紅白戦

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やるべきことは分かった。この紙に書いてある2つの文字列を読み上げ、姿を現す敵を倒すだけだ。相手は恐ろしく強く、これまで何百人もの人間が犠牲になって来たと聞く。現に、このサイト-8141はさっきまで悲鳴と銃声が飛び交い、既に壊滅状態になっている。生き残りは俺だけのようだ。こうなった原因がそいつなのだそうだ。では、なぜそんなのに俺が挑もうとしているのかは、さっき緊急時にのみ閲覧可能な機密書類の保管庫から見つけたこの報告書が全てを語るだろう。念のため、もう一度読む。

文書1


実験記録040-JP-1 - 日付YYYY/MM/DD(未定)
担当: ███博士

実施方法: SCP-040-JP内の井戸にDクラス職員を投入する。その後、SCP-040-JPの異常性を確認する。

結果: 井戸を覗くことで発生する「██」の幻覚の大きさが増大した。また、暴露者は以前の調査結果より多くの視線を感じると主張した。

分析: 実験を繰り返したが、生きた人間を投入する度に精神における「██」の領域が拡大しているようだ。

文書2


インシデント記録:
20██/█/██に、堀江研究員が夥しく出血した状態でSCP-███-JP内に侵入するという事案が発生しました。担当の警備員は、堀江研究員を視認した瞬間に失神し、その後1分間悲鳴を上げ始めました。██研究員を視認しなかったエージェント██がSCP-███-JPに向かうと、堀江研究員が消失していることが確認されました。状況から判断するに、おそらくSCP-███-JP内の井戸に侵入したと考えられます。
現場から、以下の文書が発見されました。


文書444-JP
騒動が起きた。おれたちは実験をやりすぎた。奴は肥え、拡大し、SCP-444-JPをただ知っていただけだった連中も少しずつ支配した。このままではやつはさらに強くなり、取り返しのつかないことになる。しかしこれで終わりではない。奴に強力な情報災害を引き起こすことで、まだ間に合う可能性がある。すなわちミーム。そして我々が持ち、自由に使用可能かつ制御可能で、奴を無力化できる程に強力なもの、または強力になる可能性のあるものはただ1つ。ねこですよろしくおねがいします。。

文書3


調査結果
堀江研究員が勤務していたサイト8141からの連絡が途絶えたことで、調査が実施されました。結果、以下の事柄が判明しました。
・サイト-8141は半壊滅状態にあること。
・原因はサイト-8141でのみ管理されてきた精神影響オブジェクトであるSCP-444-JPの暴走にあること。
・堀江研究員は当該オブジェクトに暴露していたこと。
この結果を受けて、文書444-JPの分析が最優先事項として再分類されました。

文書4


緊急実験記録040-JP - 日付YYYY/MM/DD(未定)
担当: ███博士

実施方法: SCP-040-JP内の井戸にSCP-444-JPに暴露された██研究員を投入する。その後、SCP-040-JPの異常性を確認する。

結果: 実験1よりも大きな割合で、井戸を覗くことで発生する「██」の精神的影響が増大した。また、「██」の口もとに赤い付着物が確認された。

文書5


世界オカルト連合極東支部のサイト-8141への襲撃によって、SCP-444-JPによる影響が対処困難な段階にまで拡大しました。これを受けて、SCP-040-JP担当の███博士によって、SCP-444-JPの無力化のために「プロトコル紅白戦」の実行が財団日本支部理事会に提案されました。
以下はその内容です。


SCP-444-JPは精神世界で生きる鳥であり、現実世界で生きる存在が手出しすることは不可能と考えます。そこで、同じく精神世界に住み、任意で強化、制御が可能な存在であるSCP-040-JPを使用することを提案します。
以下はその手順です。
・SCP-444-JPの暴露者をSCP-040-JPの内部の井戸に可能な限り多く投入する。
・SCP-444-JPの影響を受けていないエージェントがSCP-040-JPに暴露する。
・そのエージェントがSCP-444-JPを読み上げ、幻覚世界の鳥に「██」を暴露させる。
これにより、計算上は最低でも2000人以上の暴露者をSCP-040-JPに投入することで、確実にSCP-444-JPを無力化させることが可能です。


