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日本支部理事会に関する覚書-財団日本支部理事 獅子

私は今、死の床においてこの書置きを残している。冒頭に書いたと思うが念のため今一度私の身分を記しておく。
私は"獅子"という名前で財団日本支部理事会に籍を置いている。私はここが「81臨時ブロック」から「日本支部」へと改組された際、最年少の監督官であり、そのまま初代理事会のメンバーとして引き続き運営に携わることになった。
私や他の理事たちの本名を書く事は差し控えておく。もしこの書置きがほかの理事に発見された場合、全ては抹殺され、何もかも無になってしまうだろうから。

さて、続きを書こう。1951年3月、当時の81臨時ブロック本部施設(現サイト-8100)に呼びだされた私は、係官から一つの通達を渡された。曰く
「81臨時ブロックを財団本部の直轄域から自治権を持つ日本支部の管轄に移行する。」
私は、日本の管轄がGHQを通した財団本部から、自治権を持つ「日本支部」に移管されることに強い喜びを覚えていた。監督官の会議でも常に蔑まれた視線を欧米の監督官から浴び、敗戦国民と軽んじられていたことも手伝って、私は精力的に新しい支部の組織作りに参加した。各サイト同士の連携や移管に伴う人事異動、日本の風土に合わせた組織改革...求められることは何でもやった。監督官たちの会議でも、積極的にイニシアティヴを握り1日でも早い移管を実現しようとした。
翌年4月9日、ブロック本部に再び呼びだされた私を迎えたのは、GHQのエッカート大佐だった。エッカート大佐はGHQの大佐であると同時に、財団の重要職員でもあり81臨時ブロックの首席監督官として、財団本部とブロック、そして連合国の各政府との連絡役を務めていた。私たちにとっては上司にあたる人物である。大佐は言った。
「ようこそ監督官ナンバー12。今日はとても良い日になるぞ。さあ会議室へ急ぎたまえ。」
大佐と共に会議室へ入ると席には既に6人が腰かけていた。
「大佐、私の席はどこです?」
私が問うと大佐は座長席を指さして言った。
「君の席はあそこだ。」
私が訝りながらもその席に座ると、エヘンと咳払いをして大佐が話し始めた。
「諸君よくぞ集まってくれた。知っての通り28日を期して条約が発効され、我々は日本から撤退する。従って今までの間財団本部によって直接管理されてきた、日本におけるオブジェクト及び技術を新たに設置された『SCP財団日本支部』に移管されることになった。」
ここまでは私も知っていることだった。しかし、その次の瞬間、大佐はとんでもない事を発言したのだ。
「諸君にはその日本支部における新たな司令官となってもらいたい。」
思わず私は椅子から立ち上がってしまった。別に大佐が流暢な日本語で喋ったからではない。またその内容に対してでもない。私が驚いたのは、「この場に一人も監督官がいない」ということなのだ。イギリス軍の士官やアメリカの科学者、或いは蒐集院の重鎮や異常事例調査局の元捜査官もおらず、この場にいるのは幼気な少女に妖艶な美女、20歳前とも見える青年に真っ黒な頭巾を被った誰かなど凡そ専門家には見えぬ、しかも財団の中において私があったこともない様な人間たちが 新たな司令官に任命されたのだ 。しかし、私の他には皆一切反応を示すことなく、それどころかさも当然と言わんばかりであった。いたたまれなくなった私は多くの疑念を抱きながらも席に戻った。
