Qコン出場Tale「歪さの無い正常な暮らし」

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「うん。こっちも今準備中。おっけー、それじゃあ駅でまた!」

\Pi !/

今日は土曜日。待ちに待った休日で、ショッピングの約束の日。

財布も定期もカバンに入れたね、着ていく服も大丈夫。夏用ブラウスに七分丈ジーンズ。

……ふと顔上げると、時計は午前11時。

おっけー、そろそろ食事かな?

自分の部屋から、駆け足気味に階段スタタタタ1階へ。廊下のスペースをグルっとターンで、キッチンスペースに突撃だ。ダイニングテーブルの奥、多分シリアルか何かあるでしょ。

背伸びして、上のキッチン棚開けてガサゴソ。

「えーと、……ヨシあった!」


ピョン、と最後に足りない高さを軽めに跳ねて、赤と黄色のシリアル箱を手に取る。パケ絵が何かスプーン咥えた鳥のやつ。

次に食器棚から深めの皿を出そうとしてたら……

「……あんたねぇ……。朝も昼もシリアルじゃ身体に悪いでしょ。」

あーもううるさいんだよな母さん。

「はいはい分かりましたよー。でも今時間急ぐの。」

手に取ったお皿を頭の横でフリフリ、ちょっと "やれやれ" 感を出してみる。

「ついこの前も、具合悪いー、って言ってたじゃないの……あんま激しいダイエットしてると良くないよ?」

えぇえぇそうです、そうですよ。
でも、もう治りましたよーだ。

「ダイエットもうしてないよー?大体それもダイエット用のシリアルじゃないし。」

そう言いながら後ろ向いたら数秒開けて、

「何、ダイエットやめてたの。」


意外だ〜、みたいに固まりながら言ってる母さんと目が合った。

「体の調子戻ったらまたやる。」

はぁ〜、と "呆れました" 風の母さんは、「ちょっと待ってなさい。」と私の手からシリアル没収して棚にリターン。

なんだよ〜、と思ってたら母さんは、冷蔵庫から真空パックを取り出して来て、中身を皿に移してレンジに入れる。田舎の祖母が「低カロリーで栄養タップリなんだよ。」と持ってきたドジョウの蒲焼だ。椅子に座って待てと言われて、目の前にチンした蒲焼が置かれる。

「はいは〜い。いただきま〜す。」

……ちょっと苦い。ウナギの方が美味しいのに。





……とりあえず、そう思いながらも食べてはいるけど。

何だっけ、祖母はドジョウを持って来た時、「ドジョウってのはね、昔から食べられてるし、それに縁起もいい魚なんだよ?」とか言ってたんだよな。

それを思い出しつつ私は……

「縁起って婆ちゃんの田舎での話でしょーに。……大体 "泥鰌飛ばし" って何なのさ。」

「良いじゃないのー。伝統のお祭りなんだから。」

……母さんはすかさずナチュラルフォローしたけど、私的にはやっぱり不満だ。



さて時は経って13時、サナエとの待ち合わせに間に合うように。最寄りから数駅地下鉄に揺られて今ちょうどホームに降りたところで、まだ少し時間に余裕は持てそうな感じ。

……サナエは都市伝説好きだから、今日も何かそういう話を仕入れてるかも?そしたら何か、また新しいのが聞けるかも。

えーと、そうだ連絡連絡。

とりあえず駅まで到着、今から時計台行く。

スマホでパパっと打ち込んで送信、ここから地上階を目指す。この駅は地方のハブ駅って事もあるのか、ホームから地上に出るまでが結構グネって入り組んでる。

\ブブーブ/

バイブレーションを受けてスマホを確認、どうやらサナエも着いたとのこと。

『おっけー。15分には会えそうかな?』

『りょーかい。まずはリサっちの服から回る?』

『あ、良い?ありがと!!』

サナエとは中学からの友達だけど、私とは好きな服のタイプとか結構違う。でも派手めな感じの子達が持たれがちな印象と違って、サナエはいつも友達の私の事とか気にしてくれてる。……逆に言えば、服とかメイクは私と見た目マッチしない位にスゴいってこと。

