般若博士&波戸崎研究員お見合いtale

「般若さんは動物がお好きなんですね」
波戸崎研究員が般若面を半分だけつけた女性に何気ない質問を投げかける。

私、般若 瞳は動物が特段好きなわけではない。しかし、顔の露出面積によって好感度が変わってしまうという異常性に悩まされている私にとって、フラットに接してくれる動物というのは少し心の拠り所になっているのは確かだ。

「えぇ、癒されますよね」
私は当たり障りのない返事を返す。嘘ではない、が自分に自然体でよくしてくれる、いわば彼らの私に対する性質を利用していると言えよう。少し卑怯なこの行動を、彼に悟られたくなかったのかもしれない。

思えば、この飼育スペースに通い始めたのも、そんな動機からだった。



「というわけで、本日付で般若 瞳さん、あなたはSCP-2999-JP-██指定を解除、本来の職務に復帰となります。お疲れ様でした」
突然奪われた日常が、突然何食わぬ顔で返される。これに戸惑う職員は多く、当事者である私も例外ではない。

10年という時間は新しい常識で動いていくのに十分な時間だ。異常性を持つ職員が存在する。SCP-2999-JP発覚以前と比較して変わったのは、人々の気持ちだけだ。新しい勤務先のサイトへ向かうにも、武装した職員に連れられて移動することになった。

半分の般若面、自身が異常である証に視線が集まるのを痛く感じる。あの日以前も、奇異の目で見られることはよくあった。だが、今は恐怖や嫌悪、そういった感情が突き刺さる。収容されていたときにさえあまり意識することのなかった事柄だ。人間としての印象ではなく、異常に対する一種の脊髄反射のような。そんな共通認識が財団には広がっていた。

毎日のように通った玄関に着く。下駄箱に入れていたはずのお気に入りは10年前に捨てられた。付き添いの職員に飾り気のない靴を渡され、それを履く。精密なデータを元に作られたかのような、本当にちょうどよいサイズが、逆にとても気持ち悪かった。

「あの、般若さん!」
聞き覚えのある声につい靴紐を結ぶ手を止めてしまった。鳩の面を被った彼、動物の世話が好きな彼、今まで会った男性の中で一番優しくしてくれた彼、会いたくなかった彼。

「もし、よかったら……もしよかったら、また飼育室に遊びに……」

10年ぶりに会ったのにこうして別れのやり取りしかできない。それでも、この短いやり取りの中でも彼は何も変わってないんだなと感じられて、少し安心する。

最後に顔を見たかったな。そう思いながら、私は口元を隠す。それから、一度合った視線を出口へ向かわせる。靴を履き終えた時には波戸崎研究員の姿は消えていた。

それが異常性のせいだったのかは、もう分からない。


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