10人中10人が"ヒト型実体を確認できない"と報告する結果に終わりました。
信憑性の問題から映像記録は報告書への添付を見送られ、SCP-2126-JP関連資料の1つとして電子保管庫に保存されています。
補遺2: 説明不可能なリビジョン数の増加および認識不可能なリビジョンの存在から、何らかの存在により報告書に対し無許可の編集が行われたと推測されていますが、職員によって執筆された正式なリビジョンと報告書の現リビジョンの内容に明確な差異は存在しません。
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scp jp keter 反ミーム 未収容 メタ
本記事の作成に関して、複数回にわたり問題点の詳細な指摘や改稿方針の提示によって多大な協力をくださったk-cal氏に深く感謝申し上げます。また批評に協力して頂いたkskhorn氏、Gokipo氏、Sansyo-do-Zansyo氏、aisurakuto氏にもこの場を借りて感謝申し上げます。
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- portal:5875210 (22 Nov 2019 06:43)
拝読しました。
説明1パラグラフ目から2つ目の黒背景のコメントまでで、何が起こっているか大体の理解ができる作りになっていると思います。そのため、この記事の面白さの主眼はその後の展開、すなわち摂食記録に置かれているのだと思います。
ただ、この摂食記録の内容が、「孤独になった財団職員が狂うまで」の典型のような内容で、個人的には面白さを感じることができませんでした。
メタ的な要素・財団メシとの兼ね合い(私は既存作品の方の財団メシは読んでいません。)がどう評価されるかは未知数ですが、もう少しオリジナリティが欲しいと思います。
細かいところでは、「なぜコメントの執筆者は自身の魂を取り返す条件を理解しているのか」という点が疑問でした。
批評に対するご意見・ご質問で返信が必要なものにつきましては、ディスカッションで返信の形で投稿いただいたうえで、PMにご一報ください。SB3のフォーラムは追っていませんので、ディスカッションへの投稿だけだと気づけない場合がございます。
ご批評いただきありがとうございます!
大変申し上げにくいのですが、「幽霊になった財団職員」が「臓物の食べて感想を述べる」という時点でかなりオリジナリティはあると思っていた(テンプレート通りにならないよう個人的エピソードやキャラクター性の描写を入れたりなど工夫も行ったため)ので、ここから更にオリジナリティを確保するには展開自体を大幅に変更する必要が生じ、それを一切のヒントや方向性の提示無しで行うのは難しいかもしれません……。
こう思わなければやっていられなかったか、反ミーム部門に所属していた経験故にそう思うのか、といった理由の候補はありますのでそれを示すような描写を追加しようと思います。
(長文になってしまい、圧が出てしまいました。あくまで私個人の感想だと思っていただければ幸いです。私自身、最近の流行がわからないので、現実問題として現状の内容でサイトに残るかどうかは判断しかねるところがあります。)
「幽霊が臓物を食べている」、すなわち何をしているか、という部分は大きな問題ではないと感じています。
この摂食記録に期待する魅力は、幽霊が臓物を食べること自体ではなく、摂食者が経験する心理的な変化だと思います(幽霊が臓物を食べること自体が魅力の中核ならば、それによっておこる興味深い事象を並べたり、グロテスクな描写を用意する必要があるでしょう)。すなわち、心理的な過程こそが本質であり、それが「(置かれている状況含めて)この登場人物特有のものだ」と感じられなければ、オリジナリティ感も減少します。
具体的には、この記録の構造は以下のようになっています。
すなわち、決意→衰弱→狂気という主要3フェイズと、そのグラデーションを示すサブフェイズからなる構造です。この心の経過自体が(特に財団職員をメインに据えた記事に)よく見られるものであることは、同意いただけることかと思います。
このフェイズを動かすエネルギーになっているのは、主に「終わりの見えない不安」「孤独」です。これらの要素は、最近非常に人気なようです(極夜灯の影響かと思います)。
これを踏まえて先ほどの各フェイズの感情をご覧いただきたいのですが、感傷も衰弱も不穏も狂気もその主要な要因は「終わりの見えない不安」「孤独」であって、オリジナリティの根源たる「幽霊が臓物を食べていること」ではありません。もちろん影響がないとはいいませんが、極論語られる感情は何か別の状況でも「終わりの見えない不安」「孤独」さえあれば非常に類似します。これが、感情の変化が「典型的である」と感じられる原因になっていると思います。
