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あぁ、こんにちは国都博士。貴方が担当なんですね。
ははっ、そんな固まってないで、早く座ってくださいよ。僕にインタビューしに来たんでしょう?あぁそれとも
、この顔を見て驚いてます?どうです?そんなに悪くない顔じゃありません?まぁそんなことはどうでも良いので、さっさと始めちゃいましょう。時間もあまりありませんから。
どういうことかって?僕…と言うか、このオブジェクトの報告書は既に読んでますよね?でしたら、なんとなくわかるでしょう?多分、もって後4時間ってところだと思います。
えぇはい、よろしくお願いします。
ん?名前…ですか?僕には名前なんてありませんよ。だって僕は…あぁ、その名前で呼ぶのはよしてくれませんか?それは彼の名前であって、僕の名前じゃありませんので。呼ぶときは、普通に番号でお願いします。
それで、あなたが知りたいのは僕がどんな夢か、ですよね?じゃあ逆に聞きますけど、どんな夢に見えます?ふむふむ…まぁ、本来の彼よりはずっと明るく見えますよね。パーカーかぶってないし。まぁ…30点ってところですかね。じゃあヒントをあげます。
実は、僕が生まれたのは結構最近の事なんですよ。大体…4ヶ月くらい前ですね。うーん…まだわかんないですかね?じゃあもう一つ、彼が僕を捨てたのは2週間前の事です。お、流石に気づきましたか?だったら僕がどんなもものかもなんとなく想像がつくんじゃないですか?
えぇえぇ、その通りです。僕にあえて名前があるとしたら「並び歩く夢」と言ったところでしょうかね。
彼は色々とを捨てたと思いこんでいますけど、そうじゃないんですよ。
人間、染みついた癖とか習慣ってなか抜けないじゃないですか。まして感情なんて人間にとって必要不可欠なものを、そうそう簡単に捨てられると思います?無理でしょう?
彼は捨てたんじゃなくて、もう二度と使わまいと自分の奥底に沈めているんです。「自分にはもういらないものだから捨てた」という重りを付けて、二度と浮かび上がってこないように。
そんな彼にとって、あの人の存在はとても大きいものだったんです。
実は彼、ここに入る前からそこそこ悲観的な人間だったんですよ。あんまり周りから褒められることもなくて、もっと頑張らなきゃ、もっと完璧にこなさなきゃって、ずっと1人で努力してきたんです。
ここに来てからは、酷い虐めのせいで自分の存在まで否定するようになってしまいましたけどね。人って、存在を否定されてしまうと人形みたいになってしまうんです。感情を表に出さなくなって、周りに言われるがまま動くんです。糸で操られたマリオネットみたいに。
あの人は、そんな彼を縛っていた糸を切ってくれたんです。まぁ、彼もあの人もそんなこと気づいてないでしょうけどね。それでも、彼はあの人に救われた。それだけは確かなんです。
これまで人の優しさにあまり触れてこなかった彼にとって、あの人の存在は救いそのものであり、とても暖かいものだったんです。思いを寄せるようになるほどに。
惜しむらくは、彼自身がそのことに気づけなかったことですかね。
彼、何度も違和感を感じてたはずなんですよ。気が付いたらあの人の事を考えていたり、あの人と話してる時間が特別お気に入りになってたりと、結構わかりやすかったはずなんですけどねぇ。まぁ結局、重りが取れることはなく、その気持ちが浮かび上がってくることもありませんでしたけどね。ほんと、変なところで頑固と言いますか。
あの人が相手を見つけてからの彼、まぁ僕から見ても酷い変わりようでしたね。何せ自分じゃどうして苦しいのかわかんないんですもん。
…え?いやいや、そんなのできるわけないじゃないですか。だって僕は、あくまで「彼が抱いた夢」ですよ?僕自身にどうこうできるような意思はありませんし、する権利もありません。まぁもっとも、僕の場合は彼に気づいてもらえすらしませんでしたけどね、ははは。
辛かったでしょうねぇ彼。本心では僕と言う夢を抱いていながらもそれに気づくことなく、あの人を悲しませたくないからってんで、あの2人を応援してたんですから。
僕が言うのも変なんですけど、正直、捨てられてよかったと思っています。僕の存在によって彼が苦しんでしまうのは、本来の在り方に反してますから。それが叶わないものならなおさら。いつまでも抱き続けて苦しむなら、捨てて楽になりたいって思うのは当然ですよね。
…さて、これで僕がお話できることは全て話しました。どうです?欲しかった情報は手に入りましたか?でしたら何よりです。
あぁそうだ、ダメもとで聞くんですけど、彼今どんな様子ですか?あー…やっぱ教えてもらえないですよね…。まぁ大方、収容房の隅っこで一日中ぼーっとしてるとかそんな感じなんでしょうね。
はい?……うーん、僕の考えを言うのであればまぁ、彼が職員に戻ることはないでしょうね。…って、そんな悲しい顔しないでくださいよ。貴方は笑ってる顔が一番似合うんですから。
あぁそうだ、これもダメもとで言うんですけど、今日のこの記録、できればあの人になるべく見られないようにしてもらえませんか?えぇ、できる限りでいいので。
このこと知ったらあの人絶対悲しむじゃないですか。それだけは僕も嫌なんです。だって、それが彼が最後の望みなんですから。
すいませんね、なんか最後に悲しい雰囲気作っちゃって。お疲れさまでした。僕はこのまま、消えるまでのーんびりさせてもらいますよ。
……あ、そうだ国都博士、1つお願いしたいことがあるんですけど。
その…消える前に、飴を食べさせてもらえませんか?僕、甘いもの好きなんですよ。
SCP-918-JP-A-53からの要請は承認され、飴5つが対象に提供されました。インタビューから4時間後、SCP-918-JP-A-53は完全に消失しました。
後日SCP-███-JP-A-5に対してインタビューが行われましたが、このインタビュー記録でのSCP-918-JP-A-53の証言に関する有益な情報は得られませんでした。
収容されているSCP-918-JP-Aナンバー | 姿 | 願望または夢 | 特技 |
---|---|---|---|
SCP-918-JP-A-53 | SCP-███-JP-A-5 | あの人と並び歩く夢 | 特に特技は存在しないが、実際のSCP-███-JP-A-5よりも外交的である。 |
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任意A任意B任意C- portal:5268615 (20 Jul 2019 13:38)
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