SCP-3000-JPコンテストに参加します。
著者はImerimoです。
以下は希望するナンバースロットです。
第0希望: SCP-3000-JP
第1希望: SCP-3001-JP
第2希望: SCP-3007-JP
第3希望: SCP-3999-JP
第4希望: SCP-3333-JP
第5希望: SCP-3600-JP
ナンバー
3000
3001
3007
3999
3333
タグ
scp jp 3000jp euclid 非実体
(パズルが美しいって表現伝わるかな…)
アイテム番号: SCP-3000-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3000-JPに関する情報は統制されます。担当職員は一日一度SCP-3000-JPを巡回し、新たなSCP-3000-JP使用者が発見された場合は該当人物にAクラス記憶処理を行い、SCP-3000-JPとの接続を遮断して下さい。
説明: SCP-3000-JPは大きさが不定の空間群です。存在位置などの情報は、SCP-3000-JPが人間の意識中でのみ知覚・観測可能であるという特性から特定することができません。現在判明しているSCP-3000-JPの性質は以下の通りですが、検証実験の結果次第で、内容の修正が行われる可能性があります。
・人間が特定の手順を経た上で想像することで生成され、想像を行った回数と比例して生成に要する時間が短縮される。
・人間が通常行う想像よりも鮮明に空間として知覚可能であり、想像者本人の体と五感が明確に存在する。
・一部のSCP-3000-JPは、想像者が念じることで內部のあらゆる事象を操作することが可能である。ただし、各SCP-3000-JPに定められる条件に従わなければならない場合もある。
・複数人で同一のSCP-3000-JPを共有することが可能である。
・複数のSCP-3000-JP間を移動することが可能であり、移動にかかる労力は現実の座標と相関を持つ。
対象は意識をSCP-3000-JPに移動させている間も、現実の体を動かすことが可能です。また、SCP-3000-JPは所有者が死亡しても残留することが確認されておりますが、記憶処理によって接続を切断することは可能です。
SCP-3000-JPは複数のカルト団体の間で個人規模で共有されて来ましたが、ある時期を境に認知度が急激に増加し、その過程で財団に発見されました。その際調査で確認されたSCP-3000-JP例は以下の通りです。
事例 | 景観 | 用法 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 教室 | 複数人での交流 | 日記帳が存在。記された氏名を確認中。 |
2 | 体育施設 | トレーニング | モハメド・アリ等、ボクサーが100人程度居住する部屋が存在。 |
3 | 教会 | 宗教儀式 | 麻薬、書籍等の小道具が存在。 |
理論上は全人類がSCP-3000-JPを発見可能であるため、オブジェクトクラスはEuclidに分類されます。また、SCP-3000-JPは多岐にわたる使用が可能なことが判明し、その中には極めて有害なものも想定されます。被害が発生・拡大する前の予防・対策が課題となります。
補遺1: 対策立案のため、SCP-3000-JP群の探索が行われました。
探査ログ: 探査内容は、檀研究員の発声によって記録されます。また、檀研究員につけられた脳波測定装置から再現した映像を添付します。
第一版
[音声・映像記録開始]
檀研究員: それでは、SCP-3000-JPを捜索して行きます。まず目立つものを見つけたいと考えています。SCP-3000-JPに意識を移さないといけないので、心を集中させますね。
[映像は、実験室を象ったSCP-3000-JPへと移り変わる]
檀研究員: えー、これまでの調査では、使用者と一緒にSCP-3000-JPへと移動したことで、彼らの持つそれに辿り着きました。この研究室で一人で行うと何が見つかるのか、それも調べることとします。
[檀研究員がSCP-3000-JP内を歩行し、実験室の壁を透過して別空間へと移動する。全体が紫色で満たされた空間に他のSCP-3000-JPが多数確認できる]
檀研究員: 目立つSCP-3000-JPがいくつかありますね。まず近場に広いもの、かなり遠いところに混み合ってるもの、縦に果てしなく長いもの。まず広いものに侵入してみますね。
[檀研究員が示したSCP-3000-JPは末端が確認できないほど広範囲に広がり、かつ他のSCP-3000-JPと比較して明確に強い光を放っている。檀研究員はそこへ向けて移動することを念じ、結果として檀研究員の体が目的地に接近する]
檀研究員: 無事、侵入に成功しました。かなり広いですが、どこから手を付けたらいいか。
檀研究員: 音楽がどこに移動しても聞こえますが、幻聴ではなく音源があると見ました。そこに向かいます。
[新たに侵入したSCP-3000-JP内には、平原と山脈が広がっている。 また、陽光が約20°から差し、それが辺りの植物の朝露に反射している。約3分に一度の感覚で、同じメロディが繰り返し流れる。檀研究員が歩行を開始し、移動するにつれてメロディの音量が上がる]
檀研究員: 少し歩いてみて分かりましたが、地面が通常の土よりも柔らかい。足に力を入れると反発しますので、歩くのがかなり楽になっています。探索に希望が持てますね。
[7分移動した後、檀研究員が静止する。映像には風車塔が確認される]
檀研究員: 音源に辿り着きました。ここには風車の塔があります。そういえば、風がずっと同じ向き、同じ強さで吹き続けています。この風車は、それを利用する設計なのでしょうか?