これに対する解決策としては、そもそも上の6フェイズを破壊してしまうことが一つです。ただ、狂気でなく絶望や怒り、悟りで終わったとしても別の典型に合致してしまうだけですから、読者の予想をすべて裏切っていく高度なスタイルが必要だと思いますし、その感情の変化を読者に納得させるのはかなり困難な試みになると思われます。
もう一つの方法は、「そのキャラクターの性格・思想だからこそ感じ得る感情」を用いることです。仮に同じ「終わりの見えない不安」「孤独」に起因する感情でも、やや偏屈な思想をもったキャラクターなら「終わりがないからこそ安心する」といった状況が描けるかもしれません。ただし、この方法はキャラクターに十分オリジナリティがある場合に用いることができます。。SCP記事の研究員は往々にして無個性であり、それが求められる傾向にあると思います。今回の記事の主眼・オリジナリティのメインはキャラクターではありませんし、それを強化することは記事を冗長にするでしょう。したがってこの方法も困難です。
最後に挙げられる方法は、感情を動かすエネルギーを別のオリジナリティのあるものに変えること、すなわち「幽霊が臓物を食べているからこそ起きる感情」を描くことです。たとえ感傷や衰弱といった感情自体が変わらなくても、その感情が生み出された経緯にオリジナリティがあれば、その感情がその登場人物独自のものになります。もちろん、ただ「不味いから気が滅入って狂いました」では読者の共感も興味も引けませんから、ある程度は突飛なものにする必要があります。現状では「感傷」部分で臓物関連の要素が含まれていますが、主要フェイズ(決意に絡めるのは難しそうなので、残りの2つ)にも強く絡めたいところだと思います。
もちろん他にも方法はあると思います(描写を詰めて緊張感を操作し没入させる等)が、おそらく最後の方法が最もこの記事にあっているのではないでしょうか。
また、改めて読んでみると、全体的に感情を直接的に表現しすぎなのも典型感を生み出していると思います。感情は想像させてなんぼのものだと思いますので、もう少し読者の想像力を活用する書き方をしてもいいかもしれません(極論主人公が一言も発さず、状況証拠だけから心情を読み取らせるという手法もありますが、あくまで極論です)。
これはただ単に私の感覚なのですが、語り手の口調について、日記のようなものとしてはやや話し言葉に近すぎるきらいがあるとおもいます。例えば
この内容ですが、日記に書くと考えると
これくらい淡々としていてもいいのではないでしょうか。淡々としていたほうが、感情を直接語らずに済むため、私は好ましいと思っています。
批評に対するご意見・ご質問で返信が必要なものにつきましては、ディスカッションで返信の形で投稿いただいたうえで、PMにご一報ください。SB3のフォーラムは追っていませんので、ディスカッションへの投稿だけだと気づけない場合がございます。
詳細に解説して頂きありがとうございます。以下の2つを主軸とする改稿を実施しました。
内容面についてはすでに他の方が批評されていますので、日記の文体面についての指摘をいたします。(内容も、個人的には前回よりよくなってきていると感じました)
改稿後の文体の方が、個人的にはやはりすっきりしていて好ましいと思います。ただ一方で、改稿後の文体は「淡々とした日記・メモ」というより、「クリニカルな報告書」の文体になっていると思います(全部ではなく、前半に顕著です)。クリニカルな文体に寄せすぎると、文章から感情が消えすぎ、堅苦しい感じが出すぎてしまうと思います。
「日記・メモ」はあくまで自分の記録として、思ったことや感じたことを書き綴ります。場合によっては、無意識に隠したいと思って、書かないこともあるかもしれません。また、まとまった文章というよりも、思い出しつつ書いたような文章になるはずです。その際、「綺麗な日本語」「正確な用語」はあまり重視されません。どちらかというと日常的な語が利用されると思います。ただし、記録ですから、必要以上に情感たっぷりに書くこともありませんし、話し言葉からも乖離して、不要な語尾などは書かれないと思われます。
「クリニカルトーン」は何よりも客観性を意識していますから、「綺麗な日本語」「正確な用語」が意識されます。主観的な感情の入る余地はほとんどありません。これは語りというよりは、説明です。本下書きでは、「時間を要した。」「齎した」といった難しい言葉の使用や、丁寧で綺麗な日本語が、文章をクリニカルにし、感情をそぎ落としてしまっています。クリニカル感を削ぐためには、言葉をもう少し日常的なものにし、日本語の文型をもう少し崩す必要があると思います。
