SCP-INTへ投稿予定のSCP-2041-JP翻訳の下書きです。

The only entrance to "Central Operating Room" in SCP-2041-JP.
Special Containment Procedures: Containment Scheme in Japan centered on Site-81Q5 is freezed eternally with O5-Council consent. Foundation's property invested to is withdrawn from Japan and recovered to Foundation headquarters. M-class amnestics should be given to planning team outside Foundation.
Give Level-5 movement restrictions to transportation network in Joshu-Road, Gunma prefecture. MTF 乙1-3 ("Regular Medicine") bears mission to obstruct civilians entering SCP-2041-JP and other Foundation's facility. Especially, Entering 13 ward,12 ward,11 ward and 1 ward existing Foundation Japanese branch is located in shall be deemed serious violation and coped the first priority. Special quarantine station of Foundation is set at more than 3 places at all times and secure civilians contracting abnormal disease/DIDF which was contained in SCP-2041-JP. As a general rule, termination of targets is not allowed and they are immediately transferred to a nearby medical site.
Every attempt is done to avoid leaking abnormality of SCP-2041-JP to outside. On boundary of SCP-2041-JP area must be kept the operation of more than one Scranton Reality Anchors and Xyank/Anastasakos Constant Temporal Sinks (XACTS) at the same time commonly. Two Scranton Reality Anchors of large size are established to prepare for maintenance or emergency abeyance.
In the event of SCP-2041-JP's internal entities made effect to outside, MTF 甲-6 ("A Dose of Medicine")
takes the field to control situation. Deactivating entities as soon as possible, Blocking within a 100-meter radius from the accident site, Securing civilians suspected cases of abnormal disease, It is
effective for coping with a situation to execute these following three points quickly.
MTF 丙-9 ("Harmonin") explores inside SCP-2041-JP periodically under the direction of Foundation Medical Department. The primary purpose of this search is to document changes in SCP-2041-JP's abnormality and deactivate the entity. Rescue of personnel and other lost human resources prior to the SCP-2041-JP configuration will not be permitted. MTF 丙-9 must wear biohazard-proof clothing, and specially tuned Scramble-Visor-Unit to avoid seeing SCP-2041-JP-A. MTF 丙-9 needs to confirm whether it does not contract abnormal diseases by getting inspected every time later on ends of exploration.

研究区画B
説明: SCP-2041-JPは"新首都圏収容構想"及び"異常疾患収容/治療計画"の中心構成要素となっていた、かつての財団異常疾患研究・治療センターです。2041年に引き起こされた"現実性崩壊事象"までは医療に特化した特殊サイト-81Q5として機能していました。サイト-81Q5は敷地面積を地下区画を含め30km2有しており、財団のパラテック医療の現代医学の範囲内にとどまらない施設設備を備えていました。異常疾患法や財団指定難病2(DIDF)3の策定により、全国で発生した異常な病気をサイト-81Q5に集めることができるようになったことで、多人数の中で反復する異常現象を「病気」として扱い、「異常病理学」として1つの分野を形成することが可能になりました。これは2020年以降における異常な病気の頻発4に新しい収容体制をもたらすこととなりました。しかしながら、現在のSCP-2041-JPはかつてのサイト-81Q5から大きく変容しています。
SCP-2041-JPは全体で12の部門から構成されていましたが、現在は複雑な現実改変の影響でその具体的な意味性及び、ユークリッド空間的ベクトルを喪失しています。内在する面積は他の建築物オブジェクトの異常性規範にも見られた通り、外から計測された以上の大きさにまで及んでいます。SCP-2041-JPの持つ空間的特徴には以下のものがあります。
- SCP-2041-JP内のあらゆる箇所には赤十字と酷似した非実体像(SCP-2041-JP-Aと指定)が浮遊しています。これを視認した人物は何らかの疾患に罹患します。これには通常の疾患も含まれますが、大部分は異常疾患であり、錯覚具象化脳炎、ロマンス・リーザ病、後天的疑似呪縛症候群など、かつてのサイト-81Q5で収容されていたあらゆる異常疾患が確認されます。
- SCP-2041-JPの空間は自らと同質の空間を複製します。この性質によりSCP-2041-JPは隣り合う空間に侵略的な拡張を引き起こします。
- SCP-2041-JP内の平均ヒューム値はおよそ0.80Hm〜0.95Hmです。
- 本来、外来患者のために設定されていたエントランスはSCP-2041-JPの空間において"最外部"に位置します。如何なるエリアからSCP-2041-JPに侵入しても、侵入者は一番最初にエントランスにたどり着くことになります。
- SCP-2041-JPの構成は"最外部"を除いて常に変化します。かつて通った道が現在も同じであるとは限らず、線形空間的に交差するか重複すべき道も必ずしもそうであるとは限りません。
- SCP-2041-JPの内部に存在するテキスト群はクラスIIIミーム異常を保持しています。その表現する内容が明らかに虚偽であるとわかるのにも関わらず、それが正しいか信頼性に足るものだと判断させる異常性質が確認されています。これらは病院内の患者の認知に基づいて自然発生したと考えられます。
- これまでの探索において、"最奥部"には特別管理区画-2が存在していると判明しています。
