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どうして死んでしまったんだ。
アイテム番号: SCP-2935-JP
オブジェクトクラス: Neutralized1
特別収容プロトコル: 不必要。
もう、あの人の作品は作られることはない。
説明: SCP-2935-JPは東京都のとある開けた丘にある直径5mくらいの入口は円形をした洞窟です。SCP-2935-JPの内側の側面は常にうねうねと動いており、周囲の風景と見比べても明らかに異質です。SCP-2935-JPの奥の膜の様な部分は別世界と繋がっています。詳細は探索ログを参照してください。
これを読んでいる人へ: お前が誰で、どうやってこれを読んでいるのか俺は知らない。お前の方が俺のことを知ってるかどうかも知らないが、とりあえず書いておくと、俺たちはこの世界とは別の世界から、SCP-2935-JPを通してここに来た。そして何だかんだあって今これを書いてる。何があったかは、この下の探索ログを読んでほしい。俺らが持ってたカメラに写ってたのを一部転写してある。一部だけだが、俺らがどういう人物で、どういう道筋を辿ってきたのかは分かるはずだ。
私は、あの人のお陰で、これに出会えたのに。
補遺1: 探索ログ
「あちら側」で2019/06/22、D-1104-JPとD-14134-JP2によるSCP-2935-JP内探索が行われました。小型カメラと1週間分の携帯食が支給されました。以下のログではD-1104- JPのカメラとD-14134-JPのカメラに写っていた映像が混在しています。
財団の博士:3 それでは、入ってくれ。何があるか分からないからな、警戒を怠るな。
1104: はいはい。何回も言われなくても分かってるって。
[SCP-2935-JPに入り、ゆっくりと歩く]
1104: うわ、壁触るとめっちゃ気持ち悪い。なあ?
14134: …うん、まあ。
1104: 何だろう…触った感じは…ナマコに近いか?お前はどう思う?
14134: ナマコなんて触った覚えない。
1104: そっか、すまん…おっ、もうすぐ境目だ。…どうだ?生きてて異世界にいけるのなんて俺たちぐらいだからな。何とも言えない感覚だな。ははっ。
14134: まあ。そりゃそうだ。
1104: 何だ反応悪いなあ。こっちは何かこう、これから先しばらく一緒にやっていくから少しでもいい関係を作るために盛り上げてやろうと…。
14134: 入る。気をつけて。
1104: お、おう。
[D-14134-JPが境目に入る]
1104: ああ、ほんとに入った。[5秒沈黙]ふー。[深呼吸]よし。
[境目に入る。映像が大きく歪む]
1104: あ゛あ゛あ゛あ゛、周りがががが。
[映像が正常になる]
1104: …はあ、はあ。何だありゃ。…あいつは?
14134: [SCP-2935-JPの外から]おーい、こっち、こっちだ。
1104: [D-14134-JPの方を向く]おっ、いた。すぐ行く。[歩き始める]何か、やけにいい匂いがするな。
14134: 来てみて。匂いの元が分かるはず。
[外に到達する]
14134: ほら。
1104: 何だ何だ……え?
1104: 何だこりゃ…すげえ、花が咲いてる……本当に異世界に来ちまったのか。
14134: そうらしい。あと、よく見ると地形とか遠景はさっきまでいたとこと同じだ。
1104: はえー。すげー。
14134: …聞いてる?
1104: …あ、ああ。地形が同じって話だろ?
14134: よし。じゃあ、早速探索しよう。まず、周囲を警戒しながら…。
1104: [息を大きく吸う]
14134: どうした?
1104: [大声で]おーーーい!誰か居ないかーーー!
14134: [D-1104-JPの口を慌てて押さえる]は!?ちょおま、何してんだ馬鹿!
1104: [口を押さえられたまま]何って…誰か居ないか聞いてんだよ。
14134: 何考えてんだ!
1104: この世界の事はこの世界の人に聞くのが一番だと思って…。
14134: 「警戒を怠るな」って言われたばっかりだろ!何?「花がいっぱい咲いてる!ここは安全そうだ!」とか思ったの?
1104: …ごめん。
14134: [周りを見回す]はあ。[D-1104-JPの口から手を離す]誰も居ないみたいだから良かったものの、もし声に反応して襲ってくる何かでも居たら自分たち二人とも死んでたよ?[D-1104-JPを指さす]二度とそんな迂闊な真似はしないで。いいね。
1104: [俯く]はい。よく分かりました。
14134: OK。分かったら、改めて探索しよう。
1104: どういう風に探索しようか。
14134: 木とか隠れられる物があればそれを使いたかったんだけど…生憎近くにはない。だから、あまり音を立てないようにして慎重に行こう。
1104: 了解。
[二人、歩き始める]
14134: しっかし花だらけだ。気温も丁度いい暖かさだ。何があったんだか。
1104: さあ。この探索で分かったらいいが。
[1分半ほど歩く]
1104: あっ。[止まる]
14134: どした?何かあった?
1104: あれ…人じゃね?[横を指さす]
[指をさした先に地面に横たわった人が見える]
14134: おお、ほんとだ。
1104: どうする?
14134: 財団からしたら調べてくれた方がいいんだろうけど。…よし、とりあえず近づくだけ近づこう。勿論慎重にだけど。
1104: 分かった。慎重に、な。
[二人、ゆっくりと人に近づいていく。近づいたことで、その人が50歳ぐらいの男性であり安らかな顔をして目を閉じていると分かる]
14134: 見た目は、普通の人と変わらないね。…もうちょっと調べたいけど、やっぱり危険を冒すのはよした方がいいかな。そっちは?
1104: [腕を組んで黙っている]
14134: おーい?
1104: …よし。調べよう。
14134: え?
1104: 俺は、個人的にここで色々調べたくなった。こんな異世界に行くなんて体験普通できやしない。だから、折角だから色々知りたい。その為には、ビビってばっか居られない。
14134: でも、だからって。
1104: それに、本来ならいずれ死刑になってたんだ。
14134: それとこれとは…。
1104: だから、お前は下がってろ。
14134: 下がってって…。
1104: 万が一何か悪い事が起きたら、すぐに穴に逃げろ。そして、元の世界で財団の奴らに何があったか話せ。
14134: マジか。そんな…。
1104: 漫画みたいか?臭いセリフか?
14134: いや…まあ。
1104: ふっ。[笑う]まあ普通言う機会が無いしな。正直俺自身若干恥ずかしい。…で、それはともかく、下がってろ。
14134: ……分かった。従っておく。[後ろに下がる]けど、そっちも何かあったらすぐ逃げるんだよ?
1104: 分かってる分かってる。…じゃあ、調べるぞ?準備はいいな?
14134: [息を飲む]うん。
1104: [横たわった人の横に立つ]あ、あの、すみません、ちょっと…。
[横たわった人は動かない]
14134: あー、あんまり声を掛けるのは得策じゃないかもしれない。
1104: そうか。うーん。[6秒沈黙]ん?[しゃがむ]
14134: お、どうした?
1104: 何か…[横たわった人の顔に耳を向ける]やっぱりだ。
14134: やっぱり?何が?
1104: こいつ、息してない。
14134: へ?
1104: っていうか、ちょっと待って。これって…。[横たわった人の胸に手を当てる]
14134: おい、あまり触れない方が。
1104: 心臓も動いてない。
14134: えっ。ってことは。
1104: マジかよ。[手を離し、後ずさる]え?死んでんの、これ。こんな、安らかな顔してるから、てっきり、寝てるもんだと。
14134: ああ、もう自分も行く。[遺体に近寄る]うーん、死体には見えないな。
1104: それに何でこんな場所で?この花と何か関係してたりするのか?
14134: さあ…。[遺体を眺める]パッと見外傷は無いな。
1104: 一体何が…。[5秒沈黙]あれ。これは。
14134: また何か見つけた?今度は?
1104: 蝶の、死骸だ。[遺体の横を指さす。その先には蝶の死骸がある]
14134: 何だ、別に蝶の死骸ぐらいで。
1104: いや…さっきは人の死体に気を取られてて気付かなかったが。[地面を見ながら周りを歩く]
14134: おい、どうした。
1104: [地面を指さす]ほら、ここにも蝶の死骸が。それから…[別の場所を指さす]ここ、大量の蟻が1匹残らず全部死んでる。別に外傷とかもないのに。
14134: え?[D-1104-JPが指さした場所を見る]本当だ。ってことは。
1104: この辺の生き物が皆死んでるってことか?