檀研究員: 扉を発見しましたので、中に入ってみます。
[内部へと進入すると曲が転調する。内部は極めて暗く、壁面に生える結晶の一部から放たれる少量の光が室内を照らすのみである。上部から溝と水流が流れており、水音が確認できる。檀研究員は塔内部を軽く歩き回るが、階段は見当たらない]
檀研究員: 暗いなあ。湿っていますし、気を抜くと転びそうですね。しかもただでは登らせてくれない、ということか。では上を目指すために頑張って見ます。まずは全体の観察ですね。頂上かなり高いなあ。
檀研究員は塔を再び歩き回り、詳細な内装を把握する。壁面には結晶が等間隔で並び、床は6色に区分けされている。中央には黒色の柱が立っている。
檀研究員: 周りが赤から紫の6色。じゃあ結晶を見ましょう。
[檀研究員は結晶の1つを観察する]
檀研究員: 全体的な形は水晶のようなのですが、細かい部分はビスマスの結晶のような複雑な形をしていますね。そして押せる場所やずらせる場所が。何かこれには意味がある。
[檀研究員は3分ほど結晶を触り続けると、結晶が青く発光した]
檀研究員: なるほどね、結晶の中にいくつかボタンが隠れていて、押せば結晶が光るのか。でも、それになんの意味が?
[直後に床の青いタイルが2mほどせり上がる]
檀研究員: はいはいはい、光らせた色に応じて床が上がるから、これで頂上を目指していけばいいんですね。じゃあ壁面にある全ての結晶を触れば達成できるかもしれない。
[檀研究員は結晶を次々と光らせ、上階を目指していく]
檀研究員: 長くなりそうですし、少し私がこのパズルに抱いた感想を述べて行きますね。
壇研究員: 私は昔からパズルが好きでした。ルールが分かったときに、謎の文字列から楽しい遊びに変わる、そんな素敵なものです。
[檀研究員は結晶の1つを青く光らせ、足元の青い台座と共に上昇する]
檀研究員: やがて、自分で作るようになりました。迷路や数独から始まって、果ては知恵の輪など、知っているパズルは全部作れるように。ただ、更に物を知ると、これらはプログラムで簡単に作って解けるものだと分かり、落ち込みましたね。
檀研究員: それで、今度は新しいルールそのものを見つけていくようになりました。誰も考えつかないものを簡単に見つけることができるというのは楽しいものでした。
[檀研究員は台座を移動し、2つの結晶を同時に光らせる]
檀研究員: ただ、その技術を高めるほど、1つの疑念が産まれて来ました。私の試行錯誤に関係なく、作ることのできるパズルは始めから決まっているのではないか?とね。
檀研究員: どうしてこんな話をしたかというとですね、この結晶パズルにはそれと関わりがある何かを感じるのです。全く初めて見る形式なのですが、それにも関わらずバリエーションがなんとなく想像できてしまう。解いていて楽しいのですが、どこかに微かな不安を感じるのです。
[檀研究員は最後の結晶を緑色に光らせる]
檀研究員: これで結晶パズルは全部解きましたかね?