この提案は、財団日本支部理事会の全会一致で可決されました。
現在、プロトコル紅白戦が進行中です。

文書6


もし貴方がこれを読んでいて、かつサイト-8141が壊滅状態にあるのなら、少なくとも私達はSCP-444-JPの無力化が間に合わなかったということです。しかし、同時にまだ間に合う可能性があるということでもあります。
以下の文章を必ず上を先に読み上げて下さい。それが完了したら、貴方に異変が起きるでしょう。続けて下を読み上げて下さい。
何も見なかったことにしたり、まして下を先に読むなどの行動を取ることで私達の遺志を無駄にしないで下さい。
確保、収容、保護。


つまり、俺は今からよくわからんものに頭を乗っ取られた状態で、さらに精神世界に行かねばならんのだ。この計画は本来俺ではない誰かが実行する予定だったようだが、どうやら失敗したようだ。
仕方がない。

その途端、頭に衝撃を感じた。同時に、唐突に周囲から無数の目線か注がれているような感覚を覚えた。倒れそうになるのをこらえ、気持ちを整理する。頭の片隅、ではなく大部分を占める白い存在を直視した。

ねこです。

なるほど、これがSCP-040-JPとやらの異常性か。

気づくと、見渡す限り赤い世界に立っていた。それに、無数の視線の感覚が消えている。どうすればいいやら分からずに戸惑っていると、遥か彼方から恐ろしい勢いで向かってくるものがあった。何よりも赤いもの。あれがサイト-8141を破壊しつくし、さらには数え切れない程の同僚を発狂、もしくは死へと追いやった相手と直感した。戦闘の構えをとると、またしても衝撃を感じた。その原因を見つけ、なかなかにびびった。左の耳から白いチューブ状のナニカが、にゅるっと出てきたのだ。見る見るうちにナニカは四足動物の姿をかたどっていき、やがて俺の頭から完全に抜け出した。
乗りたい。そう思った。気づくとつるつるした背中に乗っていた。毛のない肌に触れると、永く生きてきたこいつの記憶の一部が映像として流れ込んで来た。


大勢の祈祷師が縄で五芒星を何重にも組みながらこちらに向かってくる。飛び跳ねて逃げようとしたが、何かに頭がぶつかった。どうも、持っているアレを媒体に結界を作ったようだ。顔が歪められるのが分かる。覚悟を決め、桜の枝を掲げている、服に六芒星のシンボルマークを織り込んだ祈祷師達に襲いかかった。
その途端、奴らが何かを唱えた。同時に、持っていた桜の枝から想像を絶する量の花びらが吹き出し、瞬きしないうちに肌に貼り付いていく。振り払おうとしたが、次から次へと増えてきりがない。ついに身動きがとれなくなったところで奴らに操られ、かなりの距離を運ばれた。見知らぬ草原に着いたところで、底の見えない大穴に落とされた。


こいつにはこんな過去があったのか。少しかわいそうに思った。足で脇腹を締めると、この未知の生命体、もといねこは高く跳び上がった。心地良い風が頬を打つ。そして、遠くから向かってくる財団の、いや人類の敵に急接近した。そいつがこちらを認識すると、ねこととりは数秒間睨み合い、それからねこがゆっくりと語りかけた。そしてその内容は、はっきりと俺の耳でも聞き取れるものだった。

おひさしぶりです。
ねこです。
ねこはいます。
ねこはねこでした。
ねこはたくさんのひととなかよくなりました。
ねこはしあわせです。
だから、ねこはひとのしあわせをまもります。
ねこはつよくなりました。
では、ねこいざまいる。


勝負は一瞬で確定した。
なるほど、我々は奴にエサを与え過ぎた、ということか。
突如空中に放り出され、意識が薄れ、周りの風景がまともに捉えられなくなってゆく。何もかもが白く、白く、白く…


