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時間ですね。皆さん、当室のオリエンテーションにようこそ。私はこの未詳資料/目録編纂室:81管区の室長代理を務めている転眼 式見と申します。もちろんこの名前は財団内コードネームで本名ではありませんし、覚えるのは正式に当室に配属が決定してからでも構いません。
そちらの方がお互いに無駄がないですから。
さて、皆さん知っての通り、財団の活動は"記録"と密接な関係にあります。数千スロット以上のSCP報告書、数万登録以上のAnomalousアイテムや超常現象、未解明領域に関する文書の存在が示す通り、財団はあらゆるオブジェクトを収容しますし、それらについて後世へと残す参照のために文書を作ります。
更に言えば、オブジェクト1つを取ってみても、その裏には通報や事前調査報告までを含めた確保に至るまでの経緯に関する無数の記録、関連人物へのインタビュー音声記録、要注意団体との関連性調査結果、異常性が判明するまでに行われた多くの実験記録、担当研究班の研究日誌、各種インシデント記録、収容プロトコル改訂のアーカイブ等々、報告書に記載される事柄以外にも多くの文書の存在があります。
こうした膨大な量の文書化された記録が、日夜デジタル・アナログ問わず財団のフォルダーには乱雑に突っ込まれ続けているわけです。当然ながら、文書管理は繁文縟礼の極みと化します。あるアノマリーの創造に90年代に活動していたインディーズロックバンドの関与が疑われた際、他のオブジェクトとの関連性を調査するためにそこから現在まで30年分の収容記録を総ざらいしたがる人間は誰も居ません。
未詳資料/目録編纂室がその問題を解決します。
我々は財団の記録した煩雑な記録をまとめリスト化し、体系立て、網羅した目録として編纂しなおします。不完全な一覧をアップデートするため、埃を被ったペーパーファイルを書棚から引きずりだして、マイクロフィルムの束を引っ搔き回し、ハイパーリンクの数々を定期的に踏破します。それが当室に配属された場合、あなた方がやるべきことの全てです。
業務の形態は概ね2種に大別されます。未分類のファイルを振り分け、既存のリストを適宜更新し最新の状態に保つ定常業務と、請求を受けて特定の事柄についての新規目録を作成する個別業務です。財団のアーキビスト資格を取得していることが前提ですが、どちらにせよ最も必要なのは才能やひらめきではなく根気となるでしょう。
主な業務については以上ですが、何か質問は?
前から2番目のあなた。はい、その通りです。この部署では拳銃を扱う必要はありませんし、要注意団体への襲撃や潜入・交渉も縁遠いものです。研究や実験は文書を見てその結果だけを知ります。格闘術を学ぶ必要もなければ、収容違反でも無い限り直接アノマリーと相対することもありません。当然ながら、何か重要な裁可を下したり声明を発表する立場にも無い。
皆さんの仕事は、闇の中の邪悪なものと戦う巨大な正体不明の秘密組織に属しつつ、机に座ってファイルや書類を右から左へと流すことです。財団の中で最も地味な仕事だと揶揄する者も居ますね。
他には?では、窓際のあなた。
[舌打ち] ……失礼。そのことについては管理部門から"包み隠さず伝えるように"と指示が出ているため、できれば尋ねてほしくなかった事柄でした。
結論から述べます。はい、その噂は事実です。管区を問わず、未詳資料/目録編纂室は職員の失踪率が最も高い財団内部部門となっています。
お静かにお願いします。
この騒めきからすると、恐らく皆さんの半分以上は、未詳資料/目録編纂室は無数の記録を弄り回すだけの、危険から最も遠い場所だという触れ込みから当室への配属を希望したのかもしれませんね。悪い知らせとなりますが、残念ながらその認識は誤りです。確かに、ここは間違いなくアノマリーや兵器といったわかりやすい死からは離れた場所ではあります。
しかし、危険はどこにでも転がっているものです。特にこの財団という組織では。
ここの職員が死亡ではなく、前触れなく"失踪"する理由は分かっていません。ある日を境に職場に顔を出さなくなる、記録保管庫へ資料を取りに行ったまま行方不明になる、先ほどまでパソコンに向かっていたはずの同僚が忽然と姿を消す、といった出来事が何故発生するのか、当事者である私たちにも判然としないのです。
ある者は、彼らは財団の最高機密を漏洩してしまったため秘密裏に終了されたのだと言います。そうかもしれません。未詳資料/目録編纂室では業務時間終了後にクリアランスに応じて記憶処理を行いますが、文書そのものを何らかの方法で気付かれず持ち出してリークすることについては、困難ではあるものの不可能ではないかもしれません。
またある者は、彼らは単純に精神を病んでしまったのだと語ります。ええ、そういうこともあるでしょう。当室の業務は残酷とは程遠いものですが、時折私自身も扱うべき文書の膨大さに気が狂いそうになることがあります。記憶処理もされないまま財団から逃げ出せるとは思えませんが、あるいは倫理委員会あたりが黙って配置換えでもしてくれた可能性も大いにありそうです。
そして、彼らは"書棚の悪魔"に巡り合ってしまったのだと話す者がいます。財団が保有する無限にも思える数の文書、それを収める狂乱的な大きさの書棚、その僅かな空隙に"それ"は潜み、我々がその存在に気付く時を待っていると言うのです。財団という底知れない組織の深淵を覗いた時、こちらを覗き返すモノ。"それ"の存在に気付いてしまうのは100件以上のオブジェクトを知った時かもしれませんし、各文書を見比べてその大きな矛盾に気が付いた時、あるいは現実とデータベース上との奇妙な整合を見つけた時かもしれません。
もちろん、これは只の噂話です。職員の間でまことしやかにその存在が囁かれる"███黒塗りのKeter"共 それらは、財団内における原因不明の死に関わっているとされる、確たる実在の証拠さえ掴めていないアノマリーを指します "書棚の悪魔"もまた、そうした都市伝説的な怪物の1つに過ぎないのでしょう。先ほど言った通り、真相は判然としないのですが。
思ったより長引いたので、次を最後の質疑応答とします。はい、一番後ろのあなた。
ああ、なぜ私が室長"代理"なのかは簡単に答えられます。最も直近に失踪した未詳資料/目録編纂室の職員はその室長だったためです。これで十分ですか?
では、以上でオリエンテーションを終わります。
改めて ようこそ財団へ。この職場には、本当の意味で安全な場所なんて存在しませんよ。
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任意A任意B任意C- portal:5644609 (21 Sep 2019 10:04)
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