SCP-2041-JP内に元々収容されていた患者や職員は財団や人類に対して敵対的な実体に変化しています。その性質は個々によって様々であるものの、一様に病気を拡散させることを目的としています。実体によって病的性質を拡散する方法として確認されたものには、ウイルスや病原性生物の接触媒介の他に外科手術による悪性細胞の埋め込みや攻撃による身体障害の作成5、認識災害などがあります。実体による影響で病気に罹患した場合は、その病気の元の症状がどのようなものであれ、致死的な病状が起きやすい傾向にあります。
実体はしばしばSCP-2041-JPの外部にも出現します。SCP-2041-JPから半径5km圏内の地域で確認され、それ以上離れた地域での出現は発生していませんが、今後この出現可能地域が拡大する可能性が研究によって示唆されています。
補遺.2041-JP.1: 経緯
2020年以降に発生した異常な疾患には、他者に有害な作用をもたらすものや現実性の変化を起こすものが存在しました。2020年には既に、10年以内を目安とし異常疾患の影響が社会維持に甚大な被害をもたらすと予測されていました。それらの影響を減衰させるために策定されたのが"異常疾患収容/治療計画"です。これにより、今まで個別の特別収容プロトコルによって収容がなされていた状況から医療のみを専門としたサイトで効率的に「収容」できるようになりました。この計画に先んじて財団指定難病の指定や必要な法整備が行われました。いくつかのオブジェクトは通常ナンバリングから外され再整理されました。オブジェクトを「病気」として扱うにあたり以下の要素が確認されました。
- 「病気」とは個人に特異的なものではなく条件により誰でも影響され得る。
- そのため「治療」を個人に行うことは財団の「保護」を行うこととは矛盾しない。
- 「収容」とはこの場合、対象の病気が正常な人類社会に与える影響を抑制することである。
現在のサイト-81Q5は2029年の群馬県首都計画に伴って建設されました。この時代はまだ、財団が研究や治療を主導する立場を担っていました。サイト-81Q5は単一の医療施設としては国内最大規模を記録し、全国の病院とネットワークを結ぶことにより迅速な「確保」を行うことに成功しました。それぞれの病院で異常な疾患が確認された後、患者のカルテ情報がサイト-81Q5に伝えられその病気の拡散性、有害性を加味した上でサイト-81Q5に搬送されます。
1998/7/12 |
ポーランド共和国南部で巨大神格実体降臨事件が発生する。この2日後、事態の収束にともなって財団とGOCはLK-クラス: ”捲くられたヴェール”シナリオの発生を宣言した。これにより財団やGOCは国際社会の明るみにでることとなる。 |
2001/8/13 |
民間企業の研究が悪魔学の再発見にまで及んだ。安全な代価の支払い方法の発見により、悪魔学拡散防止協定は破棄された。これは民間においてその他のパラテックを用いた商品などが広く普及するきっかけにもなった。 |
2005/3/6 |
日本横浜市の児童保護施設で眼球内宇宙様畸形症の子供が発見される。財団は SCP-134として収容を試みたが、同年5月に中国の山東省の病院での発見をきっかけに相次いで同じ疾患を持つ患者が発見されるようになった。複数の市民団体はこの「異常性」は単なる奇形疾患の1つにしかすぎないとして財団に患者の解放を要求した。 |
2009/1/28 |
日本生類創研の開発した致死性ウイルスTX-85957(のちのSCP-██-JP)が日本国内に感染を広げる。財団は主な発生源であった神奈川県を封鎖したが、被害の拡大を止めることはできなかった。このウイルスは身体中の各所に動物的な部位を発生させる特徴的な症状があり、異常な疾患であると明らかに判断された状態での拡散だったため財団の活動は後手に回った。放棄された研究所でワクチンが発見され事態は収束した。それまでの死者は日本国内で1500人。この事件はさらなる「認知の変化」を招くこととなった。 |
2016/9/23 |
巨大神格降臨事件以降に生まれた子供達は「第一世代」と呼称されたが、「第一世代」の1代下である子供達は「第二世代」と呼ばれた。「第二世代」は体内の平均ヒューム値が1.05Hm〜1.25Hmまであり、低現実の空間であれば若干の現実改変事象を行使可能であることが確認された。これ以降体内の現実性に関連する疾患が多数確認されるようになっていく。 |
2019/11/11 |
SCP-CN-214の収容違反を原因として異常な疾患に関する安全性を求めるデモが起きる。特別収容プロトコルの一斉見直しが行われた。 |
2020/5/26 |
財団が医療に関する安全保証を行うべきという提言がムーラン上級研究員によりなされる。倫理委員会はこれを受理。異常疾患収容/治療計画の開始。関連法案の成立。 |
2022/9/2 |
サイト-66、サイト-CN-14、サイト-88、サイト-8156をはじめとする他23の医療あるいはバイオサイトの管理官がWHO本部スイス・ジェネーヴで会談を行う。財団医療宣言。 |
2022/11/9 |
世界超保健機関(World Parahealth Organization)が世界保健機関の1部門として(初めて公的に)発足する。 |
2025/4/9 |
「第三世代」と呼称される子供達は若干の現実改変能力を行使できることが可能になった。 |
2026/3/13 |
日本は道州制を決める法案を採用した。若年層の人口比率が老人と比べて大きく上回った。急激な人口増加に対して分散経済を推進する方針が進み、各州に置かれている州都を中心として経済圏が構成された。中でも上州道の州都である群馬県は極めて異例の発展を遂げた。 |
2027/1/6 |
異常疾患収容/治療計画と新首都圏収容構想が発足する。その一環としてサイト-81Q5の建設が計画された。東京に次ぐ第二の首都圏として群馬県に財団日本支部の本拠地が構えられる。この時の群馬県は医療企業連合体が集まっており、世界的に見ても先進的な都市になっている。 |
2028/5/24 |
日本生類創研と東弊重工の技術提供によりロマンス・リーザ病の先進的治療法が確立する。 |
2029/5/26 |
財団異常疾患研究・治療センター(サイト-81Q5)の建設が完了する。 |
補遺.2041-JP.2: 初期対応
事態の発生の1年前から、危機管理委員会はサイト-81Q5の収容体制の不備を理由に安全性トリアージ"赤"の患者が引き起こす収容違反の可能性について警告していました。この警告は、それ以前に起こされた東雲病患者の一斉発作による神格実体の召喚事象やトランスターミナル区画の漸次的死亡措置の不備など重要な医療ミスを根拠としており、連続する収容違反に対して即刻の改善要求が行われました。また、サイト-81Q5の報告は不透明な箇所が多々見受けられ、財団に対して重大な事実を隠蔽しているとみなされました。これらの勧告にも関わらず、2041/10/12にミーム性疾患の外部への漏出事件6が起きました。事件をきっかけに行われた強制監査ではサイト-81Q5がサイト管理官を中心に独自の運営を行なっていたことが判明しました。収容データの偽装(倫理的ガイドラインに抵触する方法の使用)、本来サイト単体で行うことのできないレベルでのプロジェクトの隠蔽などサイト-81Q5は財団から独立して別の活動を行なっており、さらには患者がなんらかの異常事象を引き起こすために利用されていた可能性も指摘されていました。
現実崩壊事象が起きたのは2041/12/24の午後です。サイト-81Q5が最後に連絡したのはPM4:00の定期連絡でしたが、その発言内容から、ミーム性疾患の収容違反が疑われました。以下の音声ログはその際の記録です。以下の音声ログはサイト-81Q5との定期連絡の記録です。
2041/12/24 サイト-81Q5定期連絡(夕方)
[記録開始]
サイト-81Q5: こちらサイト-81Q5。定期連絡です。どうぞ。
サイト-8181: こちらサイト-8181。通信受けとりました。そちら異常はありませんか?
サイト-81Q5: 異常ありません。現在サイトを占拠した看護師実体がクリスマスパーティをしています。
サイト-8181: それはクリスマスジョークですか?
サイト-81Q5: 事実です。午後2時ごろに発生したある患者の死が、混乱を引き起こしています。私たちが与えてきたterminal、終末医療はterminal、絶望的医療でした。だから終末を呼ぶのかもしれません。患者は児童病棟の収容区画に長い間滞在していました。
サイト-8181: あなた達のサイトには異常の疑いがあります。
サイト-81Q5: こない方がいい。あるいは来た方がいいのかもしれません。単なる医療事故、呪術ミスであれば問題はありませんでした。さらには、宗教的な配慮を十分に講じた上で、輸血を試みるべきなのではないでしょうか。
サイト-8181: ミーム汚染等疑いがあるためこれで連絡を終了する。アウト。
サイト-81Q5: 死亡事故ですか?
