一日兮一日

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原文はこちらから。
例の如く書き下し方、ルビ・注釈を振るべき場所をご指摘願えれば有難いです。

原文には下線・注釈はなく、財団の人員によって後に加えられたものです。人名、地名には下線がひかれています。

『方士紀（情）・巻██』¹:

光緒庚子の年²、拳民³廊坊にて夷^ゑびすを敗る、斬首すること数百。西太后以て匪と為し、之を剿^ほろぼすことを命ず。拳民怒りて、北に圓明園を陥し焚^やき、百余の閹人^{えんじん4}、妃嬪^きひん5火に死す。上⁶懼^おそれ、許景澄を遣はして和とす。拳民許さず、之を杖して釈す。景澄帰りて、此の如く説く。上之に駭^おどろき、西太后に救ひを求む。太后亦た懼^おそれ、拳民に金銀数千両を賜ふ。拳民受けず、命じて還^かへす。上遂に夷と同じうして和し、共に拳民を攻む。夷^ゑびすの帥^そち西摩爾洋槍炮⁷を以て之を撃つ、拳民傷まず、自ら「神助有り」と呼ぶ、短刀を執りて夷陣に入り、数十人を殺し帰る。

翌日、西摩爾戦を搦^かすむ。一祭司畏れ無くして出で、高声にして呼号す。遂に黒雲有りて日を蔽^おおひ、神兵神将天に見ゆ、夷軍大いに駭^おどろき、輒^すなはち十里有余り後に撤す。

三日逾^めぐり、拳民德勝門を以て入り、外城の氓^たみは遷る^うつ。半数は東便門に駐し以て夷^ゑびすを拒み，另^ほかの者は西を攻む。城内の清軍降り、拳民入城す、秋毫^{しふがふ8}にして犯す無し。

時に伝教士有り名を劉易斯、屢^しばしば民を犯す。氓^たみ之を怨み、陰で「閻王劉」と為して呼ぶ。拳民入城し、榜^たてふだを張り城内の民に命じて犯民の者を挙げさしむ。数十人上疏^{じやうそ9}し、易斯を斬ることを意とす。易斯之を恐れ、家を挙げて走り、民、拳民の擒^とる所と為る。三多¹⁰淩遲^{りやうち11}と判ず。易斯市に磔^はりつけとなること三日。後に其の首を梟^けうし¹²、城門に懸く。

福田¹³、「大万歳国」を国中に建つ。『資政新篇』を以て綱と為す。趙三多、閻書勤、朱紅燈、景廷賓を封じて内閣大学士と為し、倪贊清を大将軍と為し、林黒児を尊び黃蓮聖母と為す。
余りは各^おのおの賞に封ず。

異学会拳民の恭さずを以て、呼びて之を匪と為し、挙兵して之を撃つ。我が会亦た挙兵し異学会を攻む。敵我、広渠門にて会戦す、我が会敵さず、退く。

翼日、会と民戦ふ。拳民神兵を以て将に之を撃たんとす。我が会狂風を做り以て之を助く。異学会、異学███を取りて反擊し、宮城に飛び入り、乾清宮を焚し、扶搖^ふえうに摶^はばたきて上ること九万里¹⁴、須臾^しゅゆにして見ず。

第三日、会永定門を撃ち、後に広渠門を攻む。会細作¹⁵を遣はして城内を覘^のぞく、見ることを得ず。我が会使者を遣はして拳民に助けを請ふ、民受けず。我が会の兵城外に列隊し以て異学会を拒む。

逾数日にして、各勝負有り。某夜，忽ち雷声大作有り。乃ち是れ我が会術士劉█法を作して霊兵を喚ぶ、意に夜襲を欲し、止まるを得ず。霊兵殲に遭ひ、█亦た殂す。我が軍の軍将皆醒め、兵を持ち出で、敵見ず。敵忽ち出で、我が軍戮^りくに遭ひ、唯だ三四人生を得。北斗¹⁶之に悩み、広渠門を離る。我が会天津より星盤、牛骨箸¹⁷を取り定め、複た敵を撃つ。敵異学███を釈ち、入陣すること衝撞^{しょうどう}にして、其の喙^くちばしに百余の歯有り、鋭きこと甚^はなはだしく，之に触れ即ち傷む。我阻邪丘¹⁸を以て之を阻み、後に捕龍籮¹⁹を以て之を收めて殺す。

次日、拳民出兵して敵を攻む、並びて我が会の数人を殺す。北斗忿^いかりて、全軍撤退を命ず。軍士願はずと雖^いへども、然して終^つひに撤す。敵巨炮を以て北城牆^{じょうしょう}を攻む。民法を以て諸門を護ると雖^いへども、未だ堞^てう20を護れず。北城牆^{じょうしょう}不日にして破る。民の作法及ばず、異学会をして数千を斬らしむ。異学会異学███を以て拳民の意志を控し、命じて自ずから相殘殺させしむ。民多く死す。異学会光緒帝を迎回し、洋人復た至り、命じて之と和す。

