地下東京における人工太陽製造のための認可計画(第88稿)

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ラジオ暦1095放送(西暦2018年以降であると考えられる。地下では正確な暦を知ることは難しい)

問題


2017年に東京で発生した超常災害から逃れるため、少なくない数の人々が地下への避難を行った。この選択が果たして正しかったのかどうかは現時点では解らないが、私は生きていて、光の下でこれを書いている。

地下生活における細かい物事を書くとそれだけで凄まじい文章量となり、核となる話への到達が遅れるため省かせてもらう。それらに関しては自著である『地下東京での生活──閉鎖型異常時空間で生き残るための知識』及び『地下東京で発見された実体群──捨てられた過去は形を変えて戻ってくる』を参照していただきたい。

さて、地下東京で生活する事は様々な問題を伴うが、それらの中で私が最も懸念しているのは「太陽が存在しない」ことだ。当たり前だが、地下に太陽は存在しない。光源を得るという目的のみであれば機械や奇跡術──最悪、原始的な火おこしで発生させることが可能であり、ただ生活するだけであればそれらで十分事足りるだろう。しかしながら、太陽の外見や印象はそうではない。人間が次世代に物事を教える時、言葉だけでもそれは可能だが絵や写真、実際に目で見るという行為は非常に重要である。人間は外部の情報の殆どを目から得ているからだ。また、例え写真や映像で太陽を見せられたとしても形あるものは何時か失われる。更に、空に燦然と輝く太陽という存在を実際に見ることで得られる印象はメディアを通して見ることでは失われてしまうだろう。空が無い地下東京で太陽という存在を子供たちに正確に伝えていくことは非常に難しく、太陽という存在は非常に曖昧になっていくことが予想される。

人類に留まらず、遍く全ての生命は太陽によって育まれてきたと言っても過言ではない。私自身、幼少期に初めて見た太陽がプロメテウスに入った切欠であり、太陽の解明と再現こそが私の悲願なのだ。1その太陽という存在を次世代に伝えることは、冷たいコンクリートと厚い土に天を塞がれたこの地下東京では叶わない。

私はこの地下で次世代へと太陽を伝えるために行動を起こす必要がある。

解決策


資源の貴重な地下で太陽を生み出す最も現実的な方法は、何らかの存在を依り代にして、太陽に関係する神格を召喚することだ。地下の太陽ともなれば神格の維持に必要な信仰は問題なく集まるだろう。サイズに関しても、主要な駅コミュニティの拠点全体(農耕施設があればそこも照らせるだろうが、現在まで人工太陽が必要に成る程大規模な農場は発見できていない)を照らせる程度の光量ならそれほど巨大にはならない。

必要となる要素は主に2つ。これら以外にも必要な要素はあるが、それらは一般的な神格存在召喚手順と大差ないため省く。

1つ目は召喚する神格の決定。出来れば人間かそれに近しい存在に友好的なエピソードを持つか、最悪邪神の類でなければ良しとする。召喚する神格を決定しておくことがなぜ必要かと言えば、対象を曖昧にした召喚儀式が如何に危険で不安定なものであるかを知っていれば解るはずだ。そうでない人物のために記しておくと、ピスティファージ実体2を含む神格以外の存在が召喚される事態を防ぐことと、儀式の成功率を上げるためだ。

私は召喚する神格候補から八咫烏神を選択しようと考えている。理由は幾つかあるものの、主な要因は「邪神的なイメージを持たれづらいこと」「日本国に所縁のある神格であること」「天照神と比較して必要な信仰が少なく、維持難易度が低いこと」特に重要なのは最後の要因で、天照神を選択しなかった理由でもある──天照神はその知名度故に地下を照らすにはオーバースペックであり、維持に必要なコスト(信仰)も多過ぎる。反面八咫烏神は天照神と比較すればそれほど知名度は無い(飽く迄も天照神との比較であることに留意、零落した神々と比較すれば八咫烏神は非常に知名度が高い部類である)が、地下を照らすには十分であり、維持に必要なコストも少なくて済む。

2つ目は神格を制御するための方法。これは依り代によって異なる。神格存在を利用する機関の代名詞とも言える神的エネルギー交換炉は、残念ながら今回の用途には不適格である。パラテクノロジーを利用した制御方法は存在するものの、資源の貴重な地下では非現実的だ。そのため今回は日本古来の方式である「巫女を媒介にする方式」すなわち「神降ろし」によって制御を行おうと考えている。