[記録終了]
この音声記録から本格的にサイト-81Q5が異常な事態に陥っていることが認識されました。その日の内にサイト-81Q5調査委員会が結成され、詳細な事象の確認を行いました。
第一次調査記録
2041/12/24作成
概要: これは現実改変事象の影響により内部構造及び空間的に変形したサイト-81Q5の最初の調査記録です。機動部隊が派遣される前にまずドローンによる観測が行われました。感染症病棟の割れた窓ガラスから入ったドローンが距離にして1km以上離れたエントランス一階に瞬間移動し、初期の侵入箇所は限定されるという空間の特異的な性質が判明しました。サイト-81Q5はこの時点で完全にライフラインから遮断されており、自家発電システムや緊急収容機構が作動していないにもかかわらず照明や器具が不自然に機能していることが判明しました。また、壁に貼られたポスターや案内表示のテキストが変化(投身自殺を推奨する異常臓器部門のポスターなど)しており、いくつかはミーム的な異常性を保有していました。その一例として異常な動作を起こした映像機器から撮影された一連の動画を以下に添付します。これは財団異常疾患研究・治療センターが作成した手術する患者のためのガイドラインに酷似していますが、既知のいかなる記録においてもこれと完全に一致するものはありません。
カウンターのある広間にはサイト-81Q5の職員と見られる医師の死体がホルマリン標本にされた状態で横1列に並べられており、その内いくつかは椅子などに座らせられていました。記録機器はその存在を観測していませんが、映像を見た職員は「トイレから聞こえる鳴き声」と「子供達が狂ったように笑う声」を同時に認識しました。トイレの観測が行われると身体中に赤い斑点のある10歳程度の男児の死体が発見されました。周囲に薬品瓶が散乱していたことから、死因は薬品の過剰摂取による中毒死であると推測されました。薬品瓶のラベルには「世界中の人々の笑顔」「見舞い品」などの存在しない名称が表記されていました。
ドローンはエントランスから連絡用通路を通り呼吸器・循環器部門の感染症病棟区画につきました。この区画では人間の生存者と見られる実体が確認され、コミュニケーションが試みられました。実体は最終的に過度なミーム的病原性を発揮したことにより救出は断念されましたが、その一部は非異常な状態としてインタビュー記録を残すことができました。

撮影に応じる実体達
これら以外の実体には以下のようなものが見られました。その多くが「生存者」であると認められることはできませんでした。救助は行われません。
- 財団規定の服装とは異なった看護婦と見られる実体。女性型しか存在せずその服装は薄いピンク色を帯びている。顔にSCP-2041-JP-Aと酷似する文様が刻まれており、これも同様に異常な性質を持つ。
- 燃える胎児を摘出する一連の実体群。医師、母体、胎児の他に浮遊するヒトの30日原胚子に酷似したハルトマン霊体が無数に見受けられた。
- 病室でイスラム教の五体投地を行っている実体。おそらくは男性だが女性の肉体的部位もあるように見える。
- 頭部にデブリドマン開口器をつけた男児の実体。使用されている機器や外見的に明らかな状態から推測するにロマンス・リーザ病の末期患者である。

ドローンが撮影した区画間の連絡用通路
ドローンは連絡用通路を通り高度セキュリティ区画へ入ることに成功しました。感染症病棟区画は他の区画への異常性の漏出を防ぐために二種の封鎖装置がかけられていましたが(防疫シャッターと情報制限システム)、そのいずれも機能していませんでした。防疫シャッターは粘度の高い灰褐色の液体に溶かされており、情報制限システムは機器の半数が物理的に破壊されていました。ドローンは患者のパーソナルデータベースにアクセスしようとしました。しかし、ドローンが機密情報の高度なセキュリティをクリアする間に、頭部に奇形を持つ男児の実体が出現しました。データのダウンロードが半分ほど完了した時点で男児の実体は小刻みに震え出し、頭部が爆発しました。この時、破片となってあたりに飛び散った頭骨によってドローンは破壊されました。ドローンはロストしたと考えられています。
ドローンは破壊されるまでの直前にデータを獲得することに成功しました。以下に財団指定難病ログから引用された代表的な疾患の例を示します。
この探索が終わった後さらなる調査のためにドローンが15機以上派遣されました。敵対的な実体による支配、身体への浸食性の高い病原体の拡散、ミーム的異常性のあるテキスト群、施設の著しい荒廃などの複数の要因によって、もはやサイト-81Q5は本来の機能に復帰不可能であると判断されました。これまでに生存者は確認されず、人型に見える実体は全て異常現象の影響下にあります。
各部門の区画は今現在以下のような状況にあることが判明しました。
対象区画 | リスク | 状況 |
---|---|---|
エントランス | ● 低 | 他の区画で見られた実体は存在しない。緊急時封鎖システムが効果的に機能したことにより汚染されたようには見受けられない。一部ミーム的異常性のあるアナウンスの映像やポスターが確認される。財団ミーム部門ではこれらはエントランスに含まれる不信感から発生したと推定された。 |
呼吸器・循環器部門 | ● 中 | 認識災害・ミームの危険性は低い。荒廃もそれほど進んでおらず人型実体も多くは冷静だが、話は通じない状況にある。生存者未確認。緊急時封鎖システムの大部分が破損しており元々この区画に存在しない疾患を有する実体も多く見られる。 |
異常臓器部門 | ● 中 | チューリップの花畑が1-A研究区画一面に広がっていることが確認された。「花畑ではかつての研究対象達が踊っているようだ」とある研究員が報告したが、客観的な映像からは人型実体、それに類する実体は存在しなかった。霊的実体を確認する装備をドローンは備えていなかった。 |
脳神経部門 | ● 高 | 白衣を着た成人男性の実体群が区画内を歩き回り、他の人型実体の頭部を摘出していた。実体群は少なくとも20人以上は存在しており、おそらくは高現実性脳症の患者10。 |
指定感染症部門 | ● 高 | この区画の状況は日本生類創研が引き起こした生物災害事象の時のサイト-8156と極めて似た状況に陥っていた。必要なベッド数が足りておらず、感染性が非常に高いのにもかかわらず重篤な患者が廊下に放置されていた。看護婦型実体は懸命に治療しているように見えたが、中には有害な薬品を患者に飲ませたり、児童の患者の首を締めることで数を減らそうとする試みが行われていた。ドローンは不明な座標に数回転移(その内いずれもが病院内のような場所で、実体が必ず死亡するところを見せた)し、不明な要因で故障して通信が切断された。 |
