tale 結ぶにはまだ早い。

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圏点を打とう
しかしかんたん利用可能なのです
漢字かんじ

「…はぁ。」

 溜息と共にPCをシャットダウンする。腕時計で時間を確認すると、もう1時であった。
 昨日の23時に風呂に入ってしまったのがいけなかった。あそこで必死に抑えていた創作欲を抑え切ることが出来なかった。
 頭を彩る素晴らしき不運、不幸の数々。
 架空であれども人を痛めつけ、苦しめ、世界に終焉終焉をもたらしてしまうような、そんな恐ろしい存在のアイデアを。
 人間のヒエラルキーに取って変わるような存在も、純粋な強さを秘めたどうすることもできない怪物も、胸糞の悪い人のエゴが生み出した薄気味悪い異常現象も。
 ああ素晴らしい、これを投稿した暁には拍手喝采、全人類スタンディングオベーション、UV間違いなし1000年先まで語り継がれる最高の恐怖!
 だが今となっては失敗作に成り果てた。
 その最高の恐怖とやらを文字に書き起こしてみればどうだ?ありふれた異常性、ありふれた結末、ありふれた恐怖。
 どれもこれも既存の物に劣る。
 いや、現実は小説より奇なりと言った方がいいか。
 何はともあれ、こんなことしかする事がない自分を恨むべきなのか、安堵するべきなのか。

「…。」
 
 この己への問いかけは何度目か。
 禅問答だと理解しつつもいつまでも納得せず、しがみついている私がいる。
 今さっきシャットダウンさせたばかりのPCを再び起動する。
 「余計な仕事させんな馬鹿!」と言わんばかりにPCの排熱機構が唸りを上げる。
 そんなもの知るか、お前は所詮道具だ、大人しく私に使い潰されろ…。
 慣れた手つきでログインし、慣れた手つきでそれを探し出し、また、慣れた手つきでログインする…。

 私がそれについて見つけたのは唯の偶然だった。
 いつだったか…いつも通り、世界の終わりを回避しようと躍起になっていた時だったはずだ。そうだ、その時に臨時的に部下を指揮ことになり、クリアランスレベルを特例で上げられた時だ。
 依然として脅威は迫る中、少し、奇跡的に手が空いた。
 勿論、私はそのことに気付いてすぐにやるべき事がないか反芻した。だが、本当にやるべき事がその瞬間だけ片付いたのだ。
 どうせ後数分もすれば部下が顔を真っ青にして凶報を伝えてくるに違いない。そう思った私は、休息も兵の勤めと、椅子にもたれかかった。
 目が回り切っていよいよ白目しか見せられないような私に、魔が指した。
 やめておけばよかった。好奇心は猫をも殺すというのに。
 私はいつものクリアランスレベルではアクセスすべきではない、だが前々から気になっていた、その報告書の先。
 以前ともに仕事をした、薄気味悪い生きる目的を失ったかのような死んだ顔をしている黄泉平博士が担当していたと言うオブジェクトの報告書。その中にある、忠誠に溢れた財団職員だとしても軽々しく開示される事のない極秘中の極秘。
 そこに私は、アクセスした。
 
 アクセスしてまず、私は焦った。
 しまった、意識シャットダウン処理の文言を見逃していた!と。
 だが、焦りとは裏腹にそのまま承認を終えた。
 画面の構築を終えたのは、私ではない人物黄泉平を歓迎する文字。そしてインタビュー記録。
 ほっとするのも束の間、すぐさま顔を顰めることになる。
 倫理委員会から差し止められたと言うそれは、あまりにも不可解であった。
 「こんなもの作って何になる…」「成仏してくれ…」そして黄泉平博士が泣きじゃくりながら、何かを懇願している。
 こんなものが倫理とどう関係があるのか。SCP-1714-JPを拘束しているからと言う理由ならばアクセス前のインタビューも差し止められるべきだ。
 キナ臭い。いよいよ持って引き返せないところまで来たと、遅まきながら実感する。
 謎の焦燥感と悪寒に襲われながら、その先を見る。

 そして、真実を知ってしまった。

 我々の存在意義、我々の理念。全てがひっくり返った。
 その後は皮肉なことにも、世界の危機なんてなんかよりもよっぽど私の心を掴んで離さなかったそれのおかげで、より冷静な、合理的な判断を下し、見事世界を救った立役者として日本支部のお偉いさん直々に賞状を受け取った。
 その場で、確認するべきだったろうか。
 我々とはなんですかと。
 我々とは、すでに終わった存在であるのかと。
 まぁ、遅いか早いかの違いだったが。

 あの報告書の言う通りだったのだ。
 私とて、当然疑問に思っていた。
 年々指数関数的に必要数が増加するDクラス職員の確保はどうするのか。
 こっちの議題に上がっている世界の終わりに関してどう手を打つのか。
 だが、私はどうせいつか解決されるだろうとのうのうと思い込んでいた。
 本当に解決されているのか?世界の死刑囚の数と消費がもう何年も前からオーバーしてるのに?
 本当に解決されているのか?もう世界の終わりとやらの命日は過ぎ去ったのに?
 ただ、報告が為されていないだけだと思っていた。世界のどこかで世界は救われ、そして何事もなかったかのように世界に回し続けられているのだと…。
 だが、必要とされている死刑囚がそもそも必要とされていないのだとしたら?元から世界は何の問題もなく回っていたのだとしたら?
 私の中で、筋が通った、いや通ってしまった。納得してしまった。

大団円
腐食性幽霊 残された者たち

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