雪山
「ここがどこだか分かるかい」
隣に座ってきた男が問う。ゴーグルや帽子でその容姿はよく分からない。
「スキー場でしょう、急にあなた誰ですか」
真下には斜面が広がり、見回せば枯れた木が並ぶ。乗り込んだスキーリフトは定期的に振動しつつ二人を上に運んでいく。
「喋れそうなのが君しかいなくてね。そしてこれは君にとって大事な話でもある。頂上に着くまで話そう」
男はスキー板を揺らし、その動きがこちらまで伝わってくる。
「下を見てみな。何人ものプレイヤーが滑っているが、彼らは同じ動きで滑っているかな?」
「そんなことないでしょう。速さも曲がり方も人それぞれですよ」
「そうだね。それだから、軌道が交わったり、ときには衝突することだってある。ここはその衝突点なんだよ」
男は胸元から何かのロゴを見せ、その主張がただのでたらめではないことを示した。
「どういうことですか」
「いくつもの流れが並ぶものは他にもある。平行世界なんて言葉があるけど、それだって交わらずに同じ動きをしている方が不自然だろ?」
「確かにこちらの組織でもそういう考え方は指示されていますが、それがどうしてここに?どうしてあなたがそんなことを?」
「お前が原因だろうね。お前は何かに捕まったんだ」
「それで、私は何をすればいいんでしょうか」
「ぶつかったら離れればいいのさ。だからそこの山小屋に入るといい。別に滑ってもいいが、板持ってきてないだろ」
「あなたもご一緒に?」
「離れるって言ったろ。俺は下に行くよ」
男はゴーグルを外す。自分とどことなく似た目が露わになる。
「じゃなあ」
男は速やかに左へ消える。残された自分は当てもなく、示された小屋に向かう。扉を上げ、机に置かれたココアを手に取る。
ココアを手に取る。
「私にもココアちょうだい」
後ろから別の声を聞く。見回すと、そこはもう山小屋ではなかった。
「ほらぼーっとしないで。集中力落ちてんの?」
手元には本10冊と筆記用具、周囲には本棚が見られる。ここはもう図書室だ。
「今何してましたっけ」
「えっ、悩ましいこと聞くんだね。受験勉強だと思ってたけど」
もう自分は受験を行うような歳でもないはずなのだが、なぜかそういうことになっているようだ。
「でも、受験勉強が何なのかと言われるとよく考えたほうがいいかな。全力を尽くす練習ってのはどうかな?」
適当に相槌を打ちながら、これまでのことを振り返る。スキーリフトに乗る以前の記憶だけがすっぱり抜けている。
「この結果によっては、また人生が離れるんだよね。小さい頃からずっと一緒だと、やっぱり寂しいね」
私の知らない過去を語り始めている。都合がいいので、そのまま聞く態勢を保つ。
「でも、人生を先に進めるためだもんね。██は大学に行ったあと何をしたいの?」
私は大学進学後、事故に巻き込まれる形で財団に加入した。それがなかったらそのまま就職していたかもしれない。
「私は世界を見て回りたい。本で読んだことが正しいのか、何が出来るかを自分で見つけたい」
立派なものだ。何のために受験するのかをしっかり捉えるのは誰にでもできることではない。
「でもね、気づいてないかもしれないけど、██が一緒にいて、一緒にやってくれたから私も色んなことが好きになれたよ」
それを聞き、初めて彼女と向かい合う。髪も肌も艶がまるで違ったが、目の形が同じだ。
「えっ…」
彼女は少し私を見つめ、それから急に本を読み出し話題を変える。
「ほら、勉強の続きやるよ。第五章、時空間体の連続性と並行性」
ちょっと待ってくれ。高校生が何の本を読んでいる?
