共著

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太陽が山の隙から頭を出し始める。街が少しずつ光に染まっていき、ねじを回されたかのように目を覚まし始め、街の外に人の姿が見え始める。目覚めの祝福をするように爽やかな風がすう、と道を通りすぎていく。

ここはそんな街より少し外れたところにある小さな森の中。がさがさと木を揺らしながら2つの影が木々の隙間を枝を利用し巧みに移動している。そして影のうち1つが見事な着地をしてその姿が露わになる。サルのアニマリーである門木 猛だ。背中には大きな籠を背負っており、つややかなリンゴが2、3個入っている。そして門木の後を追ってもう1つの影が少しよろめいて着地をする。こちらはゴリラのアニマリー、五里 健吾だ。その屈強な体に見合った門木よりも大きなカゴを背負っている。

「健吾くん。ちょっと前よりも着地がうまくなったな」

「ありがとうございます! でも、まだまだですよ……」

と照れ臭そうに頭を掻いたあと、まだほの暗い空を見上げ再び口を開き始める。

「昔住んでいたあの場所に比べると、ここは天国ですよ。食べ物は美味しいし、住んでいる人は優しいし、こんな仕事まで任せてくれて、本当に感謝してるんです、街の人たちには」

「……そうか! それなら、今日もびしびし働いて頑張ろうか!」

「はい!頑張りましょう!」

軽く伸びをして街に沿って流れている川の近くに生えているリンゴの木まで向かった。2人の仕事は、このリンゴを採り街へと届けにいくというものだった。簡単ではあるが、街の栄養を補給するという大切な役目を担っている。ぷちり、と1つの実のヘタをちぎる。夜露がきらり、と陽の光を反射してその瑞々しさを示している。軽くズボンで拭き、籠の中に投げ入れる。その作業を何十回と繰り返すと、籠がずっしりと重たくなった。これだけあれば十分であろう。ちょうど健吾の方も終わったというので、脚立から降りて川を沿って街に帰還する。その道すがらふと川に目が行った。今日はいつもより川の光がきらきらしている。その輝きは一仕事終えた私の乾いた喉にはとても魅力的に映った。

荷物の籠を下ろして、川の表面に手を差し入れる。綺麗に反射していた光の粒をすくい喉に流し込む。乾いていた喉に静かに水が染みわたり活力が湧いてくる。やはり、今日はいつもよりも川が綺麗だ。環境が良くなってきているのか。非常に喜ばしいことだ。私は取り戻した元気を振り絞って籠を担ぎ再び街へと足を踏み出した。


街へつくと、ちょうど学校へ行く子供たちと出会った。みんな色とりどりのランドセルを背負って、思い思いの服を着て歩いている。

「あ、果物屋さんだ! おはようございます!」

真っすぐな挨拶が一気に飛んでくる。もはや収穫後のルーチンみたいなものだが、この屈託のない笑顔と声を聞くのは、いつになっても嬉しい事だ。

「おはよう。みんな、今日も元気だね」

「うん!三連休明けて久しぶりの学校だもん!」

「そうかそうか、じゃあ元気な君たちへのプレゼントに、採れたてのリンゴをプレゼントだ!」

私は後ろ手でリンゴを掴み、みんなの手のひらへポンと渡した。

「わあ~!おいしそう!ありがとう!」

じゃーねー、とはしゃぎながら子供たちが走り去っていく。エネルギーいっぱいで見ているこっちも力が湧いてくる。

「門木さん……改めて思いましたよ。この町に来て、子供たちの笑顔を見れて、私は本当に幸せですよ」

「……そうだな」

静かに空を見上げる。時計台の大きな長針が12にかちりと移動し、大きな鐘の音が町中に響き渡った。その音は街の住人への祝福か、今日と言う日が来たことへの喜びか。分からないが、とにかくいい音だった。

ああ、こんな日々がいつまでも続きますように。どこにいるかもわからない神様へ静かに祈りながら、僕たちは自身の勤める店へと、足を踏み出した。


太陽がゆっくりと沈み、代わりに暗闇がもたらされる。住人たちは大きな欠伸をかき、眠気に従うままに寝床につく。人気のない道にすぅ、と冷たい風が通り抜けた。

夜の番人、フクロウのアニマリーの倉嶋 信太は町内を巡回していた。いつもであればゆっくりと歩を進めて満天の星空と静かな夜の風景を楽しんでいたところだが、今日はそうもいかない。小さな羽を不安そうにバタつかせ、やや急ぎ足で巡回を続けた。