14134: 正確には動物が、だけどね。植物はこうも元気に生えまくってる。動物には致死的で、植物には有益な何かが…。
1104: …やべえな。
14134: 確かにやべえね。自分らの想像も付かないような何か。もしかしたら自分らもこいつらを殺した何かに殺されるかもしれない。
1104: それもあるけど。確かに恐怖もない訳じゃないけど。それ以上に。
14134: それ以上に?
1104: 興奮してんだよ。これまで自堕落に生きてきてこんな興奮は今まで無かった。生まれて初めての冒険だ。何が起こったのかを知りたい。[深呼吸]説明しづらいが…最高の気分だ。
14134: …ほお。えーと、何と言うか、主人公みたいな性格してんね。
1104: 俺が?[3秒沈黙]ほーん。主人公ねえ。
14134: 何にやにやしてんだか。それはそうと。[D-1104-JPに背を向ける]探索、行くよ。次は、他の場所がどうなってるか調べないと。だからまず山を下りようか。
1104: …了解っ。
君たちは誰だ?
14134: さて、大分下りたけども。
1104: 相変わらずどこもかしこも花だらけだ。それにここにも…家の前で家族が手を繋いで死んでる。
14134: この調子だと、もしかしたら世界中こうなってるかもしれないね。
1104: だな。…てか、ふと思ったんだけどさ。
14134: うん。
1104: 道路って、植物生えるもんなん?
[道路上に大量の花が咲き誇っている]
14134: さあ。自分は今まで見た覚えはないけど。でも、仮に生える可能性があるとしても、間違いなく植物の生長条件としては道路は最悪だろうね。こんな綺麗に立派に育つ訳が無い。やっぱりこの花は普通じゃないんだ。
1104: そっか…。もう何もかも訳分かんねえ。
14134: とりあえずここで何が起きたのかを知らない限りはどうにもならないと思う。
1104: まあそれしかないか。
[二人、数分歩く]
14134: 思うに。
1104: ん?
14134: ここで死んでる人たちは、死ぬ前に皆もう自分たちが死ぬって分かってたんだろう。
1104: ほう。
14134: 例えば、これ。[家の前で死んでいる4人の遺体に近づく。恐らくそれぞれ母、父、息子二人と思われる]
1104: これが?
14134: 普通に考えて、こんな外で家族揃っていることって無いだろう。これだけならまだしも、あっちでもこっちでも同じようになってる。
1104: ふむ。
14134: でも、彼らは自分たちが死ぬって分かってた、だから最後ぐらい家族で、思い出の家の前にいたい、そう思った、と考えれば自然じゃないかな。
1104: なるほどなるほど。賢いなあ。
14134: これぐらいで賢いって言われても。
1104: いやいや…[家を見る]おいおい、ドア開けっぱなしじゃないか、不用心だなあ。
14134: まあ皆死んでるから不用心も糞もないけどね。というかあれじゃない?「もうすぐ皆死にますから自由に入っていいですよー、何なら好きな物持ってっていいですよー」って。
1104: ああ、確かに。[6秒沈黙]入る?
14134: うーん。まあこの世界に来てすぐだったら入らなかったかもしれないけど。もう、危険性は無さそうだし、いいんじゃない?仮に危険性があったとしてももう知らん。
1104: よし。一々ビビっていられねえしな。それに日も暮れてきた。何なら泊めてもらおう。
14134: いいね。
1104: それじゃ早速。[玄関に入る]お邪魔しまーす。
14134: 誰もいないだろうけどね。[玄関に入る]
1104: っとまた、広い家だなあ。俺こんな感じにでかくて綺麗な家に住みたかったんだがなあ。
14134: 一軒家ならこんなもんだと思うけど。
1104: あー、俺、貧乏だからさ。世間一般の一軒家がどんなもんなのか知らねえんだ。
14134: …ごめん。何も考えてなかった。
1104: いやいや、いいって。俺が貧乏なのはいつもの事だしな。今更こんな事で傷つかねえよ。
14134: そう。…そうか。
[数分家の中を見て回る。これといってめぼしい物はない]
14134: そういえば。
1104: どうした?
14134: 水道とか電気って、使えるのかなって。
1104: あー、確かに。試してみよう。[水道のレバーを上げる]
[水が流れる]
14134: 使えた。
1104: じゃあこっちは?[冷蔵庫を開ける]
[冷蔵庫内に電気が点く]
14134: 使える。
1104: なあ、こういうのって誰も操作しなくても問題なく使えるのか?
14134: さあ。その辺は詳しくないが。ただ。
1104: ただ?
14134: もしそれらの根幹に問題が起きたら、それを直せる人がいない。
1104: マジ?…ああでも、もしかしたらここだけ生きた人がいないだけで、別の場所にはいるかもしれないし。
14134: その可能性も無くはないけど、期待値は低いだろう。
1104: 何でだ?
14134: 考えてみて。動物がこんな一斉に死ぬなんて、間違いなく異常事態だ。もし別の場所の人が生きてたとしたら、彼らはとりあえずここを訪れてみるぐらいするだろう。でもそんな痕跡すらない。
1104: まだ一部しか見てないだけで、他の場所には痕跡があるかも…。
14134: それに、ここの人たちは自分たちが死ぬことが分かってたって言ったでしょ?別の場所なら死なないんだったら、普通ここから逃げたりすると思うんだよね。でも、さっきから大量の死体がある。つまり、どこもここと同じようになってる、ってこと。
1104: マジか。
14134: まあ、1週間以内には帰る予定だから、別に問題ないんだけどね。
1104: 何だかなあ。
[数十分間家の中を調べる。めぼしい物はない]
14134: おい。
1104: 何か見つけたか?
14134: カバンの中漁ってたら、こんな物が。[紫色の手帳を取り出す]
1104: 手帳?
14134: うん、中見てみ。
1104: これは…数行だけだが、日記か?
14134: もしかしたら、中に何か重要な情報が書いてあるかもしれない。
1104: よっしゃ、それじゃ最後の方から見てくぞ。
14134: [手帳をめくる]
1104: 最後の日付は…6月19日か。じゃあ、2日前ぐらいから見てこう。
6月17日
町内会のみんなとご飯に行った
内田さんの子は早稲田目指してるみたい
うちの子たちにも見習ってほしい
14134: 確実に微塵も関係ないね。
6月18日
裕翔が夏の大会に向けて本格的に練習してる
今年こそは応援に行く
頑張れ裕翔!
1104: 微笑ましいけど残念ながら役には立ちそうにないな。
6月19日
今日でこの世界最後の日です
今まで48年生きてきて、色々なことがありました
あまりにも突然のことでしたが、████4なので仕方ありません。いずれ必ず起こったことです
長いような短いようなそんな人生でした
今までありがとう!大好きだよ
1104: ……マジで、突然だったんだな。
14134: この、濡れて読めないとこ…もしかしたら最重要だったかもしれない。
1104: 「いずれ必ず起こったこと」って…。何だ?
14134: 分からない。クソ、何でここだけ都合良く、いや悪く読めないんだよ。おかしいだろ。
1104: まあまあ、6月19日に突然自分が死ぬってことを理解して、死んだことが分かっただけでも収穫じゃないか。
14134: だけどさあ。
1104: それに、この世界来て初日に真相が分かるなんてのも、つまらないだろ?
14134: まあ……相当、ポジティブだね。
1104: よし!今日はこれで終わり!さあ風呂入って飯食って寝るぞー!
あの人は自分の死を予め知っていたのか?
1104: 腹減った。
14134: はあ?さっきの家で食ったでしょ?
1104: いやそうだけどさ、財団が寄越した携帯食ってさ、味は薄いわ量は最低限だわで食った気しねえんだよ。房で食ってた野菜炒めも相当味薄かったけど、あれの方がマシだったな。
14134: そう言われてもね。財団にはここではこれ食っとけって言われてるし。
1104: でもなー、うーん。あ。[立ち止まり、横を見る]
14134: どした?[D-1104-JPと同じ方を見る]
1104: [視線の先にセブンイレブンがある]
14134: ええ?セブンイレブン?
1104: [手を合わせる]頼む!何か携帯食以外が食いたくて仕方ねえんだ!寄らせてくれ!
