弔いの味

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20歳の誕生日の前日だった。俺は父に呼び出されて、ある話を聞かされた。今になっても忘れない、忘れられない出来事だ。

「明日は、20歳の誕生日だな。」

「…それが?」

「単刀直入に言う。父さんは明日、死ぬ。」

ひどく真剣な眼差しだった。俺は思わず返した。

「はぁ!?何言ってんだよ!こんな…いつもと変わらず…こんなに健康そうで…何ともなさそうじゃないか!!」

父は動じなかった。話は、続けられるばかりだった。

「今から、その理由を話す。聞いてくれるね?」

「…おう。分かったよ。」

「よし。じゃあまず、話は5代前、この店の始まった時代のことだ。彼は元々、葬祭業者だった。ある時、彼はある男に『父を弔うために、父を何でもいい、料理にして食わせてくれ』と頼まれたそうで、それを引き受けた。…で、引き受けて成し遂げたまでは良かったんだ。けどね、その父親、それが表沙汰にはなってないが実はとんでもない大罪人だったらしくてね…。その死体に集まっていた恨みとか、呪いとかを全て御先祖は被ってしまった。というか、引き受けたというのが近いだろうね。あんなもの野ざらしにしておいたらそれこそ何が起こるか分かったもんじゃない。…それ以降、生まれる子達の寿命は縮んでしまった。その全てが、自分の子供が20歳になる頃に死んでいるんだ。父さんもお前と同じくらいの頃に経験したよ。お前の祖父に当たる人が死んでいくのをね。」

「…つまり、その呪いに、俺もやられちまってるってわけか。」

「そうだ。だが、それを徐々に眠らせるための方法が一つだけある。」

「それは?」

「死んですぐの父さんを、どの部位でもいいんだ。お前が調理して、食うことだよ。」

俺は絶句した。人の肉、それも父のを食うなんて、俺には到底出来なそうなことだった。

「この反応も無理もないか…。けどね、俺らの一族はこうして、この呪いを少しづつ解いてきたんだ。皮肉なもんだけど。…協力できるね?父さんの、一生のお願いだ。」

父の、最後の頼みだった。協力しないわけにもいかなかった。

「そこまで言うなら。」

父は、ただ涙を流していた。

「ありがとうな。…もうひとつ、頼みがあるんだ。家の、家業の話になる。…父さん、我儘でごめんな。」

「…いいよ。…で、なんだよ?家のレストランの話?」

「そうだ。実は、俺がお前やお客さんに今まで見せてたのはあの店の『表の顔』なんだ。」

「じゃあ、『裏の顔』もあるってことか?」

「そうなるね。…一言で言えば人肉レストラン、と言ったところになる。」

何となく、分かってはいた。話の流れからというのもあるが俺に流れる血が察しているのだろうと、そう思った。

「…お前にも、それを継いで欲しい。…やってくれるね?」

俺は了承せざるを得なかった。断るのは余りにも親不孝が過ぎてしまう。

「…継ぐ前にひとつ質問があるんだけど。」

「何だい?」

「俺らの受けた呪いは俺が父さんを食べることで少しづつ治っていくんだろ?なんで、わざわざ俺らまで御先祖と同じように他人の人肉を調理しなきゃならないんだよ?」

「…さっきのはちょっと語弊があったかな。お前が俺を食べるのは実はただのスタート地点に過ぎないんだ。そこから、お前は生涯でかなりの量の人肉をお客さんに提供することだろう。御先祖と同じく、弔いの気持ちを持って調理するってのはあの呪いにとっては1番よく効く毒なんだ。俺にはそうとしか言えない。」

「他の試みは?」

「全部失敗してるからそう言っているんだよ。…どうか、堪えてくれないか。」

「ああ…分かったよ。」


翌日、父は死んだ。とても呪いの影響にあるとは思えない程に、安らかな顔だった。俺もそれを見つけたらすぐに大粒の涙が俺の目を覆った。止まらなかった。ただ、溢れだしてくるばかりだった。


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