[[[|64日のカウントダウン]]]が告げるのは世界だけではなく私の終わりでもあった。何となく、何となくそんな気がしたのは心底異常というものにうんざりしていたからかもしれない。私の机から見渡せるのは日々埋まっていく収容房、まともな場所につながらない電話帳、そして何より正常から遠ざかってゆく自分自身だった。
あまりよい思い出がない会議室から自室へ戻ると、真っ先にアルバムを手に取り、安楽椅子に座った。縁に指を引っ掛けて一枚ずつ捲る。思えばこの一冊が私がここに存在する意味だった。異常が異常であり、正常に身を置けたあの頃。光を守るため純粋に闇を対処する決意を固めたあの頃。穢れなきというには大人になりすぎていたが、少なくとも今よりはマシだろう。しかし、写真の劣化と同様に思い出も、自分自身も古ぼけてしまった気がする。そんな気持ちになると、こんなことをしている暇はないという警告に思えてくる。財団という組織の、一番大きな歯車からの。
目の前にある何の変哲もない糸の絡まりをぼっと見つめる。目の回るような業務の間を縫うように私の記憶の記録は数分で終わった。人間の脳は3TB程度の容量しかないと聞いたことがあるが、それにしても何十年生きてきた結晶を数本の糸が覚えきってしまったことに若干の悲しさを覚えてしまう。
「O5-11(仮、後で変更するかも)、あなたは本計画で遺伝子登録をする最優先人員の一人です。そのため、何か重要な研究など残しておきたい物があれば可能な限り保存することができます。」
記憶の保存が完了した後にそう研究員が話した。しかし、私の担当した研究はすでに終了しているか、保存されているかのどちらかしかなかった。何か保存したい情報、そんなふうに考えていると、一冊の本が脳裏に浮かぶ。
「では、私物のアルバムをお願いできますか。」
「アルバムですか。」
相手は無表情で言葉を返す。多分確認のための無機質な言葉だったのだろう。そもそも受理されるのか不安に思ったが、問題なくアルバムは糸の絡まりの一つとなった。
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任意A任意B任意C- portal:5653117 (12 Sep 2019 08:13)
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