14134: 自分は別に構わんけど、財団に…。
1104: 食ったからって罰せられることはないだろう、多分。財団の奴らは、異世界の食べ物は、危険かもしれないから食うなって言ったんだと思う。でも、今んとこそんな危険性全く無さそうだし。9割9分9厘安全だと、思う、から。
14134: まあそれは…。[8秒セブンイレブンを見つめたまま沈黙]自分も…考えてたら腹減ってきた。つか凄い何か食べたくなった。よし、うん。食おう。
1104: [親指を立てる]ナイス。
[二人、入店する]
1104: いらっしゃいましたー。
14134: で、何食うん?
1104: 俺はもう決めてる。[歩いていき、おかか、ツナマヨ、明太子おにぎりを1つずつ取る]
14134: おにぎり?しかも安い奴?
1104: 相当久しぶりだからな。コンビニのおにぎりなんて。俺が罪を犯して、捕まって、死刑判決が出されて、財団に連れてこられて。どれだけ食ってなかったんだろうな。
14134: さあ。自分は高めの物を贅沢に食うつもりだったけど、それもいいかもね。[弁当コーナーを見る]
1104: [ドリンクコーナーの方に行く]飲み物は?何がいい?
14134: あー。[12秒沈黙]カルピス。
1104: はいはいカルピスね。…ふふっ。
14134: 何か可笑しかった?
1104: いや別に、何でも。
14134: 何飲もうがこっちの勝手でしょ。
1104: まあな。俺もカルピスは普通に好きだし。ええと…来て早々酒飲む気もしないし、コーラでいっか。お前は食うもん決めたか?
14134: 自分は…[カルボナーラを手に取る]これ。
1104: おっけ。じゃあ食おうか。[レジ前まで歩き、床に座る]
14134: 自分はカルボナーラあっためてるから、先食い始めていいよ。[電子レンジを操作する]
1104: 分かった。[おにぎりの包装を破り始め、すぐに手を止める]何か、あー。
14134: ん?
1104: 俺たち、タダ食いしてる訳じゃん。
14134: まあ。そりゃそうだ。
1104: どうも…罪悪感があるよな。
14134: 別に誰も怒らないし、誰も損しないけど。
1104: それは分かってんだけどさ。
14134: それに、自分たち既に殺人っていうもっと遥かにでかい罪犯してんじゃん。とっくに自分ら極悪人だよ。そんなの今更だ今更。気にするだけ無駄。
1104: [笑う]それもそうだな。[包装を再度破り出す]
14134: そろそろかな。[カルボナーラが温まり、それを電子レンジから取り出し、レジの横に置く]
1104: それじゃ、いただきます![おにぎりにかぶりつく]あー、うめえ!
14134: まだ具に達してないでしょ。[カルボナーラをすする]
1104: それでもうめえ物はうめえんだからしょうがないよなあ!
14134: ふん。まあ存分に堪能してね。
[二人、それぞれの食事を存分に堪能する]
14134: さて、と。これからどうする?行動指針ぐらいは定めていかないと。
1104: そうだな。それは大事だ。だがその前にやっておかなきゃならない事がある。
14134: ほう。行動指針に優先する事。何?
1104: ……自己紹介だ。
14134: 自己紹介ぃ?
1104: そう。自己紹介。俺たちは、まだ互いについてほぼ何も知らない。財団での呼び名で、俺がD-1104-JPで、お前がD-14134-JPだっていうことだけだ。今後、より良い関係を築いていく為には、まず互いのことを知るのが先決だ。
14134: なるほど。じゃあそっちから。
1104: 分かった。[咳払い]俺は新田にった 亮介りょうすけ。24歳、山梨県出身。誕生日は2月12日。好きな食べ物は餃子。趣味はゲームとスポーツ鑑賞。それから…。
14134: 分かった分かった。もういい。そこまで詳しく説明してくれんでも。新田亮介ね。
新田: そうか?じゃあ、次、頼む。
14134: えー、自分は吉川よしかわ 祐一郎ゆういちろう。23歳、東京出身。誕生日は9月30日。…こう改まって言うと話し辛いな。
新田: 好きな食べ物と趣味は?
吉川: それも言うの?
新田: 嫌ならいいけど。
吉川: 寿司と漫画。
新田: そっか。宜しく、祐一郎!
吉川: いきなり下の名前か。
新田: 吉川の方がいいか?
吉川: まあ…その方がいいかな。
新田: ああ…[3秒沈黙]分かった。そうする。[咳払い]…で、話は戻るが、これからどうする?
吉川: まあ、一番早そうなのは、こっちの財団を見つけることだろうね。
新田: そうだな。でもどうやって探す?財団が「ここがSCP財団です」なんて書く訳ないし。
吉川: そこが問題なんだよなあ。当てがなさすぎる。
新田: とりあえずそれっぽい建物を片っ端から調べてみる?
吉川: それっぽい建物って何だよ。
新田: さあ。
吉川: まあいいや。でもいずれにせよまず、車が欲しいな。
新田: 車なら移動しやすくなるしな。適当に探せばキーと一緒に見つかるだろう。
吉川: うん。移動してれば何かあるかもしれないし。
新田: よっしゃ、思い立ったが吉日、早速車を貰いに行くぞ!
吉川: おー。
君たちはいい仲間だ。私が好みそうだ。
新田: よし、キーあったぞ。
吉川: 助かる。
新田: [キーのボタンを押す。車のドアがアンロックされる]
吉川: ちょうどすぐ近くに綺麗な車があって良かった。[助手席に乗り込む]
新田: ああ。よく手入れされてる。持ち主は大切にしてたんだな。[運転席に乗り込む]…大切にしてたのを俺らが勝手に使ってんのか。
吉川: ああもう、だからそういうのは気にしなくていいって。それに、最後にもうひとっ走りできてこの車も幸せなんじゃない?知らんけど。
新田: そうだといいな。[エンジンをかける]
吉川: ねえ、一応言っとくけど。
新田: 何だ?
吉川: 極力安全運転で頼むよ。新田が免許持ってるから任せてるけど、自分が持ってたら確実に自分が運転してるから。
新田: 信用ねえな。
吉川: それに、花のせいでどこが道路だか分かりにくくなってるから。
新田: 心配なさんな。じゃ、発進するぞ?
吉川: いやまだ心の準備が
新田: 発進![結構思いっきりペダルを踏む。車が急発進する]
吉川: うわ、安全運転っつったろ!何すんだ!
新田: いや、このまま吉川の言うこと聞いてたら当分発進出来そうにないな、って思って。
吉川: それは自分たちの安全のために…あっ、ガードレールぶつかる。
新田: [左に曲がりガードレールを避ける]言われなくても大丈夫だって。運転免許取得者様を舐めんな?
吉川: はあ…よくそんなんで免許取れたね。
新田: [笑う]流石に普段はもうちょっとマシな運転してるって。
吉川: 何でもいいけど、壁にぶつかって死ぬなんてつまらない死に方はごめんだからね。
新田: 同意。
[20分程、無事事故を起こさず走る]
新田: もうすっかり俺の運転にも慣れたみたいだな。
吉川: 別に慣れたくて慣れた訳じゃないけどね。
新田: そういえば。
吉川: 何か?
新田: 自己紹介の時聞くのを忘れてた事があった。
吉川: 何?まさか「嫌いな食べ物」とか言い出すんじゃないよね?
新田: そうじゃない。もっと重要な事。[5秒沈黙]…何して、死刑になったかだよ。
吉川: [8秒沈黙]…殺人。
新田: いやそれは分かってる。少なくとも日本では殺人以外で死刑になるこたあないだろう。そうじゃなくて、誰を、どんな理由で殺したか、ってことだ。
吉川: [4秒沈黙]…ふうん。
新田: 正直、俺は吉川が人を殺すような奴に見えない。だから、何があったのか知りた…あ…。
吉川: [窓の外を見ている]
新田: あ…すまん。思い出したくなかったか?
吉川: [反応しない]
新田: ごめん。さっきから俺、自分勝手だよな。さっきだって散々吉川が注意してたのを無視して発進したし、この世界に来てすぐの時だって何も考えず叫んじまったし。悪い。それに対して吉川は…。
吉川: 別に謝ってくれなくていいから。小学生じゃあるまいし、一々そんなことで怒ったりしない。
新田: そうか。ごめ…うん。
吉川: …あと、わざわざそんな話題を持ち出すってことは、自分も話したいってことでしょ?いいよ、話して。
新田: あ……分かった。じゃあ、話すぞ?