つまり日記・メモとは、主人公による語りです。ここで伝えられべき主たる内容は、「情報」というより、「登場人物のリアリティのある声色」です。Taleで言うとこの部分は「セリフ」に該当します。つまり、ここにどれだけこだわれるかで、作品の雰囲気・魅力・感情的な力が決定すると思います。主人公が何を考え、どういう状況で、どのような思いで書いているかを想像し、それを読者に伝えられるような文体が良いと思います。参考になるかはわかりませんが、前回の批評で私が挙げた改善案をどのように書いたかの意図を載せておきたいと思います。
批評に対するご意見・ご質問で返信が必要なものにつきましては、ディスカッションで返信の形で投稿いただいたうえで、PMにご一報ください。SB3のフォーラムは追っていませんので、ディスカッションへの投稿だけだと気づけない場合がございます。
k-calさんのおっしゃるように狂気に至る展開がややありがち感を感じるきらいはありますが、個人的には大筋としてきちんと仕上がっていると思います。
私が気になっているのは、これを財団メシと関連させて出すことです。財団メシの関連記事を全部読んでいるわけではありませんが、少なくとも先行作品はグルメ・味覚・料理を主軸として打ち出すシリーズであることは間違いないと思います。そして料理モノとする以上は、どんな状況であれ食に対する快楽をもう少し肯定的に出したほうが良いのではないでしょうか。
本記事内での食のイメージはとにかく苦痛なものとして描写されています。肉の生食や炭化肉、死別した友人のイメージとの結合など、とにかく食べることに対して何一つ快の感情が伴っていません。あくまで財団メシシリーズで苦痛な食事を描きたいというのであれば狙い通りになっているかと思いますが、では何をもって財団メシシリーズに連なる作品であると位置づけているのか?という疑問が残ります。
食べるという行為がいかに楽しく、嬉しく、満たされるものかというのを描写するのが、グルメ作品の一つのお約束だと思います。この記事はかなり意図的に約束破りをしているため、記事全体としてはuvでも財団メシとして出されたら私はnvかdvかなという風に感じます。
ここからの方向性としては、①美味しい食事を描きつつ、オチの凄惨さとの間に落差を付ける、②財団メシとは無関係として出す、③このまま出すの3つが考えられます。
①美味しい食事を描きつつ、オチの凄惨さとの間に落差を付ける
霊体が逆境の中でも旨いメシを食うことで活力を取り戻していく展開を描く一方で、今描いているような異常性に巻き込まれることで獣に堕ちていくという展開を並行して描写するのはどうでしょうか。前半部では食を肯定的に描きつつ、同時に後半では食べたものが血肉になることをやや露悪的に示すことで落差を付ける形です。
②財団メシとは無関係として出す
反ミーム記事として現在の形でもまとまっていると思います。ただ財団メシではないなというだけなので、見せる方向性を変えて投稿というのは考慮しても良いかと。
③このまま出す
先述の意見は全て私見です。「一向に楽しくもない辛くて苦しい食事を描く」という方向性を財団メシのシリーズの中に打ち立てたいというような狙いがあるのであれば、それはそれとしてアリだと思います。個人的にはあまり嬉しくないな…というだけなので。
いずれにしても、p51さんのやろうとしているところがどこにあるのか、踏まえたうえで参考にしていただければと思います。
改稿前の版も拝読しましたが、以前より「職員がただ狂っていくだけではない」ことが伝わってきて良いと思います。
好みの面も大きいと思いますので、以下は提案と思って見てください。
最初から「臓物を食えばなんとかなるのでは?」という動機で動かすのは、初期段階としては閃きすぎな感じがします。個人的には最初はもっと動揺している気がするので、「突然腹が減って衝動的に食べてしまった」みたいなところから始めて、その直後で臓物を食うことを思いついても良いかなと思います。
文献を出すタイミングが遅いと思います。「犬のなにか」はもう理性を失っていくフェーズに入っているので、結構ノイズに感じました。もう少し序盤の段階で出せばいいのではないでしょうか。あと、文献を出すなら、そのタイミングで自分の行動を正当化するような感情を入れても面白いかなと思います(「やっぱり間違ってなかった!」みたいな)。
最後は漢字とひらがなを意図的に使い分けているのかなと思いましたが、現状だと「しんぞう」に入った瞬間が急転直下に見えたので、もう少しグラデーションで使い分けた方が良いと思います。
割とどうしようもないことですが、いわゆる「かゆうま」に近い形式なので、そこで既視感を覚える人はいると思います。設定の面で差別化できているとは思うので、個人的に大きなマイナスではないですが…
以上となります。
御批評下さった方々へ: 纏めての返信となってしまう事をご容赦頂ければ幸いです。また改稿前より良くなっている、大筋は仕上がっているとの感想を頂き大変うれしく思います。
Gokipo氏へ
記事の構造改良に関するご指摘、とても参考になりました。ありがとうございます!