持っている本を覗き、ページをめくる。
道
手帳を開き、ページをめくる。
一番新しいページには
土俵
駅
万が一全てを忘れてしまった時のために記録をつけておく。今分かることだけを順番に書いていき、何か新しく理解したら付け加えよう。これは自分以外が読んでも意味はないが、もしかしたら他の誰か、あるいは別の自分を導くヒントになるかもしれない。
203█/█/██
Imerimo
こんにちは、今日はこのような場にご招待いただきありがとうございます。まだまだ修行中の身ですが、話せることは話していこうかと。
ある日の朝に財団から緊急通告を受けた。「君に任せる」と。その後、自室の壁にポータルが出現するのを見た。それ以上の連絡は得られず、また部屋からの脱出は叶わなかった。身支度を整え、ポータルを越えると別の自室にいた。
Imerimo
それで、記事を書くときに難しいのが、やりたいことを繋げることなんですよね。例えば私が推理シーンを書きたいとき、作中ではどうしてそこに行き着いたのかを考えないといけない。推理する前段階で推理を書くわけには行きませんから、そこにはモチベーションが沸かないかもしれない。それでも聞き込みや調査をちゃんと描く必要があります。
移動経路を端末に打ち込み、ドアを開けると駐車場に出た。デパートか何かの地下だろうか、サイトにあるものとは異なる。探索したところ、私の名前が刻印されたものを見つけた。鍵もセットのようだ。免許だけ持っていたが、使えということだろうか。出口は見つけられず、外の景色も見られないため探索は打ち切る。バイクを自室に持ち込むと、ポータルに舗装された車道が出現していた。元の道を辿ると更に別の自室に行き着いた。ただし、カタログや工具など、バイクに関するものが増えていた。移動先も3つに分かれていた。
Imerimo
私が取っているのは、まず部品を大量に用意し、それらを組み合わせる方法ですね。その過程で必要なものが出てきたら加え、矛盾する箇所は変更し、一つの流れを作ります。積み木を遊ぶ感じに近いかな?こうすれば、各部品を繰り返し触っていく内に好きなもの、より詳しく書きたいものを選べるようになります。
移動経路を書き足していくうちに気づいたことがある。見るたびに物が増えていることを除けば、同じ部屋と思われるものが何度か登場するケースがあった。その部屋の出現パターンが幾何学的に表現できるかもしれないのだ。それもごく単純な、例えば立方体群の移動からなるような。これを把握すれば、このバナナ園で定期的な食料の確保もできる。計画的な異動が現実的になった今、財団サイトを見つけたい。
Imerimo
ところで最近はあまりこの方法が使えなくなっているんですよね。昨日は良いと思った組み合わせが今日は気に入らない、そんなことが続いています。まあ私はいつ完成させるかにあまりこだわらないタイプですから、いいものができるまで考え続けようと思います。最終的に、サイトに残ってくれさえすればいいですからね。
空想科学部門に辿り着いた私は答えを得られたと思う。何者か、おそらくswn001-1実体というやつがものの繋がり全てをめちゃくちゃにしているらしい。その思考パターンや意図の分析までは終わっていて、それによると私を中心とした1つの物語を成立させたがっているそうだ。この現象は設定群の取捨選択であり、それが終わるまで世界の絶え間ない変化に終わりは来ない。それで、私には移動以外に意図的な変更を加えることが求められているという。データによると、安定した世界物語は一定の基準を持つ判定を受けるそうだ。その結果によっては、変化すら起こらなくなり完全に消滅するらしい。もしくは一つの繋がりが固定されるそうだ。私はその博打を回避するため、ひたすら変化を起こす選択を続けてほしいとのことだ。変化には時間的制約もあるから、おそらく休めないだろう。
Imerimo
作中での辻褄合わせが必要な例をもう一つ。例えば推理を書く話をしていましたが、作中人物の賢さの問題も気にしなければいけません。ほら、財団職員って基本的に大天才しかいないという設定が一応あるじゃないですか。それを演出するのに、作者が時間をかけて考えたことをすぐに出せるようにすればいいと聞いたことがあります。
何かをやりたがっている相手はそんなに賢くないようだ。部屋にこちらから改造を加えるとどう処理するか迷うらしい。例えばタコ型異星人の調査員からタコ漁師に変わっていたことがあるし、その時タコの刺身もご馳走になれた。ただ、いずれどちらかに限界が来ることは覚悟しなければならない。変化が止まるだけならいいのだが、消滅はなんとしても回避氏なくてはならない。そうなってしまう前に何か手を打つべきだろう。
Imerimo
まあそういうことをたくさん考えていると、迷い終わらないほうが多いですね。ですがずっとそれでは先へ進めません。決心をつけたら勝負に出てみましょう。私が使っている目安としては、新しい考えを浮かべようと思わなくなったあたりですかね。
必要なのは相手を満足させないことだが、むしろ満足させない状態で固定させればいいかもしれない。相手が固定を始めるのはそいつ自身が満足した状態だが、相手より上の誰かに向けてメッセージを飛ばせば、満足していないときの相手と私たちをまとめて固定してくれるかもしれない。
Imerimo
せっかくですから、次の記事の話もしておきましょうか。物語緩衝層という概念がありますが、もしそれが複数あって、ここがその一つだったらどうしよう、と最近思い始めています。というのは、前までまだ投稿できないなあと思っていたものが急に投稿したくなりまして。
今日も私たちは変え続けているらしい。
ワイドスクリーンバロック:時間と空間を飛び回る、深淵で軽薄な作品。
対談よりいい場所あるかもしれない
もっとめちゃくちゃをやっていいかもしれない
やりたいことやその意図に自信は持てるけど、敬意と技量に自信を持てない
雑学の披露は頭の良い演出にはならない
自分を使うのが一番マシ
zyn使うわけにもいかないし…
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アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:5608384 (19 Oct 2019 02:22)
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