吉川: …うん。
新田: [咳払い]俺は、さっきも言った通り、貧乏だった。一日一日を、何とか少ない金で繋いでいた。…で、何とか中学を卒業して、一人暮らしし始めた。だが、このご時世、中卒を雇いたがるとこなんてほとんどない。という訳で、学歴関係なく働ける工事作業を行うことで金を稼ぐことにした。しかし…食事も切り詰めてきた、体力のない俺にとって、その作業は苦痛そのものだった。俺はこの仕事に全く向いていなかった。明日も明後日もその先もいつまでもこれが続くのか、って思った。
吉川: …続けて。
新田: それで…その健康的とはかけ離れた心が祟ったのか、俺は作業中に、5mはある所から落ちた。幸いにも大きな怪我にはならなかったが、その時に両親が何かと金を出してくれた。ただでさえ生活が苦しいのに。
吉川: それは…。
新田: その時、思ったんだ。これ以上、親に苦労させられない。そのために、何とかして自分で金を得ないと、って。
吉川: なるほど、それで。
新田: そう、今思えば完全に馬鹿だったんだが…。その時の俺はどうかしていた。俺は、銀行強盗をしよう、って思ってしまったんだ。貧乏な一日本人でしかない俺が拳銃を手に入れる手段なんて無かった。だから、ライターとガソリンを持って、「金を出さないと火を付けるぞ」、って脅したんだ。…馬鹿だろ?ここからがもっと馬鹿なんだよ。俺、気持ちが昂りすぎて、ガソリンを大量に周りにばらまいたんだよ。そして、それに慌てて、ライターもその上に落として。何かの拍子に火がついて。ドカンだ。
吉川: それは…大惨事だね。
新田: そうだよ。大惨事なんだよ。俺はもう、後ろから悲鳴が聞こえるなか、ヤケクソになって逃げた。自分が何で逃げてんのかも分からなかった。…気がついたら、捕まってた。結局その事件で4人死んだらしい。で、当然ながら俺は死刑になった。…それで、両親は。
吉川: 分かった。もう話さなくていい。うん。
新田: 俺ってさ、とんでもない親不孝者だよな。結局、何一つ恩返し出来なかった。むしろ仇で返しちまった。はは。
吉川: …そうかい。
新田: …聞いてくれてありがとう。若干すっきりした。
吉川: まあ、色々あったのね。
新田: ……何か湿っぽくなっちまったな。
吉川: 「何か」じゃなくて実際湿っぽくなってるんだよ。てか逆に聞くとこの話して湿っぽくならない可能性があるとでも思ったの?
新田: いや、もちろん分かってたけど…[7秒沈黙]そうだ。夢の話しよう。
吉川: 夢?
新田: そう、夢。俺は半年程前に、1週間ぐらい続けて同じ夢を見たんだ。
吉川: へえ。
新田: 変な話なんだけどさ。実は俺、Dクラスのつなぎを着た時、凄い既視感があったんだよ。で、その既視感の正体を考えてたら、気づいたんだ。あれ、これ前に夢で俺が着てたな、って。
吉川: 予知夢って奴?
新田: そう。夢はつなぎを着て、房にいるところから始まる。でも、そっからは現実とは全く違うんだ。
吉川: ふん。
新田: 夢が始まって少しすると、突然爆音がして周りが揺れるんだよ。それから、警報みたいなのが鳴り出して。そしたら、房のドアが吹っ飛んだ。で、顔を出して周りを見回すと、周りはすっかりボロボロで、生き残ってたのは俺と、同じ房にいたもう1人のつなぎ着た奴だけだった。更に、奥を見ると、巨大な羽を生やした人が遠くにいて、そのまま飛び去っていった。
吉川: もうちょっと筋道立てて話せる?あと漫画みたいな始まりだね。
新田: 夢だから説明しにくいんだよ。元々話す予定も無かったし。我慢してくれ。[咳払い]こっからもっと漫画臭くなるぞ。俺ともう1人は、途方に暮れていたところ、いきなり現れた数体の小型のドラゴンみたいな奴に襲われる。やべえ、ってなったその時、魔法陣みたいなのが浮かんできて、そこから光線が出て、ドラゴンを一掃する。そして、俺たちは自分でそれを制御出来ることに気づく。
吉川: 中学生が考えそうな台本だ。
新田: で、まあ何だかんだあって、あの羽人間が世界を滅亡させようとしてること、俺たちは奇跡的に助かっただけでなくその能力を一部受け継いだことを知り、やがて羽人間を2人で倒すって話だ。
吉川: まあ…ご都合主義的展開だね。
新田: 夢なんてそんなもんだろ。[4秒沈黙]うーん、明るくしようと思って話したけど、やっぱりつまんなかったよな。悪い。
吉川: …自分も。
新田: えっ?
吉川: 自分も半年ぐらい前、同じ夢を1週間ぐらい見た。
新田: …マジで?
夢?…まさか。
新田: おっ。[車を停める]
吉川: 何か見つけた?
新田: あれ、見てみろ。[窓の外のビルを指さす]
吉川: ビル?…酒井エココンシャスプラスティックス…。それが?
新田: その下に描かれてるロゴ、見てみろ。
吉川: S、C、P…。いや確かに同じだけど、あれはこの会社の名前の略称でしょ?多分関係ないよ。
新田: ああ、俺も多分関係ないんじゃないか、とは思ってる。でも、他に当てはないだろ?
吉川: うん。
新田: あれこそが、出発する前に言ってた「それっぽい建物」だ。別に時間は一杯あるんだ。いいだろ?
吉川: まあ、期待せずに行ってみよう。
[ビルへ向かい、その下の駐車場に停める]
新田: …でっけえ。
吉川: 壮観だね。
新田: 何階あるんだ?こんなでかい建物今まで入ったことねえぞ。
吉川: 入ってみりゃわかる。じゃ、行こう。
新田: 待った。[深呼吸]OK。
吉川: …はいはい。じゃ、今度こそ入ろう。
新田: よし。[入口前に立ち、5秒沈黙]…失礼します![入る]
吉川: 失礼しますなんて聞いたの大学以来だな。[入る]
[エントランス]
新田: うわ、綺麗。引くぐらい綺麗。
吉川: もうちょっと表現力を鍛えた方がいいな。
新田: はえー。[壁やら何やらを触る]
吉川: [エレベーターの前に立つ]上行くよ。
新田: おいおい、もう少し見させてくれよ。
吉川: 期待してないから、もう何かあるかどうかさっさと確認して何もなきゃ出ていきたいのよ。
新田: あー。…分かった。
吉川: 分かってくれるのが早くて助かる。[エレベーターの「↑」ボタンを押し、待つ]
[エレベーターがやって来て、ドアが開く]
吉川: 来た来た。
[二人、乗り込む]
吉川: [階数ボタンを見る]…30階か。何階に行こう。
新田: 23階にしとくか。特に意味は無いけど。
吉川: 了解。[23階のボタンと、「閉」ボタンを押す]
[エレベーターが動き、23階に到着する]
新田: [エレベーターから降りる]よしよし、ここには何があるのかな。
吉川: [エレベーターから降りる] さて…[周りを見回す]…あ、会議室だ。
新田: お。よし、行ってみよう。
[二人、会議室に入る]
吉川: 何も考えず入ったけど、特に会議室には何もないか…。
新田: 確かにそうかも…。ん。前の机に何か置いてあるぞ。
吉川: 会議用の資料かな。見に行ってみよう。
新田: まあ俺らに理解できるかは分かんないけどな。
吉川: [資料を手に取る]どれどれ…「SCP-030-JPの…」……は?
新田: えっ!?[吉川に近寄る]今吉川、何て言った。
吉川: 見て、これ。[資料を新田に見せる]間違いなく、SCP-030-JPって。
新田: ああ…。この「JP」ってのも含めて、財団の異常存在の呼び名だ。
吉川: ええと、それから…。[資料をめくる]おいおい、ここに「財団」って!書いてある!
新田: マジかよ!大手柄じゃねえか、俺!
吉川: そうだ!よくあの時気づいて停まってくれた!