特別管理区画-211 | ● 高 | 三重のリバ・ロックの内1つを解除することに成功した。その内1つはこの担当のレイ マクガイヤー医師12の虹彩認証、内1つはサイト-81Q5管理官[削除済み]の静脈認証によって解錠できる。この区画の現地調査が望まれている。 |
補遺.2041-JP.3: 回収された記録
ドローンの広範に及ぶ調査でいくつかの患者のファイルが獲得されました。中には他のサイトと共有されなかった情報もあり、サイト-81Q5の機密性が財団同士の情報交換にも及んでいることが示されました。元々、連鎖的な収容違反が原因で現在の状況になったと推測されていましたが、新たに獲得された情報から大元を辿っていくとある疾患の患者がSCP-2041-JPの形成に関わっていたことが判明しました。医学的レポートは以下を参照してください。
サイト-81Q5患者記録
超常内科作成
氏名: 白乃瀬 白
患者番号: 5297429
性別: 女性
血液型: ボンベイ型13
病名: 現実虚脱発作症候群
概要: 白乃瀬氏(対象と呼称)は現実虚脱をもたらす疾患に罹患している。対象は生来的に心臓を2つ持っている(その内1つは機能しておらず、定期的に現れる心臓の痛みの原因となっている)上、免疫機構や体格が極端に弱く生まれたため、頻繁に高熱や体の痛みに悩まされている。また、アルビノである。対象の持つ「現実虚脱症候群」の症例(本疾患と呼称)は、後天的にタイプ-ブルーやタイプ-グリーンを作るDIDFの一種である。発生する原因は未だ不明であるが、発症した患者の年齢は5才から10才で、自身では制御不可能な現実性の吸引を行う。これらはおよそ5段階に分けられている。
Ⅰ期では患者は「虫の知らせ」と形容されるような情報の認識を獲得する。本来的に患者が知らないことを知っていたり、学習経験の無い言語を突然話始めたりなどの異常行動が見られるようになる。この時点では、タイプブルーや大半の現実改変者との共通点は完全に見られない。測定された個体現実値も平均か若干それを上回る程度である。Ⅱ期では体内の現実性が斑状に分布する。正確な現実性を局所的に測定する技術がなかったため、長らく未判明だったが、全体的に100から120Hmを持っている反面、いくつかの直径5mmほどの球形の範囲内においては0.10Hmを下回る現実性を記録する。これが低現実空間腫瘍と呼ばれる異常な体内空間である。これは当然、臓器や細胞の正常な活動に重大な影響を与えることもあり、場所によっては致命的になる。
Ⅲ期では低現実空間腫瘍が拡大が進行する。脳や心臓などを侵食するのにも関わらず、これが原因で死亡に至ることは稀。低現実空間腫瘍はやがて体外に漏出し、外部で自己改変を行うようになる(=現実虚脱)。低現実空間腫瘍と患者自身は繋がっているため、患者にも改変が及ぶ。Ⅳ期では無制限に低現実空間腫瘍が拡大し、頻繁に情報の取り込みと排出が行われる。大抵は情報の入出に耐えられないため、ここで死に至ることが多い。
ごく稀には、Ⅴ期に移行する事例も確認されている。Ⅴ期では低現実空間腫瘍が半径数100mにも拡大し、周辺の現実性を吸引する。この時点になると、低現実空間腫瘍の拡大を止める方法は存在しない。低現実空間腫瘍はある一定の大きさになると世界規模での脱現実化を引き起こす。これは76%の確率でCK-クラス:再構築シナリオが発生する要因になり得る。
そのごく稀に移行する症例こそが、本疾患である。財団は対象を日本の群馬県太田市の赤毛会太田病院で確保した。2040/5/23の確保された時点で対象はすでにⅢ期に移行しており、著しい病状の悪化が確認された。当地の未熟な医療技術、異常な疾患に対する無知がここまで進行した主な原因となった。本来ならばⅢ期に移行した患者は終了が原則であるが、財団のさらなる研究と治療方法の解明のためにサイト-81Q5に入院する形で収容が許可された。
入院した時点で対象は深刻な呼吸困難(右肺の現実不全に由来)と高熱に侵されていたが、財団の対処療法で改善し、小型スクラントン現実錨と車椅子の補助があれば外に出ることが可能なレベルに回復した。心理面では財団のカウンセラーが常駐し、現実改変に深く関わっている思想形成について修正を行いつつ、退行的な精神状態をケアした。2040/9/8では、低現実空間腫瘍の大きさが身体構造の範囲内に収まったことからⅡ期に指定することが複数の研究員により提議された。研究成果も複数あり、「タイプ・グリーンと宗教の関係 沙村遼西・西村真理著」は現実歪曲者に対する研究が遅れていた日本支部の地位を向上させることに繋がった。
しかしながら2041/5/10、対象の持つ個体ヒューム値が急峻に増大したことが確認された。それと同時に児童病棟区画Aの現実性が0.55Hmへと一瞬にして減ったことから、対象は現実性の吸引を行なっていることが判明した。そのあと、さらに低現実空間腫瘍の大きさが身体構造の範囲外に及んだことが判明し、直ちにⅣ期へ移行された。それに至るまで身体状態、精神状態、思想は比較的健全であり、カウンセリングでも異常は見られなかったことが確認された。原因の究明のために機動部隊亥-6("デアメリンS")が動員され、この事案が引き起こされた理由が判明した。
事態の前日にカウンセリングを行った堀街医師は対象に関するデータを含んだタブレットを病室に置き去りにしてしまった。そのファイルには、対象が終了される可能性があったことや対象が通常の病気ではなく、世界規模に及ぶ異常現象を引き起こしかねないものに罹患していることが書いてあり、対象には情報保安上、あるいは精神的に保護する目的で伝えられなかったことまでが知られてしまった。さらにこの後カウンセリングが再開されると、対象は学習プログラムの1つにあったキリスト教の観点から終末的思想を語った。また、自分の死とともに世界の終焉が訪れることを述べた。
2041/12/24に、対象はⅤ期の末期状態であると指定された。
補遺.2041-JP.4: 探索計画
第ニ次調査記録
2041/12/29作成
概要: これはSCP-2041-JPを対象とした探索の第二段階の調査記録です。前回のドローンを用いた探索の結果、サイト-81Q5を取り巻く異常現象の中心はある患者の存在があったことが判明しました。それらの患者が収容されていたと考えられる区画を含み、SCP-2041-JPの深部はドローンでは侵入不可能でした(ドローンのキャパシティを超えるセキュリティ設備や物理的な防壁など)。この探索で機動部隊がそれらの区画を調査しました。
これまでの調査からSCP-2041-JPの調査は危険を伴うことが明らかでした。ミーム的・バイオ的な対策を十分に講じなければ単に入ることさえも困難なものになると考えられました。その状況を鑑みた上で機動部隊壬-4("ドパコール")が派遣されました。機動部隊壬-4のメンバーは蒐集院時代の呪術的手法と高い認知耐性を受け継いだ探索者のメンバーであり、今回のような場所を探索することができると考えられました。