[6つの台座がせり上がっているが、頂上には全く届かない]
檀研究員: となると、まだ何か見逃してる可能性がありますね。普通に解いたのにこんなに足りないなんてありえないんだから。上階に来たから、下からは分からないことも分かっているかもしれない。
[檀研究員は3分ほど捜索を続け、壁面に黒色のボタンを発見する]
檀研究員: ボタンは1つあったんですけど、周りの記号や接続先から見てこれたぶんリセットボタンですね。押してどうするんだと。押したら光が消えて1階に戻るだけじゃないですか。
[再度檀研究員は2分ほど捜索を行い、檀研究員は台座の中央に空洞を発見する]
檀研究員: …ひょっとして。
[檀研究員は壁面のボタンを押す。結晶内の光が順番に消えていき、台座は降下する]
檀研究員: ほら見て下さい見て下さい。柱上がってきてませんか?
[檀研究員の呼吸が早くなる。示した通り、中央の柱が上昇する]
檀研究員: タイミングよく、飛び移り、ました!ああ、柱黒かったんですね。結晶が光ってないってことは黒色ってことか。いやすごいなあ、よくできてます。
[檀研究員は柱に乗って頂上へ向かう]
[最上階に辿り着いた檀研究員は扉を開け、天窓から光が指す一室へと進む。壁面には絵画などの芸術作品、床には小道具、部屋の中央にはキャンパスが置いてあり、中年男性が向かっている]
檀研究員: 先の部屋に入りました。ここはアトリエでしょうか?埃がかなりありますが、狭さはあまり感じません。前の人に話しかけてみますね。
壇研究員: どうも初めまして、日本語が伝わりますか?
男性: ああ、伝わるよ、初めまして。パズルは楽しかったか?
檀研究員: ええ。それでお聞きしたいのですが、この場所はなんでしょうか?
男性: 俺の家で、同時に試験場だ。ここまで辿り着ける人を探してる。
檀研究員: ありがとうございます。この世界全体についても教えていただけないでしょうか。別の世界から来たばかりなので、この世界についてよく知らないのですよ。
男性: 分かった、それも役目だからな。まず、お前は科学の世界から来たんだな。ここは科学と魔法の世界だ。
檀研究員: へえ、魔法ですか。どんなことができるのです?
男性: 使うやつによるが、好きなものに関する魔法が強くなるな。ただ、誰でも無条件に使えると危ないから、使うには条件がいるんだよ。これからそれを教えてやる。
檀研究員: ほんとですか、ありがとうございます。できれば、移動の乗り物なんかを作っていただけたりは?
男性: ああ、自分でできるようにしてやるからちょっと待ってな。
[男性が右手の人差し指を回す。一瞬映像が乱れ、直後に男性の足元にバッジと紙束が出現する]
男性: ほら、こうやるんだ。これが説明書、これが許可証だ。持っていくといい。
檀研究員: 魔法が使えるというのはとても興味深い。それで、またいくつか質問があるのですが。
男性: どうした?
檀研究員: 私はこの世界だけでなく、全ての世界についても調査をする必要があるのです。それで、そのための道具をいろいろ作り出して実験してみたい。いいでしょうか?
男性: バッジを渡したんだ、好きにしな。ただ、人に迷惑はかけんじゃねえぞ。
檀研究員: 本当にありがとうございます。しかし、このバッジを渡していただいた条件はなんだったのでしょうか。
男性: ここまで登ってきたことだよ。パズル解いたんだろ?
檀研究員: ええ、難しかったのですが、絶対に解けないとかではありませんでした。未知の概念を理解することに脳のリソースを割きましたね。
男性: 魔法操作も同じことが求められる。誰も知らないことを探すのに必要な能力、そして自由な発想が必要なんだ。で、下の部屋でそれをテストした。
檀研究員: そういうことでしたか。パズルのテストができなければ魔法は使えないのですか?
男性: いいや、テストはパズルだけじゃなくいろいろある。ここは俺だけの世界じゃないから、いろんなやつが楽しめるように作られている。で、俺はテストを作ってバッジを配れと指示されたからやっているに過ぎない。そういうやつが他にも何人がいる。実際俺も別に美しいから好きなだけで、パズル得意じゃねえからな。
檀研究員: あれ、そうですか。では下のパズルはなんでしょう?
男性: 簡単に言えば自動生成の魔法だよ。といっても、プログラムによるものとは少し違う。壁の中に含まれる分子のうち、美しい組み合わせのものだけが勝手に結合・成長するように魔法を組んでいるんだ。その結果美しいパズルだけが育つ。だから俺は何もしていない。
檀研究員: ああ、私が覚えた違和感はそれだったか。それでテストとしては大丈夫なのでしょうか?