新田: おお…。すげえよ俺!
吉川: …[資料をめくる]ここには自分たちの役に立ちそうな事はもう書いてなさそうだね。でも、もっと重要な人の部屋行けば何かあるかも。
新田: 重要…ってことは30階だな!行くぞ!
吉川: おし!
[エレベーターで30階に上る]
吉川: さて、着いたけど…。
新田: …おい!社長室だ!一番重要な人来た!
吉川: よし。入ろう。
新田: [ドアノブを握る]失礼しまああす![思いっきり引っ張って開ける]
吉川: おいおい、さっきまでこのビル入るだけで深呼吸してたよね。
新田: そうだっけか?まいいや。それより財団関連の何か探すぞ!
吉川: ほーい。
[二人、あちこち容赦なく開けて探す]
新田: あったぞー!
吉川: あった?どこに?
新田: 机の引き出しに。鍵かけれるっぽかったけど、かかってなかった。
吉川: 見してみ。[見つかった紙を手に取る]おお。
新田: ええと…あった。サイト-8181ってとこの住所が書いてある。行こう。
吉川: うん。…[5秒沈黙]
新田: どうした?
吉川: いや…いくら何でもちょっとトントン拍子すぎる気がしなくも…。
新田: 運がいいだけだろ。気にすんなって。
吉川:そっか。…そうだよね。
君たちを見ていると、自分の心が解かされていくようだ。
新田: 大分山の中だな。本当にこんなとこにあるのか?
吉川: うん。住所見た感じだとこの辺で間違いないはず。
新田: 正直建物1つさっきから見てないけど…。
[大きな建物が現れる]
新田: …おお。
吉川: 噂をすれば何とやら。
新田: えっと、この建物でいいのか?
吉川: 多分ここで合ってるんじゃないかな。とりあえず行ってみよう。
新田: 分かった。
[検問か何かを通り過ぎて、駐車場に入り、車を停める]
新田: さて…雰囲気的には俺らが前にいた財団施設と似てるな。
吉川: 建物前で色々言っててもしょうがないし、とっとと入っちゃおう。
新田: そうだな。失礼しまーす。[入る]
吉川: 毎回毎回律儀だね。[入る]
[改札みたいなのがある]
新田: おっ、早速カードキーとか提示したり指紋認証しなきゃならなそうなのがある。
吉川: セキュリティを重視してる、ってことはやっぱ財団で良さそうかな。
新田: ここそのまま通ったら警報とか鳴るかな?
吉川: さあ。まあ無視しちゃえばいいでしょ。
新田: ああ。じゃ通過しまーす。[改札を何の抵抗もなく、何か起きることもなく通過する]…あれ。
吉川: 普通に通れたね。[通過する]最後の日ぐらい自由に通っていいですよー、って開放したのかな。
新田: その辺だろうな。…じゃあどうする?どこ行く?
吉川: 財団施設がどうなってるか全然知らないし、適当にうろうろしてりゃ何かあるんじゃない?
新田: よし。じゃあ適当にうろうろしよう…と思ったけど、やっぱ腹減ったな。食堂探すか。
吉川: そうだね。
[案内表示を元に、食堂までたどり着く]
新田: おお、すげえいい匂い。カレーか?
[食堂には、カレー、スープ、サラダ、ローストビーフ、寿司、中華、ケーキなど色々置いてある]
新田: すげえ!これ全部食べ放題か!餃子もある!おい、寿司もあるぞ![箸を手に取る]
吉川: あれ、ちょっと…。
新田: いただきまーす。[餃子を口に運ぼうとする]
吉川: 待った!
新田: [手を止める]…何だよ。今食おうとしてのに。
吉川: 何だよじゃなくて。いや、どう考えてもおかしいでしょ。
新田: 何が?
吉川: 何がって…[ため息]ねえ、ここでみんな死んだの何日の事だか覚えてる?
新田: 覚えてるぞ。19日だろ。
吉川: うん。じゃ、自分たちがこの世界に来たのは何日?
新田: 22日だな。
吉川: そう。つまり今は24日だ。
新田: で?
吉川: 少しは考えて。つまり、この料理が用意されてから5日は経ってるの。…こんな外にむき出しになってて、腐りも乾燥もせず、新鮮なまま保ってる訳ないでしょ!
新田: あ…ああ!そうか!
吉川: まあ食べ物を腐らせる菌も死んでるとしたら、腐らないのは説明できるかもしれない。でも。[寿司を指さす]この寿司。何でこんな瑞々しくて美味しそうなんだ。それに。[ラーメンを指さす]これなんて湯気まで出てるじゃないか。ことごとく食べるのに最適な状態になってるんだよ。
新田: ほーん。…でも食べるのに最適な状態になってるってことは、食って大丈夫ってことだな。
吉川: えっ?いや…。
新田: それにもう他のもの食っちゃってるし、今更だろ。[餃子を持ち上げる]何と言われようが俺は食うぞ。
吉川: あ、ちょ。
新田: [餃子を食べる]…うっま!何この餃子![連続で餃子を口に詰め込む]作った奴は天才か?[ラーメンをすする]
吉川: あ、あー。
新田: どうした?食えよ。美味そうだろ?
吉川: 自分は…自分は…[醤油とワサビを取って寿司にかけ、一気に食べる]ああ美味いクソ!クソ!
新田: だろ?
[二人、至高の一時を過ごす]
新田: あー、腹いっぱい。もう食えん。
吉川: ふー。じゃ、次どこ行く?
新田: 俺、そういや行ってみたい所あった。
吉川: どこ?
新田: Dクラス職員房だよ。
吉川: あー。
新田: 俺たちみたいなDクラスが、どうなってるか知りたいんだよ。
吉川: なるほど。
新田: 正直有用な情報は得られそうにないけど、折角だから行ってみたいんだ。いいか?
吉川: うん、自分も行ってみたくなった。行ってみよう。
[二人、Dクラス職員房に移動する]
新田: ここか。おや。
[房の扉が全て開放されている]
吉川: やっぱり、最後の日だからDクラスも解放されたのか。
新田: だろうな。
吉川: …ってことは、こっちの世界の自分たちもどっかに居るのかな。
新田: あー、そっか。そりゃこっちの世界にも俺たちは居るよな。考えてなかった。
吉川: ねえ。
新田: 何だ?
吉川: ここ調べ終わったら、こっちの自分たち探さない?
新田: おお。いいな。…でもどうやって探すんだ?
吉川: 自分の事は自分が一番よく知ってるでしょ。最後に行きそうな場所、死にたい場所、大体想像出来ない?
新田: 最後に行きそうな場所か…。[5秒沈黙]あるわ。
吉川: でしょ。自分はもう行く場所が確定してる。
新田: そうか……でも意外だな。
吉川: 何が?
新田: 吉川からそんなこと言い出すなんてさ。そういう事は、俺が言い出すもんだと思ってた。
吉川: [笑う]そう?
[その後、二人は研究室に向かい、到着する]
新田: やっぱこういうとこはよく分からん資料がいっぱいだな。
吉川: そうだね。…あれ?
新田: ん。
吉川: 人が…いる。ここで死んでる人が。
[椅子に座っている男性の遺体がある]
新田: 本当だ。
吉川: 自分が最後にいる場所にここを選んだのか。…自分には分からないな。
新田: 俺もだ…だけど、相当ここに思い入れがあったんだな。
吉川: まあどこで死ぬかは人それぞれだしね。…いい顔してんね。
新田: ああ…。世界を守ることに命懸けてたのかな。…おや。[紙を拾う]資料にしてはやたら短いな。
吉川: 何それ……SCP-001?
新田: どれどれ…[読む]…えっ。
吉川: おいおい、この内容って…。
新田: あらゆる命の死の直前…花が覆い尽くす…快適な気温…望む形で過ごす…間違いない。
吉川: これだ。
新田: [体が震える]これだ!今この世界で起きてるのは!そうだ!
吉川: え、マジ?いやホントに?自分たちだけでここまで?
新田: やったな!
吉川: うん。
[二人、謎の握手をする]
[二人、喜ぶ。落ち着くまで数分かかる]
新田: はー、すげえな。俺たち。
吉川: うん。…まあ何が原因でみんな死ぬことになったのかは未だに分からないけどね。
新田: どっかに無いのか?原因書かれてるの。[周囲を見て回る]
吉川: さあ。どこかに…。
新田: おっ、これか?[紙を拾う]なになに…原因は…。[沈黙]
吉川: 何?