児童病棟の実体群はミーム性小児癌の患者であることが確定しました。また、音声記録から断片的に判明した事項として「末期患者」は記録にある「現実虚脱発作症候群」のⅤ期患者"白乃瀬 白"のことを指すということが挙げられます。
機動部隊壬-4は脳神経部門のエリア内ネットワークから以下のデータを獲得しました。
機動部隊壬-4はさらなる任務において、前回到達した地点からさらに奥へ向かいました。
この決定的な失敗から新たな機動部隊を派遣するのには時間が必要でした。しかしながら、WPhOの強力な後押しから2042/1/3には機動部隊甲-9("ヒュギエイアの杯")の出動が決定されました。その詳細は第三次調査記録を参照してください。
補遺.2041-JP.5: 展開

会議音声記録転写
出席者:
- 世界超保健機関事務局長補 ヘイズ・マシュー
- 世界超保健機関アドバイザー 李 苑博
- ミーム感染症対策センター研究主任 下飯田 円つぶら
- SCP財団81ブロック統括官 漆島 雄志
- SCP財団サイト-8123管理官 織花 綾香
- SCP財団異常病理研究主任 塔座 萌
[記録開始]
漆島統括官: それでは始めましょうか。…挨拶は置いておいてさっそく本題に入りましょう。我々の研究成果はいくつかの事実を掴みかけています。それには多数の人的資源や重要なリソースが失われていますが、私ははっきりとそれに見合う成果があったと言うことができます。
織花管理官: SCP財団はこの社会の悪性腫瘍をただで済ませようとは思っていないみたいです。そしてこのような病気にはとりわけ局所的な治療が有効ですよ。
[かすかな笑い]
織花管理官: 私は今皆さんと会議を円滑に進めるための比喩を用いたジョークを述べましたが、まさしくSCP-2041-JPは悪質な比喩表現と言えることでしょう。terminalという単語に着目してみましょう。SCP-2041-JP内ではトランスターミナルセンターとかで使われていた単語かと思います。
ヘイズ局長補: terminal、この単語にはたくさんの意味がありますね。まさかSCP-2041-JPが「絶望的」と「終末の」という意味をかけたダジャレだとでも言うのですか?
織花管理官: その通りです。
[沈黙]
漆島統括官: 簡単に事情を説明しましょう。事前の公開資料の中にも書かれていたと思いますが、サイト-81Q5は財団に…あなた方WPhOの皆様にも秘匿していた患者があったようです。DIDFは財団及びWPhOに報告義務がありますが、サイト-81Q5全体であるいは上層部達が組織ぐるみで隠蔽していたと考えられる模様です。私たちはサイト-81Q5のコンピューターにアクセスし、その患者情報と個人データを獲得しました。「現実虚脱発作症候群」それが病気の名前です。
李 苑博氏: 世界患者数6人のとても珍しい異常疾患です。15年前のロマンス・リーザ症候群とタメはるくらい危険性があります。彼らは現実改変を行いますがこれは既存のタイプ-グリーンやらなんやらと反対のメカニズムを持っています。彼らの内在Hm値は高いのではなく低い。…そしてその「低い」領域を外側に広げていきます。そうすると体内に部分的にある高いHm値の空間が共鳴し初めて現実改変を行います。患者周辺の空間に入ると、誰でも現実改変が行えるようになる、あるいは爽やかな感覚をもたらします。
下飯田研究主任: 本当にその病気ですか?信じられないのです。
李 苑博氏: 最後に確認された患者が2032年死亡したアフガニスタンの子供で、それ以降公的に確認されていないことになっています。しかしながら患者数が少ないこともあって治療方法がまだ確立しておらず、患者の致死率は100%でその上高確率で世界が死にます。
塔座研究主任: 世界に影響する病気は最悪です。
漆島統括官: そして私たちはその疾患がSCP-2041-JPの構成要因になったと考えています。サイト-81Q5はその患者… Ⅴ期の末期状態に陥った少女をセラピー漬けにしたのではないかと。
ヘイズ局長補: そういえばterminalには「末期」という意味もありましたね。
漆島統括官: そうです。そしてその患者をセラピー漬けにしたカウンセラーにも疑いがかかっています。彼はサイト管理官レベルで権限を有していた可能性があります。
ヘイズ局長補: この「資料」ですがやはりサイト-81Q5は重大な虚偽を記載してるようですね。普通に考えて財団の端末機器が「置きっ放し」にされたといってもそれを覗き込んで絶望するといったことが可能であるとは思えません。
綾花管理官: 財団の端末機器はそれほどやわではないでしょう。普通のエージェント用のであっても静脈認認証、指紋認証、パスワードを超える必要がありますし、手から離れた瞬間に画面がロックされるという親切仕様です。さらには重要な情報にはミーム殺害エージェント!堀街医師がどんなうっかりやでもたまたま忘れて、そして彼女が絶望的になるといったことを許すようなことはありません。
ヘイズ局長補: つまり意図的な力が働いて彼女に情報が露呈し、それがSCP-2041-JPを作ったと?
漆島統括官: 私たちはそう考えています。SCP-2041-JPが比喩表現を真に受けた絶望的ホスピタルだと。機動部隊の記録を考えてください。また、初めにドローンはどこへ転移しましたか?
ヘイズ局長補: それは…エントランスに入りました。エントランスで診断を受けてから病棟で収容され、脳神経部門でなんらかの調査と手術をされて、最後にはICUへと搬送された…?
漆島統括官: これは機動部隊の道のりにだけいえることではありません。手術への恐怖は案内映像の異常となって現れ、人型実体はパニックを起こして「健康」を求めている。私たちは研究の過程でこれがめちゃくちゃな状況だと思いましたが、最初から1つの性質を示していたのです。すなわち絶望です。死の恐怖、あるいは財団という巨大な組織に体よく病気という名目で飲み込まれてしまう恐怖。私たちの収容は患者を怯えさせていた。脅かしていた。
[沈黙]
漆島統括官: そしてこれはあまり根拠のない推測ともいえますが、SCP-2041-JPを救うためには機動部隊が終端に辿りつくべきということです。terminalの言っていなかった意味、それは道のりの終端terminal です。最初と最後が固定されているというのは異次元のオブジェクトにありがちなことですが、終端には末期患者がいるのに違いないのです。記録では通称「鉄球」に彼女がいるはずです。部隊にはそこを目指していただきたいのです。WPhOの皆様、財団のミスに力を貸してくれませんか。
ヘイズ局長補: [笑い]そういうことなら協力しましょう。財団のお陰で随分と甘い汁を吸わせてもらいましたから。
織花管理官: 記録に残りますよ?