男性: ああ、実際ここのテストをクリアしたやつはちゃんと自由な魔法で遊んでいると聞いている。あとは何か質問あるか?
檀研究員: いえ、もう十分参考になるお話を聞かせていただきました。では、一度帰還させていただきます。
男性: 帰るのか?じゃあこれ使ってけ。
[男性は窓の外を指差す。そこには電線と見られるものが伸びている]
檀研究員: これは?
男性: 移動の回線だ。体が一瞬だけ電流になるが、まあ我慢しな。これを使えばどこにでも行けるんだ、使わないほうが損だぜ。
檀研究員: 今回は歩いて帰らせていただきます。
[檀研究員は徒歩で移動するが、出発点を見失う]
檀研究員: この辺りで移行してみますか。それ!
檀研究員は地面を通り抜けて落下し、サイト8128の厨房へと移動する。実験室へと移動し、SCP-3000-JPを離脱する。
[記録終了]
第二版
[記録開始]
[映像は前回訪れたSCP-3000-JPから始まる]
檀研究員: えー、あれから実験を重ねて、SCP-3000-JPについて判明したことをまとめますね。
檀研究員: まず調査結果なのですが、今いるこのSCP-3000-JPは実際の地球と近い地理をしています。規模や大陸の配置などです。
檀研究員: そしてここからが実験結果ですが、このSCP-3000-JPと他のSCP-3000-JPを移動することも可能です。ただし、地理的条件があります。
檀研究員: 例えば今私がいる場所は、現実の地球座標で言うところの[編集済]に相当するのですが、そこで生み出されたSCP-3000-JPや、そこまで広がっているSCP-3000-JPに移動できるということです。アメリカで作られたSCP-3000-JPにはここから行くことはできない、ということですね。
檀研究員: ただ、私がこの中でアメリカに相当する場所に移動すれば、逆にそのアメリカ産のSCP-3000-JPに移ることも可能なわけです。そして、それを可能にする、各地に移動できる乗り物を開発できました。電流になるのはリスクが高いので。
檀研究員: とにかく、このSCP-3000-JPを起点として、現実での移動を伴うことなく世界各地のSCP-3000-JPを探索できるようになったということです。この世界の調査探索も進めたいところではありますが、広すぎていつ終わるか分からないのでまた別の機会に。
檀研究員: 最後に、気になっていたことを質問した答えも言っておきます。流れていた曲は風車のエネルギーで響かせていて、季節によって流れる曲は変わるらしいです、粋なことですね。メロディも美しいものを勝手に奏でるそう。
檀研究員: 前置きが長くなりましたが、これから新しいSCP-3000-JPに移動しようと思います。現在私は、地球のヨーロッパに相当する座標にいます。前回もらった資料はここから行けるとのことなので、今回はそこに向かうことを目的とします。よっ。
[檀研究員は飛び跳ね、着地する代わりに地面を透過する。映像が一瞬乱れ、紫色で満たされる]
檀研究員: ここで間違いありません。さっと見た中で最も絡まっているSCP-3000-JP。ここに入ってみます。
[檀研究員は、示したSCP-3000-JPに侵入する]
[映像は砂砂漠を映している。ただし、檀研究員は日陰にいる。また、景観の所々に果樹が見られる。檀研究員が振り向くと、巨大な樹木が確認できるが、その形状は通常と比較してやや歪である]
檀研究員: 砂漠としては気温がそこまで高くないですね。
檀研究員: あそこに向かってみますね。ここではまだ乗り物に乗れないか。魔法も使えなさそうですし。
[檀研究員は徒歩での移動を開始する。樹木に近づくにつれ、外見が明瞭になる。枝も葉も実も複数種あり、全体に数百種類の植物が絡み合っていると推測される]
檀研究員: この奇妙さは、現実では思い浮かべることすらないでしょう。あれ、木が回転しましたね。
[樹木全体が120°ほど回転する]
檀研究員: 窓口のような場所を見つけましたので、そこに向かってみますね。
[檀研究員は建造物の根本まで辿り着く。樹木を削られてできた空洞にカウンターと見られる設備があり、椅子にはエプロンドレスを着た20代と見られる金髪の女性が座っている]
檀研究員: よし到着。女性が座っていますね、話しかけてみます。
檀研究員: えー、初めまして。この場所について教えていただけないでしょうか?
女性: 初めまして、ご要件は図書館の案内ですわね。それでは、よろしくお願い致します。
檀研究員: ありがとうございます。ここは図書館なのですか?