新田: おい、またかよ。
吉川: またって…。
新田: 原因が濡れて読めないんだよ!
[原因の書かれた部分だけ濡れている]
吉川: えっ……ちょっと待って。[SCP-001の報告書を読む]
新田: どうした。
吉川: 1つ。[報告書を置く]1つ、分かったことがある。
新田: 分かったこと?
吉川: おかしいんだ。やっぱり前に思った疑問は間違いじゃない。
新田: 疑問?
吉川: ほら、トントン拍子すぎる、って奴。
新田: ああ。
吉川: そのちょうど濡れて読めない原因の部分。5日経ってるのに美味い料理。そんなことSCP-001の資料に書かれてない。
新田: 確かに。
吉川: それに、あの時は気づかなかったけど、普通社長室とはいえ律儀にここの住所まで書かれた紙、ある?ちょっと不用心すぎると思う。
新田: なるほど。
吉川: そう考えると、新田があのビルに気づいたのも…。
新田: おい、あれは俺の意思だ。
吉川: そうだけど…でも…。[5秒沈黙]考えを言っていい?
新田: お、おう。
吉川: なんか、自分たちがこの道を通って、こう行動するように、ご都合主義的に導かれてる気がするんだ。
新田: 何だそれ…じゃあ、俺たちが操られてるってことか?
吉川: それとはちょっと違うんだけど…。考えすぎだと、いいんだけど。
新田: そうだな…。
吉川: [15秒沈黙]…いや。
新田: いや?
吉川: 違う!考えすぎじゃない!
新田: おう、どうした?
吉川: そもそも…この探索は、始めからおかしいんだ。
新田: …始め?
吉川: そう。…探索に自分たち二人を送り込む、そこからおかしい。
新田: そうなのか?
吉川: うん。一つ一つ話していくよ。まず、探索に出発する直前。博士が、「何があるか分からない」、って言ったの覚えてる?
新田: そうだっけか?
吉川: そうなの。普通、こういう訳わかんないポータル見つけたら、いきなり人を行かせるんじゃなくて、ドローンとか、探査機とか、そういうのを行かせてみると思う。しかし、博士は分からない、と言った。
新田: あー。[6秒沈黙]でもさ、異世界だから接続が繋がらなくて、記録回収できなかった、とかもあるんじゃ?
吉川: もちろんその可能性もある。だからこれ自体は確定的とは言えない。
新田: じゃあ何なんだ?
吉川: 機械じゃ無理だから人で、とりあえず何かあってもいいようにDクラスで。これはいいと思うんだよ。
新田: ふむ。
吉川: でも…少なくとも自分は、財団に反抗したりせず、掃除とかもちゃんと行ってた。新田は?
新田: 俺も同じだが…。それが?
吉川: 死刑囚なんて数限られているんだ。特に日本では。そんな中…それなりに貴重なDクラスを、それも協力的なのを、一気に二人も失うリスクを、自分たちより遥かに賢い財団が冒すと思う?
新田: …確かに。
吉川: 自分だったら、間違いなく反抗的なDクラス一人に、…それに引っ張って戻せるよう紐を付けて、探索させるね。
新田: …そっちの方が理にかなってるな。
吉川: そう。だからこの状況はおかしい。
新田: なるほど…でも、分からない、ってのが本当だという証拠は?
吉川: 証拠は…ない。けど、そんな嘘をつくメリットもない。
新田: そうか。
吉川: もし、ここがめちゃくちゃ危険な世界で、何らかの事情でどうしても二人犠牲にしなきゃならない、とかならわかる。…でも、この世界。危険の「き」の字もないじゃないか。何なら元の世界より何十倍も安全だ。
新田: …よく分かった。…どうなってんだ。一体、何があるってんだ。
吉川: 分からない。
ご都合主義。私もよく、言われた。私はそればかりだ。
補足: 探索ログ6の後、二人は何か都合良すぎることに対する答えを求めてサイト-8181を歩き回ったが、結局見つからず、夜を迎えました。それから話し合い、とりあえず答えを見つけるのは諦めて、こちらの世界の自分たちを探すことにしました。
吉川: ここを右。後はそのまま真っ直ぐ進めば着く。
新田: 結構山の中だな。こんなとこに何が?
[しばらく進む]
吉川: …見えてきた。
新田: これは…墓?
[墓地が見えてくる]
吉川: うん。…この辺で停めて。
新田: 分かった。[車を道に停める]
吉川: [車から降り、黙って歩いていく]
新田: おっ、ちょっと待って。[車から降りる]
[墓が広がっており、時折死体がある]
新田: うーん、やっぱり墓は死体が多いな。……って言うとちょっと違う感じに取られそうだけど。
吉川: [黙って歩く。少しずつ早足になる]
新田: そんなに急がなくても、死体はどっか行かんぞ。
吉川: …あっ。[立ち止まる]
新田: 居たか?…あっ。
[墓の前で横になっている、吉川の遺体がある]
新田: …居た。
[墓石には、「吉川家之墓」と彫られている]
新田: 誰か…大切だった人が居たのか?
[遺体の前に、額に入った写真がある]
吉川: [写真を手に取る]
新田: 写真?
[写真には、吉川と、高校生ぐらいの女の子が笑顔で並んで写っている]
新田: …その子は?
吉川: [7秒沈黙]…妹。
新田: そっか。妹が居たのか。ってことはこの墓は…。
吉川: [写真にそっと触れる]
新田: ………。
吉川: …ひとまず…ちょっと、安心した。
新田: 安心?
吉川: こっちの世界の自分も…ちゃんとここに来たって分かって。
新田: …そうか。
吉川: [空を見上げる]
新田: ……吉川?
吉川: …新田。
新田: …何だ?
吉川: ……自分、今でも迷ってるんだ。…自分のした事が、本当に正しかったのかって。
新田: 自分の…した事。
吉川: 妹…名前は香穂かほって言うんだけどさ。
新田: 香穂、か。いい名前だな。
吉川: …うん。自分もつくづくそう思うよ。…それで、香穂は、自分にとって、余りにも大きな、大切な、存在だった。
新田: …うん。
吉川: 香穂は、いつだって明るくて、純粋で、…優しかった。…正直、頭は良くなかったけど。[力なく笑う]で、大人になったら、優しい人と結婚して、子どもにも恵まれて、幸せに暮らすんだー、って、まるで小学生みたいな夢を掲げてた。
新田: 本当に、いい子だったんだな。
吉川: うん。…例え自分の人生がどうなろうとも、香穂だけは何としても幸せにする、絶対に夢を叶える、そう思ってた。思ってた…。[項垂れる]
新田: …何か、起こったのか。
吉川: 自分は、本当に馬鹿だ。香穂が、汚れて、若干あざがあった状態で帰ってきた時、自分は、香穂の思いっきり転んでしまったという言葉を信じてしまった。…優しい香穂が、本当のことを言う訳がないのに。
新田: まさか…。
吉川: しばらくして、またそんな事があった。自分は、少し何かあるんじゃないかと、危機感を持った。…持っただけで、何も出来なかった。…何が絶対に夢を叶える、だ。クソ。[体が震える]
新田: ………。
吉川: それから数日後だった。…香穂が、公園の階段から落ちて、そして…。
新田: ああ…。
吉川: 目撃者によると、香穂は、心神喪失状態みたいな感じで、ふらふらしてたらしい。更に、調べられた結果、香穂は、香穂は、に、にん、し…。
新田: 言うな。…言わなくていい。
吉川: …自分は、完全に生きる気力を失った。自殺しようとも考えた…けど。
新田: …そういう事か。
吉川: 自分は、自分の手で、復讐することを決意した。警察なんて当てにならない。だから……ありとあらゆる手を尽くして、敵を探した。時に非合法な手も使った。そして…奴ら、三人を見つけた。
新田: そうか。
吉川: 三日三晩、思いつく限り、奴らを痛めつけた。…高揚感なんてものはなかった。ただただ、作業的にやった。…やがて、それがばれ、自分は捕まった。既に二人は死んでた。残りの一人も、後に発狂して窓から飛び降りたらしい。
新田: ………。
吉川: 自分は死刑になった。その前の事件の事を考えても、自分のした行為が残虐極まりないものだから、って。
新田: …で、今に至るのか。…ありがとう、話してくれて。
吉川: …その時は全く後悔してなかった。…でも、今は、あれが本当に正しかったのか、って思う。
新田: …そうか。
吉川: もちろん、奴らは許されない屑どもだったし、当然の罰だったと思ってる…。でも、香穂が、自分が死刑になってまで仇を取るのを望んでいたとは、思えないんだ。…死んだ香穂の分も、生きてやるべきだったんじゃないかって。
新田: なるほど。
吉川: 自分は、どうすれば良かったんだ?