ヘイズ局長補: いいですよ。財団の記録なら漏れる可能性は限りなく低い。漏れるようなことがあった時にはもう遅いです。
李 苑博氏: 特別医療チームとそちらの機動部隊の合同作戦ということでいいでしょうか?
漆島統括官: はい。SCP-2041-JPでも生き残れるようなミーム的、バイオ的に強い人材をお願いします。
ヘイズ局長補: …それでは機動部隊名はこちらで決めてもいいですか?
塔座研究主任: 良いアイデアがありますか?
ヘイズ局長補: あなた方が使用した機動部隊の名前が薬で揃えられているのに気づいていますよ。だから私が提案するのは薬学の象徴、ヒュギエイアの杯です。
[記録終了]
補遺.2041-JP.6: 再通信
前回の探索において機動部隊壬-4は地下の治療区画で行方不明となりました。失われた機動部隊の連絡は繋いだままにしておくという財団の慣例から16、通信機器はそのままにされており中断状態が維持されていましたが、異音がしばらく流れた後音声通信のみが復帰するという事態が起こりました。以下はその記録です。
インタビュー記録2041-JP.2
付記: 接続状態が「良好」に変化した後、しばらく子供の声で泣き喚く音が聞こえ始めた。異音は62秒続く拍手、「銀河鉄道の夜」の序盤の音読、タミル語での聖書の読み上げ、車が走る音と続いた後機動部隊壬-4桜田の声が聞こえるようになる。相互の通信はできず一方通行だった。
[記録開始]
桜田: あーあー、アメンボ赤いなあいうえお。浮き世に木漏れ日泳いでる。
桜田: 繋がっていますか?こちらからは聞こえていません。聞こえていると思って報告をします。ドパコールはあの患者を押さえ込むためにできた機動部隊の襲撃に遭い戦闘に入りました。しかし相手の戦闘技能が高く手話を使うキネト災害も習得していたため、戦闘はうまくいきませんでした。私は両隣に出現した巨大な手に押しつぶされて圧迫死した…と思ったのですが今なぜだか生きています。目覚めたらサイト-81Q5のカウンセリングルームに居たのです。私は本当に生きているのでしょうか?まさかここが天国なんてことはないはずですが。
桜田: 看護婦達は笑っています。いつのまにか腕に静脈注射された後があり、機動部隊の装備は外されたようで完全に無防備です。今の私ならすぐ死ねます。青い…手術着を着ています。サイズが少しあっていないですかね?私は手術する前でしょうか、した後でしょうか。目の前の椅子に白衣の男が座っています。私は彼に話しかけようと思っています。[舌打ち]
桜田: うわっ…うねっている。
桜田: すいません。ここを調査しにきたものですが。
男性の声: なんでしょうか?
桜田: あなたが堀街医師ということで良いですかね?
堀街医師: そうと考えてもらってもいいですよ。私があなたをここに招いたのです。
桜田: なぜですか?
堀街医師: カウンセラーがすることと言ったらカウンセリングでしょう。あなたにはお悩みがあるようなので。
桜田: そうですね。群馬県の病院で未曾有の大災害を起こしたクソみたいな話が今頃の悩みですかね。
堀街医師: それでは、私と一緒にその悩みを解決する方法を考えてみましょう。あなたは結局のところお仕事の悩みみたいなものですかね。仕事を辞めてしまうことも手のひとつです。
桜田: 今の仕事は結構気に入ってますね。
堀街医師: やりがいがあるということでしょうか。それは良いですね。
桜田: やりがいもそうですが、前職より収入が増えてます。
堀街医師: それで「群馬県の病院で未曾有の大災害を起こしたクソみたいな話」が悩みの本体ですか。大災害が治って仕舞えば悩みは消えるでしょうか。しかしそうもいかないものです。こちらもそれなりの理由があってやっているので。少々それについて語りましょう。
桜田: インタビューを受けるのは初めてではないですか?
堀街医師: 自発的に話そうとしているだけですよ。私は人に話してもらうことが仕事です。そうするといつのまにか自分が語り出してくることに気づくんです。それは確か10年以上前のことかと思います。私は大学を卒業した後、Yakushiの心理アドバイザーとして働いていました。この鬱気味な世の中では仕事はたくさんあり、東で悲しいことがあれば飛んでいき、西で躁があればすぐさま駆けつけました。色んなとこに派遣される日々は楽しかったですよ。そしてカウンセリングを受ける人にある共通点があることに気づいたのです。カウンセリングを受ける人は概ね皆精神的に不健康であるということは言うまでもありませんが、それには個人の生活リズムや環境以上に本人の資質が関係していました。……そして私は最初の殺人を犯しました。北海道に住む政治家の男性でした。仕事はうまくいかず家庭内でも軋轢が起きている…典型的な崩壊の前段階というか彼は壊れかけでした。彼は私には直すことはできない、そう感じたのです。
堀街医師: だから壊しました。その次に彼の妻、彼の娘、そして遠く離れたところに住んでいる彼の腹違いの兄弟、小さい頃に優しくしてくれた隣のおばさん、高校の時の恩師、会社の同僚、昔の仲間、あらゆる関係者を壊しました。私には信条とか目指すべき世界の形とか一貫した説明できる主張はありません。それは行動だけによって示されることであり、主張であるということはすなわち無意味です。
桜田: 狂っている。財団はあなたを引き抜く前に経歴を調査した筈では?財団には昔Dクラスっていう役職がありました。お前みたいなサイコパス野郎は絶対死ぬ穴とかに入れられて苦しんで死ぬようになっている。
堀街医師: それこそ酷いアイデアですよ。冤罪とかあったらどうするんですか?罪を犯した人なら苦しんで殺すのは許されるのですか?
桜田: [沈黙]
堀街医師: 財団は私をDクラス何某にはしませんでしたよ。カウンセラーという立派な仕事をもらいました。サイト-81Q5の仕事はとても楽しかったです。
桜田: ならなぜ壊したのですか?
堀街医師: …主張はありません。事実を話しますか。私は極めて平凡な財団の医師として就職し、現実改変やミーム災害を起こしかねない子供達の心理的なサポートをしていました。それはこのサイト-81Q5という牢獄じみた病院で「普通の暮らし」をしてもらうことと同義です。「院内教室」は見られましたか?