女性: はい、その通りですわ。この場所は、あらゆる方に使用していただくために建設されましたのよ。
女性は檀研究員の手を取り、建造物の扉を開ける。
檀研究員: あっ、急ですね。綺麗な方に手を繋がれるというのは緊張しますが、これは必要なのでしょうか?
女性: サービスの一つですわ。また、私の外見に意味はありませんの。その話はまた後でさせていただきますわ。
[建造物の中も同様に、一つの樹木を削って作られた部屋や廊下で構成されている。女性は檀研究員を一室へと導く]
女性: この部屋は歴史の本が集められています。一冊選んでみて下さいまし。
檀研究員: その前に、そろそろ手を離して頂いても?
女性 おや、ごめんあそばせ。
檀研究員: これは図書館におけるサービスや人選として適切なのですかね?
女性 私は考えたことがございませんの。
[部屋中央には机と椅子が置かれ、壁面には膨大な数の書籍と思われるものが並べられている。檀研究員はその内の1つを手に取る]
檀研究員: これを見てみます。ふむ、構成材料は紙ではなさそうですね。果てしなく薄いし、そして強度が通常の紙とは比べ物にならない。黒地に金色の文字で書かれています。言語が異なるので内容はさっぱり分かりませんが。
女性: それでは、このページをご覧下さいませ。
檀研究員: おお、同じ本の中に白字黒文字のページがあって、そこに日本語訳が載せられていました。これはひょっとして地球の言語はだいたい揃えられているのかな?
[檀研究員達の横をスライム状実体が通り抜ける]
檀研究員: 人間じゃないお客さんもいるのですか。人間が知らない言語が本にあったし、そういうことかな?
女性: 初めにも申し上げました通り、ここはあらゆる方のための図書館。ですので、あらゆる種族の方がおりますし、あらゆる植物や言語が使われていますの。もちろん、地球区画は地球の文字が優先されます。この建物もそう、あらゆる方のためのものですわ。
檀研究員: というのは?
女性: あらゆる種族の方が共通して寛げる建築様式というのは、植物の中に部屋を作ることとされていますのよ。
檀研究員: この建物の構造はそれが理由でしたか。実際、私はかなり寛げています。
女性: また、システムの一貫として、お客様を確認する際に種族を判別し、その方に応じた受付員が応対していますわ。
檀研究員: 丁寧ですね。ふさわしい受け付けさんがいないときはどうするのですか?
女性: そのときは、その方の文明に合った区画が増設されます。そして、監督者から一時的に権利を受け取り、該当区画を好きなように改造することが許可されています。現在私達がいるところは地球区画で、およそ2500年前からあるそうです。
女性: 私は1500年前からここに務めておりますわ。歴代のお客様が美しさを求めて試行を重ねた結果、この外見や職務内容を与えられたと聞いています。
檀研究員: 聞いています、とは?
女性: 前任に会ったことがなくってよ。ただ、写真は残されています。職務についての知識は初めから知っており、過去についての知識は監督者に聞きましたわ。
檀研究員: 不思議ですね。では、その監督者という方に会えば何か分かるかもしれません。あなたは不思議に思わないのですか?
女性 不思議だと考えたことすらありませんわ。物事に疑念を感じることはありませんし、職務内容に異議を唱えることもありませんの。
女性 それではごゆっくり。
檀研究員: ではお言葉に甘えて。
檀研究員は5分ほど建造物内部を探索し、再び女性の元に戻る。
檀研究員: 文章を書くことに関する本が見当たらないのですが、ここにはないのでしょうか?
女性: あら、難しい質問を。その質問にお答えするために、この図書館の地下も案内させていただきますわ。ついてきて下さいまし。
女性は檀研究員を部屋の外へ連れ出し、トイレへと案内する。
女性: この先が地下へと続く階段ですの。
女性は1つの扉の鍵を開け、階段を下りる。檀研究員も懐中電灯を点け、それに続く。
女性: さあ着きましたわ。ここが本を整える場所です。
一行は炭鉱のような場所へと到着する。ただし、岩石の成分は上階の書籍と同一であるように見える。
檀研究員: これは本の原料でしょうか?
女性: 違いまして、これは本の候補ですわ。この中から本として成立しているものを選び出し、上へと運んでいくのです。
檀研究員: 大変な作業に見えますね。しかし、本は環境の中にあるものではなく書くものではないでしょうか?