新田: ……俺から、二つだけ言えることがある。
吉川: …何?
新田: 吉川の行動が正しかったかどうかなんて、俺には言えない。でも。
吉川: でも?
新田: [写真を手に取る]これ、見てみろよ。
吉川: え?
新田: 香穂ちゃん…お前と一緒に写ってて、マジでいい笑顔してんじゃねえか。
吉川: あぁ…。
新田: 自分の事を、こんなに大切に思ってくれる人が居て、香穂ちゃん、本当に幸せだったと思うぞ。
吉川: …そう。
新田: それともう1つ。
吉川: ……?
新田: こうして、自分の罪と向き合えてる、それだけで充分だと思う。
吉川: …ふっ。そうかな。
新田: ああ。[写真を遺体の手に握らせる]そうだとも。
あの人は、私の思いに気づいていたのだろうか?
新田: こっちだ。
吉川: 随分と…狭い路地だね。これじゃ人二人がすれ違うのでも一苦労だ。
新田: ああ。…ここだ。
吉川: 着いた。…おお。
[塀が一部崩れ、壁が剥がれてカビまみれのアパートがある]
吉川: これは…また…。何とも…。
新田: な、言った通りクソボロいだろ?この辺じゃ間違いなく最安アパートだ。
吉川: そっか…。相当、今まで苦労してきたんだね。
新田: 俺からしたらこれが普通だったからな、苦労とかはそんなに感じなかった。…俺なんか、楽な方だよ。
吉川: 楽な方?もっと苦労した人が?
新田: 父さんと、母さんだよ。
吉川: ああ。
新田: 子どもの頃は、何も考えず食って寝て、生きてりゃ良かった。…その間も、両親は働いたり、今後のために色々考えたり。どれだけ大変だったか。
吉川: なるほど。
新田: それに…俺が、逮捕されてからなんて。死刑になった俺は、働かなくて良くて、衣食住が完璧に保障されてる。それに対して、両親は…。
吉川: そっか。
新田: だから、最後ぐらい、両親から何と言われようが会わないと、俺は、もう手遅れかもしれないが、本物の糞野郎になっちまう。きっと、こっちの世界の俺は両親に会ってるはずだ。そして、三人でずっと過ごした、この、ボロいけど、暖かいアパートで最後の時を過ごしたはずだ。
吉川: …分かった。…入る?
新田: ああ。[ドアノブに手を掛ける]
吉川: ………。
新田: [息を吐く]よし。[ゆっくりと、ドアを開ける]
吉川: さて…?
[部屋の中は、ほとんど何もない。しかし、床に新田とその両親が川の字になって横になっている]
新田: あ、あぁ〜。[膝をつく]良かった、ちゃんと三人居る。は、はは…。
吉川: …居たね。…立てる?
新田: あ、ああ。[膝を震わせながら立つ]大丈夫だ。[靴を脱ぎ、部屋に上がる]
吉川: うーん。[靴を脱ぎ、部屋に上がる]しかし…[見回す]何もないね。
新田: ああ…。俺が最後にこの家にいた時はもうちょっと色々あったんだけどな。…多分、売っちゃったかな。……俺のせいで。
吉川: そんな自分を責めなさんな。[三人の遺体の元に行く]ほら、見てみなよ、この顔。
[遺体の顔は、両親の顔はやせ細っているものの、全員笑っている]
吉川: 少しでも恨んでたら、こんな笑顔は出来ないと思うけど、さ。
新田: …そうか。…ありがとう。
吉川: 自分も、新田が、香穂は幸せだった、って言ってくれた時、結構嬉しかったし。
新田: そうか。…そうか、うん。
吉川: うん…。
新田: …父さん。[父の顔に触れる]母さん。[母の顔に触れる]…ごめん。本当に、ごめん。
吉川: ………。
新田: [空中に手を伸ばす]…こっちの世界の俺は、こうやって言えたんだろう。でも、今ここでこうしている俺自身は、元の世界の父さんと母さんに謝れないんだ。…あんな事をしても恨まないで居てくれる二人に。殺してやりたい、って思ってもいいはずの息子の事を思ってくれる二人に。
吉川: …そうだ、ね。
新田: [もう一人の自分の顔に触れる]…こっちの俺は、幸せ者だ。何一つ親孝行出来なかったことを、寧ろ苦しめてしまったことを 、謝れて、こうして三人一緒に居られるんだから。
吉川: ………。
新田: それに対して俺はどうだ。とんだ親不孝者だ。人を殺しといて。今はこんな好き放題出来る世界でのこのこ過ごしてる。それに…。[目が潤む]さっきから、両親の事ばっか言ってたけどさ。俺が殺した四人は?彼らは、彼らの家族は?あと、俺が燃やした銀行で働いてた人たちは?俺がどれだけ他人に迷惑を掛けた?それなのに、それなのに。俺は、俺は…。
吉川: [新田の口を手で押さえる]…何言ってんだ馬鹿。何考えてんの。
新田: ………!
吉川: お前は、数日しか一緒に過ごしてない自分が言うのもアレだけど、いつだってやたら明るくて、能天気で、勢いで何とかしてきたじゃないか。それだってのに何だこの体たらくは。自己嫌悪に陥って。こっちの世界の俺の方が良かったーなんて意味もなく羨んで。
新田: それは…。
吉川: 言ったよね?「自分の罪と向き合えてる、それだけで充分だ」、って。ああ確かにお前はとんだ悪い事をした。人として最低だ。
新田: なっ…。
吉川: …でも、それでいいじゃん。苦しんだところで、何も生まれない。それに、さっきこっちの新田のこと羨んでたけど。
新田: あぁ…。
吉川: でも今、[生きている新田を指さす]新田は生きてる。
新田: うん。
吉川: そして。[空中を指さす]あっちの世界の両親も生きてる。
新田: …ん。
吉川: だから。[新田の口から手を離す]生きていれば、もしかしたら何か出来るかもしれない。ここで死んでる新田たちは、もう死んでるから何も出来ない。でも生きている新田たちは違う。
新田: 何か…って?
吉川: そんなもの知らない。けど。[笑う]何が起こるか分からない、それが人生ってもんでしょ?
新田: ……ああ。[目元を拭う]そうだ。俺たちは生きている。
吉川: そう。
新田: だから、未来へ歩いていける。
吉川: 素晴らしい。
新田: よし!…吉川、行くぞ!
吉川: え、もう?
新田: ああ!俺はもう、過去には囚われない。未来を信じていく。
吉川: …新田らしい。相変わらず主人公みたいだね。
新田: はは。
[吉川、アパートから出る。新田、玄関で立ち止まる]
吉川: お、どうした。…やっぱ名残惜しい?
新田: いや、そうじゃない。最後に、これだけは言っておかないと。
吉川: ……?
新田: [部屋の中を見て]…行ってきます!
私は…生きている。ああ。
新田: [大量の資料を一枚一枚見ている]…あー、無い!何があったのか分かりそうな資料、無い!もしかしたらあったのかもしれねえけど、こうも多いと確認も雑になる。
吉川: お疲れ。[パソコンをいじっている]こっちも何も無さそう。
新田: はあー。[床に横になる]あと一日で1週間か。そろそろ帰んなきゃなー。
吉川: そうだ…何だこれ。
新田: 何が?
吉川: いや…「SCP-XXX-JP」ってのがブックマークされてる。見てみる。
新田: XXX?
吉川: うん。どれどれ…オブジェクトクラスはKeter、説明は…「SCP-XXX-JPは背中から鳥類のものと類似した羽が生えた、現実改変能力を行使可能な人型実体です」…?[3秒沈黙]凄い、胡散臭いな。
新田: …あれ、その特徴って…。
吉川: 「SCP-XXX-JPが人間に対し現実改変能力を行使した場合、稀に対象はSCP-XXX-JPと同等の現実改変が可能となります。」…ん?
