暖かな光を受け重たい目蓋が緩やかに上がる。
ぼやけた天井に秩序だって並ぶ丸い穴が少しずつ鮮明になる。
クリーム色のカーテンに囲まれた手すりのついたベッドから起き上がる。
私はオフィスのソファーで微睡んでいたのではなかったか?
何か硬いものを握った右手を掛け布団の下から取り出すと、それは一挺の拳銃だった。
同時に袖の黒色が目に入り、自身の服装を見る。
そこにはいつもの白衣の代わりに黒のブレザー、いつものスラックスの代わりに黒地に細い灰色の線が斜めにチェック模様になったひだのある膝丈のスカートがあった。
拳銃をブレザーのポケットに押し込み、ベッドから這い出てきれいに揃えられた焦茶のローファーを履き、カーテンをどけて外に出る。
デスク上には大きく薄いハードカバーの本と紙ファイルが並ぶ。それらを流し見して四角い窓の付いた引き戸をガラリと開ける。
正面に現れたのはステンレスの流し台と左に金属の扉、右には出てきた扉と同じような引き戸が並ぶ長く伸びた廊下。すぐ隣の扉の上から黄ばんだプレートが突き出ていた。
「3-1」
なぜ忘れていたのだろうか。
私が着ているのは高校時代の制服。
私が今いるのはかつて通った高校。
私がさっきまでいたのは高校の保健室、ここは高校時代1度も世話にならなかったので覚えていなくても無理はないかもしれないが。
しかしどうしてここに居るのだろうか。
私は目を閉じる前確かにオフィスのソファーに寝転んだはずだ。
息が上がり、ふらつく身体の重さのままにマットの山に寄りかかる。
身体はわずかに固いマットに沈んで、
沈んで?
マットがない。気付けば体育倉庫もない。辺りは一面の闇だ。
重力の向きが変わる。
目を見開いているはずなのに、目を閉じているように暗く、何も見えない。
闇の中を私は肩を下にして落ちて、
落ちて、
落ちて、
ゆっくりと目を開ける。
私はずっと目を開けていたのではなかったか?
「こんばんは、おはようございます、博士。」
ぼやけた真白い天井と薄灰色の人影が目に映る。
「ミカちゃん、おはよう。今何時?」
「もう夜の7時ですよ。今日は珍しく薬品庫に来客がなかったので良いですが、次からちゃんと夜に寝てください。」
ゆっくり起き上がる。クーラーの風で冷えた白衣がワイシャツ越しに腕に触れて心地良い。
「もうオフィス閉めますから、今日中に終わらせる仕事だけして部屋に戻ってくださいね。」
あいよ、と気だるく返事をして、私はさっき見た夢の内容を書き残すことを今日最後の仕事とした。
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任意A任意B任意C- portal:5617073 (26 Aug 2019 22:37)
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