Tale 満月記(仮題)

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ああ、貴方が今回の異常を解決してくれるっていう機関の人たちかい?

……そう、よろしく頼むよ。前まではもっと街に人がいたんだけどね、ほとんどどっかに行っちまった。大凡、見当はつくけどね。あれが出現してから、私たちの生活はもうガタガタさ。何を信じていいのかわからない……え? あれが出現してからの経緯? 経緯ね……あれはいつだったかな。そうそう、大日本帝国で大正帝が撃たれたって話が広まった時かね。

そりゃあもう、万歳三唱さ。今がチャンスだ、三・一運動や五・四運動に続くべきだって、街の学生達は色めき立ってたよ。実際、その計画は関東軍が満州から一旦出て行ったことで飛躍的に進んで後一歩まで進められてた。ほんとに、号令ひとつで新日派の連中も、統治府も満州鉄道も火の海だったろうよ。

そしてね、あの日が来たんだ。東の方から、霧みたいな、陽炎みたいな……そんな形容し難い物がわーっと押し寄せてきて、街をあっさり飲み込んだ。うっと目を瞑って、恐る恐る目を開けたら……夢みたいだったよ。何せ、大正帝が撃たれたって聞いて、皆……そう、皆さ。私だけじゃなく、両親を関東軍に殺された子も、運動でいろめき立ってた学生も、皆が皆、大正帝が撃たれたことに対して、膝を折って顔を覆って、みんなが皆嘆きにくれたよ。そして次には学生共のリーダーはこう言った。「大正帝の仇を討つのだ! この日のために準備をしてきた! 立ち上がるんだ!」ってね。

……笑わないんだね。この話を他の人にしたら、笑われたか、売国奴めって思いっきり顔面をぶたれたんだけどね。ほら、ここちょっと腫れてるだろう? この前話したら殴られたのさ。……で、なんの話だったかな? ……わかってる、わかってるよ、覚えてる。だからそんな目は辞めとくれ。

リーダーがそう言って、みんなが慌ただしく動き始めた。この号令一つで動けるところまで来てたんだから早かったもんさ。さぁ、この街を出て仇を討つぞ! ……と、そんなとこで、急にみんなが夢から醒めたのさ。急にね。もしかしたら予兆があったのかは分からないけど。それで醒めて、さっきまで体を包んでいた浮遊感というか、高揚感みたいなのは一気に消え去って、いきなり子供の時の夢を真っ向から否定されたみたいに、やけに思い現実感にのし掛かられた。その時のあいつらと言ったら……目も当てられなかった。一時の気の迷いとはいえ、ショックを受けて泣くだけならまだマシ、そんなことを口走るなんて恥だと言って自殺するやつ、俺たちを止めなかったこいつは本当のリーダーじゃないだなんて言ってリーダーを咎める奴……前まで日本に対する悪口で酒を飲んで肩を組んで一晩明かせるような奴らの関係が、一睡の夢みたいな出来事であっさり崩壊したのさ……。

それから、皆その日のことを忘れるように日常に戻って行った。なんかの間違いだ、それこそ、みんなで一斉に見た白昼夢だってね。学生共の運動も、あれ以降何回か持ち上がったらしいけど、結局すぐに頓挫したらしい。

そんなこんなで、数週間が経ったかね……そう、また来たのさ。あの霧とも陽炎とも似つかない、東の夢がね。

今回はなんともなかった。いやなんともなかったというのは正しくないかな? ずっと夢の中みたいな、ふわふわとした幸せなあの感じがずっと付き纏ってた。夢が覚めそうで覚めない、あの夢の最後見たいな、白昼夢みたいな感覚だよ。

そして、それもまた終わった。周りの空気がいきなり重たくなったのを覚えてるよ。

その時から、もう皆話題がその出来事のことで持ちきりだった。やれ日本軍の最新兵器だの、超常現象だの、色んな話が上がっては消えて、そしてこれと言った確証を得ないまま、数週間後にはまたその東の夢に浸らされた。

そんな日の繰り返しさ。いつしか皆、抵抗も忘れて、ただただ東の夢に浸らされることしかできなかった。夢の間隔もだんだん短くなって、夢に浸る時間も長くなっていった。そうなるにつれて、街から人は1人、また1人と消えて行ったよ。

……何? あなたはこの街を出ていかないのかって?


………………誰が行くもんか。ここを出たところで、私の居場所なんてありはしないんだよ。


ああ、あいつらの気持ちもわからなくもないんだよ。私だって、もう今が夢か現か曖昧だし、今が現だと確信したら、頭の片隅のどこかで、なぜ自分は今夢を見ていないのかと思ってしまってるんだ。

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