新田: ちょっと見せてくれ![パソコンに近づく]
吉川: うわびっくりした。
新田: まさか…まさかとは思うが…。[ページを下にスクロールする]
吉川: これは……ストップ!そこで止めて。
新田: 何…?「D-1104-JPとD-14134-JPに現実改変能力が付与され」…。
[二人、顔を見合わせる]
吉川: …夢の通りだ。
新田: そんな馬鹿な。二人同じ夢を見てたと思ったら、それがこっちの世界で…てことは、1104と14134は羽人間…SCP-XXX-JPを倒すのか?
吉川: どれ。[ページをスクロールする]あ、倒した。…どうなってんだ。
新田: とりあえず、最初から読んでみようか。
吉川: うん。
[二人、ページの内容を読む]5
新田: …最初から最後まで夢と同じだったな。
吉川: うん…でも客観的に見ると、やっぱりガバガバだしご都合主義だね。少なくとも正式な報告書じゃない。遊びで書いたのかな?
新田: …ん。ページの一番下に「コメント」ってのがある。
吉川: コメント?開いてみて。
新田: OK。[「コメント」をクリックする]…うわ、やっぱ酷評されてるな。
吉川: 「都合良すぎる」「矛盾してる」「リアリティがない」「臭い」…まあそうだよね。……何かこれ、他のSCPも存在しないみたいに書かれてない?
新田: 確かに…うわ、このコメント特に長いこと言ってる。
吉川: へえ…凄いな。何だこれ。…でも、最後に。
新田: 何だ?…「内容は、私は好きです。もっと突き詰めれば、きっと面白い記事になりますよ」って。
そうだ。あの嬉しさを思い出した。私が繋ぐのだ。
新田: …遂に戻ってきたな。
吉川: …うん。
新田: 思い残すことは?
吉川: …何で動物たちがみんな死んだのか、何でこんなに都合よく色々進んだのか、そして夢とあのページは何だったのか…それが全く分からなかったことだね。
新田: ああ。結構探したんだけどな。…残念だな。
吉川: …ここ、懐かしいね。といっても6日前なんだけど。
新田: ああ。俺がいきなり誰か居ないか叫んで、吉川にキレられたっけ。
吉川: ああ。[笑う]そうだったね。
新田: 1週間とは思えねえよな。1ヶ月以上居た気がする。
吉川: 自分も。…ここで、色々あったけど、どうだった?
新田: 俺は、楽しかったぞ。それに、自分をもう一度見つめ直せた。
吉川: 同じく。…清々しい気分だ。
新田: なあ、俺。
吉川: 何?
新田: 俺、吉川に…祐一郎に会えて、本当に良かった。ありがとう。
吉川: 何だいきなり改まって。
新田: 俺たち、多分もう会えないからな。…今のうちに、言っておかないと。
吉川: そう。…ありがとう。
新田: …どういたしまして。
吉川: …行くか。
新田: …ああ。
[二人、SCP-2935-JPに向かう]
新田: あれ?…無い。
吉川: は?
新田: いや無いんだよ、あの穴がさ。…洞窟なら、あるけど。
[洞窟があるが、すぐに行き止まりになっている]
新田: …ここで間違いないよな?
吉川: うん。周りの風景も…あの最初に見つけたおじさんの死体も。
新田: だよなぁ…。ってことは。
吉川: 自分たち。
新田: 帰れねえじゃん。
吉川: …マジか。
君たちが目を覚まさせてくれた。
で、俺たちはここに戻ってきた。それで、SCP-2935-JPの欄が空いてたから、そこにこれまでの旅の記録を残すため、そしてもし、万が一誰か見る人がいたら俺たちの事を知らせるため、これを書くことにした。そういう事だ。
ありがとう。
補遺2
それから、俺たちは旅に出ることにした。1週間という期限はもう無いから、ぼけっと適当にあちこち見て回るだけだが。この世界は、俺たちにも都合のいいようになってるから、多分今後水とか電気に困る事はないんじゃないかな。
吉川は、目に付く漫画を片っ端から読みまくってる。めちゃくちゃここでの生活を満喫してる。そしてそのついでに、最後まで分からなかった3つの謎を解こうとしてる。まあ、この調子だと分かるのは早くても40歳ぐらいだと思うけどな。
俺もここでの暮らしは楽しんでいるが、両親に会えないのだけが残念だ。とりあえず、今は少しでも両親が幸せに暮らしていることを祈っている。
改めて言うが、お前が誰で、どうやってこれを読んでいるのか俺は知らない。もしかしたらお前はここでの唯一の生存者かもしれないし、SCP-2935-JPを通して来たのかもしれないし、神様かもしれない。誰でもいいが、これを読んだなら、お前が来て、これを読んだって分かる物を近くに置いてほしい。俺たちはたまにここに戻ってくる。俺たちにも、お前が居るってことを知らせてくれ。
愛しい貴方へ。
さて、ここからはお前が神様でないという前提で書いてるから、神様は別に読まなくていい。読みたきゃ読んでいいけど。
お前は、ここで生きていくことで、時に悲しんだり、苦しんだり、喪失感に襲われたりするだろう。お前の大切な人に、生きては会えないかもしれない。心の支えだった人、憧れだった人。もう話すこともできない。
好きなだけ悲しめ。泣いてもいい。悩み、叫んでもいい。好きなだけ、したい事をしろ。ここなら誰も責めない。時間に追われることもない。
だが、それでも、最後には笑え。悲しみも、苦しみも、全部笑い飛ばせ。そして、大切な人への思いを、自分が生きる活力に変えろ。ここでなら何でも出来る。大切な人が出来なかったことを、お前自信が成せ。生きている、その素晴らしさを噛み締めろ。明日へ、その先へと、繋いでいけ。
私は、まだまだ未熟者ですが、きっと、貴方の創った世界を。
いつの日か、俺たちとお前が会える日も来るかもな。そしたら、よろしくな。
明日も、明後日も、その先も、日は昇る。
未来へと、繋いでいきます。
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ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:5384396 (21 Oct 2019 13:44)
タグ: ルーキーコンテスト scp-jp neutralized メタ 概念
ルーキーコンテスト用作品です。
透明な隠し文字があります。また、報告書として明らかに不備がありますが、意図的なものです。
探索ログが長く、最後まで読めませんでした。具体的には、不要な会話が多く、一行あたりの進展が少ないです。最初の探査ログの内容は[周囲には無数の花が咲いている]、[男性の死体を発見する]といくつかの情緒的な記述があれば伝えたいことは伝わると思います。「読ませる」のも記事に求められる要素の一つですので、もう少し文章を削って密度を上げたほうがよいと思います。
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ありがとうございます。確かに「冗長」だと言うのは前から若干理解していたので、とりあえずガンガン削ってみますした。しかしまだ3万字を超えているので、また更に削ってみようと思います。
拝読させていただきました。
雰囲気はとても好みなのですが、やはりまだ冗長な感じがします。探査記録の内、以下の描写は削れると思うので、試していただけると幸いです。
ありがとうございます。
それでは早速削らせて頂きますした。
何とか批評開始時点から6000字削れました。
報告書らしくない表現だと思います。
主人公たちが軽口をたたきあうのは、長いことが多い小説などでは軽めで読みやすいのですが、(小説などに比べて)短いSCPの記事では記事を冗長にするだけの要素になりがちです。また、多くの人は音声記録でも固めの文章を期待して読みに来ているので、この記事のような文章はなかなか違和感があります。tale調ということですが、サイトのほかのtaleを見てもここまで口調が砕けているものはなかなかありません。
正直なところ、k-calさんが仰っているように僕も最後まで読むのを断念してしまいました。折りたたみ一つ一つにかなり分量があるので、序盤で疲れを感じた読者が大量にある折りたたみをすべて開いてくれるとは考え難いです。
まずは音声ログの一つ一つを三行ぐらいでまとめてみましょう。そうしてから書き出せばかなりの削減が図れるはずです。tale調だからこそ、短い描写でいかに見せるかというのが必要になると思います。
ありがとうございます。
そうですね…確かに書いた時点では自己満足に終始し、相手が読まない可能性を無視していました。
大規模改稿を何とか考えてみます。