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────何か変わると思ってた。でも何も変わらなかった。
小学生の時、父が死んだ。母が死んだ。俺が友達の家に遊びに行っている間、買い物に向かった二人は交通事故であっけなく死んだ。俺は一人になった。
葬式は叔父が取り仕切ってくれた。俺はただ、しんみりとした顔をして、父の写真を持って一番前の席に座っていた。きっとお坊さんがありがたい話とやらをしてくれてたのだろうが、俺には何も響かなかった。
────██は手段だった。目的ではなく、ただもう一度出会う為の。
中学生になっても俺は親の死を引きずっていた。いつも暗い顔をして、世の中の事には何も興味がないって顔をしていた。でも、そんな俺にも友達が出来た。
そいつは変な奴だった。俺みたいな奴に関わってくるんだから変な奴なのは当然なのだが、それに輪をかけて変な奴だった。いっつも何か楽しい事がないか探していて、それ以上に楽しくない奴を楽しくさせたいらしかった。
────俺はこんな事を求めちゃいなかった。俺はただ、君と。
ある日、あいつは学校に来なくなった。俺は狼狽えた。何故あいつが学校に来なくなったのか、訳を考えずもせず家へ向かった。そこで、あいつに出会った。
あいつは酷くやつれていた。目の下には濃い隈があって、それ以上に泣きはらした痕が目立っていた。俺はあいつに何があったのか、無神経にも直接聞いた。
────俺たちは幸せになりたかった。なのに、どうしてこんな。
俺とあいつは、同じ親無し子になった。同じになったのに、何も嬉しくなんてなかった。俺はただ、アイツが楽しい事を探している姿を見たかっただけだった。あいつが俺みたいになってる姿なんて、見たくはなかった。
俺はあいつを元気づけようと色々試した。前までのあいつのように楽しい事を探しては勧めてみた。そんな試みは、乾いた作り笑いしか生み出さなかった。
────あの時と何も変わっちゃいなかった。俺はまた独りぼっちになった。
そんな日がどれだけ続いただろうか。俺の説得であいつは学校に来るようになった。学校でもあいつは元気がない作り笑いしか浮かべなかった。今思えばあいつは最初から決めていたんだろう。
放課後、あいつに誘われて屋上に向かった。嫌な予感はしていた。だけどあいつの誘いを断る気にはなれなかった。あいつは屋上に着くなり、話を切り出してきた。「ねぇ、一緒に死なない?」と。
────俺はどうすべきだったんだろう。俺には何が出来たんだろう。
俺は困惑した。俺はあいつを説得しようとして、けど何も言葉が出てこなかった。君となら。君がこれ以上、悲しまないなら。君の悲しんだ顔をこれ以上見ないで済むなら。俺はあいつの手を取った。
怖かった。けど、それ以上に安心感があった。やっと終われるんだと思った。向こうで、俺と、お母さんと、お父さんと、あいつと笑って過ごせるんだと思った。
────君にただ笑って欲しかった。君に楽しい事を見つけて欲しかった。
浮遊感の後、痛みがあった。辛うじて見える視界には、あいつの潰れた顔があった。終わりなんだ。そう思った。
あいつの顔の後ろに、何かがいた。酷く歪んだ人形のような何かが。それが、あいつを。
────なのに、それなのに、どうして俺だけが残されたんだろう。
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アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:5825027 (14 Mar 2020 11:08)
この文章の真上の空白、もう少し幅を増やしてゆとり作ってみるのもいいんじゃないかなと思いました。が、これは僕の好みにかなり触れてる部分なので、「いやないわ」と思ったなら無視していただいて大丈夫です。
内容はとても好きなものでした。全体通して中々に強いものだと感じています。
批評ありがとうございます。内容を好きと言って頂けて安心です。
文章のレイアウトについてですが、自分としても比較的短めであること、──部分が頻繁に挟まることがあって気になっていた部分です。そういった批評が出るということは改善した方がよさそうなので、一度練り直してみます。