kskhorn氏へ
私自身が皮肉や尊厳凌辱的な要素が含まれる記事をかなり好んでいるという事もあり、ご不快に感じる方への意識が甘くなっていました。ご指摘下さりありがとうございます!
k-cal氏へ
度重なる丁寧な解説付きのご意見、改稿方針および具体例の提示、非常にありがたく思います。日記(日誌?)前半の文章を全体的に再度見つめ直し、文章を適度に崩すことでより日記・メモ的な内容へと変更しました。また、後半の文章にも一部ややクリニカル過ぎると感じた部分があった為、細かい改修を行いました。今一度、丁寧なご指導ご鞭撻に感謝申し上げます!
以下の改稿を実施しました。
拝読しました。
現状はUV寄りのNVです。ラストの補遺2の文章はかなり好きですが、そこに至る日記の後半にいくつか違和感がありました。
>意識していないと四足歩行していたり、イライラしていると歯茎を剥き出しにしてしまう。
「歯茎を剥き出しにする」ことが「人間がやると獣っぽい動作」としてピンと来ませんでした。代替として思いつくのは「壁で爪を研ぐ」とか「喉の奥から自分のものとは思えない唸り声が出る」とかでしょうか。
また、主観的な感覚ですが、「豚を追い詰める時、四足で走っていた気がする」などと具体的な出来事にもとづいて書いた方が自然な気がします。
>あおじろい怪ぶつにおそわれた。そいつはす早くうごき、ながい爪をはやし、いろんな生ぶつのしっぽをもっていた。かいぶつのつめがわたしのあたまにちかづく、ぶちぶちというおとがあたまのそばでなっている。
「生前怪物に襲われたときの記憶を思い出した」のか「ついさっき怪物に襲われた」のか判断しづらいです。前者の方が展開に沿う気がしますが、初読時は後者だと思いました。記憶の中の感覚と現在感じている感覚が混濁している描写だと思うので、「今まさに襲われている」ことを強調すれば(さすがに襲われながら日記を書くわけないので)「襲われた記憶がフラッシュバックしてる」という解釈にもっていけるかもしれません。また、最後の日記への助走という意味では、もう少し文章を幼くしていい気がしました。
「あおじろい怪ぶつにたべられる。爪がながくていろんな生ぶつのしっぽがあって、うごきが早い。つめがあたまにちかづいてきてあたまのそばでぶちぶちおとがなっている。」くらいのイメージですが、私は自著で狂った文章を書いたことは無いのであんまり参考にならないとは思います。句読点も省いていいかもしれませんが、読みづらくなるので良し悪しですね。
御批評並びに好意的な感想を下さりありがとうございます!頂いた批評に基づき、以下の改稿を実施しました。
斬新な切り口ではあると思いますが、「食」と「獣に堕ちる」というテーマの結び付けがまだ甘いように思いました。kskhorn氏も指摘していますが、この記事における食の描写が苦を前提としているのが気になります。個人的にはどんどんと肉の旨味に憑りつかれてほしいなと思います。まず臓物料理と聞いて読者としては良いイメージを想像しませんし、ゲテモノが基本でしょう。そこを繰り返し摂取し「旨い」と受け入れてしまうことで、人間に戻るという建前を使って節操なく肉を食らう怪物が書けるのではないかと思います。
「旨い」の具体的な描写としては味に関する感想を増やしていくことだと思います。記事を俯瞰して見ても豚の大腸(加熱)以降は展開が走ってしまっているので、味についての記述を入れて再構築すると共感できた存在が共感できなくなっていく流れを自然に作れるでしょう。
御批評下さりありがとうございます。個人的に感じていた物足りなさの正体を掴むことが出来ました!またkskhorn氏から頂いたご意見と併せて、財団メシを冠しても問題ないような食のプラス方面の描写を大量に追加しました。具体的な改稿内容は以下の通りです。