tale: 水鐘博士の休暇のやつ
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枯葉の積もる山中を駆け抜ける。坂の裏に回り、翻って手頃な木に登り視界から外れる。坂を上り切り目標を見失った追手の背に掲げられた印に私は見覚えがあった、否、私はそれをよく知っている。どうして?なぜ追われているのか、その印は一層私を困惑させた。


プロジェクトは年を跨ぎ、三が日をも轢き潰していった。クリスマスイヴから仕事続きだったはようやく遅めの年始休みを取り、実家に戻っていたのだった。
それはイノシシでも獲ろうかと裏山をうろついていた時だった。突然、山中に爆発音が響いた。周りはあっても民家と畑。音のした方向へ向かうと、そこには母娘がいた。
「さっき大きな音がしましたが、何かあったんですか?」
「それが…私にもよく分からないんですが…」
5歳くらいだろうか?女性が目をやった先で女の子が地面に座り込んでいた。
「どうしたのかな?」
「どんぐり投げたの。」
どんぐり?
「どんぐり投げたらね、おっきい音が、どーん、って。」
なるほど、彼女が指さす先には細長い卵型のどんぐりが転がっていた。
「ちょっとまた大きい音出るかもしれないから、耳、押さえててね。」
うん、と少女が耳をふさいだのを確認して、拾い上げたどんぐりを軽く地面に投げつけた。先程より小さい爆発音が響く。どーんぐり、とでも言えばいいのか。もう大丈夫だよ、と声をかけると少女は耳から手を離した。
「これ、もらっていいかな?」
「いらないからお兄さんにあげる。」
「私はお姉さんなんだけどね。」


さて、どうしたものか。隠れていても見つかるのは時間の問題だ。木の上にずっと留まることはできない。追手が財団であると分かったのは収穫ではあるが、生憎配給された携帯端末も職員証も実家に置いたカバンの中。ここは勤務サイトの管轄外だから彼らの中に顔見知りもいないだろう。話せば分かってくれるかもしれないが、今ばかりは背の愛銃が憎い。向こうも完全武装。あちらに向かう素振りを見せれば攻撃されかねない。四肢のいくらかを動かなくする程度なら彼らは躊躇しないだろう。財団の優れた医療設備はよく知っている。銃を捨てる?とんでもない。壊されたりなどしたらたまったものではない。では職員証を取りに行くか?ダメだ。今私が逃げ切れているのはよく知った山中だからであって、一度山を下りてしまえば瞬く間に追いつかれてしまうだろう。…何かの拍子に誤解が解けるまで逃げ回るほかなさそうだ。


「衝撃を加えると爆発音がするどんぐり、それを回収するのはいいとして、その実をつける木が近くにあるとは考えなかったのか?」
「ありませんよ。」
「それはあなたの経験からだろう。あなたの知らないところで同じ事例が」
「ありえませんよ。この山にある木でどんぐりをつけるのはコナラとクヌギだけだし、そもそもこれはハナガカシだからこんなところにある時点で不自然なんです。」

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  1. portal:5617073 ( 26 Aug 2019 22:37 )
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