「こんばんは、お巡りさん」

不意に後ろから声をかけられた。肩をビクつかせて声に慌てて反応すると、笑い声を漏らした数名の男たちがそこには立っていた。

「こ、こんばんは。ええと隣町の人たちかな?」

木田と名乗る、猫背気味の男が答える。

「はい、隣町の使いの者です。町長さんに用がありますので案内を頼んでよろしいですか?」

隣町とはかなり親交が深く、明後日には合同の餅つき大会が開催される。倉嶋もまた、それを楽しみにしていた。

「すまない、町長は昼頃に体調を崩してね。今は事務所で休んでいるんだ。食あたりかなあ。町長だけじゃなくて、息子も他の住人も同じように突然ね」

「大変なときに失礼しました。本当に申し訳ございません」

木田の言葉を合図に男たちが一斉に頭を下げたので、倉嶋は慌ててそれを中断させた。再度あげたその顔には、先ほどの笑顔が未だに貼り付いていた。

「では事務所の方を案内してください。」

「ええと、だから町長は今──」

「案内だけしていただければ結構です。このまま手ぶらで帰るわけにはいきません。怒られてしまいますから。あなたの家の方は奥さんがいるからきっと大丈夫でしょう」

「うむむ……じゃあちょっとここで待っててね」

倉嶋は背筋に走った妙な悪寒に疑問を抱きつつ、事務所の方角に向き直った。寂しがり屋で甘えん坊な息子は今頃泣きじゃくっている頃だろう。早く帰宅しなければ。

バンッ

「ありがとう、あなたへの用は済みました」



「……俺だ。お膳立ては順調、当初の予定どおり入ってきてくれ」

「楽しい巣作りの時間だ」

木田は携帯を懐にしまい再び拳銃を握りしめる。遠くの方から、夜鳥の鳴き声が聞こえた。


暗闇は払われた。ごうごうと燃え盛る炎は、療養していた住人たちを次々と家から追い出した。彼らを待っていたのは、下卑た笑い声と鉛玉。

ウサギのアニマリー、不和 彩音は事務所のもとへ急いでいた。叔父の町長の安否を確かめるためだ。住宅街に連中が集中している今のうちに町長を連れて脱出する、そして町を再興する。それが合理的な考えだと自身に言い聞かせる一方で、実際のところ現実逃避に似た感情のみが彼女を突き動かした。

何人の死体を飛び越えたか分からないが、ようやく馴染みのアイスクリーム屋が見えてきた。あそこを曲がれば事務所、町長がいる。逸る気持ちに身を任せ、一歩、二歩、三歩と近づく。すると曲がり角の先に見えたのは──炎に包まれた事務所、玄関前で伏した多くの人影、さっきから何も違わない光景だった。

「町長!」

一縷の望みをかけて大声で呼びかけると、いくつかの人影が呼応するように動いた。彼らは生きていた。安堵した不和はほっと溜め息を吐き、彼らのもとへ駆け寄る。

「来るな!」

バンッ

刹那、一発の弾丸が彼女の大腿部を貫いた。足がもつれ、バランスを崩した不和はその場に倒れこむ。反射的に傷口を両手で圧迫するも、ジーパンに染み込む鮮血の拡大は止まらない。炎の影から這い出た三人の男たちは、痛みにもがく彼女を囲って談笑を始めた。

「ナイスショット! これで7匹目、ラッキーセブンでキリが良いな」

「よくわかんね。早くこいつも運ぼーぜ」

「おいおい、ちょい待ち」

一際の背の高い大男は彼女の身体を舐め回すように眺めた後、口角を釣り上げた。助けを乞う彼女の顔にひざ蹴りを入れ、長い両耳を掴んで地面に押さえつける。いやがる彼女の口に手を突っ込み、力任せに前歯を引っこ抜く。その直後、乱雑な激痛が彼女を襲った。ジーパンの裾から尿が漏れだし、血溜まりと混じる。大男は、不幸にも未だ意識を残す彼女の耳元で囁く。

「もうひと踏ん張り」






バンッ

大男は彼女の死体を抱き上げ、地面に顔をうずめた町長の前に置いた。御馳走さん、とワンセンテンスを添えて。

言葉にならない叫びで呻く町長を横目に、男たちはバケツいっぱいのガソリンを彼らに注いでいく。空となり、放り投げられたバケツは壁に当たって甲高い金属音を響かせた。ガソリンの臭いがその場に充満する。各々の絶望を見せる彼らを見下ろして、大男は咥えていた煙草を指で弾いた。まるでスローモーションのように、縮まっていく放射線状の導線──着火。ハイチーズ、生肉の焼ける白煙をバックに男たちは記念撮影を遂げた。


「おい見ろよ、高城。こいつ母乳と勘違いしてやがる」

ウシのアニマリーの赤ん坊が銃身を甘噛みし、ペロペロと舐める。その無垢な瞳には、後ろで転がる母親の頭部は映ってなかった。木田は母親を一瞥し、再度赤ん坊に視線を戻す。口元を押さえて目を細める。

バンッ

頭の内容物が周囲にばら撒かれた。木田は軽くなった赤ん坊の死体を手遊び程度に振り回し、ゴミ箱に投げ捨てた。ひとしきり笑った後、彼は懐からハンカチを取り出し、銃身に付着した体液を丁寧に拭き取った。

「木田、悪趣味が過ぎるぞ。こいつら親子を発見した時点でさっさと殺すべきだった」

室内の端で静観していた高城は、木田のいきすぎた行為を咎めた。木田は軽くそれを鼻で笑い、ヘラヘラとした様子で反論した。

「笑わせんなよ。駆除のやり方までアンタは指定しなかった。ならどうやろうが俺の勝手だろ?」

「そのやり方はただの快楽殺人鬼と何も変わらないだろ! 俺たちは正しい世界を構築するために集まったんだ。そのために邪魔となる存在を排除しているだけ、目的以外に価値を求めるな!」

「目的なんて二の次だ。楽しいことを楽しんで何が悪いんだよ」

「木田!」

高城は木田の胸倉を掴み、壁際に詰め寄る。木田は尚も笑みを止めぬまま、その腕を軽く振り払った。

「殺人行為に道徳を求める方がおかしいだろ。なあ、もっと周り見ろよ。どうみてもアンタの方が異端だぜ、"硬派気取り"さん?」

木田は高城を押し退け、荒々しく退室した。高城独りとなった寝室に、ポタポタと血の滴る音だけが鳴った。



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