女性: そうではないのです。ここにあるのは、あらゆる可能性を秘める、単なる無限の文字列ですわ。ほとんどが意味をなさないものですが、一部のものは極めて高い叡智をもたらしてくれます。それを選び取り、価値を確かめ、各部屋へと分類する。これが、この図書館の成り立ちなのですのよ。
檀研究員: こんなことをするのであれば、普通に書いたほうが効率的ではありませんか?
女性: この図書館の中で正しい知識を持つ者は誰一人いないのです。それ故に、誰も本を自力で生み出すことはできませんの。
檀研究員: では本を選ぶこともできないのでは?
女性: そこは解決しています。お客様達が持つ知識をまとめ上げ、1つの機械に集めました。この装置が本の価値を判定しますわ。
檀研究員: そうだったのですか。では、ここの本を読むこともないかもな。
女性: それでは、入口まで送って行きますわね。
檀研究員達は入口へ向かう。その後、檀研究員は来た道を逆に進み、出発点にてSCP-3000-JPを離れる。
[記録終了]
第三版
[檀研究員はロケットの前に立っている]
檀研究員: はい、私のSCP-3000-JPに入って、いつものSCP-3000-JPに移動しました。回数を重ねると繋がりが太くなるので、もう慣れたものですね。
檀研究員: 今回は、目処をつけていたSCP-3000-JPの最後の1つを捜索する予定です。空に果てしなく伸びていたものですね。
檀研究員: 空を飛ぶ想像の持ち主でしたら、せいぜい標高100mより上は求めないでしょうが、これは明らかに違います。ずっと高く、そして細い。飛ぶための空間とは思えません。
檀研究員: で、そこを探索するのが目的なのですが、私の力だけで宇宙空間まで進むことを考えるのは大変です。なので、このロケットに乗って行きます。では探索開始。
[檀研究員はロケットの操縦席に乗り込み、ロケットを発進させる。3分飛行したところで、破砕音が聞こえる]
檀研究員: 今バキって音しませんでした?そして周りの景色が変わった。ここはもう宇宙ですかね。あれ、急に太陽近くないですか?
[空が瞬間的に黒くなる様子が窓から見える。また、操縦席のモニターは前方の太陽を映している。太陽表面は固体が敷き詰められており、記号が隙間なく刻まれている]
檀研究員: この距離に太陽があるのならもう蒸発しているはず。少しの熱も感じないのは、想像の世界だからこそでしょうか。
[直後、太陽の一部が開き、そこからロボットアームが伸び、ロケットを捕捉する。ロケットは太陽へと引っ張られていき、表面で着地させられる]
檀研究員: 降りてみましょう。念のため宇宙服は着て。
[檀研究員はロケットの扉を開き、地面に着地する。檀研究員の様子に異常はない]
檀研究員: おや、あなたはここの住人でしょうか?
檀研究員はロケット付近に一台のアンドロイドを発見する。アンドロイドはロケットの一部を取り外している。アンドロイドは檀研究員に気づいた様子を見せ、喉部分の空洞に立方体を嵌め込む。
対象: ええ。私は太陽第53032区域の所有者です。他にも、科学魔法世界と図書館人間区画も管理していますが、その話はすぐすることになるのでしょう。それで、この世界の性質について聞きたいのですね?
檀研究員: はい。あなたはこのような場所に住んでいるのですから、見たところこの世界について詳しそうですね。しかし、どうして私の問いを知っていたのですか?
対象: 全部ここから観測していましたからね。行動を見る限り、あなたは知的な方で、ここでの知識を何かに役立てるつもりらしい。では、とりあえず座りましょうか。お茶とガーリックトーストをお出しします。宇宙服を脱いでも大丈夫ですよ。
[檀研究員は躊躇する]
対象: ほら、ネズミも問題なく生息できる環境です。話すなら寛いだほうがいいですから。
檀研究員: では、仰るとおりに。
[檀研究員は宇宙服を脱ぐが、活動に異常はない。両者は座る]
対象 では、ここへ来るまでに見たものを順番に教えて下さい。
檀研究員: はい。まず、この世界を発見したのは、他人が使用しているところを知ったことがきっかけです。それらは主に、現実では達成困難な、想像の世界でしかできないことをすることに使われていましたね。
対象: うん、いい使い方です。しかし、想像の世界というのは間違っています。次にあなたが見たものは?
