SCP-1689-JP-J 「限界集落再生物語」

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クレジット

タイトル: SCP-1689-JP-J - 限界集落再生物語
著者: ©︎Tetsu1
作成年: 2020

財団記録・情報セキュリティ管理局より通達

あなたが現在閲覧している文章は、参照のためにアーカイブされた過去版です。
この文書は2004年6月13日に作成されており、事実と異なる情報が含まれる可能性に注意して下さい。

— 財団記録・情報セキュリティ管理局

アイテム番号: SCP-1689-JP-J

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1689-JP-Jは現在、第██区画のエリア██中型遺物保管庫にてアクセス制限状態で保管されています。SCP-1689-JP-Jは常に口を上向きにし、縛って閉じた上で保管しなければなりません。

説明: SCP-1689-JP-Jは黄麻布のジャガイモ入れです。安定状態では、SCP-1689は40kgから50kgの重さがあり、約200個の農業用ジャガイモ(Solanum tuberosumの塊茎)を収納しています。このジャガイモを以下、SCP-1689-JP-J-1と呼称します。SCP-1689-JP-Jは褐色の荒く織られた黄麻でできています。

SCP-1689-JP-Jの内部は外部よりはるかに広大であり、SCP-1689-JP-J-Aに指定されています。 SCP-1689-JP-J-Aは未確定の広さを持つ異次元空間で(少なくとも1000000m³と測定されていますが、より広いと思われます)、地面から3m以上の地点は完全にSCP-1689-JP-J-1で埋め尽くされています。SCP-1689-JP-J-1が地面に落下することはありません。

SCP-1689-JP-J-1には、SCP-1689-JP-J-A外部で発芽・生長しない、SCP-1689-JP-J-A内において通常のジャガイモの約█倍の速さで生長する、これだけで人間の健康的な生活に必要な栄養素をほぼすべて賄えるという異常性があります。遺伝子が通常の遺伝子組み換えされていないジャガイモと同一にも拘わらず、どのようにしてこれらの異常性を達成しているのかは不明です。

SCP-1689-JP-J-Aの地面は、ほとんどがSCP-1689-JP-J-1の畑となっており、複数の人型実体(以下、SCP-1689-JP-J-2と呼称)によって管理され、SCP-1689-JP-J-1の栽培が行われています。SCP-1689-JP-J-2は、SCP-1689-JP-J-1が収穫されると、SCP-1689-JP-J-1を空中に放り投げます。放り投げられたSCP-1689-JP-J-1が空中を埋め尽くしているSCP-1689-JP-J-1と衝突すると、そこに付着し、落下しなくなります。

補遺1: 2010年以降、SCP-1689-JP-Jの重量と収納されているSCP-1689-JP-J-1の個数が徐々に減少しています。この原因を調査するため、エージェント井本がSCP-1689-JP-J-Aへと派遣され、SCP-1689-JP-J-2に対しインタビューが行われました。

インタビュアー: エージェント井本

回答者: SCP-1689-JP-J-2-A(70歳前後の男性の外見をしているSCP-1689-JP-J-2個体。以下対象と記述)

[記録開始]

対象: おお、外のもんか。

井本: はい。最近、ここのジャガイモの数が減少しているようですが。

対象: ああ…ここ最近、私らはこの仕事がきつくなってしもうてな。

井本: [周りを見回す]確かに、皆さん結構お年を召されてますね。

対象: 一番若いもんでも58歳だからな。腰は痛いわ、手はぶるぶる震えて鍬を掴むこともままならんわ。収穫出来ても、芋を投げるのがまたきつくてなあ。…ああ、愚痴言ってしもうてすまんな。

井本: いえ、お気になさらず。…しかし、そこまでしてこの袋の中で働かなくても良いのではないでしょうか？あなた方のほとんどが外では定年退職している年齢ですし。こちらで生活の場を提供もします。

対象: そうもいかんのだ。昔からの伝統なのだよ。

井本: 伝統、ですか。

対象: ああ。私らは何百年も前からこの袋の中でジャガイモを育てて暮らしておった。何代も何代も前の祖先から受け継いできた変わらぬ技術を次の世代へと伝え、また伝えを繰り返しておったのだ。

井本: しかし、次の世代となる若い人がここにはいないようですが。

対象: …15年程前のことだ。私らはここから外に出るのを禁じておった。しかしある日、若いもんが、私らの目を盗んで外に出てしもうたのだ。そしてまたある日、その事が過去の事になろうとしていた時、そいつが帰ってきたのだ。しかしそいつは、伝統的な麻の服でなく、やたらと派手な奇妙な服を着ておった。そして、袋の中のもんを集め、言い出したのだ。私らの生活は遅れている、外には心を豊かにするものに溢れている、ジャガイモ栽培に関しても沢山の機械があり、より楽に、効率的になっている、と。[13秒沈黙]

井本: 大丈夫ですか？

対象: いや、すまん。それで…若いもんはすぐその話に惹かれた。こんなとこより、そっちの方がずっと楽しそうだ、と。私らはそれを止めようとしたが、誰も耳を傾けなかった。…そして、遂に私らだけになってしまった。[目を押さえる]

井本: お気の毒様です。落ち着いてからで構いません。

対象: 私らの伝統は、繋いできた思いは、どうなってしまうんだ？

[記録終了]