民数月を死守し、城を破ること一日に過ぎず。嗚呼、此れ即ち拳民の無辜^むこ教士を殺すの報いか。嗚呼、我民を以ては善事を多く行し、大事を成すべし。料^はからずも竟に毒手に遭い、全軍覆没^ふくめつす。哀しいかな。清の余壽^よじゅ21の久しからず、既に以て常識の事と為すや。

Footnotes

1. 方士の内部分裂の発生により、各派閥が異なる史書を有しているため、括弧を加えることで区別しています。

2. 西暦1900年。

3. 訳注: 義和団の団員のこと。

4. 訳注: 宦官のこと。

5. 訳注: 後宮に住む妃のこと。

6. 訳注: 本文では光緒帝のことを指している。

7. 訳注: 銃砲のこと。

8. 訳注: 微細なさま。また、わずかなこと。

9. 訳注: 上のものに対して事情を書面で伝えること。

10. 趙三多、義和団運動の主要領導者の一人です。

11. 訳注: 中華王朝における刑罰の一つで、生きている犯罪者の身体を少しずつ削っていく刑。

12. 訳注: 晒し首にすること。

13. 曹福田、義和団運動の主要領導者の一人です。

14. 訳注: つむじ風に乗って届くこと九万里、という意味か。出典・『荘子・逍遥遊』。

15. 訳注: スパイ・間者のこと。

16. 方士の分裂後、一派閥の首領の職名となりました。

17. どちらも方士の儀器の名ですが、実際の効果は現状分かっていません。

18. 方士の儀器の名であり、防御に用いられたと推測されます。

19. 方士の儀器の名であり、捕獲に用いられました。

20. 訳注: 城の垣根のこと。

21. 訳注: 国の命数のこと。

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  批評コメント批評コメント

  
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  snoj 22 Mar 2020 04:49

  お疲れさまです。

  + ルビ・注釈など入れたほうが良いもの

  剿す
  閹人(注釈、ルビ)
  妃嬪(注釈、ルビ)
  懼れ
  蔽い
  駭き
  輒ち
  逾り
  氓
  另の(另は日本で使われていない)
  秋毫(注釈)
  屢
  淩遲(注釈)
  梟し
  亦た
  扶搖
  須臾
  細作(注釈)
  忿りて
  牆
  雖も
  護堞
  余壽

  ash_huihui 22 Mar 2020 08:12

  ありがとうございます！
  ご指摘の点、しっかり注釈を入れていこうと思います。

  Chased_by_a_bee 22 Mar 2020 06:46

  今回は新仮名遣いに絞ってみた感じですか？（岩波文庫版の漢籍の書き下しなんかにもしょっちゅうそういうのを見るので，それならそれでいいかなという気もします）。

  ただ，その場合，形容詞の音便として見られる「～しう」は「～しゅう」に揃えた方が良いと思います。新旧の整合性が取れません。

  済みませんが，仮名遣いに気づいたの一度コメント書いてからだったので（←アホ），とくに直しはせずに書いたコメントそのまま投下します。

  なお，原稿をコピペさせていただいて，仮名遣い・文法を中心に，打ち消しや太字をつかって直接案を示してあります。

  光緒庚子の年、拳民廊坊にて夷¹を敗る、斬首すること数百。西太后以て匪と為し、命之を剿すことを命ず。拳民怒りて、北に圓明園を陥し焚き、百余の閹人、妃嬪火に死する²。上懼れ、許景澄を遣わはして和とす。拳民許さず、之を杖して釈す。景澄帰りて、此の如く説く。上之に駭き、西太后に救いひを求む。太后亦た懼れ、拳民に金銀数千両を賜うふ。拳民受けず、命じて還す。上遂に夷と同じうして和し、共に拳民を攻む。夷の帥西摩爾洋槍炮を以て之を撃つ、拳民傷まず、自ら「神助有り」と呼ぶ、短刀を執りて夷陣に入り、数十人を殺し帰る。

  翌日、西摩爾戦を搦めるむ³。一祭司畏れ無くして出で、高声にして呼号す。遂に黑雲有りて日を蔽いひ、神兵神将天に見ゆ、夷軍大いに駭き、輒ち十里有余り後に撤す。

  三日逾り、拳民德勝門を以て入り、外城の氓は遷る。半数は東便門に駐し以て夷を拒み，另の者は西を攻む。城内の清軍降り、拳民入城す、秋毫にして犯す無し。

  時に伝教士有り名を劉易斯、屢民を犯す。氓之を怨み、陰で「閻王劉」と為して呼ぶ。拳民入城し、張榜、城内の民に命じて犯民の者を挙げさしむ。数十人上疏し、易斯を斬ることを意とす。易斯之を恐れ、家を挙げて走り、民、拳民擒の所と為す。三多淩遲と判ず。易斯市に磔となること三日。後に其の首を梟し、城門に懸く。