大佐はなおも続ける。
「それについて私は君たちの座長として彼を推す。」
今度こそ私は何も言えなかった。最早抗する気力もなく肩を落として椅子へもたれかかった。
「異議は無いようだな。では、あとは諸君らにまかせるとしよう。私はほかにも仕事があるのでな。」
さんざん場を引っ掻き回した挙句無責任にも大佐は部屋から出て行ってしまった。
暫しの沈黙。ひとまずなんとかせねばと私は口を開いた。
「それでは不肖ながら私が座長を拝命したので会議を仕切らせていただきます。まずは自己紹介からしましょうか。私の名前は...」
「貴様の俗名なんぞに興味はない」
私の勇気は奥の席の少女によって一刀両断され、再び沈黙の帳が下りた。針の落ちる音も聞こえようかという沈黙の中で、ただ時間だけが過ぎていった。
「あの、座長さん。まずはお手元の資料をご確認されては?」
私から見て右側に座っていた若い男がにこやかに、それでいて僅かに嘲弄を含んだ声で言った。成程確かに机の上までは気が回らなかった。私が机の上に目を落とすと
"獅子"
と大きく書かれた冊子が目に入った。
「これは?」
私が聞くとその男は、
「それがあなたの名前です。あなたの日本支部における名前は今から"獅子"です。ちなみに私の名前は"稲妻"それから私の向かい側にいる真っ黒な頭巾を被っているのが"升"、そして私の隣に座っている美人が...」
「"鳳林"よ。よろしくね"獅子"さん?」
妖艶な美女が私に微笑みかけた。しかし美女の笑顔にもかかわらず私の背には怖気が走った。
「そして"升"の隣が...」
「"若山"だ。」
立ち上がれば200cmはあろうかという偉丈夫が言った。私はただ会釈を返すしかなかった。
「そして"鳳林"の隣にいるのが"千鳥"。」
角隠しを付けた白無垢の女らしき人が会釈をした。おそらく女であろうが顔はよくわからない。
「で、さいごに...」
「"鵺"じゃ。"獅子"よ。」
先ほど私の勇気を無にした少女が言った。よくよく見ればやはり10歳かそこらにしか見えない。
「これで全員の名乗りが終わりましたね。さて...座長さん続いて話し合いをしたいのですが、まずは私たちの名前から決めませんか?」
私は
「それでしたら私に一つ案があります。『理事会』というのはどうでしょう?日本人には耳なじみの良い言葉ですし、規模としてもちょうどいいのではないかと思うのですが...」
「いいですね!私は賛成ですよ。ほかの方々はどうです?」
"稲妻"が問うと"若山"が
「賛成。」
とだけ簡潔に答えた。その後、
「あたしは賛成ね。」
「ま、よいのではないかの」
と"鳳林"と"鵺"が答えた。"升"と"千鳥"は何も言わなかったが、異議は唱えなかった。
「では、今から私たちの名前は『財団日本支部理事会』ですね。それではさっそく理事会メンバーの連名表を作りましょう。正式なものはまた今度作るとして...」
そう言うと"稲妻"は手際よく紙と筆、墨を用意した。そして
「理事会筆頭のあなたからどうぞ。」
と私に差し出してきた。私はそこに「日本支部理事 "獅子"」と署名した。その後も署名はつつがなく行われ続いて各々の役割について話し合いがもたれた。私こと"獅子"の役割は「理事会を主宰し一般的な業務に対して認可と承認を与える。」事と決した。この他にも"若山"は"獅子"の補佐、"鳳林"は書記、"升"は人事、"千鳥"は財務、"稲妻"は機動部隊の総司令官、"鵺"は技術開発の指揮運営と決まった。かくして日本支部と理事会はスタートした。