檀研究員: 魔法世界を調査しました。あの世界ではなぜ魔法が使えるのですか?
対象: その問いが答えです。あの世界で魔法が使えるのではなく、あなたが魔法を使える世界に移動したのです。もちろん魔法を使えない世界もあります。次に見たものを教えて下さい。
檀研究員: 結晶の塔を登り、男性と会いました。そして彼から魔法の話を聞き、魔法を実験させていただきました。
対象: そういえば、あそこのパズルと彼の魔法の話はこの世界の本質に少し似ています。彼はパズルの美しさについてなんと言っていましたか?
檀研究員: 美しいパズルは勝手に成長するよう作られている、と言っていました。
対象: その通り。あの塔の壁には、見えないだけで様々なパズルの要素が組み込まれていますが、あなたはその中から結晶だけをヒントと受け取った。なぜでしょうか?
檀研究員: 美しいパズルは結晶となって目立っていたからですね。
対象: そういうことです。あなたはたくさんのパズルのうち、美しいものを自分で選んでいたのです。では次の話を聞かせて下さい。
檀研究員: 砂漠の図書館を訪れましたね。受け付けの方はとても美しかったのですが、彼女は外見に意味がないと言っていました。口調も特徴的でしたね。
対象: あのメイドは残念です。使用者達によって選ばれたのが今の彼女なのですが、彼らは彼女が持つ感情など、人間の細部までを想像することができなかった。だから、豊かな感情を持つ彼女に辿り着くことができず、変わりに勝手な印象の言葉遣いをさせられたいる。そしてあなたは、そこで何を見ましたか。
檀研究員: 図書館全体を案内していただきました。あの膨大な本は全て……
対象: 選ばれている。 その通り、この言葉こそがこの世界の全てを表しているのです。例えば、あなたがある世界を思い浮かべて作り上げようとしましょう。実際にあなたがすることは、既にある無限の世界から目的のものを選んで移動することなのです。
檀研究員: なるほど?
対象: 魔法も同じです。ものを出現させたり、独自の魔法を作り出すとき、あなたはそれが適用される世界に移動しているのです。空を飛べる魔法を作ろうとしたら、それができる世界に飛ぶのです。もっとも、あそこは魔法を使うと全員が同時に世界を移動する仕組みを組んでいますがね。
対象 しかし、新しい魔法を使うには、それがある世界へ自力で行かなくてはならない。そこに必要なのが強い想像力です。
檀研究員: そういう理論ですか。しかし条件に合う世界が必ずあるとも限らないのでは?
対象: そのようなことはありません。ここには人が考え得ること、その全てがあります。あなたが見た本の鉱脈と同じですよ。魔法を自由に使える世界も、太陽に住むことができる世界も、ただ強く細かく思い浮かべさえすれば行くことができるのです。もちろん、意味のない世界も同じくらいありますが、そこに行こうとは思いませんからね。
檀研究員: 真偽はこちらで調査させていただきます。それで、あなたはその知識をどのように得たのですか?
対象: 数千年の調査の中でです。精神をこちらに置きすぎた結果、現実の体は塵となってしまった。体を変えて、自分の精神が衰えない世界に留まり続けているのでこうして生きていられますが、飽きたら精神を眠らせるのも悪くないですね。
檀研究員: そうですか。では、どうしてそれを私に話していただけたのですか?
対象: 私はこの無限の世界に住み続けていますが、正しい知識を自力で得ることはできない。なので、時々この定期船に外の人を乗せて、そこから知識を得ることで情報を増やしています。
対象: さて、ではあなたに聞くとしましょう。あなたは私にどんな知識を下さるのですか?