  福田、「大万歳国」を国中に建てるつ⁴。『資政新篇』を以て綱と為す。趙三多、閻書勤、朱紅燈、景廷賓を封じて内閣大学士と為し、倪贊清を大将軍と為し、林黒児を尊び黃蓮聖母と為す。
  余りは各おの⁵賞に封ず。

  異学会拳民を以て恭さず、呼びて之を匪と為し、挙兵して之を撃つ。我が会亦た挙兵し異学会を攻む。敵と我が会広渠門にて戦いひ、我が会敵さず、退く。

  翼日、会と民戦うふ。拳民神兵を以て将に之を撃たんとす。我が会狂風を做り以て之を助く。異学会、異学███を取りて反擊し、宮城に飛び入り、乾清宮を焚し、扶搖に摶りて上ること九万里、須臾にして見ず。

  第三日、会永定門を撃ち、後に広渠門を攻む。会細作を遣わはして城内を覘く、見ることを得ず。我が会使者を遣わはして拳民に助けを請ふ、民受けず。我が会の兵城外に列隊し以て異学会を拒む。

  逾数日にして、各おの⁶勝負有り。某夜，忽ち雷声大作有り。乃ち是れ我が会術士劉█法を作して霊兵を喚ぶ、意に夜襲を欲し、止まるを得ず。霊兵殲に遭いひ、█亦た殂す。我が軍の軍将皆醒め、兵を持ち出で、敵見ず。敵忽ち出で、我が軍戮に遭いひ、唯だ三四人生を得。北斗之に悩み、広渠門を離れる⁷。我が会天津より星盤、牛骨箸を取り定め、複た敵を撃つ。敵異学███を釈ち、入陣衝撞にして、其の喙に百余の歯有り、鋭きこと甚しく，之に觸りて即ち傷む。我阻邪丘を以て之を阻み、後に捕龍籮を以て之を收めて殺す。

  次日、拳民出兵して敵を攻む、並びて我が会の数人を殺す。北斗忿りて、全軍撤退を命ず。軍士願わはずと雖も、然して終に撤す。敵巨炮を以て北城牆を攻む。民法を以て諸門を護ると雖も、未だ護堞せず。北城牆不日にして破れ⁸る。民の作法及ばず、学会をして数千を斬らしむ。異学会異学███を以て拳民の意志を控し、命じて自ずから相殘殺させしむ。民多く死す。異学会光緒帝を迎回し、洋人復た至り、命じて之と和す。

  民数月を死守し、城を破ること一日に過ぎず。嗚呼、此れ即ち拳民の無辜教士を殺すの報いか。嗚呼、我民を以ては善事を多く行し、大事を成すべし。料らずも竟に毒手に遭いひ、全軍覆没す。哀しいかな。清の余壽の久しからず、既に以て常識の事と為すや。

  Footnotes

  1. ゑびす，とか読んだらカッコイイけど漢文的にはやっぱり音読みなんでしょうか

  2. 終止形は-ス。

  3. 口語終止形→文語終止形。

  4. 口語終止形→文語終止形。

  5. 一文字に「おのおの」とルビを振りたい。

  6. 同上

  7. 終止形「～れる」文語ではすべて「～る」になります

  8. 「破る」は能動形で受動の意を含むことができたと思います。

  BenjaminChong 22 Mar 2020 08:01

  上記を元にさらにいくつか指摘します。

  + あぁ～漢文の音～～～

  命之を剿すことを命ず

  命が1つ多いです。

  遂に黑雲有りて日を蔽ひ

  →遽（には）かに黑雲有りて日を蔽ひ

  名を劉易斯

  →名を劉易斯といい？

  張榜

  →榜を張り

  民、拳民擒の所と為す

  →民、拳民の擒（と）る所と為る

  異学会拳民を以て恭さず

  →異学会拳民の恭さずを以て

  敵と我が会広渠門にて戦ひ

  →敵我、広渠門にて会戦す

  護せず

  →堞を護れず

  学会をして数千を斬らしむ

  →異学会をして数千を斬らしむ

  お疲れさまでした。

  ash_huihui 22 Mar 2020 08:16

  ありがとうございます！ご指摘の点、修正させていただきます。

  →名を劉易斯といい？

  ここに関して言うと書き下し時に「～といい」と付け加えるのは少し難しいかもしれません…

  ash_huihui 22 Mar 2020 08:14

  ありがとうございます！勉強になりました

  ゑびす，とか読んだらカッコイイけど漢文的にはやっぱり音読みなんでしょうか

  漢字一字の際は基本的に訓読みらしいので、ご指摘の通りにルビを振りたいと思います。

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