さて、ここまで非常に長ったらしく日本支部と理事会の成り立ちについて書いてきたがむしろ本題はここからである。4月28日、条約発効に伴って日本を離れることになったエッカート大佐を見送るため私は波止場に来ていた。大佐はシワ一つない軍服を着こみ兵士たちから敬礼を受けながらこちらへ近づいてきた。私はこの機にあらゆる疑問を彼にぶつけるつもりだった。何故彼らを理事会のメンバーにしたのか、彼らは何者か、あの称号はだれが決めたのか。あらゆる疑問を解決するつもりだった。しかし大佐は、私の所へ来るなりたった一言だけ
「あの理事会に『人間』は君一人だけだ。」そうささやくとさっさと兵士たちの群れに溶けて消えてしまった。

エッカート大佐と再会したのはそれから20年後の話である。そのころ私は、いつまで経っても姿の変わらない他の理事のことと、日本支部創設の際に行方不明になった5名の日本人監督官の行方を調査している最中であったが担当していた補佐官と調査チームが丸ごと殺害されるか行方不明になってしまった為、手詰まりの状態となっていた。さらにもう一つの問題、即ちほかの理事たちの情報が一向に集まらないということである。彼らの身体、能力、はたまた過去。ありとあらゆる権限を駆使してさえ私は彼らについて何らの情報も得られなかった。正直なところもう諦めてしまおうかというときに、何とGOCのエージェントが接触してきたのだ。彼は言った。
「きっとあなたの希望に添えるでしょう。」
私は正直なところ半信半疑、いや九割疑っていたがこの状態が何か動くなら、と彼の口車に乗った。翌日、私は彼の案内のもと、GOC極東支部の管理下にあるというビルに向かった。そこの地下室、1970年代とはとても思えないほど未来的な部屋で大佐は私のことを待っていた。
「大佐、大佐ですか!」
私は驚愕のあまり言葉を失った。大佐は昔と何一つ変わらない、しわ一つない若々しい姿で射すくめるような青い瞳で私を見ているのである。
「やあ、久しぶりだね、"獅子"君。」
対する私は髪はすでに真っ白、黒縁の眼鏡の度はあの頃よりはるかに強くなっていた。かくも老いさらばえた私に対して彼のこの若々しさはどういうことであろうか。
「今日君をここにご招待したのはだね、君に全てを知ってもらうためだよ。」
私の心の中を見透かしたように大佐は言った。
「全て、とは一体何です?」
大佐は黙って立ち上がると、モニターのスイッチを入れて静かに話し始めた。
「まず、君は『SCPオブジェクト』とは何だと思うね?」
唐突な問いに私は頭が回らなかったかったが、
「ええと、現状の科学では説明できない異常な物品、存在、現象の事でしょうか。」
「正解だ。ではもう一つ問おう。彼らは一体どこから来たと思うかね。」
今度こそ私は言葉を失った。絶句した私にかまわず大佐はつづけた。
「我々は長きにわたる調査、研究の末一つの結論にたどり着いた。即ちあらゆる異常存在は全て一つの根源から生み出されている。」
私はもう何も言わずただただ大佐の話に聞き入った。
「我々はその存在を"彼ら"と呼称している。そして、人間が生み出したものも含めてすべての異常は"彼ら"へとつながっているのだ。」
大佐は水を飲むとさらに続ける。
「"彼ら"が何者なのか、そして目的は何なのか、全ては分からない。だが、確かなのはあらゆるオブジェクトは"彼ら"によって生み出された兵器であるということそして日本支部も財団本部も、果てはO5評議会に至るまで何もかもが"彼ら"の手のひらで踊る哀れな道化に過ぎないということだ。よくよく考えてもみたまえ、財団というのは自ら進んで人類を滅ぼしかねない危険物を大量に抱え込んでいる。あれら全てが突然、統一された指揮の下、一斉に収容違反を起こしたら?現状世界に財団レベルの組織はほとんど存在しない。砦はもろくも崩れ、人類は滅亡への道をひた走るようになる。だが、そんなことはO5評議会は、とっくに理解している。理解した上で、収容を続けているんだ。なぜか、それは財団の目的が「毒を以て毒を制す」ことにあるからだ。」
その一言は私に致命傷を与えた。今迄私たちが成して来た事は全く違う目的のためだったのだ。
「財団は、一刻も早く"彼ら"との決着をつけるために"彼ら"の技術や力を利用した。一方GOCは、極力リスクを排する為、"人間の技術"のみで"彼ら"を完全にこの世界から放逐しようとしている。つまるところ、GOCにしろ、財団にしろ目的は同じだ。」
「故にO5評議会と108評議会は裏で手を結び、新たな計画を始動させた。日本支部の独立もその一環に過ぎない。」
「では、その計画の中で日本支部はどのような役割を与えられたのですか?そもそも、日本支部とは何なのですか?」
私は、息も絶え絶えに尋ねた。そしてその要望はかなえられた。大佐は教えてくれた日本支部の正体を。