そうこうしてると、また追撃でサナエのメッセが着弾した。

『あ、リサっちそういえばさ。
3番ホームって工事そろそろ終わった?』

……あー、あれか。あのホーム壁際の道を塞いでるやつ。

『それがさ。未だにやってるの。あれもう2年位続いてない?』

……本当、いい加減終われよ〜、って思う。
これのせいで、いつも登校の時の貴重な時間も5分か6分ロスさせられてる。とりあえず、早いとこ待ち合わせのとこ行かないと。




「リサっち オハヨ〜! ……いやオハヨーじゃないか w」

「おはようじゃないよ、もう昼だよww」

時計台に特に問題も無く到着、合流。二言三言喋ったら、サナエが新たに仕入れた都市伝説を披露するのがお決まりパターン。

「それでね?リサっち。」

「お、これはまた何か仕入れてきたパターンですな?」

「そうその通り。知ってる? "瞬間移動する薬物の売人" って話……」

……曰く、とある鉄道駅。遅くまでのカラオケからの帰りでその側の交差点に立ち寄った時、街路灯の下に立つ一人の男を見かけたと。いずれにしてもそこを通らねばならなかったので、怪しげに思いながらも彼の立つ角に立ち寄り通り過ぎようとすると、突然呼び止め、話しかけられる。

そして外国人らしきその男は、しきりに怪しげな缶を売りつけようとして来たのだと。そうなるときっと薬物の売人だ。怖くなって断るが、足早に去りつつ振り向いた時、その男が空中に溶け消えるようにスッ……といなくなるのが見えたと……。


「……え、薬物の売人に話しかけられるってそれテレポートがどうとか以前にヤバいでしょ!?」

「いや大丈夫大丈夫、体験談っぽく言ってみたけどこれネットで仕入れたやつだからw」

「ぅおい!? 心配したじゃんよ〜ww」

「ゴメンゴメン。でも書き込み幾つかあってね?これとは別に、逆にテレポートでスッと出現する方を見た人もいるんだってさ……!」




薬物の売人がテレポート。そんなことできるならもっと凄くて良い仕事あるだろとかのツッコミはあるけど、中々に面白いタイプの話だ。








14時。お店で買う服迷ってたら店員さんに声かけられて、「夏物、薄手のトップスとか探してるんですー」ってオススメ案内して貰う。

「あ……!そこの緑のふわっとしたやつ!」

マネキン並んだ一画の、赤、青、黄色と一緒に並んでターコイズグリーン着てるやつ。肘丈くらいの袖先がキュッと絞られて、ゆったりふわふわ感出てていい感じ。


「お会計、1980円となります。」

「はーい。まず1000円と、それから……」

ここで気付いたそういえば、私、商品券持ってたっけか。そうだあれ使っちゃおう。

……ガサゴソバッグの底を漁って、千切れたイヤホン、空のお菓子の包み紙なんかと一緒に「薄茶けたクチャクチャ」を発掘完了。

クチャクチャすぎて使えるか心配になったけど、店員さんは受け取ってくれて特に問題もなく使えたからラッキーだった。……でもお店から出たとこで、サナエに「帰ったら一度鞄の中を整理せぃ!」というツッコミを貰っちゃったからちょっと反省。



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その後はサナエの服とかアクセを見て回って、いつも全然見慣れない店内の色とかBGMとかに圧倒されつつキョロキョロしながら……、と諸々終わって、今は近くでたまたま見つけた、ジェラートのお店に入った午後のひととき。数少ない二人がけのテーブル席も確保できたの運いいな。

「……ん?あれ?」

「リサっち、どした?」

「あ、ごめん完全に気のせい。」

テーブル席に2人向かい合って、片手ジェラート、片手スプーンで雑談開始。

「リサっちそういえばさ?アレ聞いてから今日でそろそろ4日じゃない?」

「ん?あのシルクハットの異次元男?」

子供騙しみたいな噂だけど、サナエはこういうの自分でも "全く、下らないよね〜" とか言いつつ結構楽しんでる。それに何というか私も嫌いじゃないんだよね、こんな話でケラケラ笑ったりとかさ……。


「そうそう。今何時だろ、えーと午後4時47分。」

サナエが後ろの壁掛時計を振り返って時間を告げる。

「「もう過ぎてんじゃん!ww」」

2人して笑って、

「もう何だよ〜www」

そのままサナエはジェラート大口に頬張ってキーン、ってなってた。



その後、2人して結構遅くまでカラオケに入ったりして、帰りはすっかり日が落ちる時間になっちゃった。

「暗いしリサっち、変質者とかに気をつけろ〜。」

「サナエも色々気をつけろ〜?見た目サナエのが派手なんだからな〜?」


電車に乗って歩いて、自宅に着いて、お風呂とか諸々済ませて今はもうお布団の中。

(それにしてもやっぱり、サナエって都市伝説みたいの好きだよね……。フフッ。)

(正直私も結構好きかも。本当だったら恐ろしいけど現実として、安全圏から楽しめるフィクションだし結構良いものだよね。)

そんな事を考えながら、結構疲れてたみたいですっと眠りに落ちる。

……今日もまた、いつもと変わらぬ快眠だった。









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  1. portal:5662538 (14 Sep 2019 13:02)
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