神降ろしを行う為に必要な存在、即ち「巫女」については既に確保済みである。最も、そうでもなければこの計画を立案しようとは思わなかっただろう。今回「巫女」の役目を勤めるのは鴉宮 千代という名の少女である。彼女は私が地下で保護したのだが、両親と地下へ避難した後にどういうわけかはぐれ、1人行き倒れかけていたらしい。治療の際に超常的健康状態に異常が無いか調べたのだが、精神領域が常人よりも遥かに広大であることが判明した。精神領域は生物に備わる形而上的なパーソナルスペースなのだが、彼女の精神領域は日本国民全ての精神を融合させた場合の試算結果を上回った(無論これは理論上の話であり、プロメテウス研究所で精神融合実験などは行われていない)。これは神格の強大かつ巨大な精神を収めるのに十分である。

鴉宮 千代は両親探しを手助けする代わりに助手という名目で私の下に置いている。彼女には最終的に神の受け入れを承諾させる必要があり、手段としては説得および洗脳を考えている。しかしながら、洗脳による精神領域への影響が未知数であるため、説得が妥当な手段であると考えられる。

神降ろしを行った後、八咫烏神には事前に用意した分社に対して分霊を行ってもらう。分霊によって本体と同様の権能を持った魂の一部を顕界させておくことで人工太陽は安定化し、これを持って完成とする。なぜこのような事をするかと言えば、今回神格を召喚する対象は人間の肉体であり、そのまま神格の憑依状態を継続した場合、精神に問題が発生せずとも1週間程度で肉体が炭化する為だ。

事業例


今回の計画は営利目的では無いため、当項目では「どのような立場の人々が人工太陽の恩恵を受けるか」について書いていきたいと思う。

  • 駅コミュニティの住民
  • 駅コミュニティに所属しない地下東京の住民

ハッキリ言って当項目に大した意味はない。そもそも「問題」で取り上げた懸念の殆どは虚偽だ。私は私自身の欲望の為に人工太陽を作るのであって、その結果発生する利害は全て副次的な物に過ぎない。

人工太陽は後世に知識を伝えるのみならず、精神的なよりどころの無い人々にとっては文字通り希望の光となるだろう。そしてそのような人々の信仰が人工太陽を維持するエネルギー源として機能する。

同業他者の状況は知りようも無いが、私と同じほどの太陽狂いが2人も居るとは思えない。不明。

資金の使用


人工太陽製造の際に必要となる物品とその費用について(重要度の高さ順)

  • 巫女(1人)(毎日1M3+三食分の費用) - 確保済み
  • 八咫烏神の触媒となる物品(私物の熊野牛王符) - 確保済み
  • 召喚後に八咫烏神の分霊を安置するための分社(浅草駅住民との交渉によって建設中) - 確保予定
  • 召喚儀式に使用する道具一式 - 確保済み(総額300M)

結局のところ私は己の欲望を満たすために他者を利用しようとする極悪人なのだ。自らを犠牲にして全人類に火を授けたプロメテウスの足元にも及ばないだろう。

既知の問題


鴉宮 千代の精神領域は神降ろしにも十分耐えうるものであることは既に述べたと思うが、私は彼女が何故それほど広大かつ強固な精神領域を構築するに至ったのか把握できていない。直接聞いたことはあるのだが曖昧な返答を得ることしか出来なかった。あまり不確定要素を放置したくはないが、彼女からの信頼を損ねれば計画に支障が出るためこれ以上の詮索は諦めざるを得ない。

もう一つ気になることがある。こちらは懸念に近いのだが、通常神降ろしの対象となった人間の精神領域は神格存在の強大かつ巨大な精神によって一時的に占有される。この状態は依り代となる人間の精神が神格の影響を少しづつ受けるため、長時間の憑依は精神崩壊に繋がる。しかしながら、鴉宮 千代の場合はそのセオリーが通用しない可能性がある。これがどういうことかと言えば、精神領域の広大さ故に彼女が神格存在の精神を受け止め切って・・・・・・・しまい、神格存在と鴉宮 千代の精神が融合した全く別の存在へと変貌してしまう可能性があるのだ。最も、仮にそうなったとしても人工太陽の製造が成功しさえすれば問題ではない。変貌した彼女が何をするのかは気になるが、そうなった時に私が生きているという予想は希望的観測が過ぎるだろう。

1998 jp プロメテウス goi-format


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