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moc.liamg|169921akasAiruoT#moc.liamg|169921akasAiruoT 5月31日

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件名:無題

添付ファイル:2012_6_11_1034_nukiashi.mov


[激しい足音]

[カメラが部屋の端を焦点を合わせる]

今日は[不明瞭]さんの取材ということですね、よろしくおねがいします。

最初に一つお願いしたいのですが、カメラやヴォイスレコーダーなどは回していないですか?絶対にそれだけはやめてください。本当にデリケートな話なので。

はい、胸ポケや鞄の中にも何もなさそうですね、良かったです。安心して話せます。絶対に隠れちゃいけないので。

私の一族は代々霊感が強いらしく、神職であったそうです。事実我が家は毎年お祓いとお清めを欠かさないのです。そんな私たち家族はお屋敷に住んでおりました。

そこはまるで平安時代の寝殿造を真似たように廊下の多い建物で、廊下の庇には魔を追い返すためなのか、びっしり御札が貼られていました。

少し変わった家でしたが他の家と違う風習もなく、神職の家にもかかわらず女のわたしやその母や祖母も、毎月のものについて特別な隔離などはされませんでした。

そんな我が家の付近にはよく「つきもの」がいるそうです。夜にお手洗いへ向かう廊下を歩いていると、外になにか動物の影のように不自然で素早く走り回る生き物がいるように見える、といった類のものです。

動物だったら、全く怖くありません。自慢ではないですが、田舎なのでよく鹿や猪に雉、時々猿の親子を見かけたりもするものです。
それは、ギラギラした目線を言葉通り刺すように感じる類の「何か」であって、ただ不気味な存在です。しかし家族も見えるようなので怖くはありませんでした。

……ただ、一つだけ明確に守らなくてはならない決まりがありました。

それは「抜き足する子は平手打ち、差し足する子は家の外、忍び足する子は首落とせ、せんにゃつき呼び家絶やす」という謡です。

意味がわかりませんよね。

知っていると思いますけど、わたしって飲食店で運用部に勤めているんですよ。そこの部署の神棚のそばに「マニュアルは血によって完成される」という紙が貼られてて、そうそう標語です。けっこうそのように思えることが多いなぁと経験上あるんですよね。

それがちょうど私の家の風習なんですよ。昔話をします。

伝承によれば実家の一帯って江戸時代に新田開発されたらしくて、とくに実家は山のふもとということもあって湧き水や木材とか凄く住みやすい土地だったんですね。でも、一族が住み着いたのは昭和すぐなんです。

それ自体は何も珍しいことじゃないと思うのですが、奇妙なのは前の住人が尽く不幸な死を遂げて一族ごと絶えているんです。なんでご先祖様は気味の悪いところに住んでいるんだって話ですけど(笑)

さて、今度は私の生まれたあとの話です。

私が小学生2年生の頃、村に男の子がやってきました。わたしは、家が近かったこともあり、その子 - ここでは一郎くんと呼びましょう、彼とよく遊んでおり、家族ぐるみで懇意にしていました。

事件が起こったのはその3年後、その日は運動会でした。会が終わって当然帰途についたのですが、そのときに、うっかり一郎くんと私の間で体操着袋を取り違えてしまっていました。

それの取り違えについて最初に気づいたのは一郎くんのお母さんでした。自転車がそのままになっていたので、それを取りに来たようでして、もしかしたら玄関から声を掛けたのかもしれませんが、ちょうど一家全員が神事に出向いており、家には誰もいなかったのです。

最初に家へ帰ったのは私でした。玄関を通って自分の部屋へ行こうと土間を潜ったその時でした。

ぎりりりり……ぎりり……

軋むような音がしました。

生物の勘というか、恐怖を感じるほどの異常を察したわたしは、いまだお社にいる祖父のもとへ行きこのことを伝えました。

しかし、事態はかなり大事のようでした。先程まではかすかだったはずのあの音が、玄関前まで聞こえていたのです。

ぎぃぎぃ……ぎりりりり……ぎりり……

お前はここで待っていなさい、と真剣な顔つきの二人に言われた私はあとからやってきた母とともに、その日はお社に泊まりました。

次の日のホームルーム、担任の先生から一郎くんが急遽引っ越したことが学級で伝えられました。正確には彼が村を離れたわけではありません。出られるはずがないからです。

つまり、子供には残酷なことを教えないといった大人の配慮、すなわち彼は死んだかあるいは失踪したということでした。

これらは中学生に上がるころ知らされました。この日は、事件から3年が経ったときでした。

それにしても、なぜこのような大事を隠しておけばいいのにも関わらず、このタイミングで伝えたのでしょうか。未だに分かりません。

話変わって第二の事件がありました。これは私の妹が当事者です。

その日、妹は風邪を長引かせて高熱を出していました。不注意でしきたりを冒すということを極力なくすために、部屋から出る必要を断つべく、飲み物やご飯、必要なものはわたしが代わりに運び、用はそれのための瓶で足させました。