「君はこいつを知っているかね?」
そう言って大佐が私に投げてよこしたのは、一枚の薄い紙だった。そこには唯一文、
「ニイタカヤマノボレ1208」
とだけ印刷されていた。
「いったいこれは?」
私は問うた。
「かの忌まわしい戦争はこのたった一通の電文から始まった。パールハーバーを「アカギ」以下帝国の空戦隊が奇襲して私たちは君たちとの戦端を開いた。だが、そいつは単なる表面的な事象の発露に過ぎない。」
ここで大佐は私をじっと見た。私は無言で大佐に続きを促した。
「わが祖国はパールハーバーに強大な戦力を集中させておきながら突然の奇襲にまともに応戦できずに多くの同胞を海に沈めた。だがかくも鮮やかにあの作戦が成功したのは私達が油断していたばかりではないということくらい君にもわかるだろう?」
ようやく私にも大佐の言わんとすることが分かってきた。そして、
「作戦が成功したのはかのヤマモト提督の綿密な計画と、勤勉なパイロット達が厳しい訓練で錬度を高めていたからだ。そして、その準備の積み重ねをあの電文で一気に解放したというわけだ。」
「ということは、つまり・・・?」
「そう、"彼ら"は同じ事をしている。統一された意思の下、一つ一つ準備を積み上げ、合図があり次第全てが動き出す。さらに言えばその準備はすでに最終段階、つまり合図さえあればすぐにでも奴らは動き出す。」
「"獅子"こそが其の鍵だと?」
「その通りだ。日本人監督官がみな処分されたのも全ては"獅子"、ひいては日本支部理事会という全ての鍵を巡る私達と"彼ら"の暗闘の結果だ。だが結果はこの通り、守れたのは君一人、しかも鍵は九割九分敵の手中だ。」
「ということは私以外の理事はみな敵の手先なのですか?」
「正確に言えば日本支部の理事諸君は"彼ら"が直接送り込んできた戦闘員だ。尤も彼らを問い詰めるのは無駄だよ。なぜなら"彼ら"に関する情報は皆一切が深い記憶の底へ封じ込められていて『自分たちは日本支部の人間だ』という情報を信じ込まされているからだ。」
「なぜそんなことが分かったのです?」
「日本支部の『人型オブジェクト』SCP-████-JPををGOCで尋問した際、奴が口走ったのだ。薬剤と魔術で朦朧とする中、奴はそれだけをハッキリと。」
「何と言ったのですか?」
「『すべてはあと一人。"獅子"の子は谷底から這い上がって親を討つ。同時にすべては目を覚ます。』」

これで書くべきことは書き終えた。以降の在任期間、私は、情報の収集と隠蔽に努めた。そして得た情報のすべてをサイト-81██内の地下施設へ集積した。それから私は、理事としての権限をフルに行使し一つの絶対的なルールを作った。
「"獅子"の地位は"一切の身体強化も特殊な能力も持たない"人間にのみ継承される。」
なぜなら、"獅子"が人間である限り、存在自体が"彼ら"を留める楔となるからだ。願わくばできうる限り長く、"彼ら"を止めておいて貰いたい。獅子の一日が人類の命脈を一日伸ばすのだから。
尤も、全てが嘘である可能性もある。エッカート大佐が私に真実を教える必要はどこにもないし、はたまた全ては私の妄想でしかないかもしれない。だが、その真実を知るのには私は年を取りすぎた。あとは任せて、私は眠ろう。この書置きはサイト-81██と"獅子"の執務室に隠すことにする。では、さらば。

(このTaleは私のヘッドカノンが9割を占めています。また、日本支部理事会の設定はKwanaさんの設定を使わせていただきました。)

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