機織りの少女

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「皆さん、落ち着いて聞いてください。私達は世界の正常性と人類の守護を目的に……」

人面セミ怪獣のニュースから数時間後、テレビでは知らない人達が突拍子もなく、それでいて悪ふざけにしては筋が通りすぎている情報を世界に発表していた。一緒にテレビを見ていた両親が息を飲む声が聞こえてきたけれど、私は何かを期待するかのような気持ちになっていたことを覚えている。


「えーそれでは、今日で夏休み前の授業は終わりです。皆さん!お休みだからって怠けずに、しっかり勉学と運動に励んでくださいね!」

「「「はーい!」」」

15時を過ぎた教室に7月の陽射しが容赦なく入り込む。帰り支度を済ませ教室から飛び出す同級生たちを尻目に、2人の生徒が教室に残ってた。

「XXちゃんは夏休みどこ行く~?」

「うーん、多分何処にも行かないと思う」

「あー……そっか」

「私、体が弱いから……」

「ゴメンね……あっそうだ!何か欲しいものある?お土産に買ってきてあげられるかも!」

「ありがとね。じゃあ……旅行先の洋服が欲しいかな。生地だけでも嬉しい」

「やっぱり~?そう言うと思ってたよ。裁縫大好きだもんね~XXちゃん」

「えへへ……」

周りに合わせることで角を立てず、面倒を減らせることに気付いてから、私はそれへの努力を惜しまないことにした。面倒事は嫌いだ。しかし、それでも喋る肉の袋としか感じられないモノと会話するのは苦痛だった。

適当にあしらってから家に帰れば、メイドが出迎え、彼女に鞄や帽子を渡した私は自室のベッドで横になった。棚から持ってきた本を捲り、書き込まれた知識を吸い上げていく。私はこの時間が堪らなく好きだ。本は口を開かない上に、好きな時に好きなだけ使えて、使い終われば棚に戻してお仕舞い。面倒な他人よりも、この忌々しい軟弱な体よりも遥かに扱いやすい。  

「ご飯よ~」

階下から母の呼ぶ声がする。料理好きの母は使用人ではなく自分で作った料理を振る舞いたがり、これがとても美味なのだ。いつの間にか橙の陽は完全に地平線の向こう側に沈んでおり、白い月が姿を現していた。

本に栞を挟んでから閉じ、ベッドサイドテーブルに置いておく。部屋を出るときに電気を消して扉を閉めることも忘れない。

食卓に響く食器の音を聞き流しながら、丁寧な味付けの料理を腹に納めていく。そんな時、母が珍しく私に声を掛けた。

「ねえ、XXちゃん。大切なお話があるの。明日の朝、土隠神社に行きましょうね」

「解った」

「ありがと!」

「……」

父は相変わらず無口で、食べている時はほぼ確実に口を開かない。

夕食を終えた後、メイドに見守られながら入浴する。この年にもなってそんなことをしてもらうのは気恥ずかしいが、自分1人で風呂に入った後に風呂場で気絶した状態で見つかってから1人での入浴は禁止されてしまった。

体を洗いながら自分の髪や体を見れば、雪のような白色が目に入る。よく肉袋の間で「お人形さん」「外国の人っぽい」などと呼ばれているけれど、それはあながち間違いでもない。母はヨーロッパ系の白人で、その影響が出ているから。最も、アルビノでもないのに髪まで白いのは良く解らない。

入浴を終えればメイドから勉強の手解きが行われる。勉強といっても一般的な内容ではなく、家と土地に関する事柄だ。土隠家は周辺一帯を治める古い家であり、外界から民と土地を守るという役目も負っていた。しかし、私が生まれるずっと前から土隠の地に対する侵攻は行われておらず、守護者の面は今や形骸化していると言って良い。それでも土隠の家長は土地の管理者であるため、管理者教育には土隠家に関する歴史も含まれる。

正直言ってこの時間は苦痛である。メイドは他の肉袋より多少はマシであるものの、特に興味のない家と土地の歴史を教えられても何も嬉しくはない。こんな時間を取るくらいなら、さっさと寝たいというのが本音だ。

「そういえば土隠家と土隠神社ってどう関係してるの?」

「土隠神社というのは正式名称ではありません」

「そうなの!?」

「私は本件に関しましてこれ以上の情報を御嬢様に御伝えすることが出来ません。申し訳ありません」

「ふーん……」

勉強が終われば自室に戻り就寝前に少しだけ本を読む。ベッドサイドテーブルには就寝前に飲む薬と水で満たされたコップが一杯置かれている。薬を飲んでから呼び鈴でメイドを呼び出し、コップと空の薬袋を片付けさせた。

メイドが去ってから本に栞を挟んで閉じ、ベッドサイドテーブルに置いてから電気を消して、眠りにつく。


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