第8版
アイテム番号: SCP-444-JP

オブジェクトクラス: Safe keter Safe

特別収容プロトコル: SCP-444-JPを描写するあらゆる媒体に於いて、SCP-444-JPを削除または改竄することで、SCP-444-JPが読み上げられる事を阻止してください。
SCP-444-JPを読み上げた事のあるどの人物に対しても、Bクラス記憶処理による処置を施してください。また、SCP-444-JPに関連する研究員には専用の守秘義務が定められ、SCP-444-JPの研究から他の部署へ異動する際には必ずBクラス記憶処理を受けてください。
SCP-444-JPが漏洩し広範囲に蔓延するリスクを回避するため、SCP-444-JPの情報はサイト-8141内でのみ扱われます。

説明: SCP-444-JPは特定の幻覚または疑似体験を発生させる文章形式の言葉です。その言葉を実際の発生によって読み上げた時、その読み上げた人物は必ず一つの幻覚世界に囚われ、その幻覚世界内でいくつかのループするイベントを疑似体験します。以下は被験者が曝された幻覚世界と疑似体験の内容を順序だてて簡易的に述べたものです。

1.被験者は幻覚世界の中に立っている。幻覚世界は、360°地平線まで続く何もかもが白い野原と「曇り空よりも白い」と表現された空によって構成される。土や草木の正常な感触や風を感じるほど幻覚はリアルであり、現実で被験者に対して起こった事象は、幻覚世界中の被験者の意識や感覚には一切反映されない。
2.被験者の意識が幻覚世界に完全に入ってから4~7分で、被験者は自分の体が鳥のように空を飛べるものだと気づく。被験者は自らが飛翔出来ることを確信しているが、その根拠は説明出来なかった。
3.被験者は飛翔の要求が高まり、幻覚世界の空を飛翔する。この間、現実での被験者の肉体は平常時以上の沈静状態へ入る。
4.飛翔から2~3分後、前方から巨大な白い動物が迫って来ると証言し、その動物に対して恐怖を抱き始める。現実での被験者の肉体の生理的活動が活発化する。
5.孤独に対する非常に強い恐怖心と、現実的な肉体的苦痛を訴えながら幻覚世界の被験者が巨大な白い動物に抱擁される。現実での被験者の肉体的な反応がピークに達し、一切の身動きがとれなくなる。
6.幻覚世界の被験者が開放される。一切の情動反応が停止し、肉体も3分間昏睡状態に似た沈静を保つ。
7.1に戻る。その際、ごく断片的なもの以外の記憶がリセットされる。

SCP-444-JPを被験者の現実の肉体が筆記することで、幻覚から脱することが出来ます。SCP-444-JPを筆記する場合のみ、幻覚世界の被験者の意識的行動が現実の肉体を制御することが可能となります。しかし幻覚世界の性質から、被験者が自ら幻覚世界内でSCP-444-JPの筆記を思い立つまでには、数週間単位の時間を必要とする場合が殆どです。その場合、被験者は繰り返されるループによる断片的な記憶を想起することが可能となり、その記憶によって、SCP-444-JPを筆記することで孤独への恐怖と何度も抱き締められたことによる苦痛から脱却可能であることを直感的に学習します。

幻覚世界から脱した被験者は、幻覚世界内での全てのループと詳細の内容の記憶を保持しています。しかしその記憶が原因で精神疾患を発症し、証言不可能となる例が多発したため、これ以上の幻覚世界への探査は現在見送られています。

補遺1: SCP-444-JPの詳細を調査したところ、SCP-1500-JPがその起源と深い関係を持つことが判明しました。これはSCP-040-JPの起源と酷似しており、より詳細な関係を調査しています。

補遺2: SCP-444-JPは、かつて現在と類似しながらも大幅に異なる性質を持っていましたが、SCP-040-JPを利用した「プロトコル紅白戦」が実施されたことで、本来のSCP-444-JPは無力化されたと推測されます。代わりに、祝詞の改変、幻覚の改変などを通じて、現在の性質を示すようになりました。しかし、「プロトコル紅白戦」を実行した記録は発見されておらず、調査が進められています。


とりはこのような見た目でした。tori.jpg

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  1. portal:5608384 (19 Oct 2019 02:22)
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