闇鍋

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「第1██回サイト-81██闇鍋大会を開催します!!」

毎週恒例の闇鍋大会だ。今回の集合場所はエージェント・蟹田の部屋。僕はいつものメンバーとギリギリ終了しない程度の食材と共に蟹田の部屋に直行した。
準備の後、半ば形骸化している闇鍋のルール説明をされ、すぐに鍋に具材が投入された。僕はミンティアの中身を1箱丸ごとザーッとぶち込んだ。我ながら外道である。そして、灯りも消え、辺りが真っ暗になった。自分が入れたこいつでさえも食べたら何なのか分からなくなるだろう。そんな暗闇である。

「じゃあとりあえず俺から。」

先陣を切ったのは、やはりエージェント・蟹田だった。

「こりゃ旨い。何かのステーキだろこれ」

どうやら蟹田は当たりを引いたようだ。その運を僕にも寄越せ。そう思った。

「次、私ですね。」

そう言いおもむろに闇から具材を取ったのは越前警備員であった。

「うわっなんかすごく口がさわやかになってます。歯みがき粉を何倍にも強めた感じです!あぁっ!!すごいスースーする!」

僕の持ってきたものが食べられたようだ。自分がこれを食べるリスクが減ると共に、反応も楽しめる。これほど愉快なことは早々ない。

「じゃあ僕いきますね。」

僕は暗闇から豆腐のようなものを掴み、口に運んだ。味も、食感も豆腐そのものだった。僕は思わず首をかしげた。なぜこんなものが入ってるのか疑問に思った。普通だったら極端に良いものか、悪いものが入ってると言うのに、食べた実感はまさしく豆腐そのものだったのだから。

「じゃあ次は俺がいくぜ!!!」

そんな疑問を吹き飛ばすかのように武生研究員が鍋をつついた。

「なんか土食ってるみたいな感じだな!っていうかなんかこれどっかで食ったことがあるぞ…。思い出した!ドッグフードだ!!」

こんなもの食べてもなおこんなテンションを維持できる武生さんにはいつものことながらちょっと引いてしまった。
ようやく一周した。

「あーっと…あぁ俺だな。」

蟹田さんが再び鍋から具材を取り、口に入れた。

「うわっなんだこれ。憎たらしいくらいに固いぞこの肉。肉だけに。」

つまらないギャグを押し退け、越前さんが鍋をつつく。

「このキノコ…でしょうか。食感がいいですね。口がスースーして味がわからないのが悔やまれます。」

次に僕が鍋から具材を取り出した。豆腐のようなものをまた食べた。変わり映えがなく、リアクションもクソも無かった。

「よっしゃ!俺だな!」

武生さんの威勢のいい声と共に鍋から具材が取り出された。

「うっマズっ!形容できない何かだわこれ!!!」

これで2周した。闇鍋はこれからが本番だった。その時であった。突如灯りが点き、財団の機動部隊が突入してきたのだ。

「ここにSCP-346-JPの卵塊が無断で持ち出されたとの通報が入りました!なにか豆腐のようなものを口にされた方はいらっしゃいませんか?」

僕はぎょっとした。しかし僕は何食わぬ顔で、知らない、と答えてしまった。自分が食べたという事実を認めたくなかったからだ。もしそれを認めてしまえば、自分を含めこの場にいた者全員に面倒を被らせてしまう。僕にはそれが耐えられない。
その後、鍋は回収され、もし体に何かあったら知らせろ、と伝えられ、僕は解放された。何とか誤魔化せたという安堵と異常なモノが身体にあるという恐怖、そして嘘を吐いたという罪悪感に苛まれながら、僕は帰路についた。
その後すぐ、僕はSCP-346-JPの報告書を調べた。それによると、僕の腹の中の豆腐は成長した後に飛び出してくるのだそうだ。嘘吐きには上等な報いである。


そして、その日がやってきた。僕の腹から味噌汁がとんでもない勢いで飛んだ。それと同時に僕の意識も飛んでいった。
だが、僕は生きていた。正確には生きながらえてしまったのだ。僕は視界と意識がはっきりし、簡単なチェックを受けた後、この事件の担当者にこんなことを聞かされた。

「この事件の実行犯のエージェント・蟹田は裏稼業において、弟の食料品、というレストランの仕入れ役兼ウェイターだったそうなんです。この闇鍋で集まった財団職員を例の豆腐で殺害して、店に持っていくつもりだった、と話しておりました。」

いざ事実を突きつけられると裏切りからの悲しみが襲ってきた。しかし、まだ疑問が残っていた。

「なんでこんな回りくどい上にリスキーな方法で殺そうとしたんですか?それについて何か聞いてますか?」

担当者は答えた。

「聞いてますよ。曰く、そっちの方が程よいスリルと緊張感からの非日常、ウェイターやら普通の仕入れやらやってる時とは全く違うものを感じられる上に、金も手に入る。仕事は楽しくやりたいもんだ、と。」

僕はなんとなくその気持ちが分かるような気がした。確かに、あの人は財団での仕事中、リスクを拒まなかった。むしろそれを楽しもうとしている感じさえもあった。こんなことを思いながら、適当に相槌を打っていくうちに、担当者は去ろうとした。

「ああ、それと、エージェント・蟹田への処罰に関しては現在審議中です。伝えたいことがあったら言って下さいね。」

僕は呼び止めた。もう蟹田さんに掛ける言葉は決まっている。

「悪人同士、これでおあいこだ、とだけ伝えといて下さい。」


4日後、越前さんがお見舞いに来てくれた。何でも、蟹田さんからの手紙を届けに来たらしいのだ。

「じゃあ渡したし、これでね。また来るからね。」

「分かりました。わざわざありがとうございます。」

僕は半ば困惑しながらもその手紙の封を開けてみた。

よぉ、元気してるか。まあ、こうさせちまったのは俺なんだけどな。
お前はどうやって豆腐を持ち出したかとか聞きたいだろうが面倒だからさっさと本題に入ろうかな。
俺がこれやった目的はな、ざっくり言えば、俺がお前を調理して、食うっつうことにあったんだよ。
なんつうかな、「仲間の味」?違うな、「友情の味」とか言った方がいいかな、そいつを味わってみたかったからな。
まあ、俺の博打癖のせいで失敗しちまったんだがな。
そんじゃあ最後に、俺のウェイターとしての一言をお前に贈ろうかな。長ったらしいのは嫌だろ?
「今回のお食事はお楽しみ頂けたでしょうか。またのお越しをお待ちしております。」
ってな。

僕はこの手紙をクシャクシャに丸めて、ゴミ箱に放り投げてやった。クソが。そうだ、確かアイツの名前にも蟹が入ってたな…。今度会ったら蟹の1杯でも奢らせよう。僕はそんなことを思い、再びベッドに横になった。



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