拭染機 - SCP-JPサンドボックスⅢ

拭染機

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クレジット

タイトル: 拭染機
著者: Ueh-S
作成年: 2022

え、身近であった不思議な出来事ですか？ああ、学内新聞的やつの取材。なるほど。

うーん、どうだろう。まあとりわけ気になるってほどではないんですけど、僕のバイト先の話です。

もうすぐ勤めて1年ぐらいになる所なんですが、ああ、飲食店です。チェーン店の。

元より人間が苦手だったんです。ただ社会に出る上で人とは必ず接しなきゃいけないわけじゃないですか。だから苦手なりに人と接する術を学んでいこうと勤め始めたんですけど、まあ当然うまくいかないですよね。焦って注文はミスるし、間違った席に料理運んじゃうし、その上料理名が咄嗟に口から出てこなくなる、食器ももう何枚割ったことか。

それで店長も人前に出すのは良くないのかなって思われたんでしょうけど、もう数か月前からずっと食器洗いの仕事ばかりやってます。まあ接客よりかは単純作業なので比較的はあるんですけど、店長がまあクセのある人で、ここでは具体的には語りませんけどもう数えきれないぐらいには不快な思いはしてます。

それで精神的に疲れてシャワー浴びずに寝てしまったことも何度あるやら。はは、一人暮らしな上にユニットバスなんで湯船なんてもう何か月浸かってないことか。

ああ、ごめんなさい。若干脱線しちゃいましたがここからが本題です。

食器洗いの仕事って、まあ言わずとも想像に難くないと思いますけど、客前に出された食器を軽く洗った後にラックに乗っけていって食洗器で本洗いするんですよ。

で、たまに、なんですけどね。食洗器から声が聞こえるんですよ。こう、悲鳴じゃないんですけど、何か惜しむような感じの。

いや、そういう話は店長は言わずもがな他の社員やバイトにも言ったことはないですよ。第一、自分自身が変わり者だって思われてそうなのにそんなこと言い出したらますます異端者扱いされそうじゃないですか。

それに今のところ僕の身に何か悪いことでも起きてるわけでもないですし、とりあえず大丈夫かなって。謂れも言い伝えも特に聞いたことありませんし。

ただの聞き間違いでは、ですか。

まあ僕自身がオカルトチックな話とか好きなのでそういう方向に勝手に結び付けてるっていうのはそうなんです。

でも、でもですね。ちょっと変わったことが毎日起こってるんですよ。ああ、別に悪いこととかそういうんじゃないです。

ないんですけど、今の時代大抵のレストランはセンサーが反応して電子ベルが鳴って入店を知らせるシステムになってるじゃないですか。

うちの店、お客さんが入店してからいつも20～30秒ぐらい間をおいてもう1回鳴るんです。誰も来てないし、入口で屯しているわけでもないのに。