妹が寝込んでから二日目のことでした。ちょうど19[不明瞭]年、私の実家周りの[不明瞭]市のある付近で震度5強の大地震が起きたじゃないですか、ちょうどその日でした。

[髪を掻く音、それとくしゃみ]

家が倒れたんです。もともと大黒柱が根腐れしていたらしくて。それも私たちの寝ている部屋です。

ついに避難せざるを得なくて、私は妹の体を抱え起こしながら隣の部屋へ急ぎました。そのときに余震で体制を崩して、一瞬妹が来ていた寝間着の裾が廊下に飛び出たんですね。

たたん、たたたん、たたたたたた…….

足音が聞こえたあと、それから急に眩暈と吐き気でほとんどフラフラになってしまって、私は咄嗟に俯いたので見えなかったのですが、妹は見てしまったようなんですよ。

ぬちょ、ぬちょ……

なにかドロドロとしたものが妹を見つけて駆け足で覆いかぶさってきたんです。私は足を取られながらも全力で妹を隣の部屋へ半ば強引にねじ込みました。

凄い大きな音を立てて裾が破れてチリチリに焦げて破れてしまっていて、

[席を外す]

ほらこれです。母が言うにはこういうのは捨てちゃいけないらしくて、気味が悪いながらもずっとタンスの一番奥にしまってあります。

[実物を見せる]

それから、私は一家全員がすごい大声を上げて絶叫したのを聴きました。妹にごめん、動かないでと言い聞かせてから、様子を見に行きました。

最初に会ったのは母でした。なにやら床にへたり込んでおり、床がぬらぬら光っていました。ひどい鉄のような匂いから、吐血したんだとわかりました。他の家族もみんなそうです。正確には血を吐いたのではありません。それは腐った胎児でした。

祖母にいたっては、つきよったー、つきよったー!とパニックを起こしていましたし、それが原因か精神疾患を抱えてしまったらしくて、つきよったー以外に話すとこもなく数年後に亡くなってしまいました。

それから、朝3時頃に寄合の人がやってきて大人たちで何やら話し合い、二十日間一家はお社に泊まって過ごすことになりました。

やっぱりあれを吐き出すのはしばらく止まらなくて、結局毎日禊祓いしていたのにも関わらず、新品の白装束は終わったあとには凄い汚くなっていましたね。

未だに私や妹は、時々あの腐臭を感じることはあります。彼氏は私の息とか嗅いでも全く臭くないって言ってますけどね。これは一家しか感ぜられない霊的なものなんだと思います。

それから件のせいでお屋敷の再建が難しいとのことで、家の管理は祖父母の一家が引き受けることになって、一方の私達は高校進学を控えていたこともあって近くに戸建てを立てて移ることになったんです。

あれ以来、家で音を立てなくても何も起きません。祖父母と会うとき、忘れそうになって大変ですけどね、でも本当に気楽になりました。

もう知ってると思いますけど大学から付き合ってる彼氏と先月に入籍したんです。もう3人家族になったからって。

この一件はこれで終わりです。一応落ちになるか分かりませんが、一つだけ変わったことをお教えします。

半年前に祖父が亡くなったんです。まだちょっとショックから立ち直れてないですけど、私は強くならないとってことで頑張ってます。

見つけたのは寄合の人だったそうです。結局反っていたらしくて。やっぱりあれなんでしょうね、でもまだ終わりではないです。

ここ数日ですごく奇妙なことがあって。彼氏と私ってアレルギーとかなくて健康体なんですけど、朝方にすごく鼻が痒くて、花粉症かなーってお互い笑ってたんですけど、何やら詰まってるっぽくて、ちーんって鼻をかむじゃないですか。それでも取れないので耳鼻科を受診したんです。

何かが鼻の奥に詰まってたらしくて、摘出手術を受けたんです。ふたりともです。

それは短い白髪の毛束でした。実は、私の祖父は刈り上げた白髪なんですね。

いま彼氏は気味が悪いって実家に帰っています、私に押し付けてひどい話です(笑)

これで終わりです。あれ顔色悪いですね、どうしましたか?

あれ?

机にあるのって……?髪……?

いや!来ないで……!早く出ていって!

[金切り声と雑音]

[カメラが踏まれる]


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