桜田: 観光地のおすすめみたいなノリで聞かれても困りますよ。
堀街医師: これは私と同僚が考案したサイト-81Q5初めての試みでした。1箇所に集めるのは危険極まりなくサイト上層部はヒヤヒヤしたでしょう。でもこの方法なら健康な精神状態で維持できるはずだったのです。あなたも財団の職員なら知っていることかと思いますが、2025年以降に生まれた人間はいわゆる現実改変を行使することが可能です。
桜田: それは教育所時代の授業で聞いたことあります。人を殺すような現実改変は普段抑制されているという話でした。
堀街医師: 人間が人を殴り殺す能力があってもそうしない理屈と似ています。心理的な障壁が現実改変の発現を妨げるのです。しかしそれがないような人や体内に秘める現実の強さが大きい人とかは事情が異なります。それらは現実不全の疾患として扱われました。
堀街医師: 私が担当した最後の患者はとにかく白い背丈が140cmくらいの小さな子でした。あまりにも小柄だったので彼女の年齢を見誤りましたが、その時すでに中学生になっていたようです。私はその患者を利用しサイト-81Q5を壊滅させました。私が語るのは ワイダニットなぜ ではなくハウダニットどうやってです。宗教についての知識を与えました。時に薄弱な精神状態で宗教に出会うと偏った考え方をすることが多いです。唯一の救いが宗教であるという考え方はどんなに信心深い人から見てもそれが異常であることは明らかです。良い信仰とは平常心から産まれるものですから、前向きになって幸せになるためのツールとして利用するべきなのです。彼女は生きる理由や死んだ後のことについて悩みを抱えてました。それをはっきりと答えることができるのは宗教の得意分野です。天国、地獄、審判の日、輪廻、救いそれらが本当にあると思いますか?
桜田: 失礼ですがあなたはキリスト教徒では?
堀街医師: おっとそうでしたね。忘れてました。天国と地獄、審判の日、ありますよ。そう信じているんでしたよね。ごめんなさい。そして我を失った彼女は特別管理区画-2に搬送されました。私は搬送先の担当医の1人に選ばれ…そしてまた彼女にカウンセリングしました。楽しかった、とても楽しかった。鉄球で囲われた生活が彼女を普通でなくしたのですから。「収容」は逆効果だったんです。[笑い]
[拍手の音]
桜田: 宗教のことを何にもわかっていない。
[拍手の音は増大していく]
桜田: もっと言えば財団のことも人間のこともわかっていない。
[拍手]
桜田: あなたのような人にインタビューする価値はない。どこかの人型実体の方がまだちゃんとしていた。
[拍手]
堀街医師: 失敗です。あなたはもう2度と目覚めることはないでしょう。
[記録終了]
補遺.2041-JP.7: 結末
第三次調査記録
2042/1/9作成
概要: 存在が推定されたSCP-2041-JPの最奥部に向かうための調査が実施されました。さらにドローンが派遣され存在が推測できる実体が封鎖機構により封じられているということが判明しました。あらかじめ判明していた三重のリバ・ロック(指紋認証、静脈認証、虹彩認証の三重)はドローンの解析で既に解錠されており、以下の2つのロックを開ける手段が講じられました。
低現実空間収容チャンバー(通称: 鉄球)

小スケールモデル
概要: 低現実空間収容チャンバー(VCC)17は現実不全の患者のための中が空洞の円球状構造になっている収容機構です。スクラントン現実錨(SRA)が10基等間隔に埋め込まれており、内部の現実性を維持するために働きます。特筆すべきことはこのSRAはヒューム値を1.0Hmに固定するためではなく、ある一定のラインまで下げ続けることが目的です。空間内の現実性が対象患者自身の持つ固有の現実性を下回った時、患者はこれ以上現実の吸引を行うことができない状態になります。低現実の病態を持つ患者の多くは内在ヒューム値を上げ、外部のヒューム値を下げて現実改変を行っているのではなく、周辺のヒューム値のみを下げることしかできません。その結果、患者の無意識が周辺現実に作用することで乱発的に現実改変が行使されます。したがって有効な治療方法として吸引可能な現実を無くすことと患者の内在ヒューム値と周辺空間の平衡状態を維持することが極めて有効に作用します。
チャンバーの内壁は園部式空間隔離構造で薄くカバーされており、現実性がその浸透圧18で流入するのを防止します。その他いくつかの機構は球体内の空間の低現実性を維持するように作られています。
VCCは基本的に低現実症の患者に用いられます。(0.3Hm/0.3Hm〜0.9Hm/0.9Hm)内在ヒューム値が1.0Hmを超える患者や周辺現実性を上げることが可能な患者にあまり効果は期待されません(前者の使用は完全に不可能ですが、後者の使用については研究が行われています)。
VCCはドローンによる探索でSCP-2041-JPの理論上終端と考えられる地点に確認されました。全てのロックを解除したドローンはVCCに侵入すると"薄く"なり始めました。VCCの内部空間はあらゆる物が歪んでおり、もともとなかった物が存在していました。それらは往々にして学級机、アオキの樹木(学名:Aucuba japonica)、ノート、筆記用具などの学校生活を象徴するものでした。ドローンは3分23秒内部に滞在することに成功すると、現実的な境界が失われて融解しました。もはや飛ぶことも不可能なほど形が変形したものの、飛びながら映像が送信され続けました。
その後も入念な調査が行われ、機動部隊乙-0("ヒュギエイアの杯")が結成されました。機動部隊乙-0の任務は以下にまとめられました。
- VCCの外部制御区画(本体から離れた場所にある)へたどり着き、VCCの緊急封鎖システムをサイト-81Q5管理官のセキュリティクリアランスで解除する。現実性を0.9Hm以上にあげることが目的だが、小型のスクラントン現実錨を用いて安全に移動できればその限りでない。また、VCCの制御権をサイト-8123に移行するよう設定する。
- 特別管理区画の他の入院患者の状態とデータを確認する。
- VCCまでの道のりの実体をなるべく回避しながら移動する。VCCで白乃瀬氏と考えられる実体に接触し、必要であれば交戦ないしコミュニケーションを行う。
機動部隊乙-0("ヒュギエイアの杯")
概要: 機動部隊乙-0はWPhOとの合同により結成された特殊な作戦に就く機動部隊です。SCP-2041-JPの終端に存在すると考えられる実体(SCP-2041-JP-1に指定)と接触し可能であればコミュニケーションを行うために結成されました。この作戦はSCP-2041-JPの影響を減衰させることを目的としています。機動部隊乙-0は3班から構成されています。
乙-0-1は主に戦闘を行うために人員が集められました。特に感染性の実体と接触するためバイオ的・ミーム的に耐性のあるメンバーが多いです。班長は財団の比嘉 健です。
乙-0-2は主に事前の工作が任務です。VCCの制御区画にたどり着き、様々な作業に従事します。VCCがWPhOのプロジェクトの産物であるため、その多くはWPhO出身で構成されています。班長はWPhOのレジス・ボワイエです。
