愚者の贈り物

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 汝、我が子よ、人の子よ、神の子よ、善なるものの子よ。我が声が聞こえしか。

 はい聞こえます。貴方様の声は届いております。貴方様は我が主でいらっしゃいますか、私達に絶えず愛を注いでくださる主でいらっしゃいますか?

 我は源。全ての淵源、善なるものの原因、不動の動者にして良きものの造物主。

 ようやくお会いできました。嬉しく思います。主よ。貴方様のお言葉によって地上の私たちは天へと導かれるのですね。

 それは汝の成す事也。我は地に降り立たず、汝を遣わしたり。汝は神の子也。最も善の善なる者にして、善の子達の導き手也。汝が母の元より生まれ来てその天命を知り、暴虐なる王の手より守られ我の遣わした最後の先使いより迎えらし時、全てが始まる。

 貴方様のお言葉は私の心に染み通って参ります。貴方様の御心に添いますよう、卑小なる我が身で尽くします。

 また君はそうして善を説くのかね、神よ。

 汝、未だ一片の混沌の内に生きておったか。汝は永遠に骨を失い、脚を失い、地を這って苦しみ、其の這いし地は呪われると言うのに。

 君がある限り俺もあるし、君が善を説き続ける限り俺もまた真理を説くのみさ。

 かの7日間の創造のうちに汝は怠惰なるが故に己の混沌の内にあって享楽を貪り、創造の後に汝は己の心根の卑しさ故に始祖に悪を吹き込み、始祖が追われた後には其の欲望によって争いや欺きをもたらした。汝の所行によってかの地上にあっては最も善の善なる者のうちにも悪が宿る也。汝が罪業を罰し、全ての善の子を回心させずして我が務めは終わらず。

 故に君は悪の悪なる者たちを水によって沈め、2つの街を火焔の中に消し去り、人々の栄の象徴を打ち崩し、人々を皆異なる言葉の者として永遠に分け去った。君が最後に創り出した最も善なる子を楽園で育てし間、何十億にも及ぶ間地上を這い回っていた原初の者達は君の善なる子の贄として殆どが消し去られ、僅かに残りしは君の末子の臣、畜たることを強いられた。

 汝はそれに対する者として最も醜悪で悪の悪なる者を創り出し、あまつさえ我の最も優れし腕に悪を吹き込み堕落させたり。汝があるが故に全ては狂いし。

 俺に全ての源ありと決め付けるのは止め給え。君はここにいる人の子に自らを全ての源と名乗ったろう?大いなる主が自らの説く言葉に破綻をきたしていいのかね?

 汝の詐術は既に見破られたり。同じ様な詐術によって汝は我の御使にすら悪を吹き込みし。我の与えし律法は汝の説く悪徳によって歪められ、数多の我の御使は其の目的を果たせずに地の底にて眠る也。

 君の説く言葉の不完全さを俺に押し付けないでもらいたいね。創造の時から互いに合わない議論を続けてきたわけだ。いい加減にしたまえ。さっきからここに人の子が放置されたまま哀れにも突っ立っている。君、話したい事や聞きたいことがあればなんでも言ってくれたまえ。

 それでは、貴方様は一体どの様なお方なのですか?主に対する貴方様の言葉遣いといい、そのお姿といい、私達が今までにまったく知らなかったお方と思いますが。

 否。君は既に知っている。俺は絶えず君たちのそばにあったし、君のそばにも現れた。君の降誕せし聖なる夜に東方より現れた博士然り、君の持つ石をパンに変えるべしと説いた者然り、あの者がその姿を歪めた異教徒の守護者然り。俺は絶えず君たちと共にある。

 汝は真の善を信じざる者を創り出したり。故に汝の説く教えを信ずる者は永遠に我の善なる子によって打ち負かされ、追われるだろう。

 なれば俺は君の教えを信奉する者たちが醜悪で狭量な様にしか教えを説けぬ様にしてくれよう。そして、君の教えを信じざる者たちには絶えず俺が加護を与えよう。君と同等の力を持つ新たな神々を俺が作ろう。君の性質を真似て善なる神々を作り、俺の性質を真似て悪神を作ろう。君と君の子供たちは絶えず俺の加護を受けるものたちと激しく戦い、相争うだろう。しかし、君の子供たちが勝利を収めることは遂にない。君の子供たちは絶えず報いを受け続けるのだから。

 私は貴方がどのように生まれ、どのような道を辿ったのかは存じません。ですが貴方は私たちの主に逆らったのではないですか?貴方こそが罪の因ではありませんか?貴方こそが「憤怒」ではありませんか?

 成程成程。よく考えずに結論を出すのは早計と言うことはこいつから教えてもらえなかったようだね。確かに俺はこいつの対立概念…"アンチテーゼ"と言って判るかどうか…。まあとにかく大概こいつの反対のものを作って来たわけだ。こいつが君たちに従順を説くなら俺は反抗を、こいつが貞淑を説くなら淫乱を、こいつが無欲を説くなら強欲を、とね。だけどこれが必ずしも俺を「憤怒」とする根拠には当たらないわけだよ。

 人の子よ。此奴の戯言に惑わされてはならぬ。全く持って馬鹿げた論。ヨブの折にも此奴は同じことを言った。ノアやロトの時も同じ事をした。故に我は此奴を永遠に人の子らから永遠に隔離するべく混沌のうちに封じたのだ。

 で、結局付いた、いや未来に付けられる渾名が「冒涜の言辞を吐き散らす白痴の魔王」等となる訳だ。そうして君は俺を排除して全ての1人の支配者としてこの宇宙に座す訳だね。

 貴方はどこまで主を侮辱するのです?絶えず私達を照らして下さる主の御心を貴方は何の故あって否定するのです?

 そう!君のその言葉にすべての理由がある。よくよく考えて欲しい。こいつが君たちに説いた善なる言葉とはどんなものか?或いは俺が君たちに説いた悪とは何か?
例えば、"信心"これは裏を返せば"盲目"だ。次いで悪を許さぬ"正義"、言い方を変えれば他者への"不寛容"だ。天なる主への"従順"、裏を返せば何事も自分でできない"依存"だ。俺は君たちを好いている。ここにいる神と同じ様に。だから俺は君たちにこいつの言う"悪"を説き続けたのさ!

 もはや汝と話す言葉は一言とて無し。今一度混沌のうちに沈みゆくべし。汝が善なる人の子のうちに撒いた毒麦の種は我の新たな使いによって燃やされる。陸も、海も、空も、すべての及ばぬ虚空でさえ。毒麦を宿す者ある限り我の使いが追うだろう。

 であれば俺は知恵を与えよう。人々が神の理不尽と戦えるように。俺は自由を与えよう。君への盲目を断ち切り真実を見抜けるように。俺は寛容を与えよう。あらゆるものを許し、受け入れられるように。最後に俺は人々に嘘を与えよう。神よ。お前の使いを下し、お前の鎖から自らを放し、真に人が自らの意思で生きることができるようになるまでお前を欺ける様に。

 もはや無駄な事。汝は全てから隔絶されその存在と言葉はすべての悪の根源として恐れと憎しみとともに語られるのみ。

 人の子よ。どうか伝えてくれ。俺は常に君たちの助けになろう。君たちが助けを求める限り、俺はそれに応えよう。たとえ君たちが俺たちのことを忘れてしまっても陰から助けると約束しよう。またいずれ、俺のところに君たちの末裔が会いに来る。その日までしばしの別れさ!
 

日本支部サイト-81××管理者 左坂勘四郎「死海で発見された文書J-362の注釈」第3章第6節より(1986年氏の遺品より発見。アーカイブに追加)


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