檀研究員: 残念ながら、私からあなたに提供できるような知識などおそらくありません。申し訳ない。
対象: いえ、そのようなことはありません。あなたがどのような世界から来て、何を考えていたのかとても興味がある。あなたの世界にお邪魔させていただきますよ。
檀研究員: 困ります。私のプライベートな情報を勝手に覗くなどやめて下さい。知られたら困る情報なんてたくさんあります。
対象: 興味深いもののみ選択して、後は何もしません。あなたが暮らす世界もまた未知のもので溢れていそうだ、これを皆に見せない手はない。探してきますので、あなたはそこで待っていて下さい。
[対象の足元が割れ、そこから巨大な装置が出現し対象を飲み込む。装置は地球へ相当する位置へと飛び立つ]
檀研究員: このままだと、恐らくあれは私のSCP-3000-JPに侵入して、財団の情報を片っ端から調べますよ。しかも、私を終了したとしてもSCP-3000-JPが消えるわけではないから対策ができない。
檀研究員: ……なんてね。
[檀研究員はロケットに再搭乗し、荷物をいくつか所持した後に黒い球体へ触れる。直後、檀研究員は以前訪れたアトリエへと移動している]
男性: おや、お帰りだ。こっち使えるようになったんだな。
檀研究員: 少し太陽まで行ってきましたのでね。回線をオンラインにして、かつ世界を越えさせていただきました。
[檀研究員は塔を下り、柱の内部の滑り台で最下層に到達する]
檀研究員: どうやって降りるのかと思ってたけど隠し通路があるとは。で、地下到着。ここの回線を使えばもう再現は終わりだ。
[檀研究員は再び黒い球体に触れ、出発点へと進む]
檀研究員: ちょうど間に合ったようですね。
[装置が着陸し、内部から対象が出てくる]
対象: 待っていて下さいと言ったのに。それで、ここがあなたの世界との出入り口ですか。
檀研究員: その通りです。しかし、あなたが私から何かを手に入れることは叶いません。
対象: 何をする気でしょうか?私は自由な世界を多くの人に見せたいだけ。あなたが損をすることでもないでしょう?
檀研究員: 残念、私の世界には自由な故に人に見せられないものが無数にあるのです。今からそれらを破壊する。
[檀研究員は右手の指を鳴らす。檀研究員の出発世界に無数の音色が響き、そのうちの5つと推定されるものが全てを連鎖的に消滅させる想像が行われる]
檀研究員: ほらね、あなたにも聞こえたでしょう?これでもうあなたは私の世界を覗くことはできない。
対象: 恐ろしい自由さだ。しかし、あなたはこれが原因で自由さを求めないのですか?
檀研究員: いいえ。
[檀研究員は図書館から持ち出した本を数冊取り出し、その内の一冊を開く。表紙には「SCP-3000-JP」と書かれている]
檀研究員: ……自身の世界に全ての音を響かせ、そして最後に彼は去る、か。図書館も捨てたものじゃないですね。起こり得ることは面白いこと、それを理解している。
檀研究員: 確かに私達は日々世界の自由さに脅かされていますが、その中で行動を選び取り、砂の中に光る宝石を掴み取って生きています。幻想に浸る暇などありませんよ。
檀研究員: でも、楽しかったです。では!
[檀研究員は自身のSCP-3000-JPに移動し、即座にSCP-3000-JPを離脱する]
[記録終了]
SCP-3000-JPとの接続を切断するため、檀研究員にはBクラス記憶処理が実施されました。
当記録から得られた情報の検証が終わり次第、報告書の説明欄が以下の通りに更新される可能性があります。
・人間が特定の手順を経た上で想像することで侵入が可能であり、侵入を行った回数と比例して要する時間が短縮される。
・人間が通常行う想像よりも鮮明に空間として知覚可能であり、想像者本人の体と五感が明確に存在する。
・複数のSCP-3000-JP間を移動することが可能であり、移動にかかる労力は現実の座標と相関を持つ。
・内部の性質、再現度等は想像者の想像力によって選択可能である。
記事終わり
最後の文はかなり大事
幻想世界に訪れて分かること
人類が新しく何かを作り続けてきた、というのは幻想かも、という考え
大事なこと:物語は幻想ではない
物語を生み出すという行為が幻想
SCP-3007-1はこれである可能性がなきにしもあらず
結局、新しい物を生み出すということは、土をかき分けて宝石を探すことのように、既にある物の中から価値のあるものを選び出すという行為に過ぎないのではないか?
記事中に秘密の音色を導入
思想バリつよ記事だけど、変なこと言ってはいないと思う
三千世界とかけたタイトルもありかもしれない
記事のパワーが足りないが、画像も使えない
当然だけど、思想より記事を楽しんでほしい
広げたい設定はたくさんあるが、それで物語をまとめきれるか?
当文書と同様の文字列が、SCP-3000-JP内図書館地球区画に存在することが確認されました。ただし、情報漏洩の懸念はありません。
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任意A任意B任意C- portal:5608384 (19 Oct 2019 02:22)
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