乙-0-3はコミュニケーションを主な任務としています。SCP-2041-JP-1が交渉可能な情動を有していた場合の対応にあたります。班長は財団の添木 麹です。
以下はその作戦記録です。
探索記録の書き起こし
日付: 2042/1/1
探索部隊: 機動部隊乙-0("ヒュギエイアの杯")
対象: SCP-2041-JP 特別管理区画-2
部隊長
1班: 比嘉
2班: ボワイエ
3班: 添木
部隊員
1班: 能宗、白城、日奉、マクガイヤー
2班: ブース、相葉、雛田、久木
3班: 馬淵、録嗚未、安達、道岸
[記録開始]
[機動部隊らは安全裡に特別管理区画-2に到達した。特筆するべきことに道中の実体の数が著しく少なく、複数の看護婦型実体が見られたがそれらはまるで「怯えたよう」に攻撃的接触をとることはなかった。2班がVCCの外部制御区画にて作業を行なっている間、1班はその前で見張りにつき、3班はVCCの入り口の前で待機した。]
ボワイエ: それでは今から低現実の解除とサイト-8123への権限移行を開始します。アクセスまで5分間、権限の移行に3分間、トビラの解錠に2分間かかります。なるべく急いでやりますが多少前後する可能性があることを気をつけてください。その間は1班に防衛を頼みます。
比嘉: それでは散会しつつ周囲に異常な実体がいないか巡回してください。
能宗: 了解です。
白城: 了解です。
日奉: 了解です。
マクガイヤー: 人型実体群を確認しました。数は6、装備から推測するとどうやら機動部隊(''感傷なき医師団")です。
比嘉: わかりました。すぐに集団対集団のフォーメーションに移行してください。なんとしてでもここを通さないようにしてください。
敵性実体: こんにちは。あなたの安全性トリアージを確認して私たちに報告してください。虚偽の申告は即時終了の理由となります。
[敵性実体はSCP-1469-JPで「あなたは突然死ぬ」と示すと辺りが爆発し、SCP-2041-JPの構造が直ちに腐敗し始める。]
能宗: こんにちは。ここを通すわけにはいきません。
白城: 全班に通達します。現在外部制御区画を襲撃している実体は手話によるキネト災害を発揮します。今、彼らは辺りを腐敗させました。手が大きく変形したら退避してください。
比嘉: 方針としてはヒットアンドアウェイです。10分の間持たせればいいのですから。
能宗: あなた方は財団の機動部隊でしょうか?もうとっくに任務は解除されています。ここにいる理由はないはずです。
敵性実体: 虚偽の申告は終了の理由になります。
[さらにまたキネト災害の行使「これは正当な意見です」外観上即座に呈した異常な状況は見受けられない]
能宗: 「正当な意見」が出現しました。
日奉: こんなものは正当なはずがないだろう。
[取り囲んで一斉射撃を行うと実体の1人が沈黙]
敵性実体: 収容違反が発生しています。職員は避難してください。私達は…「鉄球」に向かっています。安全性トリアージ最低の黒を目指しています。
能宗: [発砲]
[キネト災害で「沢山の看護婦達が駆けつけた」が行使される。看護婦型実体群が床から無数に出現する。中には不完全な形で召喚されている個体もおり、腕などを有していないものも多く見られる。救急車のサイレンの音が聞こえる。]
敵性実体: 私たちが処理してきた患者にはそれぞれそれに足る理由がありました。現実を混乱させたり、吸血により自分の性質を拡散させるなどです。サイト-81Q5が感染に襲われたとき私たちはいつも出動しました。事態の収束のために。
敵性実体: 患者は絶望感のままに死んでいきました。人の孤独は何より強く、私たちにある1つの回答を与えました。すなわち、癌細胞のように振る舞うこと。それが束縛とされた絶望の運命から解放される方法です。癌細胞は自死アポートシスを行わず、細胞の決められた栄養プログラムや増殖のための計画にも従いません。サイトカインで虚偽の報告を上層部に行い、栄養を無尽蔵に消費する。そうして体は滅ぶのです。癌細胞は他の細胞に浸潤して変えていきます。つまり癌細胞とは新しい革命のあり方だったのです。
能宗: [キネトグリフを伴わない普通の手話で「本当にそうですか?」と示す。すると敵性実体(福島隊長だと思われる)が混乱の意を示して普通の手話で返す。]
ボワイエ: あと少し終了します。1分稼げますか?
能宗: [手話「あなたは本当に絶望を感じたのでしょう。体全体のために取り除かなければいけませんね。だけど私は1つ言えることがあります。あなたは役立っていたということです。」]
敵性実体: ここは地獄だ。
[キネト災害「それは本当に?」]
ボワイエ: あと30秒。
能宗: 耳を貸さないのですか?[手話「誰しもが役立っている。」]
敵性実体: [沈黙]
ボワイエ: 完了しました。これ以降VCCは本部が遠隔操作します。2班はここから一時離脱して予備人員として備えます。
能宗: 敵性実体、全員沈黙しました。完了です。
比嘉: ここからVCCに向かいます。
[機動部隊1班と3班はVCCに向かう。2班は待機しつつデータの回収を行う。]
[VCC内の空間が1.0Hm値まで戻りつつあることが確認される。このままなら5分後にトビラが解除可能となる。]
馬淵: これが「鉄球」ですか?見事にそのままですね。私たちが入ったら彼女はどうなるのでしょうか?禍根を断つ、そのために殺しますか?
添木: やることははっきりしています。絶望を終わらせるのです。
[安達隊員が驚愕の声を上げると部隊員がいた場所の床が上昇する。「鉄球」の半円がワイヤーにより開かれ、青い手術着を着たSCP-2041-JP-1が現れる。 SCP-2041-JP-1が「ありがとう」と唱えると肉の塊のように変化して分裂する。機動部隊員らは戦闘態勢を一瞬にしてとるが、肉塊は既に動くことはなく、青い手術着と一緒に沈黙した。機動部隊員らは口々にSCP-2041-JP-1と長い話をしたような気がすると述べる。後のインタビューからこの時の現象はなんの根拠もない心理的なものであるとされた。]
[記録終了]
SCP-2041-JP-1は低現実空間から通常の空間に移行した時点で完全に溶けかけていたことが明らかになっています。低現実空間では高ヒューム系の影響を受けて現実では存在できない形が存在できますが、SCP-2041-JP-1の体はもともと現実空間で生存するのには無理がありました。それに加えて長い間VCCの中で生活していたため、体の持つボーダーラインは非常に曖昧になっていたと推測されます。
補遺.2041-JP.8: 結論
第三次調査の後、SCP-2041-JPの異常な空間はごく小規模に縮小しました。これまで存在していた実体群は見られないようになり、ミーム汚染、認識災害、機器やテキストの異常な変化は全て元の状態に戻りました。しかしながら、SCP-2041-JPは依然として異常な空間を維持し続けており、オブジェクトクラスの変更は延期されます。
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任意A任意B任意C- portal:5235148 (05 Sep 2019 11:33)
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